(審査評) [PDFファイル/221KB]

審 査 評
◆ 日 本 画
今年は昨年に比べて,出品数が少し減りました。レベル的に見てみると感動する様な作品が少なかった様に
思います。そんな中で優秀賞の作品は,斬新な視点で描かれており,目をひきました。初めてのふくやま美術
館奨励賞の作品は,生活感の漂う空間がうまく表現されておりました。おしくも選外になられた方々も,今一
歩のところですから更に御精進下さい。
◆ 洋
画
今年度の応募点数210点。入賞・入選厳正に審査をさせて頂きました。優秀賞に山口幸弘さん『相生通り』
水彩絵の具の特性を熟知した作品。今年度より新設された,ふくやま美術館奨励賞に川本雅之さん『恋の闇路』
モノクロームの画面構成に好感のもてる版画作品。賞に輝いた作品はいずれも絵画としての一つの基準,感性
と描写力・色彩・フォルム・構成を満たしたものが選ばれました。審査後全体的に感じたことは,自己の作品
を見つめ,新しく生み出す努力の必要性を感じました。受賞者・入選者共に今後の作品に期待をするとともに,
惜しくも選外となられた方々の今後の精進を期待いたします。
◆ 彫
刻
本年度もレベルの高い作品が多く見受けられました。優秀賞の山根冨嗣さんの「潮風のメロディー」は木彫
りでさわやかな女性像が表現されています。ふくやま美術館奨励賞の小野青次さんの「座16」は難しいポー
ズを構成力で魅力的な作品に仕上げています。努力賞の今川百恵さんの「偲ぶ」は豊かな表現力で好感のもて
る作品です。受賞者・入選者ともに今後の作品に期待すると同時に,惜しくも選外になられた方々の今後の精
進を期待します。
◆ 美術工芸
作品は,素材のタテ軸と,創造作の横軸の交わりの調和の結果と考えて審査をさせて頂きました。縦軸の下
位から上への変化は,工芸の歴史を見れば明らかになっているからです。受賞作の作品は,交差した軸点がい
ずれも高位に位置していると判断致しました。いずれにしても,入選作品は全てよく出来ていて,審査に大変
苦労致しました。
◆ 書・漢字
出品点数が少し減少しました。残念です。作品のレベルは,今まで以上に向上し入選,選外の決定には苦労
しました。作品の主流は,多字数の行草体ですが,隷書・調和体もあり形式も様々で,楽しい展示になると思
います。入賞作品は古典を基に造形も美しく,練度の高い作品が選ばれました。惜しくも選外になられた方々,
今後の精進を期待し,より多くの出品があることを願っております。
◆ 書・仮名
減少を心配していましたが,昨年より一点の増加で,一点でも増えたことは嬉しいことです。作品は小字が
大半を占め,古典に根ざしたレベルの高い作品が多かった様に思います。墨色の景色とチラシのバランスのよ
い作品が入選し,更に料紙との表現がピッタリときた品位の高いものが入賞となりました。数少ない大字の中
でも線の錬度が高く明るい作品が入賞・入選となりました。大字は入落の差がはっきりしていた様に思います。
調和体の作品もわずかですが見られました。今後更に幅広い表現の応募と増加を願いたいところです。
◆ 書・前衛
昨年より,随分応募点数が増え大変うれしく思っております。作品はそれぞれバラエティーに富み,線の強
さを強調したもの,余白の美しさを強調したもの,それぞれの個性を生かしてありました。その中でも入賞,
入選した作品は輝き,響きがあります。それは,造形の美はもちろん,鍛えられた線の美,それが作品の命で
す。どうか次回も素晴らしい作品を期待致します。
◆ 写
真
年々応募作品の内容・表現ともにレベルが向上し大変喜ばしく思っています。しかし,全般的に今まで見た
ことのある様な類型的な写真が多く,もっとクリエーティブで個性的な作品に挑戦してほしいものです。撮影
の時間帯,アングルなど一工夫するだけでもアート性が増すと思います。優秀賞の山口輝久さんの「盆網曳き」
は筑後市で8月14日に開かれる奇祭でのスナップでしょう。地区の小学生たちが全身ススを塗り腰にはワラ
ミノ頭には角に見たてた縄を巻いて地獄の釜番である鬼に扮し地区内を練り歩くめずらしい行事,二人の少年
をズバリ,アップで切り取ったところがこの写真の魅力です。ふくやま美術館奨励賞山上伸夫さんの「脱出」
は神秘的な世界を見事に醸し出しています。
◆ デザイン
今年もデザイン部門の作品は学生が多く若々しい作品ばかりです。審査にあたりデザイン作品の基本として,
視覚,伝達が的確に表現されているか否かを重点におき一点一点作者の気持ちになり,入落を選びました。技
術的には,もう少し努力して欲しい作品もありました。デザイン作品は作者の主張も必要ですが,イメージば
かりふくらんでも,それを作品に仕上げる構成力も不可欠です。同時に個性も大切です。密度の高い作品はそ
れらを超越してこそ仕上がると思います。来年も力作を期待しております。