日本経済:10~12月期2次QEは小幅上方修正にとどまる

Mar 8, 2017
No.2017-013
伊藤忠経済研究所
主席研究員 武田 淳
主任研究員 石川 誠
Economic Monitor
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日本経済:10~12 月期 2 次 QE は小幅上方修正にとどまる
10~12 月期の実質 GDP 成長率は 1 次速報の前期比+0.2%(年率+1.0%)から 2 次速報では+
0.3%(+1.2%)への小幅上方修正にとどまった。設備投資の上方修正を公共投資や在庫投資の
下方修正が減殺した。輸出入は修正なく輸出頼みの成長という姿は変わらず。1~3 月期は輸出の
落ち込みにより成長加速は期待薄。
設備投資の上方修正を受けて GDP 成長率は小幅上方修正
本日、発表された 2016 年 10~12 月期 GDP の 2 次速報値(QE)は前期比+0.3%(年率+1.2%)とな
り、1 次速報値の前期比+0.2%(年率+1.0%)から小幅に上方修正された。
主な需要項目を見ると、大方の予想通り設備投資が上方修正(1 次速報前期比+0.9%→2 次速報+2.0%)
されたものの、公的固定資本形成(公共投資:▲1.8%→▲2.5%)や民間在庫投資が下方修正(前期比寄
与度▲0.1%Pt→▲0.2%Pt)された。そのほか、個人消費(1 次速報前期比▲0.0%→2 次速報+0.0%)が
上方修正された一方で、民間住宅投資(+0.2%→+0.1%)や政府消費(+0.4%→+0.3%)が下方修正
されたが、いずれも小幅であり実質 GDP 成長率への影響は小さかった。
実質GDPの推移(季節調整値、前期比年率、%)
設備投資と機械受注の推移(季節調整値、年率、兆円)
90
10
12
実質GDP
設備投資
5
名目設備投資
85
機械受注(後方3期移動平均)
11
純輸出
80
10
75
9
▲ 10
70
8
▲ 15
65
0
個人
消費
その他
▲5
公共投資
※機械受注の最新期は内閣府予想
2010
2011
2012
2013
2014
2015
( 出所) 内閣府
2016
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
7
2017
( 出所) 内閣府
輸出依存の成長という姿は変わらず
設備投資や個人消費が上方修正されたことから、国内民間需要は 1 次速報の前期比+0.0%から+0.2%へ
上方修正されたものの、実質 GDP 成長率への前期比寄与度は+0.1%Pt にとどまり、修正のなかった純
輸出(輸出-輸入、前期比寄与度+0.2%Pt)が牽引する輸出依存の成長という姿は 1 次速報値から変化
がなかった。
それでも、国内民間需要は、7~9 月期の前期比▲0.1%から 10~12 月期にプラスに転じており、底入れ
乃至は底離れの動きを示したようにも見える。しかしながら、先行指標である機械受注は設備投資の一進
一退を示唆 1しており、民間住宅投資も先行指標である住宅着工戸数が 12 月まで減少が続き 1~3 月期の
1 名目設備投資と高い相関関係にある機械受注の後方 3 期移動平均は、2016 年 4~6 月期に前期比▲0.2%、7~9 月期+1.3%、
10~12 月期▲1.0%、2017 年 1~3 月期+0.4%と一進一退で推移している。
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伊藤忠経済研究所
落ち込みが見込まれる 2など、国内民間需要が伸びを高めていく兆しは今のところ見られない。
そのうえ、頼みの外需についても、1 月の輸出数量指数が当研究所試算の季節調整値で前月比▲5.1%の大
幅減少、10~12 月期と比べても 2.8%下回っており、1~3 月期は輸出が前期比でマイナスに転じる可能
性がある。
一方で、今年度 2 次補正予算で具体化した景気対策の執行が本格化するため、1~3 月期の公共投資は前
期比で大幅増に転じ、輸出の落ち込みをカバーするとみられるが、上記の通り足取りの重い国内民間需要
の状況を踏まえると、1~3 月期の実質 GDP 成長率が 10~12 月期から高まるという期待感は乏しい。
2 1 月の住宅着工戸数は季節調整値で年率 100 万戸を 8 ヵ月ぶりに回復したが、単月の動きであり、増加の内訳は分譲や貸家と
った施工期間の長いものが中心だったため住宅投資に反映されるのは過半が 4~6 月期以降となる見込み。
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