2016年6月23日 ご参考資料 152 今回のテーマ 次の政策はヘリコプター・マネー!? 先進国の鈍い景気回復を背景に、金融政策の限界が指摘される 新人くん 日興アセットマネジメント の新人。営業推進部門に 配属され、投信や経済に ついて勉強中。 なか、ヘリコプター・マネーが関心を集めています。究極の景気対 策とされる一方、副作用が大きいとの意見もあります。今回は、類 似点のあるベーシック・インカムと併せて調べてみました。 1.ヘリコプター・マネー あたかも上空のヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行 または政府が、大量の通貨を世の中に供給する政策をいいます。 通常の財政政策では、税収が足りない分を国債発行によって補 い、財政支出を拡大しますが、国債の代わりに通貨を発行して支 出に充てる場合、政府の債務残高を増やさず、景気刺激策が行な えるメリットがあるとされています。具体的な方法として、中央銀行 による国債引き受け(市場を通さずに直接引き受ける)や、中央銀 行または政府による個人へのバウチャー(使途を制限した金券)な どの発行、通貨発行によって政府債務を償還するなどがあります。 ヘリコプター・マネーが注目される背景には、金融緩和政策の限 界論があります。一般に、金融緩和によって銀行は融資に回す資 金を低金利で調達できるものの、銀行側からすれば、景気の低迷 によって借り手の資金需要が小さいと融資を増やすことができませ ん。そのため、この点が現状の金融政策のボトルネックと言われて います。一方で中央銀行や政府がバウチャーなどを個人に支給す る場合は、より直接的に消費を促し、世の中の通貨量を確実に増 やせることから、インフレにつながる可能性が高いとされています。 日銀の黒田総裁は、日本 を含む先進各国では財政 政策は政府、金融政策は 中銀が担う仕組みが確立し ているとし、「現行の法制度 の下では実施できない」と 述べるなど、ヘリコプター・ マネーについては否定して います。 (次のページヘ続きます) □当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料 ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 (1/2) しかし、ヘリコプター・マネーは政府債務を通貨の供給で賄うマネ タイゼーション(財政ファイナンス)に当たり、その規模が大きくなる と、通貨暴落やハイパーインフレをもたらすとの指摘があります。 実際、戦前の日本で、日銀が政府の要請に応じて軍資金調達のた めに国債を引き受けた結果、戦後にハイパーインフレが発生しまし た。そうした反省を踏まえ、原則、日銀の国債引き受けは財政法で 禁止されています。 日銀やECB(欧州中央銀行)など先進国の中央銀行が金融緩和 を強化していますが、景気の回復力は鈍く、物価上昇にも勢いがあ りません。しかも、日本の政府債務残高は高水準にあり、さらなる 財政拡大は難しさを伴ないます。こうしたなか、副作用の懸念はあ るものの、従来の金融緩和政策とは異なるヘリコプター・マネーの 可能性に関心が集まっています。 2.ベーシック・インカム(最低生活保障) 最低限の所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して最低 限の生活を送るのに必要とされている額の現金を無条件で定期的 に支給するというものです。メリットとしては、貧困対策、少子化対 策、社会保障制度の簡素化(小さな政府の実現)などがあげられま す。一方で、デメリットとして、労働意欲の低下、財政負担の増加な どがあげられます。 スイスでは、すべての国民に毎月一定額を支給するベーシック・ インカムの導入の可否を巡り、6月5日に国民投票が行なわれまし た。結果は大差で否決となりましたが、国民的な議論を深めること を目的に、市民運動家らが投票を提案したという背景もあり、欧州 を中心にベーシック・インカムの議論が盛り上がりつつあります。既 に、オランダの一部都市では実験的な導入が始められており、フィ ンランドなどでも実験的な試みが検討されています。 スイスの国民投票において、 支給額は可決された後に 法律で決めるとされていま した。賛成派は月額で大人 に2,500スイスフラン (1CHF=109円で、約27 万円)、子供に625スイスフ ラン(同、約7万円)を提唱 していましたが、物価高の スイスでは、これのみでは 十分ではないと言われてい ます。 ベーシック・インカムは複雑な社会保障と福祉を簡素化し、行政 効率を改善する効果があるとされている一方で、財政悪化や、国 が社会主義へと傾くことへの抵抗感も根強く、資本主義国で本格的 に導入された事例はありません。ベーシック・インカムは、個人に直 接お金(バウチャーなども含む)を支給するということでは、ヘリコプ ター・マネーと類似した点があり、今後の景気対策や社会保障のあ り方について、どのような議論が進むのか、注目されます。 何もしなくても、お金がもらえるなんて、なんだか都合が良 すぎる気がしますね。ただし、景気対策や貧困対策、少子 化対策などの社会問題を解決する方策として、日本でも、 今後、これらの議論が進むかもしれませんね。 □当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料 ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。□投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リス クもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時に は、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。 (2/2)
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