乳清蛋自質濃縮物の給与が哺乳子牛のトリグリセリド及び

東北農業研究 (Tohoku Agセ Res)55, 129-130(2002)
乳清 蛋 自質 濃 縮 物 の 給 与 が 哺乳 子 牛 の トリグ リセ リ ド及 び ビタ ミ ン
A濃 度 に及 ぼす 影 響
櫛引史郎・甫立孝一*・ 新宮博行・ 上田靖子・燈野英子・篠田 満
(東 北農 業研 究 セ ンタ ー 、 *北 里大 学 )
Effect of Whey Protein Concentrate on the postprandial changes in plasma triglyceride and Vilamine A
concentration in preruninant calves
Shiro KUSHIBIKI, Kouichi HODATE, Hiroyuki SHINGU, Yasuko UEDA, Eiko TOUNO,
and Mitsuru SHINODA
(National Agricultural Research Center for Tohoku Reglon, *Kitasalo University)
1は
じ め
子牛 8頭 を WI添 加区 (4頭 )と 無添加区 (4頭 )に 分
けた。試験乳 は、体重の 4%量 のホルスタイン種合乳 にビ
に
子牛の消化機構は、発育 とともに単胃動物 か ら反劉動
物 の代謝生理へ と変わ る。生後か らの約 6週 間は主 に哺
乳期間であ り、スター ターな どの固形飼料 も給与す るこ
タミン A(和 光純薬製 )を 50万 1U添 加 して作製 した。
WPIは 、体重 の 008%を 混和 した。
(2) TG吸 収試験
とか ら、反郷胃が徐 々 に発 達 を開始する時期である。 こ
子牛 8頭 を WP l添 加区 (4頭 )と 無添加区 (4頭 )に 分
の幼齢期は母乳免疫か ら自己免疫 に切 り替 わることか ら
抗病性 が低下 し、 日和見感染症 が発生 しやす い。 したが
けた。試験乳 は、体重の 4%量 のホルスタイン種合乳 に、
そ の半分量 に相当す る (体 重 の 2%)ホ ルスタイ ン種合乳
って、下痢や肺炎な どの感染症 を防 ぐためにも適切な栄
を遠心分離 して得た乳脂肪 を混和 して作製 した。WPIは 、
養管理が必要であ り、子牛の飼養管理 において最 も重要
体重 の 008%を 混和 した。
な期間であると言える。哺乳子牛 の発育 に脂質成分が重
要であることは一般に知 られて いるが、そ の吸収機構 に
ついては不明な部分が多 い。脂質成分は反旬 胃内の発酵
(3)サ ンプルの採取及び血漿 の分析
頚静脈 に装着 し
朝 8時 の哺乳開始 か ら 24時 間後 まで、
たカテー テルよ り経時的 に血 液を採取 、直後 に遠心分離
を阻害する ことが報告 されているが、単胃動物である子
牛では脂質成分は効率的 に消化・吸収 される。近年、我 々
によ り血漿を得て、20℃ に保存 した。血漿成分 の分析 は、
は、初乳中に多 く含まれ る β―ラク トグ ロブ リン (BLC)
ビタミ ン Aを 、TG吸 収試験 では酵素法
が乳中の脂質成分、すなわち中性脂肪 とビタミンAの 消
用 )に よ り TGを 定量 した。
ビタミン A吸 収試験 では高速液体 ク ロマ トグラフによ り
(日
立 7070を 使
BLG
化管 か ら血 中へ の吸収を高め ることを明 らかにした。
は乳清蛋自質 であ り、牛では BLGが 乳清蛋 自質 の主成分
3
試験結果及び考察
である。この BLGを 機能性蛋 自質 として有効利 用す る手
段 として乳清蛋自質濃縮物 (WPC)の 給与 が考え られ る。 (1)哺 乳後 の血漿 ビタミン A濃 度 の推移 は、両週齢及
WPCは チーズ製造 における産 業廃棄物 として排出 される び両区で哺乳後 7時 間目にか けて増加傾向 を示 した。そ
乳清を限外濾過で濃縮 した もので、BLGが 主成分である。 の後 は徐 々に減少 し、24時 間 目には哺乳時 の レベル に戻
った。WPI区 の血 漿 ビタミン A濃 度は両週齢で 無添加区
本研究は、WPCが 哺乳子牛 の脂質代謝 に及 ぼす影 響 を
解 明するために、TPCの 給与 が哺乳子牛 の血 中 トリグリ
よ りも高 い レベルで推移 し、 2週 齢では哺乳 の 2時 間後
セ リド (TC)及 び ピタミン A濃 度 に及ぼす影響 につ いて
及び 7∼ 12時 間後 にかけて有意差が認め られた。
(2) 血漿 TG濃 度 は、2週 齢 の WPI区 が哺乳後 2時 間
検討 した。
2試
験
方
目及 び 8∼ 10時 間 目にお いて 無添加区よ りも高 くなった。
6週 齢 では TI区 が哺乳 の 2時 間後 に無添加区 よ りも高
法
くなったが ,そ の後は両区 ともに同様 のレベ ルで推移 し
ホルスタイン種雄子牛 16頭 を用 いた。哺乳試験 は、ビ
タミン A吸 収試験 (8頭 )と TG肪 吸収試験 (8頭 )の
44%)を 用 いた。
(1) ビタミン A吸 収試験
(3) 幼齢子牛 における乳脂質、特 にビタミン A及 び
2
つに分けた。試験 は、2及 び 6週 齢時 の 2回 実施 した。
WPCと して乳清タンパ ク質単離物 (平 PI、 乳清 タンパ ク質
含量 914%、 BLG 52 0%、 αニラク トアルプミン 255%、
血清アルプミン
た。
TGの 吸収は、乳清タ ンパク質 によって促進 されることが
明 らか になった。また、 この効果は反御動物 へ消化管機
能 が移行す る時期 (6週 齢 )で も認め られるが、幼齢期
(2週 齢)よ りも弱まる傾向が認め られた。 これ らは、
乳清蛋 自質 の主成分である BLGを 単独で添加 した哺乳試
-129-
東 北 農 業 研 究
第
55号
(2002)
験 の研究結果 と同 じであつた。従 って、初乳や常乳移行
果 として普及 に移 した。
期 の乳に多 く含 まれる乳清タンパ ク質が子牛 の脂質代謝
引 用
文
献
に深 く関わって いることを示唆 している。 また、本研究
の結果 によ り、冊 Cが子牛飼料の素材 として有効である
と考え られ る。
1)佐 々木康之、小原嘉昭 1998 反句動物 の栄養生理
学 P33-67
.
2)Kushibikl,
K 2001
S、 lodate,
Effect
4ま
と
め
BLG on plasnla retinol
of
and TC concentrations,
and fatty acid collposition in calves
乳清蛋自質濃縮物が哺乳子牛 の脂質吸収 を促進す る機
能性蛋 自質である ことを明 らかにし、
平成 14年 度研究成
-130-
of Dairy Research 68:579-586
Journal