組織の活性化と個人の活性化

組織の活性化と個人の活性化
組織の活性化の必要性
組織の活性化に関しては、従来行われている手法として、ファミリートレーニング(FT)
や組織開発(OD)がある。これらの手法の本質は、組織の構成員、特に下位構成員のモチベ
ーションを向上させることにある。
ここで大切なことは、本来組織というものは、不安定ということである。例えば、物を
作る会社で考えてみよう。
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その物は、本当に需要があるのだろうか?
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現在ある需要は、そのまま継続してあるのだろうか?
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会社の物づくりの能力は、維持できるのだろうか?
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設備はどこまで持つだろうか?
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資材の供給は大丈夫だろうか?
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社員個人の技量に依存しているなら、彼(彼女)は継続して勤めるだろうか?
このように常に危機意識を持つべきであり、このリスクを考えたうえで組織の維持発展
を考えるのが、本来の経営者であり、経営者から委嘱を受けた管理職の仕事である。
一方、組織構成員にも、自由にさせても以下のような不安と不満がある。
何をどうしたらよいのだ?
秩序もないのか?
不満
処遇の不満
生存できない
評価されていない
納得していない
ルールが納得できない
自分の意見を反映しない
作業の意味が解らない
不安
雇用は安定?
生活できる?
私の存在価値は?
成長できる?
図 1 不安定要因
不安定さに対する方策
このような不安定さを除去するために、まず組織の秩序を維持する方策がある。この方
策は大きく分けて、マニュアルなど規則で縛る形と、適宜リーダー役に任せる形である。
また、組織構成員の納得の状況でも、完全な上下の分離と、全員参加的な組織に分かれる。
これで分類すると下図 2 のようになる。
構成員の参加意識
全員の
納得
部下に
強制
信頼されている
カリスマ支配
全員参加型の納
得した規則制度
威張るだけ上司
マニュアル支配
自分たちが作り
改正できる固有
法と天下りの継
受法の違い
文章などの記述
個人の支配
制度の支配
図 2 組織の違い
一方、組織構成員相互の関係も、バラバラの場合と相互の連帯のある場合では、トラブ
ル対応のサポート能力や、個々人の意識づけで大きく異なってくる。
上司の言うとおりのバラバラの駒
自主的に協力し合うチーム
困ったときの支援
言われたことだけ行う
図 3 チャレンジする風土には相互支援が必要
リーダーに要求されること
もう一つ大切なことは、管理者が個々人を多面的にみることである。
図 4 に示す、マズローの欲求階層図は、一つの考えであり、これだけで全てというもの
ではない。しかし、個人の動機付けには、生存のための金銭取得から、自己の理想の実現
というレベルまで、色々な側面があることは、組織の円滑な運営のために考慮すべき事項
である。特に所属への愛着や承認を求める欲求は、給与等に関しても色々な解釈を与える。
報酬として、周辺からの感謝が重要な場合もあるし、同僚との給与差が致命的な対立を生
むことも少なくない。組織構成員の個人を見て、それぞれの条件に合った動機付けを考え
ることは、組織活性化のために重要な事項である。単純な、出世志向や、給与アップだけ
で、動機を維持向上させることは、多様な人材を活性化させるためには不十分である。
自己実現欲求
自分の理想の達成、成長を期待できる
自己の能力と仕事の成果を正しく評価
自尊欲求
親和(所属愛)欲求
組織内部で人間的な対立がない
他部門・上司から怒られることがない
安全欲求
首にならず生きていける
生理的欲求
図 4 マズローの欲求階層図
そしてリーダーは組織のあるべき姿を描く必要がある。このため、自分の世界観、価値
観を整理し、その上で目的を明確にし、具体的な目標を設定する必要がある。これができ
れば、体制や規則の文書化は、部下を参画させて作り上げていくことができる。しかし価
値観や目的がぶれていると、部下を参画させても混乱するだけである。
リーダーは独自の世界観を持って
組織の目的と目標を設定する
そして目標達成のため組織の体制
と規則を定める(これは部下に作ら
せてもよい)
図5
リーダーの仕事
全員の仕事
このように組織の大方針が決まると、構成員全員がそれを理解し、相互支援の意識づけ
を行う必要がある。
リーダー方針を納得する
リーダーの世界観
価値観を理解しなぜこの
ような目標ができたかを
自分たちで納得する
お互いの理解を通じ自分を認める
お互いの谷内早考え方を理解し認め合う
これを通じて自分自身も認められる経験
をする(安心を得る)
図6 全員の作業
一方、組織構成員の全員が、互いの立場を知り、認め合うことで、自分の位置づけを知
り、安心することができる。このような作業が、組織の安定につながり、改革などの変動
にも強い組織となっていく。