制御&監視向け! 小型ネットワークCAN通信入門

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制御&監視向け!
小型ネットワーク CAN 通信入門
第 6 回 最新テクノロジ:メニ−ECU時代は高速化必須! 実験室で8MbpsのCAN FD
今回は,CAN プロトコルの後継として策定された
新しい CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)プロ
トコルについて紹介します.
CAN の課題…通信速度 1Mbps じゃ
もう間に合わない
CAN の普及に伴い自動車の電子制御化が進んでい
ます.それにより,ノード間でやり取りする情報も膨
大になることで,CAN バスの帯域の不足が課題となっ
ています.
CAN の通信速度は最大 1Mbps となっていますが,
安定 的 で 安 全 な 通 信 を 考 え る と, 実 際 の 運 用 で は
500kbps 以下で使うケースが多いです.
また,バスに掛かる負荷が高い状態だと遅延が大き
くリアルタイムな制御が困難となるため,実質,30%
程度までが最適と言われています.
現状は,帯域が不足した際には,複数のバスに分割
することで負荷を分散して回避してますが,それも限
界に近づいてきています.それに加え,さらなる電子
制御化や利便性の向上には,より多くのデータを高速
に扱うことができる通信プロトコルが必要となってき
ています.
これまでの CAN 高速化の取り組み
● その 1:FlexRay…最高 10Mbps まで対応で
きるが専用ネットワークを作らないといけない
10 年前に今の CAN をしのぐ全く新しい方式を採用
した次世代の車載ネットワークとして,通信速度を最
大 10Mbps に対応した FlexRay という通信プロトコル
が注目を集めました.
残念ながら CAN プロトコルとの差異が大きく,新
たにネットワークを構築する必要があります.移行の
ために必要な条件も多いということから,日本国内で
は普及までには至らなかったというのが,これまでの
状況でした.
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田代 有宏
● その 2:TT-CAN…スケジューリングが難しくて
通信速度が向上できなかった
CAN バス上で,おのおののノードからメッセージ
が同時に送信されないように送信できるタイミングを
スケジューリングすることで,通信帯域を拡大しよう
とする TT-CAN(Time Triggerd CAN)規格も登場し
ました.
ISO 11898-4 として定義されているこの規格は,ス
ケジューリングのために各ノード間の通信をかっちり
と決める必要があることや,従来 CAN と同じ形式の
フレーム構成であるため通信速度は同じということか
ら速度が向上できず,普及拡大には至りませんでした.
最高 8Mbps 以上!?
高速 CAN FD 通信プロトコル
● 規格
CAN FD は,CAN の課題となっている帯域不足を
解決するためにロバートボッシュ社によって提唱され
た新たな通信プロトコルです.
ISO 11898-1:2015 として新規に制定されています.
新 し い ISO 規 格 で は 従 来 の CAN の フ ォ ー マ ッ ト を
“Classical CAN frame format”
, 新 し いCAN FDを
“CAN Flexible Data Rate Frame format”として分け
て定義しています.
● CAN FD と CAN との違い
CAN FD 規格のベースは従来の CAN 仕様なのです
が,似て非なるものとなっています.
CAN と CAN FD の機能面での主な違いは以下の通
りです.
・転送可能なデータ長を最大 8 バイト(CAN)から最
大 64 バイト(CAN FD)に拡張
・CAN の通信速度は最大 1Mbps だが,CAN FD で
は 2 種類の通信速度が設定でき,データ領域の通
信速度の高速化が可能(例えば 2Mbps,4Mbps,
…10Mbps など)
.
第 1 回 I2C とイーサの中間くらい ! ローカル機器間ネットワーク向け(2016 年 1 月号)
第 2 回 常時接続イメージ! 制御向け CAN 通信の特徴(2016 年 2 月号)
第 3 回 CAN 通信の物理層(2016 年 3 月号)
2016 年 6 月号