状態変化:化学反応

物理化学II
状態変化:化学反応
化学平衡(1)
•化学平衡とは何か
•化学平衡をギブスエネルギーで表す
化学平衡とは・・・
赤血球中のヘモグロビン分子(酸素運搬蛋白質)
酸素圧が高いとき(肺)
二酸化炭素を放出して、酸素を取り込む
酸素圧が低いとき(毛細血管)
二酸化炭素を取り込んで、酸素を放出
2つの反応が拮抗して血中の酸素濃度を一定に保つ
→平衡
化学平衡とは・・・
250mLのビーカーでBへ移す
100mLのビーカーでAへ移す
2000mL
0mL
Aさんのバケツ
Bさんのバケツ
この操作を繰り返すとどうなるか
この操作を繰り返すとどうなるか
Bのバケツ
Aのバケツ
量が少なくなると250mL
のビーカーでも、少量の水
しかとれない
ある一定の値に近づく
逆はどうか?
250mLのビーカーでBへ移す
100mLのビーカーでAへ移す
0mL
2000mL
Aさんのバケツ
Bさんのバケツ
初めの水の量を入れ替えるとどうなるか
初めのバケツを入れ替えるとどうなるか
Bのバケツ
Aのバケツ
やはり、同じ値で一定となる
化学平衡とは・・・
反応が平衡に達すると、止まって
いるように見える
正方向と逆方向の反応が常に起こって
釣り合っている状態
化学平衡とは・・・
ある分子Aと分子Bの平衡反応を考える
A
B
Aを0.7 mol
Bを0.6 mol
平衡ではA、Bはそれぞれ何モルになるか?
分子Aと分子Bのギブスエネルギーが重要
ギブスエネルギーG
熱力学や電気化学などで用いられるエネルギー量
(示量性 状態量)
ボールは高いところから
低いところに落ちる
経路に依存せず、その
圧力、温度で固有の値
を持つ
物質が2倍になれば
Gも2倍
位置エネルギー
mghが減少
ギブスエネルギーは自発的反応の方向を示す
反応はGが低くなる方向に自発的に進む
A⇄B
G2 = 2 kJ
H2=15 kJ
G1 = 10 kJ
H1=30 kJ
A:ギブスエネル
B:ギブスエネル
ギーが小さい状態
ギーが大きい状態
反応はBからAへ進む
反応進行度ξ
A
B
nA (mol) nB (mol) ξ (mol)
G (kJ)
0分後
1
0
0
10
x分後
0.9
0.1
0.1
8
ξ:反応進行度(単位はmol)
反応がどの程度進んだかを表
す尺度(変数)
量論係数
反応進行度の求め方
3A+2B+C⇄4D+2E
最初 nA,0, nB,0, nC,0 nD,0 nE,0(mol)
反応後 nA, nB, nC, nD, nE (mol)
右辺にまとめる
0=-3A-2B-C+4D+2E
ξ(単位はmol) 量論数
反応率α
量論数
どの成分に注目しても同じ
演習1
2H2O⇄2H2+O2
最初10molあったH2Oが分解し4molに減少した
(1)反応進行度ξおよび反応率αはいくらか
(2) 逆反応2H2+O2⇄2H2O のξはいくらか
(3) H2O⇄H2+1/2O2と書いたときのξはいくらか
反応ギブスエネルギー
A
B
nA (mol) nB (mol) ξ (mol)
G (kJ)
0分後
1
0
0
10
x分後
0.9
0.1
0.1
8
ξ:反応進行度(単位はmol)
dnA=-dξ
dnB=dξ
反応ギブスエネルギー(Gのξに対する勾配)
A
B
B
B
A
µA(J/mol)のA分子がdnAモル増加または減少
A
B
B
A
B
B
B
B
µB(J/mol) のB分子がdnBモル増加または減少
dnA=-dξ
B
Δ rG
反応ギブスエネルギー
dG
dξ
dnB=dξ
A
B
μA>μBなら、 ΔrG<0
A→Bの方向に自発的に進行
μB>μAなら、 ΔrG>0
B→Aの方向に自発的に進行
発エルゴン
吸エルゴン
μA=μBなら、 ΔrG=0 反応は平衡状態にある
自発的に進行しない
完全気体の平衡
気体AとBの反応を考える
A
B
A
B
A
B
A
A
B
A
B
A
A
B
A
B
A
B
A
B
A
B
反応が右へ進むのか?左へ進むのか?
復習(混合物のケミカルポテンシャル)
A⇄B
A
A
B
B
B
A
A
A
B
A
A
B
混合気体のケミカルポテンシャル
p˚:標準圧力(1 bar = 100 kPa)
(全圧)
完全気体の反応
A⇄B
代入する
この状態でのΔrG
この値が正ならAが増加、負ならBが増加
標準反応ギブスエネルギー
平衡では
(標準反応ギブスエネルギー)
平衡状態における比pB/pAを平衡定数Kとすると
平衡定数は標準反応ギブスエネルギーによって決まる
のときKは1より小さい
のときKは1より大きい
一般の反応の場合
2A+B→3C+D
反応比
厳密には分圧や濃度を用いず活量aを用いる
無次元
厳密な熱力学的平衡定数は無次元
標準状態と無次元の比濃度
298.15 K(25℃)、1 bar(105 Pa=100 kPa)
物理状態
標準状態
無次元の非濃度
気体 P/100 kPa
P˚=100kPaの気体
P/P˚
純液体
純液体
1
純固体
純固体
1
水溶液中の溶質、c M
c˚=1 M
c/c˚
希薄溶液中の溶媒
純液体
1
演習2-1
cis-2-ブテンからtrans-2- ブテンへの異性化の平衡
定数は400KでK=2.07である。標準反応ギブズエネ
ルギーを計算せよ。
演習2-2
cis-2-ペンテンからtrans-2- ペンテンへの異性化の
標準反応ギブズエネルギーは400Kで-3.67 kJmol-1
である。平衡定数Kを計算せよ。
演習3
臭素Br2と塩素Cl2の気体どうしを反応させると
BrClが生成する
Br2(g)+Cl2(g)⇄2BrCl(g)
(a)この反応の反応比を書け
(b)次の条件をもとに、298Kにおける反応による自由エネ
ルギー変化を計算せよ。この反応は自発的か否か?全圧は
100 kPaとする。
モル標準生成自由エネルギー
kJ /mol (298 K)
298Kにおける分圧 kPa
Br2(g)
Cl2(g)
BrCl(g)
3.14
0.00
-0.88
12
12
24
演習4
N2O4(g)⇄2 NO2(g)の平衡では、解離度αeは全圧
1.00barで0.201である。298Kで次の値を計算せよ。
(a)ΔrG
(b)K
(c) ΔrG˚
未反応の反応物のモル数をn、平衡時のモル数をneとすると