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第22号
The
Southern
南
( H28.6.22 )
~
Wind
島根 県 立 松 江 南高 等 学校
風
水兵りーべ
祝「ニホニウム(Nh)」命名
校長
長野
博
~
先々週の日曜日、北公園で偶然 30 年前の教え子に出合った。「長野先生?長野先生ですよね。私
○○です。『すへりべほたちさ』覚えています。」
私の印象で真っ先に出るのは『すへりべほたちさ』か。まあ良い、覚えてくれててありがとう。
高校の化学の授業は元素から始まる。原子の構造を学んだ後は、原子番号 20 番までの元素を覚え
るのが高校 1 年 4 月の習わしだ。以前は中学校でも扱われており、私は初任校の大島第一中学校で
中学 1 年生に 20 番までの元素を覚えさせていた。
私が高校生の頃、チャートという参考書に覚え方が書いてあった。「水兵リーベ、僕の船、七曲が
るシップス、クラークか」本誌を読んでおられる保護者の皆さんの耳にも残っているのではないだ
ろうか。この「七曲がる」の部分が異なる覚え方もあるようだ。
「リーベという水兵がいた。リーベは船を持っていた。その船は七つの海を航海し、名前をクラ
ーク号といった。」そういう筋書きの語呂合わせである。チャートに書いてあるくらいだから、全国
的には広く知られたもので、日本史の「いい国つくろう鎌倉幕府」や「鳴くよウグイス平安京」レ
ベルの知名度だと思っている。誰もが素直にこの方法で覚えただろうが…私は違う。
H(水素)、He(ヘリウム)、Li(リチウム)、Be(ベリリウム)、B(ホウ素)、C(炭素)、N(窒素)、
O(酸素)、F(フッ素)、Ne(ネオン)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、
Si(ケイ素)、P(リン)、S(硫黄)、Cl(塩素)、Ar(アルゴン)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)
「水兵リーベ」までは和名の頭文字をつなげたものだ。しかし次はアルファベットをつなげてき
た。そして「七曲がる」は和名、「シップス、クラーク」はアルファベットと変わる。この覚え方で
覚えた多くの方にあえて問う、「本当に覚えやすかったですか?」。
大体、水兵が船を持っていれば船長ではないか。それもシップスと複数形になっているが、水兵
が一体何隻の船を所有しているのだ。また、覚えるための負担を少なくする方法なのに「クラーク
号」という船の名前を覚えなければならない。なぜ一人の水兵の所有している船の名前を日本中の
高校生が覚えなければならないのだ。極めつめは最後の「か」だ。ここまでリーベの船の名前を公
表しておきながら、最後に疑問か?しかも「か」ではカリウム、カルシウム、どちらの「か」なの
かわからない。「曲がる」の部分もアルゴンとアルミニウムの区別がつかない。
そういうわけで、高校 1 年の私は次のように覚えた。
「すへりべほたちさ、ふねなと、まぐあるみ。けいりんいえん、あるかりある。」
意味など無い。全て和名の頭文字でつなげただけだ。何度か口にしていれば自ずと言えるように
なる。何より K と Ca、Al と Ar の違いもわかる。
教員になってからも長野式と称して生徒に教えた。最初は大島第一中学校の 1 年生である。一応、
チャート式と長野式の好きな方を使うように言ったが、生徒のほとんどは長野式で覚えていた。当
時の中学 1 年の野球部の生徒が曲(リズム)までつけてくれた。6 年前に三刀屋高校で久しぶりに
披露したが、これが最後だ。恥ずかしくて歌えない。
今年 6 月 9 日、原子番号 113 の元素が「ニホニウム」(元素記号:Nh)として発表された。日本
を中心とした研究グループが元素の発見者として認められたのは史上初である。
天然に多く存在する元素で最も原子番号が大きいのは No.92 のウラン(U)である。だから Nh は
人工の元素だ。かつて No.43 の元素は天然に見つかっておらず、物理学者はサイクロトロンという
装置を使ってテクネチウム(Tc)を合成したのである。
日本では、すぐに経済効果が出るような研究に比べ、基礎理学の研究が遅れていると聞く。今回
の発見にどれくらいの価値があるのかはわからないが、この発見の過程で様々な知見が得られ、合
成や検出等に関する科学技術が開発されてきたに違いない。
命名はその功績に対する賞賛である。日本人として喜びたい。
<裏面あり>
<皆さんへ>
【期末試験】
ついこの間、総体が終わったような気がしていましたが、十日後には期末試験が始まります。時間
が経つのははやいとつくづく感じます。
前号で切り替えの話を書きました。総体が終わった三年生の皆さん、自分のペースを作ることがで
きていますか。インターハイや野球、吹奏楽など、まだまだ部活動が終わっていない三年生諸君は、
周りの雰囲気が変わりつつあることに焦りを感じているかもしれませんね。本来、勉強と部活動は両
立させなければならないのだから、早めの対応、時間の有効利用で頑張ってください。
時間については、三点固定(起床時刻、家庭学習開始時刻、就寝時刻)と良く言います。早く自分
のリズムをつかむことです。
学習場所は自宅が基本でしょうが、環境も様々だと思います。自分に合った場所を早く見つけまし
ょう。
すでに4月に連絡したとおり、今年も記念館2階自習室を自学自習用に解放しています。自習室は
私語厳禁ですが、級友の頑張る姿を見ながら集中したい人には良い環境だと思います。
県立図書館などの公共施設で勉強する人は、当たり前のことですが公共マナーを守ってください。
【授業のめあて】
授業の最初に、その授業の内容や目標、主題などを黒板に書いてもらうように、全ての先生にお願
いしました。このことは「南風」
(第 14 号)にも書きましたが、改めて徹底をしようと考えています。
ウエイトトレーニングで重要なことは、十分なウオーミングアップ、適度な負荷、どこを鍛えよう
としているかという意識の三点だと聞いたことがあります。また、学習でも、自分が今何を学んでい
るのか意識することで効果が上がると聞きました。
その授業で何を学ぶのか、何がポイントかということを意識して学習してみましょう。
【アメリカ総領事館領事の講演】
今月 10 日の講演会には約 80 名の生徒諸君と保護者、教職員を合わせ、計約 100 名が参加しました。
とても盛り上がり、終わった後も領事の周りには多くの生徒が集まって質問していました。
当日ご来校いただいた保護者の皆さん、ありがとうございました。