甲類 内藤 恵

法律論文作成の手引
労働法・社会保障法を中心として
――
内藤
恵
﹃三色旗﹄では、既に法律学科の他の研究者の方々が、
各々の専門領域について非常に優れた卒論作成の手引を執
引をご覧になるならば、法律学に関する教員の各々が専門
用しておきますので是非ご一読下さい。加えてこれらの手
Ⅰ、はじめに
通信教育生の皆様にとって卒業論文は、慶應義塾大学通
領域による多少の違いはあれども、繰り返し同じ内容を皆
筆しています。どれもが良く書かれた手引です。末尾に引
大学で自ら何を学んだかを形にする最大の機会です。もち
信教育課程における最後の難関でしょう。卒業論文とは、
く始めることはプラスにはなりません。むしろ在籍する学
まず卒業論文とは、皆様の学習の集大成です。焦って早
様に対して指導していることが理解できます。すなわち法
執筆とは、今まで提出してきた科目リポートとは、全く異
部の様々な科目を体系的に学びつつ、各々の興味関心のあ
ろんこの拙文を読まれている皆様は今までも与えられたテ
なる研究態度を求められる場なのです。しかし私が今まで
る テ ー マ を 少 し ず つ 頭 の 中 で 熟 成 さ せ て 下 さ い。 そ の 上
律学の論文をまとめるにあたっては、多少の領域の差はあ
拝見した限りでは、残念ながら資料も十分に集めず、法律
で、この大学に在籍する最終ステージの概ね一年から一年
っても、王道はひとつなのです。
学というには的はずれなテーマを設定する学生も居るよう
キストを読み、各々のリポートの課題に関わる参考文献を
です。推察するにその齟齬は、卒業論文というものを理解
半が、皆様の卒論執筆の期間になるとお考え下さい。皆様
多数調べ、ご自分で学び続けて来たはずです。しかし卒論
していないために生ずるのではないかと思われます。
三色旗 2012.3(No.768)
礎知識も無い段階で卒論指導に入っても、結局は卒論らし
の頭の中でじっくり熟成させたテーマを具体化する作業
りも、念頭に置いて下さい。
ることが研究の全ての基本になるのです。それをまず何よ
前提として、その分野の基礎となる一般法が理解できてい
ないでしょうか。法律学に関していえば、これは全くの誤
論文を書くことが出来るという、幻想を持っているのでは
おそらく学生の皆様は、早く始めれば何年もかけて良い
は、決して何年にもわたるものではありません。焦って基
き形にもならず、資料を集めてもその意味が理解できず、
本稿では、一般的に法律学の論文を書くために何を必要
りです。法律学は積み重ねの学問であるため、ある特別法
全く効果はあがりません。
とするかについて述べ、併せて労働法 社
・ 会保障法に係る
領域を研究しようとしている方々へ、この領域でいかに学
的領域の知識が不可欠です。例を挙げるならば、労働法分
ら、現在では個別的労働関係法︵すなわち労働契約を中心
うな集団的労使関係法︵労働組合法を中心とした領域︶か
の知識が必要です。特に労働法分野の研究は、かつてのよ
野の研究には、憲法・民法総則・民法債権各論・債権総論
の領域を研究するためには、その領域の基礎となる一般法
ぶかについてお話ししたいと思います。
Ⅱ、卒論指導を申込む前にしておくべきこと
まず卒業論文作成に入る前に、皆様に是非考えて戴きた
該テーマの基礎を学んでいないにもかかわらず論文指導を
をいかに調整するかを考える領域です。労働法学も、広い
し、そのため私的な契約関係にアンバランスが生ずる場面
会法﹂は、私人である両当事者間に何らかの力の差が存在
とする領域︶にその中心が移行しています。それゆえにこ
受け始め、その後何年にもわたって幽霊部員と化している
意味では行政法に近いのです。例えば使用者が守らなけれ
いことをお話しします。焦燥感に駆られて卒論指導にいち
方々があります。そこで皆様にはまず卒論指導に入るより
ばならない各種の労働基準を念頭に置いて下さい。最低賃
す。もともと労働法を契機として作り上げられてきた﹁社
先に、通常のテキスト科目の単位を幅広く取得し、法律学
そ、契約とは何かといった民法学の基礎が重要となるので
という学問体系を頭の中に作り上げておくことの方が、は
金にしても労働時間の制限にしても、労使関係の力の差か
早く入ることは、プラスにはなりません。私の手元の実例
るかに重要であると申し上げます。法律学とは積み重ねを
ら生じ得るアンバランスに対して、国家的視点から介入し
を挙げると、テーマが煮詰まっていない、あるいは全く当
重視する体系的学問分野です。すなわち卒論指導を受ける
三色旗 2012.3(No.768)
不合理を是正しています。
さらに言えば、社会保障法は行政法の一領域です。社会
保障法とは、国家あるいは社会から当人が、権利として何
れ﹂という格言を常に思い起こして戴きたいものです。
実現される構成をとります。同時に社会保障の対象となる
各々制度は異なっていても、全て行政主体によって権利が
り あ つ か う 公 的 扶 助・ 社 会 保 険・ 社 会 福 祉 等 の 領 域 は、
裁判例は、行政訴訟として提起されます。社会保障法がと
ご自身の人生の当然の帰結です。しかし私の卒論指導体験
論のテーマとなりそうな興味の対象を探すという行為は、
持ちです。ですからご自分の職業あるいは日常生活から卒
近年の通信教育課程学生の場合、大半の方々が仕事をお
次にテーマをどう選ぶかについて、お話ししましょう。
Ⅲ、テーマの選び方
何らかのリスクを負う人々が、いかなる権利を持つかを考
からは、場合によっては法律学に馴染みにくいテーマを、
を付与されているかを考える分野です。したがって多くの
察するには、その根底にある憲法二五条の生存権を研究し
感じます。特に労働法の場合、私が指導している方々の多
くが、企業の人事 労
・ 務に何らかの形で関わっています。
時には中間管理職としてご自分の考えと企業実体との間に
ご自分の思い込みで卒論題目として提示する危険があると
苦しみや矛盾を抱え、それを考察したいがゆえに当該分野
なければなりません。当然に社会保障を研究するには、憲
約へ﹂と言われる制度の転換が存します。しかし一方では
で の 研 究 を 選 ぶ 様 子 で す。 こ れ は 悪 い こ と で は あ り ま せ
法と行政法の知識が不可欠の要素となります。例えば児童
私人間の契約を基礎としているようですが、他方大局的に
ん。法律学の論文である以上、当該課題が社会的に見て論
福 祉・ 介 護 な ど の 領 域 に 顕 著 で あ る よ う に 、
﹁措置から契
のように両分野の実例を考えると、社会法を学ぶためには
それらをコントロールするのは行政の枠組みなのです。こ
ずる意義のあるテーマであって欲しいと思います。
い、特殊な法領域についての研究を志すことには無理があ
題 で あ る と し て も、 き わ め て 特 殊 な 職 業 で し か 利 用 し な
問分野です。そのためご本人にとっては︵個人的な︶大問
しかし前述したように、法律学とはきわめて体系的な学
公法・私法の双方にまたがる知識が大切であることが理解
できると思います。
く歯が立たないか、少なくとも研究はいっこうに捗りませ
に、いきなり労働法や社会保障法を研究しようとしても全
ります。また初学者が論文をまとめる為には、参考となる
これら基礎的な法領域について充分な知識が無いまま
ん。法律学を学ぶ甲類の学生さんにおいては、
﹁急がば回
三色旗 2012.3(No.768)
ば絞るほど、全く参考とすべき参考文献が収集できず、従
易いのは当然です。ですから特殊な小さい領域に的を絞れ
資料︵専門書、専門論文、裁判例、等︶が多い方がまとめ
っては法律学科内に指導に当たる教員を見出すことが出来
しては、学部の卒論として一∼二年で論文を書き上げるの
かしこのような博士論文級と言えるような大テーマを設定
なテーマになります。勿論これは有意義なテーマです。し
ず、適切な指導を受け難いかもしれません。また法律学の
は困難です。一般論として言えば、テーマ設定の仕方によ
論文を書く場合には、当該テーマについての裁判例などが
って論文としてもまとまらないという状況に遭遇します。
し た い と 希 望 さ れ た 方 が あ り ま し た。 こ の テ ー マ で あ れ
多いかどうかも重要な要素です。つまり当該論点に関する
実例を挙げると、労働基準監督行政とは何かについて研究
るでしょう。特に外国語が得意でないにもかかわらず、面
資料が少なく、結果として卒業論文としてなかなか形にな
ば、
﹁労働﹂と名がついていてもむしろ行政法の範疇にな
談の際に諸外国の法制度と比較検討したいと希望されまし
このような状況になることを避けるために、卒論になり
りにくいテーマも存在します。
もちろんテーマ設定においては、ご自身の体験・志向から
中から見出す努力も必要です。同時に調査票を提出して卒
そうな複数のテーマを、日頃の勉強あるいは各自の生活の
たので、そのままのテーマでは指導し難いと感じました。
作成のエネルギーになります。しかしそのような職業生活
論指導に応募する前に、当該テーマが果たして法律学科の
生み出されたテーマを取りあげる方が興味も尽きず、卒論
の中で得た知見をいかに普遍化させ検討するかにこそ、卒
卒論として結実しうるテーマであるか否かを、自らチェッ
き、万遍なくテキスト・参考文献に触れる努力をしておく
クする必要があります。日頃から法律学の体系を念頭に置
とよろしいでしょう。卒論のテーマは、全くの﹁無﹂から
論 を 書 く 意 義 は あ る の で す。 こ の 点 を 間 違 え な い で 下 さ
逆にあまりに拡散した漠然としたテーマを設定すると、
生ずるのではなく、日頃のテキストの勉強から見出される
い。
法律学の論文としてはまとまりません。例えば過去に私の
労働法に関して言えば、日頃皆様が使っている教科書の
指 導 を 受 け た 方 の 中 に は、
﹁労働法﹂とは何かについて卒
のものの意義について社会思想的に論じたいとの希望であ
章の一つ一つが、テーマの宝庫になります。加えて、例え
のです。
るならば、それは法律学と言う以上に、社会学や歴史学、
ばどのような点について法的紛争が生ずるかという論点か
論を書きたいと希望した学生がありました。もし労働法そ
社会思想の側面からも分析しなければならず、非常に大き
三色旗 2012.3(No.768)
有斐閣二〇〇四年︺などの法律雑誌を利用することができ
年︶︺や、同じく﹃労働法の争点﹄︹カレント版は第三版。
は 第 八 版。 有 斐 閣・ 別 冊 ジ ュ リ ス ト 一 九 七 号︵ 二 〇 〇 九
ら理解を深めるのであれば、
﹃労働判例百選﹄︹カレント版
釈一つを模倣しただけのものであり、それだけでは研究に
学生の調査票︵いわば研究計画書︶は、ある著名な判例評
は著名な研究者の判例評釈も多数出ています。しかしその
ろん当該判決は極めて重要な裁判例であり、これについて
結実しないと疑われました。そこで初回面談では、当該判
決を手がかりとしてどのような方向に拡大発展させるかに
ます。
多くの教員は初回指導の際に当該学生さんとお話をしつ
但し社会保障法については、同じように﹃社会保障判例
つ、どのような方向性であればご本人も納得し、軌道修正
ついて指導しました。しかし残念なことに、ご本人は幽霊
します。なぜならば判例百選は、代表的な訴訟等について
出来るかを考えます。漠然として見えていても、修正を加
百 選 ﹄︹ カ レ ン ト 版 は 第 四 版。 別 冊 ジ ュ リ ス ト 一 九 一 号
の判例評釈集です。社会保障法関係の裁判例の多くは、前
えることで物になるテーマもあります。以上の記述から理
部員になってしまいました。
述したように取消訴訟を中心とする行政訴訟です。しかし
︵二〇〇八年︶︺を手がかりとすることには、少々注意を要
社会保障法関係のテーマで卒論を作成する際には、単なる
も、その後の論文執筆が困難になる危険性が高いと申せま
しょう。テーマの探求および決定のためには、自分自身で
解できるように、卒論のテーマ設定は狭すぎても広すぎて
図書館に赴き、ある程度の下調べを行うことは当然です。
一つ一つの行政訴訟を評釈するのではなく、もっと広く当
要があります。労働法学が法律の解釈論に重きを置くとす
この点は必ず実行して下さい。
該分野の制度および関連する社会問題を理解し分析する必
を置きます。もちろんそこでは、当該テーマに関する代表
右のプロセスを経て、自分の興味ある領域が法律学体系
点を述べました。
以上、卒論指導に入る前に是非ともしておいて戴きたい
Ⅳ、資料収集の方法
るならば、社会保障法学はこれに比して政策論にウェイト
的 裁 判 例 の 分 析 も 行 い ま す が、 む し ろ 資 料 を 幅 広 く 収 集
し、制度全体を批評する方が有効でしょう。テーマに幅を
持たせた方が、資料も収集し易く研究し易いのです。
希望して、未だ学習が十分とは言えない段階であるにもか
手元の実例でも、ある著名な最高裁判決を研究したいと
かわらず、私の卒論指導に入った学生がありました。もち
三色旗 2012.3(No.768)
しょう。そのように作成された計画書であれば、おそらく
のどの分野であるかを知り、当該分野の参考文献を多少な
捨選択するか。どのようなデータベースであっても、キー
ょう。その中から使える文献と使えない文献を、いかに取
のような記述に至るまで、膨大な資料名が提示されるでし
ワードの設定の仕方や当該データベース作成時の専門的知
りとも収集して読みこなし、研究計画書を作成したとしま
識によっては、使い勝手が完璧とは申せません。
どの文献を使い何を使わずに済ませるかは、各々の指導
卒論準備の第一段階はクリアしたものとして、具体的に当
教授にご教示戴いて下さい。しかしご自分でもある程度の
該分野の教授のご指導を仰ぐことができるでしょう。
第Ⅳ章以降は、実際に皆様の指導教授が決まった後、そ
数の資料を読みこなす内に、資料の善し悪しが感じ取れる
その後注に引用されている資料があれば、それらは使うに
れぞれの先生方からご指導を受けて遂行する作業について
足 る 文 献 で あ る こ と が 多 い の で す。 こ の よ う に﹁ 芋 づ る
お話しします。従って以下は、皆様が実際の卒論執筆の段
式﹂に次々とたどって、文献を集めることも出来ます。資
ようになります。多数の資料で必ず引用されている文献A
教授が了解したとします。次に必要なのは資料の本格的な
まずご自身が提出したテーマについて、初回指導で指導
料収集過程は、自分自身の中で漠然としていたテーマをじ
階に入った時のイメージを付けるために、概略をお話しす
収集です。当該テーマについて、どの程度の資料入手が見
っ く り と 熟 成 さ せ て い く 過 程 で す。 た だ 機 械 的 に デ ー タ
があったとしたならば、Aは必読の文献と推測されます。
込めるか、目処を付ける必要があります。第Ⅲ章に述べた
ベースを動かし、ただコピーの数を集めることが目的では
他にも脚注が沢山付されている質の高い論文を読む際に、
ように資料が無かったり少ない分野については、卒論はま
ありません。ご自分の手で資料をたどり、自分自身の頭に
談しご指導戴いて下さい。
とめ難いのです。ですから卒論をまとめる際には、まず当
染み込ませることが大切です。
るものです。実際の進め方は、各自の指導教授によくご相
該テーマに係る資料を多数収集する必要があります。近年
「章立て」を作成してみる
―
文献収集の際には、とにかく一覧表に載っている資料を
Ⅴ、資料の解読
は多くのデータベースが整っておりますので、慶應義塾大
学ほかの図書館でそれらを活用し、必要と思われる資料を
取 捨 選 択 す る こ と が 出 来 ま す。 但 し 当 該 テ ー マ に 関 わ る
キーワードを検索画面に書き込みますと、それこそ価値の
高い使える資料から、表題だけが関係する一頁のみの雑感
三色旗 2012.3(No.768)
書く際には、とにかくまず構成を考える必要があります。
しかし資料の解読は、収集と同時進行で行います。論文を
まず全部コピーして、後から通読しようと考えがちです。
執筆のプロセスでいくらでも修正・変更が可能です。
かを考えながら読むのです。但しこの﹁章立て﹂は、論文
読み、中頃からは、これから書く論文のどの部分に使える
期の頃は、自分が選んだテーマの全体像を頭に描くために
Ⅵ、文献の引用法、等
そのためには、収集した中で重要な資料については、どん
めたならば、その中で資料的価値が高くしっかりした引用
どん読み進める必要があります。ある程度の数の文献を集
が 付 い て い る、 分 量 の あ る 専 門 論 文 を ま ず 読 み こ な し ま
もあるテーマに関して百の文献があるならば、その中でも
で、各自指導教授からご教示戴いて下さい。但し参考まで
無 い 様 子 で す。 皆 様 そ れ ぞ れ の 指 導 教 授 が 決 ま っ た 段 階
ません。引用法に関し、邦文についてまとめている書籍は
厳格なサイテイションの仕方が決まっているわけではあり
価値が高く充実した専門論文を一〇∼二〇点読めば、当該
邦文法律文献の引用法については、アメリカの論文ほど
テ ー マ に お け る 論 文 の 概 略 は 作 る 事 が 出 来 ま す。 論 文 の
この本は出版されてから少々時が経ち、しかも初学者には
に、論文の書き方に関する以下の書籍を挙げておきます。
す。なぜならば同一のテーマに関する文献は、多くの場合
テーマが決まったら、資料収集、資料解読、そしてご自分
同じ内容を繰り返し書いているわけです。ですから、もし
の論文の章立てを作ること、この三者を相互にフィードバ
料の収集・執筆の手順など、役に立つ記述の多い本です。
少し専門的すぎます。しかしそれでも論文作成の準備・資
・櫻井雅夫﹃レポート・論文の書き方
上級﹄︵改訂版︶
ックさせながら研究を進めます。
必要があります。その理由は、資料を読みこなしつつそれ
以上の解説から少なくともⅠ∼Ⅲ章をご自身で準備した
Ⅶ、まとめ
︵慶應義塾大学出版会、二〇〇三年︶
自分が書く論文の﹁章立て﹂は、概略であれ早めに作る
らを分類していくためです。いわば章立てを作ることは、
それぞれの章のレッテルの付いた箱を仮想することです。
今目の前で読んでいる資料が、将来自分が書く論文のどの
箱にコピーを振り分ける作業をする為なのです。資料を読
上で、卒論指導に係る調査票を作成して下さい。例年、法
部分に使えるか、いわばそれぞれの章の名前のついた仮想
むということは、ただ漫然と読むことではありません。初
三色旗 2012.3(No.768)
調査票が提出されます。ご自分の卒業論文なのです。まず
一つ資料を調べず自分の思い付きで書いたような不十分な
律学の論文になり得ないようなテーマのもの、あるいは何
多く掲載されているので有用である。
戴きたい。特に資料の調べ方、論文の書き方に関する参考文献が
ど の 間 に 掲 載 さ れ た 論 稿 を 掲 げ る の で、 拙 稿 と あ わ せ 必 ず ご 参 照
作成の手引がシリーズとして掲載されている。左記に過去二年ほ
作成に延々と三∼四年も費やしているにもかかわらず、興
得できず退学になる学生などが居ます。私の経験でも卒論
むしろ早々と卒論作成にかかったものの、語学の単位が取
を履修し終えた後に始めても、さほど遅くはありません。
と。繰り返しますが卒論作成は、卒業に必要な大半の単位
︵二〇一一年三月︶
③ 佐 藤 拓 磨﹁ 法 律 論 文 作 成 の 手 引 き
の卒業論文に求められること﹂同七五〇号︵二〇一〇年九月︶
②青木淳一﹁行政法は、法解釈学か、法政策学か
七四六号︵二〇一〇年五月︶
①水津太郎﹁法律論文の書き方
テーマだという当たりを付けてから、卒論指導を申込むこ
は自分である程度の資料を読みこなし、卒論になりそうな
味関心がなかなかまとまらず、いつまでもテキストの要約
④工藤敏隆﹁法律論文作成のためのヒント
保障法専攻。一九八八年慶應義塾大学大学院法学研究科博士課
七六〇号︵二〇一一年七月︶
︹ないとう
めぐみ
慶應義塾大学法学部教授、労働法・社会
民事手続法編﹂同
―
刑事法編﹂同七五六号
―
行政法分野
―
民法を素材として﹂
﹃三色旗﹄
―
のようなことを繰り返す学生もいます。長々と当該テーマ
に関わるうちに、興味関心が他のテーマや領域に移り、卒
論作成を一からやり直している学生などを見ることもあり
ます。
だからこそ基礎を大切にし、ある程度の知識が身に付いて
一二号、二〇〇九年。﹁労働契約における使用者の安全配慮義
職場のいじめ・嫌がらせ等を中心として﹂
﹃法学研究﹄八二巻
環境配慮義務の法理
﹁
―労働契約における使用者の職場
から取りかかり、短期間で仕上げる方が充実した研究につ
程単位取得退学。主要業績
ながるものと思われます。お仕事の傍らで学ぶ皆様である
務
卒業論文とは、まさに大学教育の最後を飾る研究です。
からこそ、慌てて卒論に挑戦しようとせず、じっくりと学
案を中心として﹂
﹃ 法 学 研 究 ﹄ 八 一 巻 一 二 号、 二 〇 〇 八 年。
﹃世界の労働﹄五四巻六号、二〇〇四年。︺
﹁﹃ 公 益 通 報 者 保 護 制 度 ﹄ と 労 働 契 約 に お け る 労 働 者 の 義 務 ﹂
労働者の身体的・精神的過労、ストレス等による労災事
―
職場のセクシュアル・ハラスメント、
―
んで戴きたいと願っております。
︻注 ︼ 既 に ﹃ 三 色 旗 ﹄ で は 法 学 部 法 律 学 科 教 員 に よ る、 卒 業 論 文
三色旗 2012.3(No.768)