厚生労働省 Press Release 熊本労働局 熊本労働局発表 (局 長 : 德 田 剛 ) 平 成 28 年 6 月 20 日 報道関係者 【照会先】 熊本労働局雇用環境・均等室 室 長 松永 涼子 室 長 補 佐 平島 輝代 労 働 紛 争調 整 官 清水 公雄 (電話) (096)352-3865 各位 平成 27 年度個別労働紛争解決制度の運用状況について -いじめ・嫌がらせ、自己都合退職の労働相談件数増加- 熊 本 労 働 局 で は 、 平 成 27 年 度 ( 平 成 27 年 4 月 ~ 平 成 28 年 3 月 ) の個別労働紛争解決制度の運用状況を取りまとめました。 概要は、次のとおりです。 1 総合労働相談等の状況 (1) 相談等件数 〔第1図(2頁)、第3図(4頁)〕 ・総合労働相談件数 9,188件 (前年度比 0.1%増) ・民事上の個別労働紛争相談件数 3,062件 ( 同 0.8%減) 162件 ( 同 27.4%減) 同 6.1%増) ・助言・指導申出受付件数 ・あっせん申請受理件数 52件 ( (2) 総合労働相談件数は前年度より若干増加し、8 年連続で 9,000 件を超え依 然として高い水準で推移している。〔第 1 図(2 頁)〕 2 民事上の個別労働紛争に係る相談内容の傾向 総合労働相談件数が前年度より増加している中、個別労働紛争相談件数は、 減少しているが、『いじめ・嫌がらせ』、『自己都合退職』に関する相談件 数は3年連続で増加し、『いじめ・嫌がらせ』と『自己都合退職』に関する相 談で全体の32.8%を占めた。〔第3図(4頁)〕 3 迅速な処理を実現 助言・指導は1か月以内に100%、あっせんは2か月以内に96.2%が手続きを 終了しており、個別労働紛争解決制度の『簡易・迅速・無料』という制度の 特徴を活かした運用を行っている。〔第1表、第2表(8頁)〕 ※「いじめ・嫌がらせ」には、職場のパワーハラスメントに関するものを含みます。 -1- 1 総合労働相談の状況 (1) 総合労働相談件数について〔第 1 図〕 熊本労働局では、労働問題に関する相談に対応するために、熊本、八 代、玉名、人吉、天草、菊池の各労働基準監督署及び熊本労働局に総合 労働相談コーナーを設置している。 平成 27 年度に寄せられた相談件数は、 ・ 総合労働相談件数 (注 1) 9,188 件 ・ 民事上の個別労働紛争件数 (注 2) 3,062 件 であった。 前年度と比べて、総合労働相談件数は、11 件増加(前年度比 0.1%増)し、 民事上の個別労働紛争相談件数は、26 件減少(前年度比 0.8%減)した。 (注1) 熊本労働局、県内各労働基準監督署に、あらゆる労働問題に関する相談にワ ンストップで対応するための総合労働相談コーナーを設置し、受理した労働 相談件数。 (注2) 労働条件その他労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主と の間の紛争(労働基準法等の違反に関するものを除く)。 -2- (2)民事上の個別労働紛争相談の内訳について〔第 2 図・第 3 図〕 平成 27 年度の民事上の個別労働紛争件数(3,062 件)の内訳では、延べ 相談件数 4,149 件 (注1)(前年度 4,247 件)のうち、 「いじめ・嫌がらせ」 が 749 件(全体に占める割合:18.1%)と前年度の 734 件と比べ 15 件(2.0% 増)と件数、割合が 6 年連続の増加となった。 また、 「その他の労働条件」 (注2)1,913 件の内に占める「自己都合退職」 610 件(全体に占める割合:14.7%)は前年度の 507 件と比べ 103 件(20.3% 増)となり、2 年連続 100 件以上、20.0%以上の大幅な増加となった。 平成 27 年度の延べ相談件数が前年度から 58 件(前年度比 1.4%減)減 少したにもかかわらず、「いじめ・嫌がらせ」、「自己都合退職」の割合は 顕著な増加が認められる。 (注1) 個別紛争相談件数は 3,062 件であるが、1件の相談で複数項目の相談が あるため、延べ相談件数は 4,149 件となる。 (注2) 「その他の労働条件」は、 「自己都合退職」、「昇給・昇格」、「懲戒処分」、 「その他の労働条件」の合計である。 第2図 民事上の個別労働紛争相談の内訳 その他 いじめ・嫌がらせ 13.8% 12.6% 14.5% 14.0% 13.1% 9.3% 1.1% 1.2% 11.3% 0.4% 0.9% 14.8% 17.4% 18.1% 0.6% 0.7% 0.6% 0.6% 0.4% 0.9% 43.6% 1.5% 2.1%0.5% 6.0% 9.4% 11.5% 23年度 雇用管理等 募集・採用 育児・介護休業等 その他の労働条件 雇止め 48.9% 44.3% 44.4% 46.1% 採用内定取消 出向・配置転換 退職勧奨 1.9% 0.3% 2.6% 5.7% 6.6% 2.2% 2.0% 0.5% 6.2% 8.8% 8.5% 24年度 25年度 5.7% 2.0% 0.5% 2.7% 6.2% 5.4% 6.2% 26年度 -3- 1.9% 0.5% 2.2% 4.7% 6.2% 6.0% 27年度 労働条件の引下げ 解雇 第3図 最近3か年度の主な紛争の動向 (民事上の個別労働紛争に係る相談件数) 25年度 26年度 27年度 324 260 247 (-11.7%) (-19.8%) (-5.0%) 567 734 749 (+20.4%) (+29.5%) (+2.0%) 407 507 610 (+10.3%) (+24.6%) (+20.3%) 218 228 257 (-20.4%) (+4.6%) (+12.7%) 解雇 いじめ・嫌がらせ 自己都合退職 労働条件の引下げ 2,810 民事上の個別労働紛争 に係る相談件数合計 3,088 3,062 (-11.5%) (+9.9%) (-0.8%) 3,827 民事上の個別労働紛争 に係る延べ相談件数合計 4,207 4,149 (-7.9%) (+9.9%) (-1.4%) ※1 ( )内は対前年度比 ※2 自己都合退職は、その他の労働条件の内数 800 734 749 700 610 600 500 507 567 解雇 いじめ・嫌がらせ 自己都合退職 労働条件の引下げ 407 400 件数 300 200 324 218 260 228 25年度 26年度 247 257 100 0 27年度 -4- 2 助言・指導及び紛争調整委員会について (1)運用件数について〔第 4 図〕 相談によっても、紛争の自主的解決に至らなかった事案については、労 使間の民事上の個別労働紛争の解決を図るため、 ① 労働局長による助言・指導 ② 紛争調整委員会によるあっせん を運用しており、これらの平成 27 年度の件数は、 ・助言・指導申出受付件数 162 件 ・あっせん申請件数 52 件 であった。 前年度と比べて、助言・指導申出受付件数は 61 件(前年度比 27.4%減) 大 幅に減少し、あっせん申請件数は 3 件増加(前年度比 6.1%増)した。 第4図 助言・指導申出受付件数及び あっせん申請受理件数の推移 250 223 助言・指導申出件数 あっせん申請受理件数 200 162 156 150 109 110 100 73 50 0 54 23年度 49 49 24年度 25年度 26年度 52 27年度 【紛争調整委員会のあっせんとは】 弁護士、社会保険労務士等の労働問題の専門家である学識経験者により組 織された委員会であり、熊本労働局内に設置されている。 この紛争 調整委員会の委員(計 6 名 )のうちから指名されたあっせん委員 が、紛争解決に向けてあっせんを実施するものである。 -5- (2)助言・指導の申出内容について〔第 5 図〕 平成 27 年度の助言・指導申出内容の内訳は、「その他の労働条件」が 37.7%と最も多く、「解雇」、「その他」 がそれぞれ 17.9%と続いている。 前年度と比べて「解雇」、 「その他」がそれぞれ 3.6 ポイント増加し、 「い じめ・嫌がらせ」が 2.3 ポイント増加した。一方、「退職勧奨」が 6.8 ポ イント、「その他の労働条件」が 3.6 ポイント減少した。 (注)「その他の労働条件」は、「自己都合退職」、「昇給・昇格」、「懲戒処分」、「そ の他の労働条件」の合計である。 第5図 助言・指導申出内容の内訳 その他 23.7% 5.1% 1.3% 35.9% 27.3% 10.0% 0.9% 35.5% 1.9% 8.3% 2.7% 10.9% 3.6% 8.2% 9.6% 8.2% 23年度 24年度 14.3% 22.0% 6.3% 0.4% 11.9% 0.9% 41.3% 17.9% 8.6% 0.6% 雇用管理等 募集・採用 その他の労働条件 37.7% 33.9% 雇止め 採用内定取消 3.1% 3.7% 13.0% 3.7% 2.8% 5.4% 19.3% 25年度 いじめ・嫌がらせ 14.3% 26年度 -6- 2.5% 1.9% 6.2% 3.7% 出向・配置転換 退職勧奨 労働条件の引下げ 17.9% 27年度 解雇 (3)あっせんの申請内容について〔第 6 図〕 平成 27 年度のあっせん申請内容の内訳は、「いじめ・嫌がらせ」に関す るものが 34.6%と最も多く、「解雇」に関するものが 19.2%、「雇止め」 に関するものが 11.5%と続いている。 「いじめ・嫌がらせ」が前年度と比べて割合が 4.2 ポイント減少してい るものの全体の約 3 分の 1 と大きな割合を占めている。 第6図 7.4% 6.1% あっせん申請内容の内訳 6.8% 2.0% その他 7.7% いじめ・嫌がらせ 24.1% 13.0% 1.9% 1.9% 3.7% 3.7% 7.4% 37.0% 23年度 22.4% 34.2% 2.0% 6.1% 32.7% 24年度 34.6% 雇用管理等 その他の労働条件 18.4% 12.2% 38.8% 13.7% 4.1% 1.4% 9.6% 1.4% 4.1% 16.3% 雇止め 11.5% 採用内定取消 10.2% 5.8% 2.0% 8.2% 3.8% 5.8% 16.3% 19.2% 28.8% 25年度 1.9% 7.7% 26年度 -7- 27年度 出向・配置転換 退職勧奨 労働条件の引下げ 解雇 (4)受理後の状況について ① 助言・指導について〔第 1 表〕 助言・指導申出を受け付けた事案の処理状況をみると、平成 27 年度に 手続きを終了したものは、160 件であった。 このうち、160 件(100.0%)について助言・指導を実施し、解決したも のは 105 件(65.6%)となっている。 平成 27 年度中に実施した助言・指導の終了までの期間は、1か月以内 は 160 件と、全てが1か月以内で終了している。 第1表 助言・指導の手続き終了までの期間 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 各年度中の 157 110 100 219 160 終了件数 解決件数 122 90 62 167 105 解決割合 77.7% 81.8% 62.0% 76.3% 65.6% 1 か月以内 157 110 100 219 160 の終了件数 1 か月以内 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% の終了割合 (注) 年度中の終了件数のため、年度内の申出件数とは異なる。 ② あっせんについて〔第 2 表〕 あっせん申請を受理した事案の処理状況をみると、平成 27 年度に手続 きを終了したものは、52 件であった。 平成 27 年度中に実施したあっせんの終了までの期間は、1 か月以内が 34 件、2 か月以内までが 50 件と、2 か月以内に終了したものが 96.2%で あった。 第2表 あっせんの手続き終了までの期間 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 各年度中の 57 47 61 45 52 終了件数 1か月以内 39 40 42 30 34 終了件数 1か月以内 68.4% 85.1% 68.9% 66.7% 65.4% の終了割合 2か月以内 55 45 60 42 50 の終了件数 2か月以内 96.5% 95.7% 98.4% 93.3% 96.2% の終了割合 (注) 年度中の終了件数のため、年度内の受理件数とは異なる。 -8- 【別添資料】 別添1 平成27年度の助言・指導の事例 別添2 平成27年度のあっせんの事例 別添3 個別労働紛争の解決システム -9- 平成 27 年度の助言・指導の事例 別添1 事例1: いじめ・嫌がらせに係るもの 申出人は、店長からのいじめ・嫌がらせを受けていた。特に暴言 は酷く、仕事中に怒鳴り散らされるため怯えながら仕事を続けてい 事案の概要 た。睡眠障害を患い夫に相談し、社長に相談したが取り合ってもら えなかった。 店長の暴言等、いじめ・嫌がらせのない職場環境への改善を求めて 助言を申し出たもの。 事業主に対し、労働契約法第5条に基づき安全配慮義務があるた 助言・指導の ポイント・結果 め、職場環境の改善について助言をしたところ、申出人の夫からも同 様の連絡を受けていた事業主が店長から事情を確認し、職場環境の改 善対策を講じることになった。 事例2:自己都合退職に係るもの 申出人は、4年間正社員として勤務したが、うつ病となり医師の診 断を受け休職していた。1か月後に退職する旨の退職届を提出した が、「来期の人員に入っているため、退職は困る。」と慰留された。 事案の概要 また、医師の診断書を添えて傷病手当金の請求をしたが、手続き中 との回答で傷病手当金が入金されない。 退職の引き延ばしを行わないこと、傷病手当金の手続きについて助 言・指導を申し出たもの。 事業主に対し、申出人が就業規則に沿って1か月以上前に退職届を 提出していること、民法627条の解約の申し入れの説明を行い、速 助言・指導の ポイント・結果 やかな退職を望んでいるため配慮を頂きたいこと及び傷病手当金の 手続きも早急に行うよう助言をした。 助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、退職が認められ た。また、傷病手当金の手続きについても、手続きを行う旨の説明を 受け解決に至った。 - 10 - 別添2 平成 27 年度のあっせんの事例 事例1: いじめ・嫌がらせに係るもの 申請人はアルバイトとして入社、その2か月後に入社した後輩か ら申請人の退職を執拗に迫る嫌がらせを受け、管理職に相談したが 対応をしてくれなかったため、精神疾患を患った。 申請人は、後輩が近づくと手の震え等の身体的不調が出るように 事案の概要 なり対応を求めたが、逆に後輩の席が申請者の面前になり、席を外 したところ「戻って仕事をしろ」と圧力をかけられ、仕事を増やさ れた。その後解雇通告、在籍の延期、離職票に重責解雇との記載等 退職に係るショックが重なり病状が悪化し現在も治療中。 精神的・経済的損害に対する補償金として、給料の3か月分相当 の47万円の支払いを求めたもの。 あっせん委員が双方の主張を聴き、双方の主張に隔たりはあった あっせんの が、あっせん委員が歩み寄りを求めた結果、被申請人が解雇予告手 ポイント・結果 当及び付加金相当として、解決金32万円を支払うことで合意し、 解決した。 事例2:解雇に係るもの 申請人は正社員として入社したが、入社2か月後から「社風に合 わない」として退職勧奨を受けた。退職勧奨を拒否すると、「試用 期間満了で本採用を拒否する。」と解雇通告された。 本採用拒否の通知書には虚偽の事実の記載や、掲げられた理由で 事案の概要 は会社の違法行為による精神的苦痛から発生したものもあり、解雇 される程度のものではなく、不当解雇と主張。 申請人は復職を希望するとともに、精神的損害に対する補償金と して30万円の支払いを求めた。復職が認められないのであれば、 精神的・経済的損害の補償金として130万円以上の支払いを求め たもの。 あっせん委員が双方の主張を聴き、双方の主張に隔たりはあった あっせんの ものの、当事者間の調整をしたところ、申請者の復職は認められな ポイント・結果 かったものの、離職理由については解雇ではなく合意解約とするこ と、及び解決金として70万円を支払うことで合意し、解決した。 - 11 - 別添3 個別労働紛争の解決システム 企 業 労働者 事業主 紛争 自主的解決 都道府県労働局 連携 総合労働相談コーナー 労働問題に関する相談、情報提供のワンストップサービス 都 道 府 県 (労 政 主管事務所、労 紛争解決援助の対象とすべき事案 働 委 員 会 等 )、 法テラス、労使 団体における 紛争調整委員会 あっせん委員(学識経 験者)によるあっせ 都道府県労働局長 による助言・指導 ん・あっせん案の提示 労働基準監督署、公共職業安定所、雇用環境・均等室 法違反に対する指導・監督など - 12 - 相談窓口
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