2016年度初級経済史(後半) 後発国の経済発展 第2回 市場経済の発展 2016/06/16 荻山正浩(法政経学部) 資料は下記からダウンロード可 http://www.le.chiba-u.ac.jp/~ogiyama/ 1 市場経済の発展 経済的な豊かさを生み出す原動力 社会的分業:市場経済の発展の原動力 工業化の進行:商工業の発展、農業の比重の低下 後発国の経済政策の目的:工業化の促進 市場経済の発展の成否:政府の役割 経済活動の自由:社会的分業の促進 2 社会的分業の進展 市場経済の発展:市場での商品の売買 原料 燃料 製鉄所 輸入 電力会社 素材 部品工場 部品 電力 肥料工場 小売業者 化学工場 肥料 農機具メーカー 農薬 販売業者 トラクター 農産物 農家 3 社会的分業と産業分化 市場経済の発展前:産業の未分化 農業社会:自給自足を行う農家、市場での交換の未発達 市場経済の発展:産業分化の進展 農業人口の減少:商工業の発達、さまざまな産業の発達 市場経済の発展前 市場経済の発展 農家 社会的分業 企業 自給自足 食料 衣類 市民 住居 農家 企業 4 経済発展の進展と農業人口の減少 日本の就業構造の変化 就業者総数 農林水産業 21,371 23,042 24,928 27,206 39,863 42,855 49,006 51,341 15,525(72.6) 15,637(67.9) 15,394(61.8) 14,724(54.1) 16,731(42.0) 12,927(30.2) 10,842(22.1) 7,315(14.2) 1872 1890 1906 1920 1956 1962 1968 1974 鉱工業 単位;千人、% 商業・サービス・ 運輸・通信・公務 5,846(27.4) 7,405(32.1) 5,486(22.0) 4,048(16.2) 6,624(24.3) 5,858(21.5) 13,301(33.4) 9,512(23.9) 16,284(38.0) 13,305(31.0) 21,393(43.7) 16,430(33.5) 25,264(49.2) 18,411(35.9) 注;就業者数はいずれも男女計。 カッコ内は就業者総数に対する比率。 出所;1920年以前の値は梅村又次ほか『長期経済統計2 労働力』 東洋経済新報社、1988年、第8表。 それ以外は『昭和国勢総覧(上)』東洋経済新報社、1980年、 65頁、2-33表。 5 社会的分業と生産性上昇 生産性(生産効率)=産出額(量)/投入額(量) 労働生産性の上昇:産出額(量)/労賃(労働投入量) 1人1日あたりの生産額(量)の増加 農業社会からの脱皮 農家の生産性の上昇:商工業の発展 農家 農具の改良 栽培法の改良 品種改良 余剰生産物 家族成員 (余剰労働力) 販売 工場 雇用 6 自給自足 Aさん 労働力 100単位 穀物50単位 衣類50単位 Bさん 労働力 100単位 穀物50単位 衣類50単位 農業と機織 の兼業 農業と機織 の兼業 社会的分業による交換 穀物60単位 Aさん 衣類60単位 Bさん 労働力 100単位 穀物120単位 労働力 100単位 農業に特化 穀物60単位 衣類60単位 交換による消 費量の増加 衣類120単位 機織に特化 穀物60単位 衣類60単位 7 社会的分業の効果 社会的分業:それ自体に生産性を上昇させる効果 生産性上昇の4つのメカニズム 1.地理的分業 2.専門化 3.集積の効果 4.規模の経済 生産性 社会的分業 8 1.地理的分業 生産に適した条件:地理的な偏り 気候と農業:バナナなどの熱帯作物、寒冷地での生産は高コスト 賃金と労働集約的産業:衣類などは賃金の低い途上国で生産 生産コストの安い地域:生産拠点を集約 熱帯 バナナ、マンゴー 新大陸(アメリカ、オーストラリア) 広大な耕地:小麦、大豆 先進国 (日本) 途上国(バングラデシュ、ミャンマー) 衣類など 9 2.専門化 企業:特定業務に特化 トヨタ:自動車、グーグル:ソフトウェア 専門的な知識や技術の蓄積:生産性の向上 個人やチーム 長期の研究開発:技術者の育成、新製品の開発 長期の訓練:労働者の能力向上、技能の向上 生産性 専門的な知識や技術の蓄積 10 3.集積の効果 商工業(非農業部門):土地の制約が少ない 都市化:商工業の集積、人々の集住 インフラストラクチャー:生産性の向上 電気、ガス、上下水道、輸送:単位あたりの供給コストの低下 ガス管1km:都市と農村でサービスを受ける人口に極端な違い 商工業就業者 集積 工場 オフィス 都市 インフラの整備 コストの低減、利便性の向上 11 4.規模の経済 専門化:生産規模の拡大が可能 生産規模の拡大:単位あたりの生産コストの急激な低下 大規模発電:発電コストの低下 人力による自転車での発電:高コスト 大型の発電所(火力、水力、原子力):低コスト 大量生産(大量輸送):低コストの生産(輸送) 製鉄、石油製品、化学薬品、タンカー、大型旅客機 単位コスト 生産規模 12 残された課題 政府の役割:政府は市場経済の発展にどう関係するのか 参考文献 標準的な教科書はありませんが、市場経済の発展と政府の 役割との関係を扱った文献として下記をお薦めします。 D.N.ワイル(早見弘・早見均訳)『経済成長』第2版、ピアソン 桐原、2010年 D.C.ノース・R.P.トマス(速水融・穐本洋哉訳)『西欧世界の勃 興』増補版、ミネルヴァ書房、1994年 R.キャメロン・L.ニール(速水融監訳)『概説世界経済史』I、II、 東洋経済新報社、2013年。 13
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