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 DDC−NDCの変換対応表について
分類付与支援データベースの共同作成を目指して
福田博同
はじめに
番号変換表である。本稿では,我々が試みに作成
丸山昭二郎,他編「DDC LCC NDC図書分類
した「DIDファイル(DDC−NDC Inter−rela−
の記号変換」1〕(以下「丸山変換」と言う)では,
tional Dictionaryの仮称)「数学編」」をもとに
DDC,LCC,NDCという3つの分類体系の構造
様々な問題点を分析する。
と自動変換の可能性を示唆している。その中に,
「全国の図書館で使用している分類表」(第8回整
1.何故,「数学編」を作ったか?
理技術全国会議1982.3.29の報告)を載せてい
学問の全分野についての専門家,と言う図書館
る。それによると,大学図書館(801館)では,
員はおそらくいないと思われるが,大学の総合図
NDCの7版を使用している館が351館
書館職員は全ての学問を分類しなければその職責
(43.8%),同8版が133館(16.6%)あり,全体
を果たすことができない。加えて,洋書に関して
の6割はNDCを使用している。もとより,この
云えば,語学のハンディを負っている。我々が洋
調査は古く,また,和洋の区別を抜きにした調査
書を分類するには,カバーの紹介文,序文,目
であるが,「洋書に対してのDDC使用率でも全
体の6.9%55館」とDDCの普及率の低さを報告
し,全体の論調においてNDCの普及率の高さを
強調している。現在ではMARCの普及に伴い,
さらに多くの大学図書館でNDCを使用している
次,DDC番号,LCのSubject Heading(以下,
SHと言う)等を辞書を引いて,その主題が学問
分野のどこに位置するか,その親主題は何か,と
の学問分野の体系理解が必要である。その上で,
必ずしも学問分野の体系と一致しているとは言え
と思われる。
ないNDCを当てはめて分類を付与しているのが
このようにNDCが普及した現在,既存の
現状であろう。
MARCを利用して自動的に分類を付与する提案
我々が共同で使用していた一冊のDDC19版
が「丸山変換」のみならず種々試みられている。
は,カバーが破損する程使い古されていたが,日
例えば,ある書店では社内的に自動変換システム
本語の訳の書込みもなかった。しかし,共同で利
を組んでおり,石川徹也は「NDCを対象とする
分類番号付与支援システムとNDCのデータベー
用するので,逆に日本語の訳やNDCを書き込ん
ス化」2〕を著している。また,国立大学図書館協
した。案の定,非常に効率的となった。しかし,
議会学術情報システム特別委員会ネットワーク専
」冊の本は他人が利用している時は使えないし,
門委員会の第2次報告では,学術情報センター
辞書を引くのは面倒である。では,オンラインで
(以下,NACSISと言う)への要望の中に
出来ないか,と考えた。さらに,何故,ある主題
「デューイ十進分類表から日本十進分類法への記
がこのDDCとなり,このNDCになるのか,そ
号変換を望む声のあることも注目すべきであろ
のプロセスも見られないか,と考えた。そして発
う。」と述べ,市川美知代は文献1青報センター・セ
想を逆転して,DDC−NDCの自動変換システム
ミナーの演習課題で「DC/NDC変換テーブルの
を作成するには,単なる番号だけの自動変換より
作成」をレポートした引。
も,その過程を表示することこそ,図書館員の教
「丸山変換」では,3分類体系の構造の違いの
育にも役立ち,大きな目で見て効率的ではない
だ方が効率的ではないか,と考え,書込みを開始
分析を主とし,石川論文ではシステム化に主眼を
か,と考えた。
置き,また書店の変換システムはDDC/NDCの
本格的にオンラインで行う前に,とにかく作成
80
大学図書館研究XXXlV(19896〕
してみよう,と作成したのは数学の対応表であっ の3表である。(表示例で表1は英語SH順,表
た。「数学編」作成の動機は,もちろん日本語の 2はDDC順である)総主題語数は503レコー
主題を見ただけでもちんぷんかんぷんで,分類付 ド,入力項目は次のとおりである。
今に最も時間がかかるからであった。本表を簡易 11入力項目
に作成するには,dBASEIIIのような簡易 ①DDC番号(複数のDDCが付与される場合,
DBMSで作成するのが一番効率的であるが,本 第2のDDC番号まで)
学図書館には現在,簡易DBMSが無く,ワープ ② 学問分野の主題英語(以下「英語SH」と言
口で作成した。作成に要した時間を換算すると, う)
概ね,120時間である。 ③ 同じく主題日本語(以下「日本語SH」と言
う)
2.数学における入力手順 ④ 日本語SHの上位概念である主題(以下
手始めに作成した数学の対応表は,主題英語ア 「日本語親主題」と言う)
ルファベット順,DDC順,主題日本語五十制1買 ⑤DDCの主題英語(親子関係を含む)(以下
表1英語SH順「DIDファイル数学編」
/はDDCのファセット記号 ソートのための主題番号 a−a1
ノ はuUしりノ ∫τツr百」勺
ノー1、∪ソ’こαリリソ」二死昌宙勺 目一aI
DC
515.983
主題 英語
(DCのSHと違う場合:SH:)
abelian functions
主題(学問分野)
親主題
アーベル関数
DCの主題
(=は親子関係)
elliptic f㎜ctions
NDC
413.57
アーベル関数
512/.2
Abelian group
アーベル群
0402群論
512/.33
Abelian variety
アーベル多様体
0805代数幾何学
ル関数
abelian groups
4n.64
アーベル群
abstract alge・
411.8
代数幾何学
多様体
braic geometry
absolute analysis
512ノ.02
abstract algebra
413.51
抽象代数
abstract a1gebra
411.6
抽象代数
515.7
楕円アーべ
abstract ana1ysis=
抽象解析・位相
functional anal一
toPologica1algebra
代数
ysis1abstract
実関数論
現代代数・
群論
415.7
位相幾何位
相代数
ana1ysis
515.785
abstract harmonic analy一
抽象調和解析
abstract har一
SiS
abstract integral
415.5
抽象積分
位相・関数
解析
mOniC analySiS
415.5
位相・関数
解析
515.783
abstract measure theory
abstract mea・
415.3
測度論
412.3
解析的整数
sure theory
512.73
additive number theory
加法的整数論
0505整数論
additive Zahlentheorie
(独)
512.9μ4
analytics:addi一
論
tive number the・
0ry
additive process
加法過程
1709確率論
adele&idele
アデールと
0320代数学
イデール
pedagogical alge・
417.1
確率論
411
代数学
bra:theory of
from&a1g.invar・
iant
81
DDC−NDCの変換対応表について
adjoint differential equa・
515.3/5
随伴微分方程式
di fferenti a l
413.6
,微分方程式
equatiOn
tiOn
differential equation:DC
515
advanced ca1culus
calculs
413
解析学
differ㎝tial geome・
414.7
微分幾何べ
ca1culs:DC
516.3/6
affine differential geometry
アフィン微分幾
514.74
differential geometry:DC
何学
try topologジ
クトル
global ma1ysis
アフィン幾何学
afine geometry
516.4
0615ユークリッド
affine geome一
幾何学,射影幾何
try
algebra
512
a1gebra
代数学
0301代数学
512
algebra
多元環
0310代数学
a1gebra and logic,a1ge一
代数学と論理
511.3
symbolic1ogic
a1gebra of polynomials:
射影幾何学
411
代数学 X
411.72
環論,多元環X
410.96
記号論理学
411.2
初等代数字
数理化論
braic logic
512.942
414.4
pedagogical
多項式の代数学
SH:Polynomials
a l g e b r a=
POlynOmia1初等
代数=多項式
M nr’士日目日赤目1ミ白■時ト 、〕 k l +、ワ_カ
NDC相関索引表でヒットしたマーク
表2
/はDDCのファゼント記号
ノはuリしりノアてツrコロ万
DC
’
515!
主題 英語
(DCのSHと違う場合:SH:〕
DDC順「DIDファイル数学編」
ソートのための主題番号NDC相関索引表でヒットしたマーク
ノー「り’こ〃り士咽苗万川I」㌧11目閑米「1双ししツ「しに寸.ソ
親主題
主題(学問分野)
DCの主題
(=は親子関係)
NDC
calculus
413
解析学
analysis
413
解析学 X
analysis
413
解析学
1004解析学
analysis
413
解析学
1017解析学
analysis
413.1
解析学基礎
advanced ca1culus
ca1culus:DC
一
515
ana1ysis
解析学
515
calculus
計算
515
convex ana1ysis
凸解析
515
length&area
長さ,面積
1001解析学
極限論
lo㎎ueur et aire(仏)
515.2
Teichmueller space
タイヒミュラー
1115複素解析学
空間
515.222
dimension
次元
0221集合,位相,
圏
515.223
ana1ytic space
解析空間
413.52
複素関数論
analysis:cf.
dimension
415.2
位相空問論
miVOmity&
413.58
analySiS:9en一
era−itieS
1120複素解析学
次元論
multifomity
515.223
515.43?
Riemam surface
リーマン面
1111複素解析学
a n a l y s i s:
uniWOmtity:Cf.
Reaman surfaces
82
多変数複素
関数論 X
413.5
関数論解析
多様体
大学図書館研究XXXlV(1989.6)
515/.23
problem of embedding
analySiS:
埋め込みの問題
415.7
位相幾何
位相代数
operations㎝
fmCtiOnS
515.235
evaluation of functions
関数値計算法
1510数値解析
Auswertung von Fun一
evaluation of
418
計算法
fmCtiOnS
O07.1
情報理論
evaluation of
413.5
関数論解析
ktionen(独)
515.235
vector valued integral
ベクトル値積分
1208関数解析学
多様体
functions:
vector・valued
functions
515.24
SerieS
級数
1019解析学
analySiS:
413,2
級数論.X
415
位相数学
413.59
代数関数論
SequenCeS&
Reihe(独)
SerieS
515ノ.24
uniform covergence
一様収東
0223集合,位
analySiS:
相,圏
SequenCeS&
SerieS
Fourier series
フーリエ級数
515.243
infinite series
無限級数
515.2433
power series
ベキ級数
515.243
1023解析学
1101複素解析学
SerieS
X
analySiS:
SerieS
413.2
級数論
analySiS:
413.2
級数論
413.51
実関数論
413.1
解析学基礎
power series
serie de Puissances,serie
entiere
515.243
Fourier analysis
Fouries&
フーリエ解析
harmonic
analysis
515.2433
harmonic analysis
調和解析
1025解析学
SequenCeS&
極限論 X
series:ha r一
mOniC ana1ySiS
515ノ.25
almost periodic fmction
概周期関数
1026解析学
analySiS:
413.5
多様体
equatiOnS&
fmCtiOnS
515ノ.25
515.7
functional equation the一
ana1ys.:equa・
関数方程式論
関数論解析
415.53
関数方程式
413.5
関数論解析
tiOnS& funC・
0「y
tional analysis
515ノ.25
generating fmction
母関数
1402特殊関数
equatiOnS&
functions
511/.6
多様体
combinatorial
analysis
515.253
indetemimteequati㎝
unbestimmte G1eichmg
(独)
不定方程式
0509整数論
equatiOnS&
fmctions:by
412.3
解析的整数
論
property:in・
dete㎜三nant
83
DDC−NDCの変換対応表について
「DDC主題」と言う)
⑥NDC番号とその用語(以下「NDC索引語」
と言う)(複数のNDCが付与される場合,3
個まで)
⑦NDC相関索引表に記載の有無(調査の為)
である。
2.入力手順
今まで調査したものをDDC番号順,および
日本語親主題順にソートし,それぞれ出力す
る。それと数学辞典3版を参考にして,数学出
身の図書館員にNDCを付与してもらう。
DDC番号順リスト,英語SH順リスト,日本
語SH順リストを出力して検証して,終了す
る。
手順は5つの過程に分かれている。
①辞書の選択
3.問題点の把握
岩波数学辞典/日本数学会編第3版(以下,
さて,手1頃を詳しく述べたのは,問題点の把握
数学辞典3版と言う)を利用した。日本語親主
と,オンライン入力での手順を明らかにするため
題は日本数学会で21の部門分けをしており,
である。以下,手順に従い問題点を把握しよう。
数学史を除く20部門405項目の日本語SH
1.辞書の選択
に,経験上皮く出てくる98項目を加え,503
本学図書館では,全学の図書を附属図書館に集
項目とした。
中配架し,全面開架方式とNDCを採用している
ので,学問分野とNDC体系との違いが研究者の
②人力作業
辞書を見て,503項目の日本語SH,英語
SHおよび英語で類推できない仏語SH,独語
数学の如きは「NDCで分類しないで頂きたい,
SHを入れ,学問分野の親主題順の番号(ソー
NDCだと困る。単に著者順に並べる方が我々に
トのため)と日本語親主題を入れた。
は有り難い」という論もよく耳にする。これは一
③NDCの付与
理ある声で,今回,数学の変換表を作成していく
幸いTULIPS(筑波大学附属図書館情報処
理システム)にはNDC8版の相関索引表が
データベース化されており,TULIPSのNDC
索引語検索で日本語SHと一致する133項目
(26%)の分類を付与した。残りの370項目
過程で,NDCの二つの欠点が目についた。すな
(74%)はひとまず置いておく。
主題が登場するのは当然で,そのため,辞書は常
④DDCの付与
に新しくして置く必要がある。数学辞典2版が
20年前の1968年,同3版が1986年に発行され
た。現時点で受け入れる図書は,数学辞典2版で
英語SHをソートして,冊子体のDDC相関
索引と照らし合わせて,315項目(63%)の
DDC番号とDDC主題を入力する。
目につき,しばしば図書館へ苦情が呈せられる。
わち,「丸山変換」でも指摘しているように仙,
NDCは構造的に新主題を入れる余地がない点
と,DDCと異なり,学問分野の体系を明確には
考慮していない点である。学問の発展に伴い,新
はまるで参考にならない。
残りは188項目(37%)である。幸い筑波大
「辞書の選択」には,どの辞書を選択するのか
学ではUTOPIA(筑波大学学術情報処理セン
問題も残っている。数学辞典のように「日本数学
ターの作成している文献情報検索システム)の
会」が学問体系順の日本語項目に英語・独語,仏
データベースがあり,LCMARCから,115項
(23%)を検索した。この手順はLCMARCを
英語SHで検索して,それぞれ最新の30件ま
語を加えて記述し,索引を付けている辞書はまれ
でのDDC番号と英語SHを出力する。DDC
ならないと言う前段階が加わる。
の体系から英語SHに該当するDDC番号を確
足していく。疑わしいものは2番目のDDC番
2.学問分野とNDC分類
NDC8版やDDC19版の作成されたのは1978−9
号の欄に入れて置く。
年である。現在の学問体系から見ると,当然なこ
⑤再度NDCの付与
置いておいた,370項目(74%)のNDCを
付与する。
84
である。他の分野では,ハンドブックや要項集等
を比較検討して学問分野の体系を理解しなければ
とであるが,新らしい主題に対応できない。
今回作成した「数学編」で見ると,NDCでは
主題項目全体の3分の2が相関索引表で検索でき
大学図書館研究XXXlV(1989.6〕
なかった。これに対して,DDCは同じ頃作成さ
③NDCの相関索引表を最新の学間体系に対応
れた分類法でありながら;学問分野の体系すなわ
できるようメインテナンスする組織をつくるこ
ち,disciplineと,主題すなわちsubjectを厳密
に区分して,出来るだけ詳細な相関索引表を作成
と。
する方針をとったので,直接検索できなかったも
3.入力方法
のは主題項目全体の約3分の1だけであった。
入力方法は2種類ある。1つは,ある分野をま
とめて入力していく方法と,もう1つは,個々の
又,新主題を入れる余地をその体系の中に組み込
図書の主題やDDCを検索してNDCを付与して
んでいるので,主題とDDCの同定がしやすく,
いく方法である。筆者は情報処理の業務を行った
全体の9割は容易に同定できた。
ことがなく,機械的な互換について詳しくないの
本学ではSubject Heading(件名)による検索
で,方向だけを示唆しよう。
システムを用意していないが,NDC分類の相関
索引語による検索も提供しておりNDC分類から
目標はDIDファイル(DDC−NDC Inter−
relational Dictionaryの仮称)を作成することで
の検索も可能としている。この方法は,個々の図
ある。DIDファイルのフィールドには,○個別
書に件名を入れ,件名からの検索を可能とする方
ID O DDC番号(複数)○英語SH○日本語
法に比べると次善の策である。個々の図書に件名
SH O日本語親主題○DDC主題英語○NDC
を与える作業は人的に非常な困難を伴う故に,自
番号(複数)O助記性の有無,が必要である
館で与えている大学図書館は多くないと思われ
る。多くの大学図書館で利用しているNDC分類
先ず,用意されている,若しくは,これから用
意されるデータベースと利用できるフィールドを
は書架分類であると同時に書誌分類でもある。第
表3に列挙する。
一の主題は第一NDCを与え配楽記号の頑として
先ず,これら全てが利用できるようになった場
おり,書誌分類としては分類の重出を行い第二,
合を想定しよう。現時点でDIDファイルの作成
第三のNDCを与えていると思われる。
処理を行う場合,現在利用できないデータベース
多面的な検索の実現と言う,コンピュータ時代
上の処理については,機械的な処理ではなく,冊
における書誌分類の在り方に対応するためにも,
子体の辞書や表を見て担当者が直接必要項目を入
NDC分類が現在の学問体系の主題項目を補える
力していけば良い。 (1∼3)図は入力プロー
よう充実される必要がある。また,学問の発展に
チャートである。
伴う主題語のメインテナンスも必要であろう。
フローチャートの方が理解しやすいと思うが,
DisciplineとSubjectを区分し,Disciplineにつ
いての主題体系の理解があって始めて我々は自信
特定主題の分類付与の例で手順を概略すると以下
のとおりとなる。
を持って分類し得るのであるが,この作業が実は
①日本語SHを入力し,学術DBで日本語親
一番困難な点である。幸いなことにNACSISで
主題(前節で強調したように主題階層を加えて
は次の事業に「文部省学術用語集」のデータベー
頂く)と英語SHを検索する。
ス化を計画しており,各学会の協力により最新の
学術用語のメインテナンスが可能と思われる。そ
②国会件名でNDC番号を検索する。
③データを正しくし,一定の法則でNDC番号
して,この学術用語データベースに現在は用意さ
の桁を揃え,DIDファイルに取り込む。
れていない,それぞれの学問分野の体系づけを加
えて頂ければ,このデータベースからの取り込み
④取り込んだ英語SHからDDC相関ファイル
の英語SHを検索し,DDC番号とDDC英語
も可能と思われる。
SHとを表示し,データを正しくし取り込む。
では,ここまでの結論を要約しよう。
⑤ヒットしない場合は,LCMARCの英語SH
①日本の各学会の最新の学間体系と学術用語を
を検索し,英語SHとDDC番号を辞書等を参
データベース化すること。
考にして同定していく。
②学問分野の体系とDDCやNDC等の分類体
このような手順となるが,図1−3のフロー
系は異なる。その違いを明確にすることが肝要
チャートでは「目録中の分類付与」の処理も一緒
であり,その上で,最善の分類を付与すること
に記入しているので若干複雑になっている。
85
DDC−NDCの変換対応表について
表3利用できるデータベース名
データベース名
データベースの説明
利用可能フィールド(将来可能も含む)
●LCMARC
米国議会図書館機械可読目録
O LC分類番号 ①英語SH
②DDC番号(LC−DDC番号と言う)
●JPMARC
国立国会図書館機械可読目録
③日本語SH④NDC番号
○国会図書館件名標目表
国会図書館編集の日本語SHの体系
表でDB化済み。
③日本語SH④NDC番号
NDC相関索弓1語のテーブルで筑波
④NDC番号⑤NDC索引語
(以下「国会件名」と言う)
●NDC相関索引テーブル
(以下「NDC相関」と言う)
○OCLCのDDC相関索引表
(以下「DDC相関」と言う)
大学で利用中
OCLCはDDCの版権をForest ①英語SH②DDC番号⑥DDC親主題
Pressから買収し,データベース化
して分類付与に利用している。
△NACSlS学術用語DB(仮
称)
文部省学術用語のデータベースで,
NACSISで構築を計画中
(以下「学術DB」と言う)
③日本語SH①英語SH
△⑦日本語の親主題(体系付けを組み込
めば利用可能と思われる)
●は現在筑波大学で利用中,○はシステムの互換があれば利用可能,△は将来利用可能
4.その他の問題点
5.Dmファイル利用の有効性と入力組織
以上が取込みの手順であるが,今まで骨格を捕
以上,「数学編」を事例としてDIDファイル作
らえるために意図的に省いた問題点を述べる。
成上の問題点を論じたが,一番大きい問題は
DIDファイルを作成する組織の問題である。ま
ず,苦労して作成するDIDファイル利用の有効
1.助記性の有無の問題点
助記性については,「DDC相関」用に桁を揃
え,DDC番号を入力する段階で助記性が有るか
性について,若干述べよう。
否かの識別番号を付与すると良い。単純なもの,
1.DIDファイルの有効性
例えば地理区分(例:DDC373.3−9=Add
① 分類付与作業の効率化,及び専門家教育
”Areas”notation3−9from table2to base num−
本学の洋書係で「数学編」を利用した結果,数
ber373の例)や時代区分,あるいは形式区分に
学の分類を考えるのに,正確な時間を計った訳で
ついては,DDCとNDCのテーブルを作成して
対応付けをする。複雑なもの,例えば,Add to
はないが,概ね従来の3分の1程度の時間に短縮
出来,また,自信を持って分類できた,と言え
base mmber623.81204the mmbers folIowin9
る。このことの持つ意味は大きい。全国の大学図
623.8202−623.8205,e.g、,design of submersible
書館で洋書目録業務に従事する人数を掛けると,
craft623.8212045のようなものについてはテー
全国的規模ではかなりの時間短縮と図書館員の専
ブル表を作成せずに,623,812で区切り,再区分
門教育に役立つと思われる。館員教育に付言する
しないでおく方法を取る方が賢明である。
と,現在,図書館界には個々の分類法の構成等に
2.独自分類について
ついての図書は見受けられるが,具体的な分野ご
ある図書館独自の分類については,NACSIS
との比較対応表が無く,本ファイルは望まれる基
の書誌ファイルと所蔵ファイルの関係のような関
礎的なデータともなろう。
係を作ると良いであろう。つまり,書誌ファイル
②国際協力に寄与する
に当たるのがDIDファイルで,所蔵ファイルに
日本では,外国のデータベースを利用するだけ
当たるのが独自分類ファイルとする。独自分類
で提供していないと批判されており,本年2月に
ファイルのフィールド名には個別ID,各図書館
はNACSISでも目録情報を実験的に海外に提供
したとの報道があった。DIDファイルを日本の
ID,各図書館分類番号が含まれ,個別IDでリン
クすると良い。
中枢的な書誌ユーティリティで作成した場合,次
のことが可能となる。すなわち,ネットワークを
組んだ外国の図書館は,JPMARCやNACSIS
86
大学図書館研究XXXIV(1989.6)
1内は目場中の分還付与の況れ START
LC㎜識
糊
D皿湘関 国会件
”㎜㏄ ㎜C相 DIDフ
■
目録中の分類付与(処理2)
特定立回の分類付与処理1〕
・1 ノ\
①日本語醐を人力する
学術D8と国会件名で①日本語S眈検索する
Bでヒットするか?
を
Y 3
中止するか?
①と、学欄8の②日本語親主題⑨英語SHを表示する
N Y
名でヒットする・
4
Y
辞書等告参考にして、④㎜㏄番号を入力する
①と、国会件名の④㎜二番号を表示する
一定の法則で④㎜=番号の桁を揃える
デタを修正する
一」夕は正しいか?
Y
①と、②日本語親主知⑧藁語SH④㎞番号をDIDファイルに取り込む
2の測tであ、
N 処1里ブラック.を
という処理フラッグ1がないか?
棚馴ヒする
A
Y
図1
和書目録を利用する際,DIDファイルで日本語
SHやNDCを検索して,かれらの使用している
DDC分類(あるいは,LCの分類)を付与でき
2.入力組織について
DIDファイルの作成方法には,個別的に行う
る。その意味でも有効と思われる。
①非組織的な方法
方法と,全国的に行う方法の二つの方法がある。
先ず,個別的に行う方法として,個人で行う方
87
DDC NDCの変換対応表について
⑥
取り込ん。だ⑧棄語㎝から㎜=棚1の ⑧囎書釧を検表する
処陸1の況松という処理フラッグ1をたてる
⑥
でヒットするカ、?
⑨藁藷SHで㎜㎜Cを最新30件検案する
Y
⑤㎜二番号、⑮㎜rの英語主知を表示する
③蝿書SH(㎜ と⑤・〕0C番,号(㎜表示
⑤㎜=番号の桁を備える
詳説も参考にして、該当の⑨薫蓋SHと⑤㎜=
番号を穂跳電定し、桁を備えて、それぞれ入力
D㏄本体を見て⑥㎜=英露主副を入力する
⑤㎜:番号および、⑥㎜:蟷書主題をDmファイルに取り込む
㎜のためDmファイルを表示する
正しいか?
仁正して、DIDファイルに取り込む
N1
処理フラッグ1が
⑧廃語酬で学欄犯の⑧葵聾酬を検索する
あるか?
Y;一・一
でヒットするカ、
処産フラッグを初刷ヒする
Y
静□ぐを参考に
①日本語釧を入
力する
1㎜肋・
④
Y
⑧嬉酬と①日本語馴を表示する
Y
別の
N
処理に移るか?
N
しいか?
書圧入力
①を敷り込み煙2の直れであるという螂!フラッグ1をたてる
1ミニN1⊃
図2
法と,その延長線上にある,パソコン通信やフ
することは,迅速性や,作成された辞書の正確
ロッピィの郵送等の個人的な繁がりで分担して作
性,あるいは,学問の進歩に対するメインテナン
成することが考えられる。こちらは,個人がこつ
スの点で問題がある。
こつと地味に作業するので非能率的で,又,いつ
②組織的な共同人力
DIDファイル利用の有効性については,全国規
までかかるか分からない。しかも,個人的に作成
88
大学図書館研究XXXIV(1989.6)
A
LC”㎜Cを使い書名や書酷コードで図1吃検鮒る
4
ヒットするか9
書院事項を表示する
のD㏄番=号がある・
4
.D㏄相関用に桁を揃え、⑤D㏄番号を入力
Dmファイノレを検索する
⑤0㏄番号でD鰍を検索する
瞬号があるか?
全フィールドを表示する
⑤㎜二番号と㎜㎜識の⑧英語SH(複鋤
とD㏄相四の⑤㎜曙号と⑧英語㎝を
表示する
{あるかg
Y
しCl㎜℃と㎜= N
相聞で一致する⑧輿薯釧は
俗正し取り込む
あるか?
Y
図3
法が好ましい。以下に全国規模の入力組織を構築
③NACSIS職員の負荷の問題。
④メインテナンス
するための問題点を挙げる。
最新の知識に変更可能とするメインテナンス組
模の効率化を前提とし,全国規模の組織的入力方
①作成主体組織の問題。
織の問題,などがある。
国立大学図書館協議会のNACSISへの要望に
筆者としては,DIDファイルは作業量の多さ
ある「デューイ十進分類表から日本十進分類法へ
にも関わらず,充分有効であると確信しており,
の記号変換を望む声」についての調査検討委員会
NACSISを中心に推進している学術情報検索
同協議会から,NACSISへ要望する項目に加え
て頂きたいと願うものである。また,DIDファ
イル作成のためにもNACSISの組織を拡大され
ること,更に,NACSISが中心となって,各学
を同協議会に設置するか,否か。
また,同協議会で要望した場合,文部省・
サービスで提供すべきデータベースに組み込む価
会や日本図書館協会,或いは,国立国会図書館等
値が充分あるか,否か。
へ本事業の有効性について協議され,その上で実
②学会の協力
行されること,を願うものである。
分類の基となる辞書を作成する各学会の協力が
如何に得られるか。
89
DDC−NDCの変換対応表について
6、現在でも可能な分類のための辞書作成
ペルミスチェックや教育用チューターシステムは
以上,DIDファイル作成手順から入力組織ま
でを述べたが,現在のNACSISの目録システム
でも,NACSISの許可があれば可能な分野もあ
パソコンの世界では常識となっている。)この過
程の全面的な機械化の実現性は遠い将来として
る。それは,著者の典拠ファイルに「哲学者」,
ジやスペルミス等のチェック表示システムで,教
「宗教家」,「建築家」,「芸術家」,「文学者」があ
育し,チェックさせるシステムは,現在でもソフ
る場合,フィールドを設けるか,肩書や役割に次
例のようにNDCを付与する。〔例①:Pasc台1,
ト開発によって充分可能である。TULIPSでも
データチェックプログラムで目録規則に会った
BIaise1623−1662=パスカル1623−1662(NDC相
データであることをチェックし,データの違いの
も,HELP機能によるAACR2文法のメッセー
関)=フランス哲学(日本語SH)=135.2(NDC
メッセージ等を出し,人間に判断させる処理や,
番号),例②:Picasso,Pab101881−1973:ピカ
書誌統合プログラムで重複データがないかどうか
ソ1881−1973=スペイン・ポルトガル芸術史=
をチェックする賢いプログラムを栗山正光5}が作
723.36〕なお,NDC相関索引に無い場合,岩波
成した。
西洋人名辞典を参考にする。
DIDファイルは教育システムとして,分類作
業の軽減化に役立てられるであろうし,今後,知
おわリに
的処理の研究が図書館界でも活発になることを
本稿で述べたような分類作業の効率化について
願って,本稿を終わりとしたい。
は,今後の目録・分類の機械処理の2大課題の一
付記:本稿作成中DDC20版がOCLCから発行
つであると言えよう。一つはパターン認識を応用
された。DDC20版の図書が出回った場合,その
した入力作業の効率化であり,もう一つは,「目
変換もこの作業の中に入るであろう。
録・分類のより知的な処理」(以下,知的処理と言
う。)による効率化である。前者は,TOSFILE
などの光ディスクファイル装置の「手書き文字自
動読み取り機能の研究」の実用化により可能とな
注
1)
丸山昭二郎・丸山泰通編『DDC,LCC,NDC
2)
石川徹也“NDCを対象とする分類番号付与支
図書分類の記号変換』東京,丸善,1984.
る。方法は,タイトルページ等を複写して入力し
た画像情報の意味をパターン認識辞書や構造解析
援システムとNDCのデータベース化” 『現代
辞書で解析し,自動的にコード情報としてそれぞ
れのフィールド値に格納し,従来の目録情報との
の図書館』Vol.25,No.2.1987.p.91一
3)
互換を可能とする研究である。
市川美知代“DC/NDC変換テーブルの整備”
『文献情報センターニュース』No.11.1986−3,p.
一方,知的処理とは,目録規則,各国語の意味
17.
や文法,分類規則等を機械が判断し,適切な目
4)
丸山 前掲書p.41−43,162一
録・分類をコンピュータにより自動的に作成する
5)
粟山正光“オンライン目録データの晶質管理
こと,とでも定義されよう。知的処理には,例え
一筑波大学附属図書館の場合” 『大学図書館研
ば目録の分野では,機械にAACR2のパターン
究』No.26.1985.5,p.131
や,大文字使用法,語学辞書,文法等を登録して
置き,構造解析等を行い,機械的にAACR2に
マッチングさせ,スペルミスや大文字便用法の
チェックを行う処理等が考えられる。(力も,ス
90
<元.4.26受理.ふくだ・ひろあつ
筑波大学図書館部〉