高橋陽一郎「漸近挙動入門:太鼓の形を聴くために」(日本評論社, 2002

高橋陽一郎「漸近挙動入門:太鼓の形を聴くために」
(日本評論社,2002 年)
担当:坂井 哲(北海道大学)
テキストの内容 解析学の神髄は,恒等的には振る舞いの分からない関数を
不等式などを使い倒して評価し,理解することである.とくに「無限の彼方
でどのように振舞うか? そして,その振る舞い方は何によって決まるか?」
という問いは,解析学しいては数学の範疇に留まらず,非常に重要な問題で
ある.
本テキストでは,グラフ上のサイクル数の数え上げ(第 1 章)から始ま
り,ランダムウォークの再帰性の問題(第 2,3 章),ラプラス方程式の境界
値問題と固有関数展開(第 4,5 章),固有値の増大の仕方と領域の幾何学的
性質の関係(第 6,8 章)を学ぶ.これらの興味深いを内容を通じて,解析学
の真髄を体感できるのが良い.本テキストのスタイルは,
「やさしいことはて
いねいに詳しく解説し,むずかしいことについては(証明などにはこだわら
ずに)その雰囲気を紹介する」である.したがって,一通り読むことを何度
も繰り返して理解の深度を下げていく,といった読書に向いている.学生諸
君には,合同セミナー前に最低でも 1 回(浅い読み方で結構)通して読んで
おいて欲しい.
果たして,我々は太鼓の「形」を聴くことができるであろうか….
セミナーの進め方 目標は「2 日間で第 1 章から第 6 章まで読破すること」で
ある.1 日目は第 1 章から第 3 章まで(総ページ数 60),2 日目は第 4 章から
第 6 章まで(総ページ数 47)読む積りでいると丁度良い.各自事前に 1 回は
通して読んできていることを前提に,それぞれ分担して黒板(或いは白板?)
で発表してもらう.余力があったら,その先(第 7 章から第 9 章,とくに第
8 章)もカバーしよう.