『 教育虐待・教育ネ グ レ ク ト 』 『 そ の 神 の 名 は ? 』

順一 院長・大学総合文化政策学部教授
『その神の名は?』
著者 :梅津
『教育虐待・教育ネグレクト』
著者 :古荘 純一 大学教育人間科学部教育学科教授 /
祐介 大学院教育人間科学研究科博士後期課程
る こ の 手 の「 栄 光 の 神 学 」 に 対 し 、
希望、称賛の中に神を 見 出 そ う と す
信仰があるかのように。豊かさ、力、
で出世のための必須ア イ テ ム と し て
などと一部で喧伝され て い る 。 ま る
「神を信じたことで 豊 か に な っ た 」
「ビジネスでの成功に も 聖 書 は 必 須 」
学」で傷ついた私たちを慰める。
書 の 随 所 で 見 え 隠 れ し、
「栄光の神
学」と述べた。まさにその神学が本
ルターは苦難と弱さの中にこそ神
はいると語り、それを「十字架の神
みを知っているということです。
」
る魂に神が現れてくださることの恵
人々と違うとすれば、それは砕けた
ません。…クリスチャンがその他の
もあてはまる。2011年の日本子
そこで起きていることは学校教育に
あ て ら れ た こ と ば だ っ た。 し か し、
もともと「教育虐待」ということ
ばは、親による過剰な教育に対して
そこにある問題に気づけない。
切さの方が大きすぎて、大人たちは
という事実よりも、
「行くこと」の大
子どもたちがどんな思いをしている
られている。そこで何が起きていて、
ちが行く必要のある場と一般に信じ
学校は、子どもたちに必要なこと
を適切に与える場であり、子どもた
るだろうか。まず気づき、考え始め
題提起に対して、私たちは何ができ
と親の姿が描かれている。本書の問
には、教育の中で苦悩している生徒
添ってこられた古荘先生は、私と同
それを正面から取り上げたのが古
荘先生である。長年、子どもに寄り
扱い)は、問題視されにくい。
けるマルトリートメント(不適切な
た。ことほど左様に、学校教育にお
部分のみをピックアップして報道し
光文社 2015年9月刊/800円+税
磯崎
著者は静かに対峙する 。
この手の説教集に度々見られる、上
からの断言口調は見当たらない。た
教文館 2016年3月刊行/1800円+税
「 も し も、 本 当 に 神 を 待 ち 望 む の
であれば、キリストに 出 会 い た い の
だ青山学院のサーバント・リーダー
なくてはならない。ないことにして
したが、メディアは親による虐待の
耐えねばなりません。 私 ど も の 存 在
ども虐待防止学会大会で、私はその
じ問題意識を持っておられた。本書
が、それこそ夢も希望 も な い 状 態 で
である著者からの厳選された言葉が、
はならない。
気づくための本である。
であれば、私どもは自 ら の 貧 し さ に
ある現実から目をそら し て は な ら な
ことをテーマにシンポジウムを企画
武蔵大学人文学部教授
低い場所から読者に贈られている。
き合うことほど、難しいものはあり
大学宗教主任・大学法学部教授
いのです。そうした現 実 と 静 か に 向
青山学報 256 Summer 2016
29
信子
評者:武田
直也
評者:塩谷