下肢静脈エコー検査について

けんさの豆知識
2014年 7 月
臨床検査部発行
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~下肢静脈エコー検査について~
近年、血管疾患の診断・治療判定においてエコー検査は欠かせない検査法となっています。
今回はその中でも発展の著しい下肢静脈エコー検査について簡単に説明します。
検査の目的
この検査は下肢(脚)の静脈を超音波診断装置で観察します。
主に脚の 深部静脈血栓(DVT:deep vein thrombosis) や 下肢静脈瘤 の有無を検査します。
深部静脈血栓症
長時間、同じ姿勢で座っていたり、運動不足や慢性的に脚の血流が悪い場合、脚の静脈に血栓が形成されます。
その後、血栓が血管壁から剥がれてしまうと血流に乗って心臓を通り抜け、肺の血管を詰まらせ 肺塞栓症 という病気を
引き起こします。胸が痛くなったり、呼吸が苦しくなったり、場合によっては死に至ることもあります。
早期発見・早期の治療が必要となります。
最近では長時間の飛行機搭乗によるエコノミー症候群や震災後の被災地での発症が注目されています。
日本でも増加傾向にあり、女性にやや多く40歳代後半~60歳に多い疾患です。
【血栓の原因】
① 血流のうっ滞 : 長期臥床、腫瘤、妊娠、多血症
② 血管障害
: 静脈炎、外傷、出血、カテーテル、ペースメーカー
③ 血液凝固能の亢進
: 血液凝固因子異常、癌、血小板増多症、妊娠、経口避妊薬、脱水
【症状】 深部静脈血栓症 : 下肢の 疼痛 ・ 腫脹 ・ 発赤 ・ 熱感
肺塞栓症
・無症状の場合もある
: 突発的な胸痛 ・ 呼吸困難 ・ 血痰 ・ 喀血 ・ 意識消失 ・ 無症状の場合もある
【大腿静脈エコー画像】
総大腿静脈
浅大腿静脈
太ももの付け根の静脈を観察。
カラー表示(→)は血流を示す。総大腿静脈に
壁在血栓(→)を認め、血管内腔が狭くなり、
浅大腿静脈は閉塞(→)している。
深大腿静脈
下肢静脈瘤
脚の静脈の中にある逆流防止弁が壊れると血液の逆流・うっ血がおこり、こぶの様な膨らみが出来る病気です。
日中、立っていると足に血がたまるために午後になると足がむくんだり、だるくなります。悪化すると皮膚炎がおこり、
湿疹・色素沈着をおこしたり、潰瘍になったりします。
下肢静脈瘤検査では瘤の有無や瘤内血栓の存在、静脈瘤の原因とされる静脈弁逆流を評価します。
検査の方法・手順
検査時間は約30分。所見によっては長時間になる場合がありますので、検査前にトイレを済ませておいてください。
観察部位は下腹部から足首まで、ズボンは脱いで検査します。態勢は仰向け・座位・うつ伏せになります。
ゼリーを塗り、静脈を圧迫しながら観察していきます。
慢性的に上記のような症状がある方はご相談ください。