月次県内経済

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概 況
横這い圏内ながら持ち直しの動き
〈4月〉生産面では大手・中堅造船は既往受注により概ね高めの操業を維持、重電機械も堅
調、電子部品は弱めの動きも。需要面では、公共工事請負金額は減少傾向も、新設住宅着工
戸数は持ち直し基調。個人消費では大型小売店販売額が前年を下回り、乗用車(登録車)販
売台数はプラスに。観光面は熊本地震の影響から主要施設の入場者数・宿泊者数とも前年割
れ。雇用面では有効求人倍率が1.13倍まで上昇、人手不足の状況続く。企業倒産件数は引き
続き低水準。5月入り後も生産、消費等底堅いものの、熊本地震による宿泊キャンセルなど
観光面への影響がみられる。
造 船
大手・中堅、地場中小とも高めの操業を維持
大手・中堅造船では、新造需要は市況を反映
して低調。生産面では客船やガス運搬船、省エ
ネ船など高付加価値船を中心に受注残を確保し
ていることもあり、高めの操業を維持している。
地場中小造船でも、既往の受注を背景に高め
の操業を続けているほか、更新需要もあって貨
物船や漁船、官庁船などの受注を確保している。
機 械
重電機械は堅調、電子部品は弱めの動きも
重電機械では、原動機(タービン、ボイラー、
エネルギー関連等)は新興国の需要を背景とし
た海外プラント関連に加え、国内でも一定の受
注を確保。電動機(大型、中小型モーター)
、
列車空調装置は受注持ち直しの傾向。
電子部品では、海外との競争など厳しい環境
のなか、一部最終製品需要の動向から、やや弱
めの動きもみられる。
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小売商況
概ね横這い圏内の動き
小売商況をみると、4月の県内大型小売店販売額は前年を下回る一方、乗用車総販売台数(軽
含む)が16カ月振りのプラス、サービス消費面の旅行取扱高も前年を上回った。なお、5月度の
大型店売上げについては、一部弱めの動きも比較的堅調に推移。
4月の大型小売店販売額(百貨店・スーパー36店、九州経済産業局調べ)は84億円、前年同月
比1.4%減(同一店舗比較)と前月に続きマイナス。品目別では、飲食料品が0.6%増となり、雑貨・
家庭用品等も0.3%の微減となったが、衣料品が6.7%減と低調。衣料品では、主力の婦人服等が
4.2%減、紳士服洋品1.8%減、身回り品17.9%減。このうち百貨店は、食品が催事効果などもあっ
て堅調も、主力の衣料品や身回り品、雑貨、家庭用品などは低調。一方、スーパー・大型店等で
は食料品が堅調ながら、衣料品等の動きは鈍く低調続く。なお、5月度は、百貨店・大型店等で
弱めの動きもみられるが、リニューアル効果もあって比較的堅調に推移。
乗用車販売では、4月の新規登録台数は1,417台、前年同月比15.2%減増と2カ月連続のプラス。
うち普通車は616台、同19.8%増、小型車も801台、同11.9%増と7カ月振りのプラス。一方、軽
乗用車は1,301台、同8.9%減(5月、20.5%減)
と大幅減が続く。また、軽を含む総販売台数で
は2,718台、2.3%増となり、16カ月振り前年を
上回った。
サービス消費面では、4月の県内主要旅行業
者の旅行取扱高が5.2%増と3カ月振りのプラ
ス。うち国内旅行は1.1%増、海外が14.7%増。
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水 産
取扱量、金額ともに増加
4月の県内3魚市と県漁連の取扱い状況をみると、取扱量は2.6万トン、前年同月比8.5%増と
なり、取扱金額も62億円、同9.7%増加した。
また、魚種別の水揚げ(日本遠洋旋網漁業協
同組合調べ)をみると、アジは数量が前年同月
比30.1%減少し、単価も18.2%下落したことか
ら、金額は42.8%減となった。一方、サバは数
量が30.5%減少し、単価が49.3%上昇、金額は
3.8%増加した。
観 光
主要施設の入場者数、宿泊客数ともに減少
4月の県内観光をみると、中旬に発生した熊本地震が影響し、主要観光施設の入場者数、主要
宿泊施設の宿泊客数ともに減少した。
主要観光施設等(13施設)の入場者は441千人、前年同月比11.9%減少した。地区別にみると、
県南地区の長崎市では、グラバー園(12.9%減)と長崎原爆資料館(24.0%減)が2桁減、長崎
歴史文化博物館(2.5%減)も前年を下回った。島原半島でも島原城(12.9%減)と雲仙岳災害記
念館(39.6%減)、雲仙仁田道(13.8%減)いずれも2桁減となった。また、県北地区をみると、
打ち上げ総数が2万発超の「春の九州一花火大会」を上旬に開催するなどしたハウステンボスが
減少、さらに九十九島パールシーリゾート(25.2%減)も減少するなか、前年同時期に行われた
耐震工事の完了から2カ月目となる平戸城(16.3%増)は増加した。離島地区では一支国博物館
(18.3%増)および万松院(12.8%増)が増加し、堂崎天主堂(9.0%減)は減少した。なお、3月
に開館6周年を迎えた一支国博物館は、来館者65万人を達成した。
県内主要宿泊施設(43社、日本銀行長崎支店
調べ)の宿泊客数は前年同月比17.8%減となっ
た。地区別をみても、県南地区が17.9%減、県
北地区も17.6%減少した。また、雲仙・小浜の
各観光協会の調べによると雲仙地区の宿泊客数
は17千人、前年同月比32.2%減少、小浜地区も
8千人、同7.5%減少した。
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公共工事
件数、請負金額とも増加
4月の県内公共工事(西日本建設業保証取扱分)をみると、請負件数は217件、前年同月比
93.8%増と5カ月振りの増加。請負金額は440億円、同2.1倍増と5カ月振りに前年を上回った。
主要発注者別の請負金額では、「国」
(4億円、55.7%減)と「市町」
(55億円、32.4%減)が前
年を下回ったものの、「県」(274億円、10.5倍増)が大幅増となった。
また、地区別の請負金額をみると、前年を上回ったのは、長崎地区(300億円、3.0倍増)
、島
原地区(31億円、6.0倍増)、対馬地区(11億円、57.2%増)、県北地区(9億円、4.8%増)など
7地区。一方、諫早地区(72億円、6.9%減)
、
田平地区(6億円、8.2%減)など3地区では
前年を下回った。
なお、同月の1億円以上の主な大型工事は、
長崎県発注の長崎県庁舎行政棟工事他(8件、
148億円)
、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援
機構発注の九州新幹線(西九州)
、久山トンネ
ル他(6件、93億円)など。
住宅建設
持ち直しの動き
4月の新設住宅着工戸数は619戸、前年同月比54.8%増と3カ月振りに前年を上回った。
利用区分別にみると、持家(206戸、4.6%増)、
貸家(303戸、96.8%増)、分譲(108戸<うち
マンションは89戸>、125.0%増)いずれも前
年を上回った。
主な市郡別(県建築課調べ)では、長崎市(251
戸、88.7%増)、佐世保市(126戸、40.0%増)、
大村市(111戸、94.7%増)などが大幅増となり、
諫早市(45戸、13.5%減)は前年割れ。
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雇 用
緩やかな改善傾向続く
4月の県内の有効求人倍率(季節調整済)は前月を0.02ポイント上回る1.13倍。また、全国の
有効求人倍率は前月を0.04ポイント上回る1.34倍となった。
新規求人数は10.4千人、前年同月比2.3%増となり、17カ月連続のプラスとなった。形態別では、
一般求人が7.8%増と12カ月連続のプラス、パート求人は5.0減となり、4カ月振りの減少。主な
業種別にみると、運輸業(20.6%増)、建設業(14.0%増)、飲食店、宿泊業(7.3%増)、サービ
ス業(6.9%増)などが増加し、卸売・小売業(11.4%減)、製造業(4.5%減)は前年を下回った。
一方、新規求職者数は8.3千人、前年同月比12.4減と2カ月連続の減少。形態別では、一般求職者
が13.3減、パート求職者が10.8%減となった。
また、有効求人数は27.7千人、前年同月比7.5増と16カ月連続のプラス、有効求職者数は26.9千人、
前年同月比9.6減と32カ月連続の減少。
就職件数については、2.9千件、前年同月比
19.4%減と2カ月振りの減少。また、雇用保険
受給者実人員は4.6千人、前年同月比9.1%減と
なり39カ月連続で減少した。
県内の雇用データをみると、緩やかな改善傾
向が続いている。
企業倒産
低水準続く
5月の県内の企業倒産件数(東京商工リサー
チ調べ)は前年同月と同じく4件。一方、負債
総額は前年同月比3.3倍増の7億円となった。
このうち負債金額が1億円以上の倒産は3件。
倒産件数を業種別にみると、小売業が2件、
製造業と卸売業がそれぞれ1件。また、倒産原
因は4件とも「販売不振」。
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