INTERVIEW #2(荒井 由希子)

I NTERVI EW #2
「正解」のないグローバル課 題に、答えを
国連・国際労働機関(ILO)
ジュネーヴ本部 多国籍企業局 上級専門家
荒井 由希子
国連の一員として、Tokyo2020 の一員として、子どもたちのために。
荒井由希子さんのミッションとパッションは、世界を駆け巡っています。
世界中の子どもたちが、学校に通えるように
仕事への情熱が、Tokyo2020とつながる
私の仕事の原点は、学生時代のペルー訪問にあります。慶應義塾
招致に参戦するにあたって
大学の訪問団のメンバーとして、首都のリマ郊外にできた小学校の
は、私の心に響くビジョンがあ
開校式に参列したときのことです。貧しい村なのですが、子どもたち
りました。それは、大会開催ま
が目を輝かせて、学べる喜びを体中で表していました。
あ、これだ。
でに100カ国 以 上の国々で、
世界中の子どもたちが、働くことなく学校に通える社会を構築する、
総計 1000 万人以上の子ども
それを実現させるグローバル・ムーヴメントに自分の生涯をかけて
たちに学ぶ機会やスポーツを
貢献していきたいと強く思ったのです。
その情熱が、児童労働撲滅の
する機会を与える、Sports for
Tokyo2020/S.Takemi
運動をリードする、
国際労働機関(ILO)
での仕事に結びつきました。
Tomorrowというプログラムです。ペルーの小学校で生まれた仕事
一口に児童労働や貧困の問題と言っても、国によって状況は異
への情熱が Tokyo2020とつながって、活動の原動力となりました。
なります。赴く国々に合わせて専門家のチームを作り、対応の仕方を
私はTokyo2020 が、オリンピック・パラリンピックに関わるすべて
変えていかなくてはなりません。
グローバル課題には、唯一の絶対的
のひと、労働者の基本的権利を尊重・促進し、児童労働にはレッド
な答え、つまり
「正解」
がないんですね。大切なことは、一人ひとりが
カードを出せるような、
「フェアプレイ」
を通じたグローバル化に寄与
一つの価値観にしばられずに、オープンマインドで物事を捉えること。
できる大会になるよう切望しています。同時にみなさんには、世界の
その上で、実学というサイエンスに基づき、自分の頭で考えて答えを
持続的開発に、日本が果たしうる役割を考える機会として2020 年
求めていくということでしょうか。
さまざまなバックグラウンドを持つ
大会を捉え、その成功へ向けて協働していただきたいと思っています。
チームメンバーと働けることは、仕事の醍醐味でもあります。
また、2013 年には半年ほど、東京 2020 オリンピック・パラリン
ピック招致に関わらせていただき、国際部ディレクターとして主に国際
ロビー活動に従事しました。中立な立場の国連職員としてではなく、
チームジャパンの一員として仕事をする貴重な経験になりました。
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慶應義塾の
Web サイト内で
より詳しい内容を
掲載しています。
(インタビュー:2016 年 3 月)
荒井 由希子 Yukiko Arai
1996 年、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。世界銀行を経て、2001 年、国際労働
機関(ILO)に入り、現在はグローバルサプライチェーンにおける労働問題、企業の社会
的責任(CSR)に携わる。2013 年には、東京 2020 オリンピック・パラリンピック招致
委員会国際部ディレクターとして活動。
プレゼンター、質疑応答の進行役も務める。