第7課 雨傘

第7課 雨傘
一、筆者の紹介
川端康成(かわばた やすなり)
1899~1972。小説家。大阪生まれ。東大国文
学科卒業。主な小説は「伊豆の踊り子」「雪国」
「千羽鶴」「山の音」「古都」「眠れる美女」など
がある。1968年ノーベル文学賞受賞。「雨
傘」は昭和7年(1932年)の作品です。
表現と文型
 ~は~ないが
 動詞否定形の間に「は」が入って前述事項を否定
する一方、後述事項はそれほどではないが、ある
程度に達していることを表す。
 しにはしないが、大変つらい病気です。
 この議題に対して、反対はしないが、棄権する。
 晴れてはいないが、光は十分明るい。
 酔ってはいないが、頭がふらふらしている。
なんとはなしに(不知为什么;不由得
)
 「はっきりとした理由や目的はなしに」という意味を
表す。「なんとなく」と同じ。
 年をとると、なんとはなしに昔の友達にあってみた
くなります。
 なんとはなしに、彼と話す気にはなれない。
 何とはなしに歩いていたら、公園の前に出ていた。
気になる
 あることが気持ちに引っかかって離れない意味を
表す。
 動詞連体形について、ある物事をしようとする積
極的な気持ちになる意味を表す。
 母親は娘の病気が気になっている。
 入学試験のことがとても気になります。
 こんな暑さでは勉強する気にはなれない。
 一人で京都へ旅行に行く気になった。
うちに
 名詞+の、または活用語の連体形に付いて、ある
時間の間に、またはある状態や動作が続く間に、と
言う意味である。
 子供は夏休みのうちに、水泳の基本技術を身につ
けた。
 一週間のうちに、この仕事をやってしまおう。
 友達といろいろ話しているうちに気持ちがだんだん
よくなりました。
 てんぷらは熱いうちに食べたほうがおいしいです。
 雨が降らないうちに帰ろう。
ではないか
 断定助動詞「だ」の否定疑問形である。名詞・形容
動詞語幹、形容詞・動詞連体形について、話し手
の予想していなかったことを発見した場合の驚きの
気持ちを表す。丁寧体は「ではありませんか」であ
る。
 こんな場合にこんな言い方をするなら、彼女を辱め
ることになるではないか。
 夢ではないかと、目を疑った。
 わたしは驚いた。彼女の態度やしぐさ(举止动作
)は妻と同じではないか。
「そうに」の「に」は何から来ています
か







傘のなかから逃げ出しそうにばかりしていた。
傘のなかから逃げ出しそうにしていた
傘のなかから逃げ出しそうに
逃げ出しそうに
逃げ出し
そうに
「そうに」の「に」は何から来ていますか。
次の文型の意味を言いましょう。







1.~てはじめて
2.~ながら ①濡れながらお入りと
②持ち添えたいと思いながら
3.お 並び になって
4.一生この写真を見る 度に
5.写真屋を出 ようとして
6.少年は 傘を持とう と言えなかった。
二、練習問題の解答
リーディング1
1.リーディング1の内容に沿って、次の質問に
答えよ。
(1)少年はどうして傘を開いたのか。
少年は少女が坐っている店先を通る恥ずかしさ
を隠すために傘を開いたのです。
(2)「少女は片一方の肩だけを傘に入れた」のは
なぜか。
少年に近寄せるのは恥ずかしいから。
(3)この写真は二人にとってどんな意味を持っているか。
この写真は二人にとって別れの写真で、大切な思い
出になると思います。
(4)先に写真屋を出た少女のなにごころなしに少年の
傘を持ったしぐさには何が感じられるか。
彼女が彼のものだと感じられます。
(5)この文章を読んであなたは少年少女の恋をどう思
うか。
略
2.リーディング1を読んで少年と少女の動作と気持ち
をメモせよ。
人物
少年
少女
場所
店先
恥ずかしさを隠すために傘
を開いた
表に駆け出した
途中
少女に傘をさしかけてやっ
て、濡れながら少女に身を
寄せることができなかった
片手を傘の柄に持
ち添えたいと思いな
がら、しかも傘のな
かから逃げ出そう
にばかりしていた
写真屋(1
枚目の写
真をとる
前)
少女と並んで坐ることが出
来なかった。少女のうしろに
立って、二人の体がどこか
で結ばれていると思いたい
ために、椅子を握った指を
軽く少女の羽織に触れさせ
た
写真屋
(2枚目
の写真を
とる前)
「髪は?」と、少女に小声で
言った。髪を直せと言うこと
は少女は辱めると思ってい
た。少女の明るさは少年を
明るくした。二人はあたりま
えのことのように、身を寄
せて長椅子に坐った。
雨傘を捜した。
写真を
とった後
帰る道
ひょいと少年を見上げて頬
を染めると、明るい喜びに
目を輝かせて、子供のよう
に、素直に、ばたばたと化
粧室へ走っていった。
乱れた髪が絶えず気になっ
ていたが、男の前では恥ず
かしくて後れ毛を搔きあげ
る化粧の真似もできない。
少年の傘を持って出たこと
に気がつき、驚いた。
傘を持とうと言えなかった。 傘を少年に手渡すことが出
急に大人になり、夫婦のよ 来なかった。
うな気持ちで帰っていく。
急に大人になり、夫婦のよ
うな気持ちで帰っていく。
3.「少年の父の官吏が遠く転任する。別れの写真だっ
た」(p82.3)とあるが、誰のために撮る写真なのか。
次の中から最も適当なものを一つ選べ。
d
4.リーディング1の内容にもとづいて、次の問いに答え
よ。
(1)少女の行動を「なにごころないしぐさ」と表現したの
はどうしてか。25字以上30字以内で説明しなさい。
(漢字・仮名・句点を含む)
少女は自分が少年の傘を持って出たことに気がつか
なかったから。(30字)
(2)「写真屋へ来る道」で、二人が大人になっていないこ
とを最もよく示す表現を、少年と少女についてそれぞ
れ一文ずつ抜き出せ。
少年ーー少年は濡れながらおはいりと、少女に身を
寄せることができなかった。
少女ーー少女は自分も片手を傘の柄に持ち添えたい
と思いながら、しかも傘のなかから逃げ出しそうにば
かりしていた。
(3) b
(4)「夫婦のような気持ち」(p83.5)とあるが、同じ意味
の表現を文中から15字以内で抜き出して示せ。
彼女が彼のものだと感じている。
5.リーディング1の要旨を120字以内でまとめよ。
春雨の日に、少年少女が分かれの写真をとる時のこ
とである。雨傘の二人にはほのかな恋心が芽生え、
二人の何気ない、それでいて恥ずかしげな言動を通
じて、お互いに相手を意識し、気遣いいたわり合って
いる優しい純粋な気持ちが伝わってくる。
リーディング2
1.d
2.a
3.b
リーディング3
1.a
2.d
3.c
4.c
4.d
5.d
5.b
リーディング2










シャットアウト:关在门外
広間:ひろま;大厅;大会场
開け放つ:あけはなつ:全打开,大敞大开
座敷:ざしき;铺着榻榻米的日本式的房间;客厅
境界:きょうかい边界;疆界
取り除く:とりのぞく;拆掉;拆除
取り入れる:とりいれる;采纳;采用
玉砂利:たまじゃり大粒沙子
心地よい:ここちよい愉快;惬意
厳粛:げんしゅく 肃穆;严肃
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
せせらぎ: 潺潺水声
交える:まじえる 夹杂;掺杂
落ち葉:おちば 落叶
囁き:ささやき 沙沙声,淙淙声
閉め出す:しめだす 把~关在门外;排斥;赶出
首を傾げる:くびをかしげる 怀疑,不相信(对方的
言行)而思量
無理やり:むりやり;硬;强迫,强逼
不感症:ふかんしょう;感觉迟钝
~まくる:拼命地;激烈地
犬に追いかけられて必死で逃げまくった。






アンプ:放大器;扩大器
スピーカー:扩音器;扬声器
ロック:摇滚
トランジスター:晶体(三极)管,半导体管
割れる:われる;破裂、裂开、劈裂
償う:つぐなう:抵罪;赎罪
本文を読んで、次の質問に答えましょう。
 音楽の聴き方に関しては、西洋と東洋では、どんな
違いがありますか。
 西洋では、音楽を聴く場所の発展はどうなっていま
すか。
 音楽を聴くために、西洋と日本では、それぞれ場所
をどのように作っていますか。
 第一段落においては、「では」は何回も出ました。
「で」の意味と「は」の働きを考えてください。
リーディング3
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
フレーズ:词组
すみれ:紫花地丁
与謝蕪村:よさぶそん
引き付ける:ひきつける;吸引;诱惑
閉じ込める:とじこめる;关在里面
頷く:うなずく;点头;首肯
頷ける:うなずける 能够同意;可以理解
移ろい:うつろい;变化;推移
託する:たくする;寄托
イマジネーション:想象;空想;创造力
委ねる:ゆだねる;委身;献身
戸惑う:とまどう;犹豫;困惑;不知所措
察する:さっする;推测;揣测;判断
真冬:まふゆ;隆冬;三九天
 日本人は自然音をどのように生活に取り入れてい
ますか。例を挙げて言って下さい。
 音響機材の修飾語を言ってみてください。
 次の文型の意味を言いましょう。
 ではないか
 として
 たびに
 ざるを得ない
 に関わらず
 に対し
 どんなに~ても
 のみではなく
3を読んで、次の質問に答えましょ
う。
 誰にもすぐわかるだろう。「に」の使い方
 昼間がやがて終わろうとしている。 「うとし
ている」の意味
 太陽は西に沈んでゆきつつある。 「つつあ
る」の意味
 とされる