大腸癌で死なないためにー内視鏡のすすめー

大腸癌で死なないためにー内視鏡のすすめー
消化器内科学部門 教授 山本 博徳
はじめに
日本人の死因でもっとも多い病気は癌です。その中でも大腸癌は頻度が高く、しかも世界中で増えてい
ます。日本の 2014 年の臓器別癌死亡者数の統計では女性で第 1 位、男性で肺、胃に次いで第 3 位に死亡
者数の多い癌になっています。
大腸癌による死亡を予防することは重要な課題ですが、このためにもっとも有効な手段は今のところ
早期発見、早期治療です。
大腸癌の多くは腺腫という良性腫瘍からなるポリープを元にしてできると考えられています。また、大
腸癌は初期の段階では進行はあまり早くないので早期に発見すれば切り取ってしまうことで治すことが
できます。
前癌状態のポリープや、早期癌の段階で見つかれば内視鏡的に切り取ることも可能で、そうすればおな
かを開く手術も行わずに治療することもできます。
ただ、早期癌の段階では症状が現れないことがほとんどなので無症状のうちから検診をうけることが
重要で、検診の結果、精査を進められた場合や、血便などの症状がある場合には躊躇することなく大腸内
視鏡による検査を受けられることをお勧めします。
大腸内視鏡検査
内視鏡機器の技術進歩は大きく、今では細くて柔らかい内視鏡でほとんど苦痛なく全大腸の内視鏡検
査ができるようになりました。しかも得られる画像はとても鮮明で肉眼で見るよりはるかに詳細な観察
ができるようになっています。
通常の白色光では色の違いがはっきりしなくて見つけにくいような腫瘍も色の違いによるコントラス
トをはっきりさせて見せやすくする技術や、約 100 倍まで拡大して細かい癌の性質まで診断できる拡大
内視鏡なども普通に使えるようになっています。
大腸内視鏡によって大腸癌や大腸ポリープがどのように発見されるのか紹介させていただきます。
内視鏡治療
大腸癌は大腸の最内腔側の層である粘膜層から発生します。多くの場合は腺腫という良性の前癌状態
(ポリープと言われることが多い)から変化して生じます。前癌状態の段階、もしくは早期癌でほとんど
粘膜内にとどまっているような場合は内視鏡的に切除することで治療ができます。
大腸のポリープには茎を持ったキノコ状のものや、茎のない半球状のもの、また、ほとんど丈がなく平
らに広がるような形態のものがあります。形や大きさによって内視鏡的切除の方法もポリペクトミー、内
視鏡的粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術などを使い分けています。
大腸腫瘍が内視鏡的切除で根治できるかどうかは腫瘍の大きさ・広がりではなく、浸潤の深さによって
決まります。したがってかなり大きい腫瘍でも浅く粘膜層にとどまっていれば内視鏡的に根治ができる
と考えられています。
自治医大消化器内科ではこの大腸腫瘍に対する内視鏡的粘膜下層剥離術を開発し、高い技術レベルの
治療を提供しています。講義ではその実際の手技をビデオなどで紹介させていただきます。
内視鏡治療の方法
1.ポリペクトミー
2.内視鏡的粘膜切除術(EMR:ないしきょうてきねんまくせつじょじゅつ)
3.内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:ないしきょうてきねんまくかそうはくりじゅつ)
≪講師略歴≫
氏
名
学歴及び職歴
山本 博徳 (やまもと ひろのり)
昭和 35 年 3 月 7 日生まれ
昭和 59 年 3 月
自治医科大学卒業
昭和 59 年 4 月
出身高知県に戻り地域医療
平成 2 年 4 月―5 年 7 月 アメリカ臨床留学
受
賞
歴
主 な 著 書
平成 7 年 11 月
自治医科大学消化器内科臨床助手
平成 11 年 9 月
自治医科大学内視鏡部助手
平成 13 年 10 月
自治医科大学消化器内科講師
平成 17 年 10 月
自治医科大学フジノン国際光学医療講座助教授
平成 19 年 6 月
自治医科大学フジノン国際光学医療講座教授
平成 26 年 5 月
自治医科大学消化器内科主任教授
平成 27 年 4 月
自治医科大学附属病院副病院長
平成 18 年 7 月
第 31 回 井上春成賞
平成 21 年 4 月
第 19 回 日経 BP 技術賞
平成 27 年 5 月
アメリカ消化器内視鏡学会 国際貢献賞
平成 27 年 9 月
ドイツ消化器病学会 内視鏡賞
ダブルバルーン内視鏡 -理論と実際-. 南江堂; 2005
Dr. 山本の大腸内視鏡挿入法 -“慣れ”より”理論” 南江堂; 2011
Visual 小腸疾患診療マニュアル. メジカルビュー社; 2011
大腸 ESD. 南江堂; 2013