英国国民投票後、格付け会社はかく語る

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欧州
2016年6月27日
英国国民投票後、格付け会社はかく語る
英国の国民投票の結果は事前の大方の予想に反したため、先行きの不透明感が広がり、様々な憶測、分析が報道
されています。当レポートでは英国国民投票後の格付け会社の対応、コメントをベースに今後の展開を占います。
英国長期債格付け:ムーディーズは英国の
見通しを弱含み(ネガティブ)へ
英国の欧州連合(EU)離脱を問う国民投票でEU離脱の意思
が示されたことを受け、格付け会社ムーディーズ・インベス
ターズ・サービス(ムーディーズ)は2016年6月24日に英国の
長期発行体・債務格付けの見通しを「安定的」から「弱含み
(ネガティブ)」に引き下げました。格付けはAa1(AA+に相当)
としています(図表1参照)。
どこに注目すべきか:
EU離脱プロセス、財政収支、外貨準備高
格付け会社 格付け
最終変更
見通し
最終変更
ムーディーズ
Aa1
2013年2月22日 弱含み
2016年6月24日
S&P
AAA
2011年2月17日 弱含み
2015年6月12日
フィッチ
AA+
2013年4月19日 安定的
2013年4月19日
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:主な国の財政収支対GDP(国内総生産)比率
(時点:2014年末、数字のプラスは財政黒字、マイナスは財政赤字)
1.5
-3.9
-3.0
-4.1
米国
-5.6
英国
-6.2
日本
イタリア
2.0 %
0.0
-2.0
-4.0
-6.0
-8.0
フランス
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:主な格付け会社の英国長期国債格付け
(時点:2016年6月24日現在、自国通貨建て長期債格付け)
デンマーク
英国の国民投票の結果は事前の大方の予想に反したことも
あり、世界中の市場で変動性が上昇しました。先行きが不
透明なことから、様々な憶測、分析が報道されていますが、
当レポートでは英国国民投票後の格付け会社の対応、コメ
ントをベースに今後の展開を占います。
まず、直後にアクションを起こしたのはムーディーズです。英
国の格付け見通しを24日に早速、弱含み(中長期的に格下
げの可能性を示唆)としました。ムーディーズが見通しを引き
下げた主な理由は、英国が今後EUからの離脱のプロセスに
おいて経済や貿易の協定を結ぶのに長い期間を要すること
が想定されることで、経済成長への下押し圧力になることが
懸念されます。例えば、ムーディーズは英国の経済成長見
通しを2016年は1.3%(前回は1.8%)、2017年は1.1%(前回は
2.1%)とそれぞれ引き下げています。
英国の財政状況は先進国の中でも悪いと見られています。
例えば、財政収支対GDP(国内総生産)比率を比べると英国
の財政赤字は大きく(図表2参照)、経済成長の低下見通し
は財政状況の更なる悪化も懸念されます。ただし英国がEU
離脱後、EUへの拠出金が無くなれば財政にプラスの要因と
なる面もあります。それでも経済とトータルで考えるとマイナ
ス要因と見るのはムーディーズだけでなく他社も同様です。
次に、スタンダード&プアーズ(S&P)はアクションは取ってい
ませんが、4月に見通しを弱含みで据え置く旨を発表してい
ます。その中でS&Pは英国の財政状況に加え離脱により経常
赤字の拡大と英国ポンドの外貨準備高としての地位低下を懸
念しています。特に、外貨準備高はS&Pが英国をAAAで据え
置いている一つの要因とも指摘しています。国民投票後、
S&Pがインタビュー等で英国のAAA維持に懸念を示唆してい
るのはこのような事情によると見られます。
フィッチ・レーティングス(フィッチ)は国民投票後に短い声明を
公表、離脱による信用力の悪化を示唆しています。
格付け会社は離脱プロセスによる経済成長への影響を現段
階では格付けに対し比較的穏やかなマイナス要因と見ている
印象です。ただし今後の交渉が想定以上に難航、英国の貿
易コストが上昇するようなケースでは、格付けへの懸念をさら
に強める可能性もあり、交渉の行方に注視が必要です。
出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的と
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