第 10 回 パネル・データ(6) 村澤 康友 2016 年 6 月 10 日 目次 1 欠落変数バイアス(p. 80) 1 2 個別効果 2 3 パネル・データ 2 3.1 プーリング・モデル(p. 104) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 3.2 固定効果モデル(p. 105) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2 3.3 変量効果モデル(p. 105) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 定式化の検定 4 4.1 プーリング vs 固定効果(p. 107) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 4.2 プーリング vs 変量効果(p. 107) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 4.3 固定効果 vs 変量効果(p. 108) 4 4 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 動学パネル分析(p. 119) 5 6 今日の課題 6 1 欠落変数バイアス(p. 80) 次の重回帰モデルを考える. yi = α + βxi + γzi + ui ここで zi = a + bxi + vi とし,zi を説明変数に含めないと yi = α + βxi + γ(a + bxi + vi ) + ui = α + γa + (β + γb)xi + ui + γvi すなわち xi の回帰係数は β でなく β + γb となる. 定義 1. 説明変数の欠落によって生じる OLS 推定量の偏りを欠落変数バイアスという. 1 2 個別効果 各個体を 2 回観測し,その間 zi は変化しないと仮定すると yi,1 = α + βxi,1 + γzi + ui,1 yi,2 = α + βxi,2 + γzi + ui,2 差分をとると yi,2 − yi,1 = β(xi,2 − xi,1 ) + ui,2 − ui,1 定義 2. 個体に固有で観測を通じて一定の効果を個別効果という. 注 1. 観測できない個別効果は欠落変数バイアスをもたらす. 例 1. 能力,性格. 定義 3. 各個体を複数回観測したデータをパネル・データという. 注 2. パネル・データなら観測できない個別効果を消すことができる. 3 パネル・データ 3.1 プーリング・モデル(p. 104) 定義 4. プーリング・モデルは yi,t = α + βxi,t + ui,t 注 3. 横断面データと同様に回帰分析を行う. 練習 1. c62.gdt は G7 諸国の 1997∼2009 年のパネル・データであり,以下の 2 つの変数をもつ. 1. Deficit(財政収支) 2. Growth(実質経済成長率) 2 変数の関係を散布図で示し,ワードに貼り付けなさい. 練習 2. c62.gdt のデータを用いて Growth を Deficit に OLS で回帰し,財政政策の景気刺激効果の推定結果 が p. 113,図 6-5 と一致することを確認してワードに貼り付けなさい. 3.2 固定効果モデル(p. 105) 定義 5. 固定効果モデルは yi,t = αi + βxi,t + ui,t 注 4. 固定効果はダミー変数で推定する. 2 注 5. 時間方向の固定効果も含むモデルは yi,t = αi + δt + βxi,t + ui,t これは以下の 2 つの効果をダミー変数で捉える. 1. 各個体にとって時間を通じて変化しない効果 2. 各時点において全個体に共通の効果 注 6. gretl で固定効果モデルを推定する手順は以下の通り. 1. メニューから「モデル」→「パネル」→「固定効果あるいは変量効果」を選択. 2.「従属変数」を 1 つ選択. 3.「説明変数(回帰変数)」を選択. 4.「固定効果」をチェック. 5. 必要なら「時点ダミーを含む」をチェック. 6.「OK」をクリック. 練習 3. c62.gdt のデータを用いて以下の 2 つのモデルで Growth を Deficit に回帰し,財政政策の景気刺激 効果の推定結果をワードに貼り付けなさい. 1. 個別効果のみの固定効果モデル(p. 114,図 6-7) 2. 時点ダミーも含む固定効果モデル 3.3 変量効果モデル(p. 105) 定義 6. 変量効果モデルは yi,t = α + βxi,t + vi + ui,t 注 7. 誤差項 vi + ui,t は複雑な構造をもつ. 注 8. gretl で変量効果モデルを推定する手順は以下の通り. 1. メニューから「モデル」→「パネル」→「固定効果あるいは変量効果」を選択. 2.「従属変数」を 1 つ選択. 3.「説明変数(回帰変数)」を選択. 4.「変量効果」をチェック. 5. 必要なら「時点ダミーを含む」をチェック. 6.「OK」をクリック. 練習 4. c62.gdt のデータを用いて変量効果モデルで Growth を Deficit に回帰し,財政政策の景気刺激効果 の推定結果が p. 116,図 6-8 と一致することを確認してワードに貼り付けなさい. 3 4 定式化の検定 4.1 プーリング vs 固定効果(p. 107) プーリング・モデルは yi,t = α + βxi,t + ui,t 固定効果モデルは yi,t = αi + βxi,t + ui,t 検定問題は H0 : すべての αi は等しい vs H1 : 制約なし gretl は固定効果モデルの推定の際に,上記の F 検定の結果も出力する.p 値が有意水準(通常は 0.05)以下 なら H0 を棄却. 練習 5. c62.gdt のデータを用いて,以下の 2 つのモデルで Growth を Deficit に回帰し,それぞれプーリン グ・モデルと比較した定式化の F 検定の結果を確認してワードに貼り付けなさい. 1. 個別効果のみの固定効果モデル(p. 114,図 6-7) 2. 時点ダミーも含む固定効果モデル 4.2 プーリング vs 変量効果(p. 107) プーリング・モデルは yi,t = α + βxi,t + ui,t 変量効果モデルは yi,t = α + βxi,t + vi + ui,t 検定問題は H0 : var(vi ) = 0 vs H1 : var(vi ) > 0 gretl は変量効果モデルの推定の際に,上記の Breusch–Pagan 検定の結果も出力する. 練習 6. c62.gdt のデータを用いて,変量効果モデルで Growth を Deficit に回帰し,プーリング・モデルと比 較した定式化の Breusch–Pagan 検定の結果が p. 116,図 6-8 と一致することを確認してワードに貼り付けな さい. 4.3 固定効果 vs 変量効果(p. 108) 固定効果モデルは yi,t = αi + βxi,t + ui,t 変量効果モデルは yi,t = α + βxi,t + vi + ui,t 4 検定問題は H0 : 変量効果が正しい vs H1 : 固定効果が正しい gretl は変量効果モデルの推定の際に,上記の Hausman 検定の結果も出力する. 練習 7. c62.gdt のデータを用いて,変量効果モデルで Growth を Deficit に回帰し,固定効果モデルと比較 した定式化の Hausman 検定の結果が p. 116,図 6-8 と一致することを確認してワードに貼り付けなさい. 練習 8. c62b.gdt は以下の 4 つの変数の都道府県別パネル・データである. 1. TFR(出生率) 2. LAB(女性の労働力率=労働力人口/ 15 歳以上人口) 3. MAR(平均初婚年齢) TFR を被説明変数,LAB・MAR を説明変数として以下の 4 つのモデルを推定・比較した結果をワードに貼 り付けなさい. 1. プーリング・モデル 2. 個別効果のみの固定効果モデル 3. 時点ダミーも含む固定効果モデル 4. 変量効果モデル(p. 117,図 6-9) 5 動学パネル分析(p. 119) 動学的な固定効果モデルは yi,t = αi + βxi,t + γyi,t−1 + ui,t (yi,1 , . . . , yi,T ) と (ui,1 , . . . , ui,T ) の相関のため,通常の固定効果モデルとして推定できない.差分をとると yi,t − yi,t−1 = β(xi,t − xi,t−1 ) + γ(yi,t−1 − yi,t−2 ) + ui,t − ui,t−1 gretl で動学的な固定効果モデルを推定する手順は以下の通り. 1. メニューから「モデル」→「パネル」→「ダイナミック・パネル・モデル」を選択. 2.「従属変数」を 1 つ選択. 3.「AR 次数」を選択. 4.「説明変数(回帰変数)」を選択(定数項は外す). 5. 必要なら「時点ダミーを含む」をチェック. 6.「OK」をクリック. 練習 9. c62.gdt のデータを用いて以下の 2 つのモデルで Growth を Deficit に回帰し,財政政策の景気刺激 効果の推定結果をワードに貼り付けなさい. 1. 個別効果のみの動学的な固定効果モデル(p. 120,図 6-11) 2. 時点ダミーも含む動学的な固定効果モデル 5 6 今日の課題 練習 1–9 の実行結果をワードに貼り付け,学籍番号・氏名を記入して My Konan で提出しなさい. 6
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