厚生労働白書 p.32~p.45

第4節
社会保障と地域生活
060781145
前田唯衣
1
1.社会保障制度が
地域の生活に与える効果

地域間の所得再分配
社会保障制度の特徴として
・所得階層間
・世代間
の所得再分配機能がある一方で、
・社会保障制度の給付を必要とする人の割合
・利用されている給付の内容
・社会保険料を支払う人の数や金額が異なる
地域間の所得再分配は、高齢者の多い地域の
生活を支えている
Page.2
(1)地域間の所得再分配の状況
地域ブロック別再分配状況と65歳以上人口割合(全国値との差)
30.0
6.0%
25.0
5.0%
4.2%
( 20.0
全
再
国 15.0
分
調
配
査 10.0
係
済
数
み
5.0
4.0%
3.1%
2.8%
2.8%
(
5
全
歳
3.0%
国
2.2%
以
1.3%
1.2%
0.7%
2.0%
1.0%
0.3%
0.0
0.0%
北海道 東北 関東Ⅰ 関東Ⅱ 北陸
東海 近畿Ⅰ
-0.9% 近畿Ⅱ 中国
-1.0%
四国 北九州 南九州
-5.0
値
上
と
)
-10.0
6
人
の
口
差
割
)
合
-1.0%
-2.7%
-15.0
-2.0%
-3.0%
高齢化率の低い地域でおおむねマイナス
 高齢化率の高い地域でおおむねプラス

– 高齢化率の低い地域から高齢化率の高い地域に
対する所得再分配が生じているものと推測される
Page.3
2.公的年金が地域の生活に
与える影響
(1)公的年金の地域間の所得再分配の状況
地域ブロック別に、公的年金・恩給の額が全国
値に占める割合から年金保険料の額が全国値に
占める割合を差し引いたものを見てみる
高齢化率の低い地域はおおむねマイナス
(厚生労働省「所得再分配調査」1999年・2002年・2005年)
高齢化率の低い地域では年金保険料の額が全国
値に秘める割合より多い傾向にあり、
公的年金においても地域間の所得再分配が成功
しているといえる
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(2)地域の生活を支える公的年金-1
(県民の所得と年金総額の状況)
(兆円)
70
60
県民所得(1996年度・2005年度)
1996年度
2005年度
50
40
30
20
10
0
北 青 岩 宮 秋 山 福 茨 栃 群 埼 千 東 神 新 富 石 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 京 大 兵 奈 和 鳥 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 福 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖
海 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 奈 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 歌 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 児 縄
道 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 都 川 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 府 府 県 県 山 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 島 県
県
県
図により、この10年の間に多くの都道府県で
県民所得が伸びていない事がわかる
実際、2005年度の県民所得のほうが10年前より低下
しているのは47都道府県中43都道府県となっており、
9割強において県民所得が低下している
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(2)地域の生活を支える公的年金-2
(兆円)
年金総額(1996年度・2005年度)
4.0
3.5
1996年度
2005年度
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
北 青 岩 宮 秋 山 福 茨 栃 群 埼 千 東 神 新 富 石 福 山 長 岐 静 愛 三 滋 京 大 兵 奈 和 鳥 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 福 佐 長 熊 大 宮 鹿 沖
海 森 手 城 田 形 島 城 木 馬 玉 葉 京 奈 潟 山 川 井 梨 野 阜 岡 知 重 賀 都 阪 庫 良 歌 取 根 山 島 口 島 川 媛 知 岡 賀 崎 本 分 崎 児 縄
道 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 都 川 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 府 府 県 県 山 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 県 島 県
県
県
県
県民所得が低下している一方、1995年度と2005年
度の年金総額を見ると、高齢化により全ての都道
府県で2005年度の年金総額のほうが10年前の年金
総額より大きくなっている
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(2)地域の生活を支える公的年金-3
(県民所得に閉める年金総額の割合はおおきくなっている)
所得に対する年金の割合と65歳以上人口割合
1996年度 年金総額/県民所得(%)
2005年度 年金総額/県民所得(%)
65歳以上人口割合(2005年度)(%)
16
100.0
年
金 14
総 12
額
/ 10
県
8
民
所 6
得
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
4
20.0
(
% 2
) 0
6
5
歳
以
上
人
口
割
合
10.0
(
%
0.0
)
北青岩宮 秋山福茨 栃群埼千 東神新富 石福山長 岐静愛 三滋京大 兵奈和鳥 島岡広山 徳香愛高 福佐長熊 大宮鹿沖
海森手城 田形島城 木馬玉葉 京奈潟山 川井梨野 阜岡知 重賀都阪 庫良歌取 根山島口 島川媛知 岡賀崎本 分崎児縄
道県県県 県県県県 県県県県 都川県県 県県県県 県県県 県県府府 県県山県 県県県県 県県県県 県県県県 県県島県
県
県
県
このように都道府県における県民所得は伸び悩む中で、
年金総額は増加している事から、地域における高齢者
の生活に果たす年金の役割は増大している
公的年金は、高齢者の地域における生活を支え、
高齢者を安定した消費者層にし、
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地域の消費を始めとした経済活動に寄与している
第5節
我が国の社会保障の特徴と
近年の展開
8
1.我が国の社会保障の特徴と
バブル経済崩壊までの経緯
(1)我が国の社会保障の特徴
労働力人口の増大・経済の飛躍的な拡大を前提としたもの
第二次世界大戦後の生活保護制度を始めとする
生活困窮対策を経て福祉の充実が図られてきた
経済環境の変動に対して、
外部労働市場を通じた雇用量の調整よりも労働時間や
雇用転換等による企業内部における調整機能を重視したもの
一方我が国の、長期雇用・年功的人事管理・企業別組合
を特徴とした雇用慣行は、戦中から戦後にかけて
大企業を中心に形成されたものである
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(2)第一次石油危機からバブル崩壊まで
1970年代前半の第一次石油危機を境に、
経済の成長は安定成長に移行
社会保障制度は、経済社会の変化に対応した
制度や施策の見直しが行われた
 将来の高齢化社会に適合するよう老人保険制度の
創設(1983年)
 起訴年金制度の設立(1986年)
– 社会保障費用の適正化
– 給付と負担の公平を図るための改革。
雇用・労働政策においても新しい雇用保険制度による
雇用調整給付金等により雇用維持と安定に重点を置
いた政策が実施されるようになった
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2.バブル経済崩壊後・本格的な
少子高齢社会の到来後
1980年代頃:高齢社会に対する取り組みが大きな課題
1994年:高齢化率が14%を超え、本格的な高齢社会到来
あわせて、
1989年:合計特殊出生率が1.57とそれまでの最低率
1.58(ひのえうまの年)を下回り、
その後も低下を続け少子傾向が顕著になる
2005年から人口減少社会に突入している。
少子高齢化の進展と、バブル崩壊後の低成長経済の中での
改革が必要となる
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(1)年金制度の見直し
年金制度のあり方は、
「60歳引退社会」から「65歳現役社会」へ転向
高齢者の雇用を促進する本格的な高齢社会にふさわしい
年金制度とすることが求められ、改正されてきた。
その後も少子高齢化が一層進行し、制度の見直しを
行わなければ保険料の大幅な引き上げが必要となる。
給付と負担の両面の見直しが急務の課題となる
2004年の改正において、長期的な給付と負担の均衡を
確保し、制度を将来にわたって持続可能とするための
改革が行われた。
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(2)医療制度及び医療確保制度の見直し-1


21世紀の本格的な少子高齢化社会においても、安定した
医療保険制度を堅持していくために医療保険制度間を通じ
て一部負担割合が統一された(原則3割)
医療提供体制の課題
・入院医療を提供する体制の整備
・医療における情報提供の推進
・医療従事者の資質の向上
などがあり、2000年の改正で
・慢性期の患者(精神病床、感染症病床、結核病床以外の病床)が入院する
療養環境に配慮した「療養病床」と、医師・看護師の
配置を厚くした「一般病床」に区分される
・医療機関に関する広告規制の緩和や、医師・歯科医
師の臨床研修の必修化が措置された
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(2)医療制度及び医療確保制度の見直し-2
さらに2006年の医療改革において、
 生活習慣病患者・予備群の減少や平均在院日数短縮
を図るとともに
・医療費適正化の総合的な推進
・新たな高齢者医療制度の創設
・都道府県単位を軸とした保険者の再編・統合
からなる健康保険法等の一部を改正する法律が成立
 医療法の改正を行い、
・医師確保対策の実施
・患者の視点に立った医療情報提供体制の充実
・医療機能の分化・連携を図る新しい医療計画制度
の着実な推進を図ることとされた
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(3)高齢者介護問題に対する取組みの進展と
介護保険制度
1989年12月に高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴール
ドプラン)、1994年12月に新ゴールドプランが制定された。
在宅サービスについて、具体的な目標値を掲げて
計画的に整備が進められた
高齢期最大の不安要素である介護問題に対応するため
1997年12月に介護保険法が制定され2000年4月に施行
介護保険制度は利用者の希望を尊重した総合的な介護
サービスを受けられるようにしたものである
施工後5年で在宅サービスの利用者が約2倍に
増大したため、制度全般にわたる見直しが行われた。
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(4)次世代教育支援対策
仕事と育児の両立のための支援策の充実が急務となる
女性労働者の増加に伴って共働き家庭が増加し始め、
労働力不足基調の中で必ずしも生かされていない人々
の活力を社会に活かす事が不可欠になった事等の背景
1990年代:少子化現象が一般の注目を集めるようになる
1991年:「育児休業等に関する法律」(育児休業法)制定
1歳に満たない子を養育する労働者が育児休業を取得する
ことができる権利が明確化された
少子化社会への対応が重要な政策課題として位置づけ
られるようになり。子育て支援の拡充が開始された
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(5)雇用・労働政策
1)厳しい雇用失業情勢への対応
 バブル系税崩壊以降、1991年初めから、経済が長
期的に低迷する中で、失業率は上昇を続け1995年
に初めて失業率が3%を突破した
 そこで、職種転換、出向・再就職斡旋による「失業
なき労働移動」を図ってきたが、1997年の金融危
機を契機に、中高年層と若年層の失業問題が深刻し、
2003年4月には完全失業率が最高の5.5%を記録し
た
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2)働き方の多様化への対応
グローバル化や市場経済競争の強まり、高度
情報化の進展と産業構造の変化等を背景に、
外部人材を含む正社員以外のものの活用が
図られている。
パート、派遣、契約社員等、多様な就業形態が増加
1993年:パートタイム労働法制定
2003年:指針を改正し、パートタイム労働者と正社員と
の間の均衡を考慮した処遇の考え方を具体的に示す
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3)若年者を中心とする正規従業員以外の雇用者の
増加に対する対応
1997年の金融危機以降、労働移動支援策の充実が図
られてきたが、長期にわたる景気低迷状態のなか
で、無業者やフリーターが増加
若者を取り巻く雇用環境は厳しくなった
2003年6月:「若者自立・挑戦プラン」制定
 ジョブカフェの整備などの常用就職支援
 トライアル雇用などが各種対策
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