平成28年度事業計画 Ⅰ.調査研究

平成28年度事業計画
当研究所は、我が国における社会資本整備及び建設産業に関して理論的かつ実証
的な調査研究を行い、安全で快適な国土の形成と建設産業の振興に貢献することを
目的とする研究機関です。
我が国の経済は、日本銀行が初めて「マイナス金利」を導入しましたが、アメリ
カ金融正常化の影響、中国をはじめとした世界経済の先行きへの不透明感、原油価
格下落による産油国への影響等の懸念はあるものの、経済の好循環が進展するなか
で、堅調な民間需要に支えられ、景気は緩やかな回復基調が続くものと見込まれて
います。
このような経済環境のもと、政府建設投資は補正予算の減少や東日本大震災から
の復興における「集中復興期間」から「復興・創生期間」への移行もあり、2年連
続で減少すると予測されるものの、民間建設投資が引き続き緩やかな回復基調にあ
ることから、建設投資は今後も堅調に推移していくことが見込まれております。
建設市場が回復基調にあるなか、建設業界では、建設技能労働者の大量離職時代
の到来を控え、担い手不足への懸念が急速に高まってきています。建設産業が将来
にわたり国民の信頼に応えられる産業であり続けるためには、人口減少・高齢化進
展に伴う労働力人口減少社会においても、その生産体制を維持・向上させていくこ
とが求められます。既に、本格的な取り組みが始まっている担い手の確保・育成に
おいては、何よりも、安心して入職できる就業環境の整備が求められています。一
方で、生産性向上への取り組みとともに、安心して建設技能労働者の確保・育成に
取り組める環境整備も求められています。
平成28年度においては、このような基本的な認識のもと、実態をしっかり踏ま
え、将来を展望した調査研究活動を行ってまいります。
Ⅰ.調査研究
1.経済と建設投資に関する調査研究
(1)日本経済と今後の建設投資動向
政府建設投資は2年連続して減少するものと予測されるものの、民間
建設投資は引き続き緩やかな回復が見込まれ、建設投資額は今後も堅調
に推移していくことが予測されているなかで、今後の建設投資見通しに
ついて分析・予測を行う。
また、建設経済モデルをベースとした地域ブロック別の建設投資額を
推計するとともに、必要に応じて推計手法を検証し見直しを実施する。
(2)建設投資の中長期予測
現在の建設市場は2010年度を底に回復基調で推移しているものの、
建設業界の健全な発展に向けて、将来を見通すことが出来る環境整備と
して求められる中長期的な建設市場規模を予測する。
(3)社会資本のストック効果
厳しい財政制約のもと、社会資本の整備にあたっては、安全・安心の
確保を前提としつつ、国・地域の経済再生に資するストック効果の高い
事業への重点的な投資が求められることから、社会資本のストック効果
について、把握・評価対象となるストック効果の考え方や評価手法、
「見える化」の手法等について調査研究を行う。
2.建設産業に関する調査研究
(1)建設業における構造的課題
建設技能労働者の確保・育成についての調査研究を継続して実施する
とともに、建設業における重層構造の改善等に向けた施策等について調
査研究を行う。
(2)建設産業における生産性の向上
建設技能労働者の大量離職により、今後10年以内に建設業を支える
人材が質的にも量的にも不足することが予想されることから、企業の経
営環境改善、建設現場に携わる人材の賃金水準の向上と安全性確保の観
点から求められる生産性向上への取り組みについての調査研究を行う。
(3)建設企業の今後の事業展開
建築分野での省エネルギー対策が求められる環境下、温暖化対策を踏
まえた住宅・建築物の市場の動向や建設企業・住宅メーカーにおける事
業戦略、政府による支援策等について調査研究を行う。
(4)建設業の経営財務分析、資金動向
建設業の経営財務指標等の分析を行うとともに、金融機関の建設業へ
の貸出動向、建設業の資金繰り動向等について調査研究を行う。
3.海外の建設市場及び建設業の海外展開等に関する調査研究
(1)建設企業の海外展開戦略
アセアン経済共同体の発足により実現した域内貿易自由化の動きを踏
まえた日系企業の取り組みと今後の展望について調査研究を行う。
また、専門工事業を中心とする中堅・中小建設企業の海外進出の事例
や課題、政府による海外展開支援策等について調査研究を行う。
(2)海外の建設市場の現状と動向
諸外国の社会資本整備投資、建設市場等の現状と動向等について調査、
資料収集を行う。
4.定期的な調査研究
(1)建設経済予測(四半期建設投資見通し)
建設経済モデルを使用し、当面の建設投資について、政府建設投資、
民間住宅投資、民間非住宅建設投資(非住宅建築投資・土木投資)の分
野別に、その規模、伸び率等を予測する建設経済予測を四半期ごとに行
う。
(2)主要建設会社の決算分析
建設業の経営状況を明らかにするため、全国的に事業展開している主
要建設会社の決算分析を行う。
Ⅱ.その他の事業
1.報告会の開催
当研究所の調査研究内容を一般に周知し意見交換するため、「建設経済
レポート」報告会を開催する。
2.講演会の開催
社会資本整備や建設産業に関して、一般を対象とした講演会を開催する。
3.研究会等の開催
国土政策、建設経済の動向等に関し、関係機関・関連業界の担当者、有
識者等との研究会等を定期的及び随時に開催し意見交換を行う。
4.海外との交流
(1)アジアコンストラクト会議
アジアコンストラクト会議を主催し、アジア地域の経済動向、社会資
本整備と建設産業の状況等について意見交換し、国際交流を促進する。
(2)日韓建設経済ワークショップ
韓国の国土研究院及び建設産業研究院と日韓建設経済ワークショップ
を行い、経済動向や社会資本整備、建設産業の状況等について意見交換
を行う。
5.調査研究資料の公表・配布
「建設経済レポート」(年2回)、「建設経済予測」(年4回)、「主
要建設会社決算分析」(年2回)、並びに「研究所だより」(毎月)を発
行、ホームページにも掲載する。
その他の調査研究資料についても随時公表し、社会資本整備及び建設産
業についての情報提供及び政策提言を行う。
以上