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論文内容要旨
Unraveling the Rat Intestine, Spleen and Liver Genome -Wide
Transcriptome after the Oral Administration of Lavender Oil by a
Two-Color Dye-Swap DNA Microarray Approach
(ラベンダー精油経口投与後のラット小腸、脾臓、肝臓の DNA マイクロ
アレイ 2 色 Dye-Swap 法による網羅的遺伝子発現解析)
掲載雑誌名
PLOS ONE
Vol.10, No.7, e0129951, 2015 年
生理系生化学専攻
久保
浩子
ラベンダー精油(Lavandula angustifolia:以下 LO)は揮発性芳香成分
リナロールと酢酸リナリルを主成分としたアロマセラピーで使用される
代表的な精油で、医療、美容などさまざまな分野で世界的に使用されてい
る。しかしその科学的根拠は乏しく、特に人体への影響が不明な経口使用
については、推奨する国(フランスやベルギー)と推奨しない国(イギリ
スやアメリカ、日本)に二分している。本研究はラットに LO をヒトの臨
床適応に即して経口投与後、消化器系の組織を採取して遺伝子発現を網羅
的に解析し、各組織への影響を検討した。
ラットを LO 投与群(5mg/Kg)とコントロール群(10%エタノール)に分け、
1 日 1 回 13 日間連続投与し、14 日目に小腸、脾臓、肝臓の組織を摘出し、
-80℃に凍結保存した。これらの組織から mRNA を抽出後、Agilent 社の DNA
マイクロアレイ用チップ(rat whole genome 4×44K)を用いて dye-swap
法により解析を行った。
その結果、小腸では 310(156:up>1.5 fold、154:down<0.75 fold)、脾
臓では 240(174:up>1.5 fold、66:down<0.75 fold)、肝臓では 544(222:
up>1.5 fold,322:down<0.75 fold)の遺伝子発現に影響が認められた。
また各組織で遺伝子発現の増減があった6遺伝子( Papd4, Lrplb, Alb,
Cyr61, Cyp2c, Cxcll)について RT-PCR 法で再確認を行った。
さらに生物学的パスウェイや疾病特異的遺伝子に注目した遺伝子発現プ
ロファイリングを行い,LO が生体に及ぼす作用を検討した。各組織で増
減があった遺伝子の IPA 解析では、小腸、脾臓、肝臓において、それぞれ
Papd4, Or8k5, Gprc5b, Taar5, Trpc6, Pld2 が増加したトップ遺伝子、
Tnf, Slc45a4、 Slc25a23、 Samt4 が減少したトップ遺伝子として選出さ
れた。
本研究は、生体モデルで LO の経口投与による影響を遺伝子発現により解
析した第一報であり、今後ヒトへの応用に向けて基盤となり得る分析調査
である。