第9章 片頭痛はなぜ慢性化するのでしようか

第9章
片頭痛はなぜ慢性化するのでしようか
一般的には、片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、
残りの3割が慢性化して増悪してくるとされています。
頭痛専門医は、慢性化の発症要因として「薬剤乱用頭痛」を主に挙げられま
す。そして、これに加えて、片頭痛発作時に”トリプタン製剤”を服用せずに、
市販の鎮痛薬・病院で処方される鎮痛薬を服用するためとされます。
その理由として、片頭痛の場合、市販の鎮痛薬で痛みを抑えていると、一部
の脳の活性が高まり、そこにつながる血管が異常拡張して、痛みが生じ、血管
の異常拡張がさらに脳の活性をもたらし、それが再び血管の異常拡張へとつな
がり、つまり、悪循環が終わらなくなるとされ、それによって常に片頭痛があ
る状態になり、血管の拡張が繰り返されると、血管自体に炎症やむくみが残っ
て、さらに頭痛を起こしやすくなるとされます。
これが、片頭痛を慢性化させる主な原因とされています。
このように、トリプタン製剤を片頭痛発作時に毎回服用しないためとされ、
まさにトリプタン製薬メーカーが聞けば泣いて喜ぶようなことをヌケヌケと申
されます。
この「薬剤乱用頭痛」は本質的には、市販の鎮痛薬・病院で処方される鎮痛
薬、エルゴタミン製剤、トリプタン製剤にしても、人体にとっては過剰な服用
は、薬剤の種別は問わず「化学的ストレス」です。このストレス反応により「脳
内セロトニン」の低下がもたらされ、痛みを調節することが困難になり、薬剤
乱用頭痛に至り、これが片頭痛を慢性化させる要因と考えるべきです。
また、別の見方をすれば、市販の鎮痛薬・病院で処方される鎮痛薬、エルゴ
タミン製剤、トリプタン製剤にしても、人体にとっては異物です。異物を解毒
しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸素が発生し
てしまいます。このため過剰に発生した活性酸素によってミトコンドリアの働
-1-
きを悪くさせることが、薬剤乱用頭痛に至ったと考えなくてはなりません。
片頭痛では基本的にミトコンドリアの働きの悪さがあります。このため、同
時にセロトニン神経系の機能も悪くなっています。
これに対して、市販の鎮痛薬を連用しておれば、ミトコンドリアの機能をさ
らに悪化させ、脳内セロトニンを低下させることによって、頭痛をさらに増強
させ、慢性化させることになってきます。
例え、トリプタン製剤を服用して、脳の活性を抑制したとしても、同様にト
リプタン製剤を連用すれば、市販の鎮痛薬と同様のことが起きてきます。
専門家が、このように片頭痛の慢性化を引き起こす要因として、「薬物乱用
頭痛」だけしか原因として挙げるだけで、これ以外の要因は一切不明とされま
す。このことは、片頭痛をミトコンドリアの機能障害による頭痛と考えないこ
とに、その根本的な誤りがあると考えなくてはなりません。
そして、これに関連して、「脳過敏」の要因は以下にあります。
”脳過敏”を引き起こす要因
1.ミトコンドリアの機能低下にマグネシウム不足
2.脳内セロトニンの低下
3.体の歪み(ストレートネック)の長期間の持続
この3つの要因が、片頭痛を慢性化させる要因にもなっているはずです。
冒頭で述べました、片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わ
らず、残りの3割が慢性化して増悪してくるということは、以下のように解釈
しなくてはなりません。
-2-
自然治癒した3割は、ホメオスターシス、すなわち”恒常性を維持するため
の「環境に対する適応力」により治癒したものです。
”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在
すれば、
「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、
症状が変わらない状態(発作がいつまでも繰り返される)が持続することにな
ります。
すなわち、脳内セロトニンの低下を引き起こす生活習慣があったり、必須脂
肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取バランスの悪い食生活があったり、腸内環境
を悪化させる要因が持続するような生活習慣が継続していることを意味してい
ます。これらがすべて揃っているということに他なりません。
この「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続された状態に、さらに
「ミトコンドリアの問題」、「脳内セロトニンの低下」、さらに「体の歪み(ス
トレートネック)」等々の脳過敏・慢性化の要因が加わることによって、2~
3割の方々が慢性化に至ってきます。
-3-
このように片頭痛は”未病”の段階にあり、緊張型頭痛を起点として、さ
まざまな生活習慣の問題点が重なることによって、
「いろいろな段階の片頭痛」
へと進行し、最終的に「慢性片頭痛」という難治な段階に至ることになります
ので、常に自分の生活習慣に気を配り、何か問題があれば、その都度改善に努
める必要があります。このように進行性疾患です。
このようにして対処しなければ、片頭痛は必然的に慢性化してくるというこ
とです。
1.ミトコンドリアの関与
マグネシウムの問題
私達の体を構成する細胞の中には、多数のミトコンドリアという小器官があ
ります。
ミトコンドリアは、ほとんどすべての生物(ヒト、動物、植物、菌類など)の
細胞に在り、酸素を取り込み、生き
る為に必要なエネルギーを作り出し
ていて、車のエンジンや発電所の発
電機のような働きをしています。
ミトコンドリアには、細胞内のカル
シウムイオン濃度を適正に調整する
作用があります。マグネシウムイオ
ンは細胞内小器官(ミトコンドリア)
の膜構造ならびに細胞膜構造において膜の安定性を保つ役割をしています。
マグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの好気的代謝異常をきたして、
神経細胞を興奮しやすくすることになります。
-4-
片頭痛では、ミトコンドリア代謝異常が生まれつき存在するために、ミトコ
ンドリアはマグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなること
になります。神経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果
あるいはミトコンドリアの代謝異常の結果として生じているものです。このよ
うにして、「脳過敏」が形成されることになります。
片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一
種である」ことが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、このことを示
すものです。
そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪
くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきま
す。マグネシウムは、日常生活を送る際にいろいろな原因で容易に不足してき
ます。このことは以前にも述べたことです。
活性酸素の問題
ミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に活性酸素が生み出されます。
活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまと、これらが原因で細胞
(ミトコンドリア)が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こしてしま
います。
ミトコンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活
-5-
性酸素の消去する機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸
素を消去する機能は低く過剰の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミト
コンドリアがさらに弱っていくという悪循環が始まります。
活性酸素は、「呼吸をする」、「食事をとる」、「運動をする」など、ごく普通
の生活をしているときに発生します。酸素を取り込み、エネルギーを作る過程
で必ず発生するからです。そのほか、白血球が細菌を殺傷するとき、生理活性
物質が作られるとき、有害物質(過酸
化脂質、残留農薬、食品添加物、抗が
ん剤、アルコール、タバコ、大気汚染
物質など)を解毒するとき、止まって
いた血液が再び流れ出すとき(再濯
流)、紫外線や電磁波(レントゲンな
ど)を受けたとき、強い精神的ストレ
スを受けたときなど、さまざまな要因
により発生します。
現在では、更に活性酸素を発生させる原因が増えています。
それが病気を治すために飲む薬や、空気中に存在する有害物質、食品添加物
や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質であり、放射線などです。これらの原
因は、昔にはなかったものです。この中には、頭痛の際に服用する市販の鎮痛
薬、病院で処方される鎮痛薬・エルゴタミン製剤・トリプタン製剤も当然のこ
ととして含まれています。
活性酸素をつくり出す原因がこれだけ増え、体の中には対抗する手段が充分
にはないとすると、私たちの体の中には、過剰な活性酸素が存在しているとい
うことになります。
生理活性物質の問題
脂質は細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造を構成します
-6-
細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造には食べた脂肪酸がそのまま使わ
れますので、どのような種類の脂肪酸を含む脂質を食べたかにより、膜構造の
状態が大きく異なり、ミトコンドリアの働きが左右されます。
脂肪酸は体を構成している約 60 兆個の細胞の膜と、細胞内のミトコンドリ
アなどの小器官の膜をつくる
のに使われています。体の働
きを行う酵素は、細胞膜の助
けを借りて働いています。ま
た細胞膜は物質輸送の場でも
あります。細胞膜には食べた
脂肪酸がそのまま使われます
ので、どのような種類の脂肪
酸を含む脂質を食べたかによ
り、細胞膜の状態が大きく異なり、細胞の働きが左右されます。
このように、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6の摂取比率が関与します。
睡眠不足の問題
睡眠は、日中の活動により活性酸素等で傷ついたミトコンドリアの修復は寝
ている間に行われるため、修復には睡眠が不可欠です。もし傷が大きければそ
れだけ長い睡眠が必要になります。このため睡眠不足は最大の敵です。
このように、ミトコンドリアの働きを悪化させる要因としては、
1.マグネシウムの不足
2.睡眠不足
-7-
3.有害物質・・活性酸素の問題
4.薬剤による影響
これらの要因で、ミトコンドリアの働きを悪くさせることが慢性化の要因に
なってきます。
2.「セロトニン神経系」の関与
セロトニン神経には、歩行、呼吸、咀嚼などの基本的
なリズム運動によって活性化されるという特性がありま
す。毎日の生活の中で、こうしたリズム運動を自然に繰
り返していれば、セロトニン神経は正常レベルに保たれ
ます。したがって、こうした運動を極端に抑えた生活を
継続することは、セロトニン神経の減弱を招きます。例
えば、以下のような生活習慣には要注意です。
日光を浴びることが少ない
朝は出かける直前まで寝ている
昼夜逆転生活になっている
固いものをあまり食べない
階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
30 分以上続けて歩くことができない
運動不足である
デスクワークが多い
朝食をとらない
ごはんやパンなどの炭水化物をあまり食べない
魚より肉をよく食べる
ダイエットのため食事制限をしている
-8-
また、加齢による身体機能の衰えも運動不足に繋がります。セロトニン神経
の活性には太陽の光も影響しますから、インドア指向の最近の子供たちの生活、
とくに連日、息をつめてゲームをやり続けるという習慣などは、セロトニン神
経が減弱しやすくなるのです。
“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれ
ば益々「脳内セロトニンが低下」することになります。さらに生活習慣の不規
則・ストレス・生理周期により「脳内セロトニンの低下」がさらに増強してく
ることになります。
疲れなどで、体に乳酸が蓄積して起きる”肩こり”なども脳内セロトニン不
足の原因になるということです。
セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
セロトニン神経が活性化されていると、鎮痛効果が現れます。
痛み自体がなくなるのではなく、セロトニン神経の活性化により痛みの感覚
をコントロールすることで、痛みを感じにくくなります。
反対にセロトニン神経が弱まると、ささいなことで体の痛みを感じるように
なります。
脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。またアロ
デイニアと関連しています。
このため、脳内セロトニン低下をもたらす原因が次々に追加されることによ
って、頭痛が慢性化してくることになります。
ストレスによる影響
疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき
基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ自律神経が乱れること
生理周期との関連
食事はバランスが大事で、偏食は「脳内セロトニン低下」の原因になります
-9-
運動不足
脳内セロトニンの低下は、「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあら
われ、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずか
な刺激にも敏感に反応してしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになりま
す。これが、脳過敏の原因になってきます。
3.体の歪み(ストレートネック)の関与
「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓
↓
↓
脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓
↓
↓
中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓
↓
↓
脳の過敏性、頭痛の慢性化
↓
自律神経失調症状
→
交感神経機能低下→頚性神経筋症候群
(慢性頭痛)
尾側亜核で三叉神経と頚神経が収束する
ストレートネックのために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を
刺激し、その刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳のなか
で、三叉・頚神経複合体を形成していて、つながっていますので、大後頭神経
の刺激は三叉神経にも伝わります。
首の筋肉のこりの刺激が、大後頭神経から三叉神経に絶えず刺激が送られ続
- 10 -
けます。このため、常時、脳の過敏性が高まった状態が継続していき、「痛み
の感じやすさ」が増強されることになります。
マグネシウム不足は、頸部筋肉群の緊張を増加させ、肩こりを悪化させます。
さらに、ストレートネックは、肩こりを持続させ、乳酸が蓄積されることに
より、脳内セロトニンの低下を引き起こすことになります。
以上にように、ストレートネックの持続は頭痛を慢性化させることになりま
す。
片頭痛の慢性化を考える場合、片頭痛では基本的にミトコンドリアの働きの
悪さがあります。これが基本となるものです。
こうしたことから、まず、エネルギー産生を円滑に行わせるためには、必要
最小限な栄養素、ビタミン、ミネラルの摂取が大切となります。
さらに、マグネシウムに対する配慮は極めて重要となります。
- 11 -
「脳内セロトニン」を増やすためには、さらにトリプトファンの摂取の仕方
が重要となってきます。
さらに、脂肪酸の摂取の仕方として、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6
の摂取比率が重要になってきます。
そして、生活習慣として、睡眠の問題がミトコンドリア、脳内セロトニンの
問題でも共通して挙げられ、早寝・早起きが原則です。そして、ストレス対策
を行うことです。このためには「セロトニン生活」の励行しかありません。
以上、専門家が、片頭痛がミトコンドリアの機能障害による頭痛と考えない
ために、片頭痛の慢性化は起こるべきして起きているとしか言えないようです。
- 12 -