日本語教育における「待遇表現」の扱い方

日本語教育における 「
待遇表現」の扱い方
下関市立大学 坂本
1
2
3
4
5
付
恵
は じめ に一待遇表現 をどうとらえ、 どう教 えるか
待遇表現 の定義
場 と人 間関係
表現意 図に基づ く表現 の分類
丁寧 さの表 し方
狭義敬 語 の分類
2 待 遇表現 の定義
「
待遇表現」 とは、
ある 「
表現 主体」が、ある 「
表現意図」 をもつ
, 「自分 」
A「相手」8「話題の人物J相互の
「人 間関係」 を認識 し、
「
場」 の状 況 。雰囲気 、文脈 などを意識す る
-表現形態 (
音声表現 。文字表現) を考慮す る
-以上の制約 に応 じた 「逸材」 ・ 「内容」、適 当な 「
言材」 を選択 し、 「文 薪」
(
文章 ・談話) を構 成 し、 「
媒材」化 (
音声化 あるいは文字化 )す る
といった一連の 「
表現行為」 であ る。
3 場 と人 間関係
場
一表現 の特徴
+2 改 まった場
一丁重
+1 やや改 まった場
式典
会議
面接
:丁重語、漢語、言い き り文
講演会
会議
初対面 の人 と話す
パ ーテ ィー
-やや丁重
o 普通 の場
先生 、事務の人 と アルバ イ ト先
知 り合い と話す
-普通
-1
くだけた場
友人 と話す
飲みに行 く
-やや くだけ
-2 非常 に くだけた場
- くだけ
十2 上位の人
一
+1
家族 と話す
格助詞省略)、 (
省略多 し)
:(
狭義敬 語無 し)、 (
年輩 の先生、保証人、初対面の人
非常 に丁寧 :おいで にな ります
やや上位の人
先生
先輩
(
書 いていた だけないで しょうか )
アルバ イ ト先の上司
-1
0
3-
- 丁寧
:い らっしゃいます
書いていただけませ んか
o 同等の人
事務の人 親 しくない友人 店の人
一 普通 : 行 きます、います
書いて もらえませんか、書いて下 さい
-
下位、親 し1
!
一人 後輩 親 しい友人 家族
- ぞんざい :行 く、いる
書いて
1
4 表現意釦 こ基づ く表現の分類
A 自己表出表現 (「
述べ1
月の表現)
* 「ああ1
.いい湊だ,
3気持 ちいい7
&
F・
J
A
l
_
j
t
l1 i
ロー
盤 り副
と
して
)
B 理解要請表現 (「
伝 え」の表現)
* 「明日の会議は 12時か ら始めます。昼食 は庸意 します。J
c 行動展 開表現 (「
働 きかけ」の表現)
*「
すみ ません。水 を一杯下 さい」
C 働 きかけ 衝 動展 開表現上 -覧
A
・・ -I
.
Å
A
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.
1
㌦
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/
∴」
A
A
A
A
J/AJ
益
剰
庵
<:
A
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∫ A
許可求め
宣言
咲
A
食
え 命
与 ・
町 示
許 婚
」
J
宝
動
L
・
,
I
.
亨
、
・
- I
患 勧 依
寓 言
意 助
㌧
申 し出
A:
相手
j/ Aノ
/
′
日
自分
典型的な表現
シ タホ ヤ ガ fイデ :
ろヨ
シマ セ ンカ やシマ シ T
uウ
シテを ラエ マ ス カ
こ
/T 七 ,
iiT
シ テ タ ダサ
イ
r
人
。シナ サ
A
A
シマ シ ョウカ
A
J
シテを イ イデ ス 労
5
L/A/
イ
シマ ス
・サ セ テモ ライマス
5 丁寧 さの表 し方
丁寧にするための条件 (
待遇意識)
1 人物の とらえ方
○相手 を 「
高い、大 きい、美 しい、優れている、力がある、恩恵 を与 える」存在 と考 えるo
o
自分 を 「
低い、小 さい、醜い、劣 っている、力がない、恩恵 を受ける」存在 と考 える。
〇着趣の人物は、相手側、或いは相手から見て も上位の人であれば相手 と同 じ扱い、自分
側は自分 と同 じ扱い、それ以外は特別な扱いは しない と考える。
2その他の注意
○題材 を選ぶ
o「働 きかけ表現」の場合、相手に決定権、自分に利益があるように表す
-1
0
4-
○同等の立場 におかない-感情を伝 えない
○直凄否定、断 りは しなl
vl
O必要以上の説明は しない、聞かない
○間接的に表す/前置 きをす る
○ 自分のことについては卑下 し、言い訳 をする
等
狭義敬語の分類
1 直接尊重語
<動作主 をあげる、持 ち主をあげる>
い らっしゃる おっしゃる 高名 高覧 芳名
<書か> (ら)れる お くご)<書 き>になる
-恩恵直宴尊重<動作主か ら恩恵が与えられるという形で動作主 をあげる>
お (ど)<書 き>下 さる <善い>て下 さる
2 間接尊重語
<動作の関係する人物 をあげる>
申し上げる 存 じ上げる 伺 う 拝借
お (ど)<書 き>する
-恩恵開襟尊重 <動作の関係する人物 をあげ、かつその人物か ら動作主が恩恵 を受 ける
いただ く さしあげる させていただ く お (ご)<書 き>いただ く
-丁重間接尊重<動作の関係す る人物 をあげる かたい語感を持つ >
お (
ど)<書 き>致す
3尊卑語
<話 し手側か聞 き手側かを明 らかにする>
-相手側であることを示す (
相手尊重語)
貴社
諸賢 御身 玉稿
あなた さま
-自分側であることを示す (自己卑下語)
小生 弊社
愚<息 >
拙<著>
わた くしども
4美化語
<きれいにす る>
あげる いただ く なくなる おい.しい
ごほん
5文体丁寧語
<文語全体 を丁寧 にす る>
です ます
6丁重語
でござい ます
<動作主をあげない
致す
あらたまった気持ちを表す
かたい語感 を持つ>
申す 参 る 存ず る く報告 >致す
わた くし 本 日 昨朝 今夕
相くつとめる>
-1
0
5-
参考文献
i
」『早稲田大学 日本語研究教育セ ンター紀要 3』
蒲谷宏 i坂本恵 1
99 「
待遇表現教育の構想
蒲谷 ・,
I
!
旧 義一 ・坂本 1
9
93「
依頼表現方略の分析 と記述 -待遇表現教育-の応剰 こ
」『早稲田大学 日本語研究教育セ ンター紀要 5』
」『日本語学』 12-9明治書 院
向けて -
蒲谷宏 1
993「
待遇表現 における省略
蒲谷 ・川口 o坂本 1
99
4「
待遇表現研究の構想」
『
早稲田大学 日本語研究教育セ ンター紀要 6過
坂本 川
さ滞谷 1
99
4
旧
「『行動展 開表現』について-待遇表現教育のための基礎的
訂告季語教育』 82号
永由
場 と人間関係
卜2の場
フ:
卜 一マ]
t
,
な場
談藩が単方向的 話 し手、聞 き手の属性 は全 く考 えられず も
多 くの聞 き手 も一一
括 して聴衆の位置 に置かれるoT畳語、かたい語嚢
十
互の場
単方向的な場の中でも、幾分 くだけた もの、多方向的なもの (
会議)
双方向的なもの.
、かな り上下格差感覚のある人との初対面の壕、商量など。
Oの場
改まって もくだけてもいない場
ごく通常の、普通の場
人間関係のランク付
展開されている場。社会的役割 りを持ち、その役割の要求す る関係 を持ちなが
ら他の人 と接 している。
,職場など。
- 1の場 個人的な場であ り、 くだけた場 親 しい友人や家族などとの場、役割が とれ、
個人的な友人関係 になった ような場合。通常の 0レベルの人間関係で くだけた
場合。
〟
-2の場
非常 にくだけた場。家族、親 しい友人。
脱待遇、狭義敬語 は使用 されない
-
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