りんご生産情報第6号 (6月25日~7月8日) 平成28年6月24日発表 青森県「攻めの農林水産業」推進本部 仕上げ摘果を急ごう! 有袋栽培に積極的に取り組もう!! Ⅰ 要 約 果実肥大は、6月上中旬の日照時間が平年を下回ったことからやや鈍化したが、 初期肥大が良好であったことから、6月21日現在、各品種とも平年を上回っている。 仕上げ摘果は、果形や肥大状況、黒星病の被害果などをよく見極めて、できるだ け早く終えるようにする。仕上げ摘果を終了した園地でも、着果量の見直しを行う。 「7月初め」の薬剤散布は、黒石、弘前、三戸で、7月1~2日頃に行う。 津軽地域で黒星病の発生している園地では、間隔を守って薬剤散布を実施すると ともに、病原菌の密度を下げるために被害葉・被害果を摘み取り、処分するか、土 中に埋める。なお、本年は葉や果実のほかに、つる(果柄)にも発生しているので、 被害果はつるごと摘み取る。 ふじの有袋栽培は、つる割れを軽減することができ、販売戦略上重要であること から積極的に取り組む。 マメコバチの活動終了後の巣箱は7月上旬ごろに回収し、家屋や小屋の軒下にま とめて保管するなど管理を適切に行う。 - 1 - Ⅱ 生産情報 1 果実肥大、作業の進み、病害虫の動き (1)果実肥大 果実肥大は、6月上中旬の日照時間が平年を下回ったことからやや鈍化したが、 初期肥大が良好であったことから、6月21日現在、つがる、ジョナゴールド及び ふじとも平年を上回っている。 果実肥大 地 域 黒 石 (りんご研究所) 弘前市独狐 (中南地域県民局 ・農業普及振興室) 板柳町高増 (西北地域県民局 ・農業普及振興室) 三戸町梅内 (三八地域県民局 ・農業普及振興室) 年 本 年 平 年 前 年 平年比 本 年 平 年 前 年 平年比 本 年 平 年 前 年 平年比 本 年 平 年 前 年 平年比 (6月21日現在、横径㎝、平年比%) つがる ジョナゴールド ふ じ 4.2 3.8 3.7 3.4 4.6 4.1 114 112 4.3 3.5 3.8 3.2 4.7 3.7 114 110 4.2 4.3 3.6 3.8 3.9 3.2 4.6 4.9 3.9 110 112 113 4.1 4.0 3.6 3.6 3.6 3.2 4.2 4.3 3.8 114 111 113 (2)作業の進み(6月22日現在) ふじ等の仕上げ摘果が行われている。ふじやジョナゴールドの袋掛けが始まっ ている。 - 2 - (3)病害虫の動き (6月22日現在 りんご研究所) 腐らん病 摘果後の果柄感染継続中 黒星病 葉・果実とも分生子による2次感染継続中 無防除の県予察圃での新梢葉の発病葉率(ふじ) (本年:黒石6月20日 37.6%、平年:黒石6月20日 22.8%) 斑点落葉病 葉上病斑の初発確認 (本年:黒石6月15日、平年:黒石6月17日) 褐斑病 葉上病斑の初発確認 (本年:黒石6月13日、平年:黒石6月22日) ハダニ類 リンゴハダニ、ナミハダニとも卵~成虫が混在して葉を加害 中 リンゴコカクモ ンハマキ 越冬世代成虫の羽化継続中 モモシンクイガ 越冬世代成虫の羽化及び産卵継続中 (産卵初発 本年:黒石6月12日、平年:黒石6月18日) キンモンホソガ 羽化盛期(第1世代羽化50%日 平年:黒石6月22日) - 3 - 本年:黒石6月17日、 2 作業の重点 (1)摘果 園地によっては、中心果の欠落や果実形質のバラツキが見られるものの、全般 に標準着果量を上回っている。 着果量が多いと、今後の玉伸びだけでなく花芽形成などに悪影響を及ぼすので、 果形や肥大状況、黒星病の被害果などをよく見極めながら、仕上げ摘果を急ぎ、 樹勢に応じた適正な着果量とする。仕上げ摘果を終了した園地でも、見落としや 過着果の部分がないか、必ず見直しを行う。 品種別の標準的な着果程度 品 種 摘果の強さ (残す果実) 紅玉 3頂芽に1果 つがる・ジョナゴールド 3.5頂芽に1果 ふじ・王林・早生ふじ・トキ・シナノゴールド・きおう・ 金星・シナノスイート・未希ライフ・ぐんま名月・さんさ ・春明21・星の金貨・千雪・夏緑・恋空・祝・花祝 4頂芽に1果 北斗 4.5頂芽に1果 陸奥・世界一 5頂芽に1果 (2)第6回目の薬剤散布「7月初め」 「7月初め」の薬剤散布は、黒石、弘前、三戸で7月1~2日頃に行う。 散布予定日に降雨が予想される場合には、事前散布に徹する。 - 4 - 第6回目:「7月初め」 地域 時 期 黒石 弘前 三戸 7月1日~ 2日頃 散布量 /10a 薬 剤 名 と 倍 数 ピレスロイド剤 バイスロイドEW サイハロン水和剤 テルスター水和剤 ロディー水和剤 イカズチWDG 2,000倍 2,000倍 1,000倍 1,000倍 1,500倍 アントラコール顆粒水和剤 又はチウラム剤 チオノックフロアブル トレノックスフロアブル 又は有機銅剤 キノンドー水和剤80 オキシンドー水和剤80 又はオキシラン水和剤 500ℓ 500倍 500倍 1,200倍 500倍 (3)黒星病対策 津軽地域で発生の多い園地が見られる。 病原菌の密度を下げるために被害葉・被害果を摘み取り、処分するか、土中に 埋める。なお、本年は葉や果実のほかに、つる(果柄)にも発生しているので、 被害果はつるごと摘み取る。 また、分生子による感染を予防するために間隔を守って薬剤散布を実施する。 (4)袋かけ ふじは、有袋にすることにより、つる割れの軽減や着色の向上、収穫期の分散 ができるほか、販売戦略上も重要である。特に本年は大玉傾向で、夏場の多雨に よるつる割れの発生が懸念されるので、有袋栽培に積極的に取り組む。 袋かけは7月10日頃までに終えるようにする。 なお、有袋栽培では、すす斑病やクワコナカイガラムシの防除対策を徹底する。 - 5 - (5)モモシンクイガ対策(無袋) 「7月初め」の防除剤には、ピレスロイド剤を使用する。 前年にモモシンクイガの被害がなく、周辺に放任園など発生源の見られない園 地で、「7月初め」のピレスロイド剤として、食入防止期間の長いバイスロイド EW、サイハロン水和剤、イカズチWDGのいずれかを使用した場合は、次回の 「7月半ば」のモモシンクイガ防除剤を省略できる。 有袋栽培でも袋をかけ終わるまでは、無袋栽培に準じて防除する。 放任樹(園)が付近にあると発生源になるので伐採する。また、もも、なし、 日本すもも、西洋すもも(プルーン)、マルメロなども発生源になるので、適切 な管理を行う。 (6)ハダニ類対策 ハダニ類の発生種を確認し、発生動向を見極めながら適正な防除を行う。散布 の目安は、1葉当たり2個体以上あるいは寄生葉率50%以上である。殺ダニ剤は 薬剤抵抗性が出やすいので、年2回以内使用のものでも年1回の使用とする。 サンマイト水和剤とバロックフロアブルは、リンゴハダニだけの、マイトコー ネフロアブルは、ナミハダニだけの適用なので、薬剤の選択には十分注意する。 リンゴハダニとナミハダニに対する殺ダニ剤の適用表 薬 剤 名 年使用回数 リンゴハダニ ナミハダニ サンマイト水和剤 2回以内 ○ × バロックフロアブル 2回以内 ○ × オマイト水和剤 1回 ○ ○ ダニサラバフロアブル 2回以内 ○ ○ コロマイト乳剤 1回 ○ ○ マイトコーネフロアブル 1回 × ○ ダニゲッターフロアブル 1回 ○ ○ スターマイトフロアブル 1回 ○ ○ ○:適用する、×:適用しない オマイト水和剤は、7月下旬までの使用を避ける - 6 - (7)クワコナカイガラムシ対策 発生が多いところでは、バン ド巻きによる誘殺を6月下旬 (成虫の産卵前)に行い、7月 中旬(卵のふ化前)に除去す る。 <第1世代幼虫の防除適期の予 測> 7月下旬ごろから発生する第 バンド巻きの実施方法 1世代幼虫の防除時期は産卵消 長から予測することができる。産卵消長を把握するためのバンド巻きを、6月下 旬ころから始める。クワコナカイガラムシの発生樹を5樹選び、1樹当たり1か 所にバンドを巻く。5日毎に新しいものと交換し、取り外したバンドを解体して、 中に産まれた卵のう数を記録し、防除適期を把握する。 <防除時期の予測方法> バンド内の卵のう数の推移を基に次のように予測する。バンドの設置期間の中 央日を産卵日とし、産卵が初めて観察された日を産卵初発日とする。産卵初発日 以降、日平均気温(アメダスなどを利用)から発育零点10.7℃を引いた温度を積 算し、ふ化までに必要な有効積算温度163.9日度に達した日をふ化初発日、ふ化初 発日の2~3日後を移動初発日とする。防除は、移動初発日及びその約10日後の 2回、防除剤による胴木洗いを実施する。 (8)リンゴコカクモンハマキ対策 発生の多いところでは、フェロモントラップによる成虫の誘引消長を利用して、 適期にサムコルフロアブル10 5,000倍またはフェニックスフロアブル4,000倍、デ ィアナWDG10,000倍のいずれかを散布する。 (9)有袋栽培におけるすす斑病対策 袋かけ前の薬剤散布が特に重要なので、散布間隔をあけ過ぎないようにし、果 実にも薬液が十分付着するようにする。毎年のように本病の発生がみられる園地 では定期散布後5日以内を目安に袋かけを行う。その後も袋かけを継続する場合 は、次の定期散布までの間に袋かけを予定している樹を対象に有効な薬剤による 特別散布(実洗い)をしてから行う。 (10)腐らん病対策 園地によっては、腐らん病の発生が多い。 枝腐らんは、見つけ次第、切り取って処分する。 胴腐らんも見つけ次第、泥巻き法か、削り取り法で治療する。また、以前に治 療したものであっても確認し、適切に処理する。 - 7 - (11)ビターピット防止対策 ビターピットは6~7月の少雨と8~9月の多雨、夏期の高温によって発生が 多くなる。例年よりも樹勢が強いとみられる場合や、発生しやすい天候が予想さ れる場合、下表によりカルシウム剤を直接果実に付着するように散布する。 なお、樹勢の弱い樹や高温時、あるいは干ばつ時には薬害発生(葉縁褐変)の 恐れがあるので避ける。 カルシウム剤の散布方法 資材名 散布時期 資材形状 (散布間隔) スイカル 6月上旬~9月中旬 粉状 (10日以上) セルバイン 6月上旬~9月上旬 粉状 (10日以上) アグリメイト 6月上旬~9月中旬 液状 (15日以上) 水100ℓ当たり 使用量(倍数) 330g (300倍) 250g (400倍) 200mℓ (500倍) 散布回数 (回) 3~5 3~5 5 (12)マメコバチの巣箱の回収と管理 近年、マメコバチの数が少ないあるいは巣箱にマメコバチがいないといった状 況の園地が見られ、りんごの受粉にも影響がでているので、管理を適切に行う。 マメコバチの活動終了後の巣箱は7月上旬ごろに回収し、家屋や小屋の軒下な どにまとめて保管する。この場合、ネズミの被害や雨水の跳ね返りを避けるため、 地面からできるだけ離す。また、箱の積み重ねや雨除けにも配慮し、巣筒の内部 が過湿にならないように注意する。 なお、巣箱回収時には、コナダニの発生状況を確認し、必要に応じて高温処理 法などにより駆除する。 3 一般作業 (1)追肥(6月末まで) (3)苦土欠乏対策 (6)乾燥対策 (2)ひこばえ、徒長枝の切り取り (4)草刈り (5)わい性台樹の雪害防止対策 4 今後の作業予定 (1)摘果の見直し (2)薬剤散布(7回目「7月半ば」)(3)黒星病対策 (4)腐らん病対策 (5)クワコナカイガラムシ対策 (6)徒長枝整理 (7)支柱入れ、枝吊り (8)草刈り (9)ビターピット防止対策 (10)苦土欠乏対策 - 8 - 《 農薬使用基準の遵守 》 農薬を使用する場合は、必ず最新の農薬登録内容を確認する。 また、短期暴露評価の導入により使用方法が変更される農薬は、登録内容の変 更前であっても、変更後の使用方法で使用する必要があるため、変更の有無を次 のWebサイトで確認してから使用する。 ○農林水産省「農薬情報」 http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_info/ ○(独)農林水産消費安全技術センター「農薬登録情報提供システム」 http://www.acis.famic.go.jp/index_kensaku.htm ○青森県農業情報サービスネットワーク「アップルネット」農薬情報 http://www.applenet.jp/ 農薬の使用にあたっては、事前に周辺住民に対し、農薬の散布日時や使用者の 連絡先等を十分な時間的余裕を持って知らせる。また、農薬の飛散により、周辺 作物や近隣の住宅等に被害を及ぼすことのないように、農薬飛散低減対策に留意 して散布する。 《 ポジティブリスト制への対応 》 農薬の飛散により、周辺住民及び作物に被害を及ぼすことのないように、散布 情報の提供・交換等地域が連携し、農薬飛散低減対策に留意して散布を行う。 ~青森県農薬危害防止運動実施中(5月1日~8月31日)~ 適正着果量確保推進期間中!(5月~7月中旬) 放任園の発生防止と解消に努めましょう! 災害に備えて果樹共済に加入しましょう! 農作業事故が多発しています!農作業安全を心がけましょう! 次回の「りんご生産情報」第7号は7月8日(金)発表の予定 担 当 課 担 当 者 電話番号 報 道 監 - 9 - 報道機関用提供資料 りんご果樹課 生産振興グループ 今総括主幹 直通 017-734-9492 内線 5092 農林水産部 津島農商工連携推進監 内線 4966
© Copyright 2024 ExpyDoc