慶應義塾の理念 - 慶應義塾大学 学部入学案内

慶應義塾の理 念
1858年、慶應義塾の起源となる蘭学塾を開いた福澤諭吉は、
欧米諸国を見聞して帰国後、古いしきたりや慣習にとらわれない教育を実践しました。
その基礎となった数々の理念は、現在に脈々と受け継がれています。
独立自尊
実学
半学半教
自立した人を、学問で育む
“自分の頭で考える”学びへ
学びつつ教え、教えつつ学ぶ
何者にも屈せず、誰にもおごらず、慣習や常識
福澤は、
「 実学」に
「サイヤンス」
とフリガナをふり
学ぶことは、教えることに通じる。
そして、教えるこ
などにとらわれず、自分の良識と信念に基づい
ました。つまり
「実学」
とは、単なる実用の学では
とは、学ぶことに通じる。慶應義塾では、学ぶ者
て考え行 動する。同時に、他 人もまた独 立し
なく
「科学」
のこと。問題を発見し、仮説を立てて
と教える者を区別せず、教員と学生、先輩と後輩
た個 人として尊 重 する。福 澤は、そのような
検証し、結論を導いていくという、“自分の頭で
などの立場を越え、学び合い教え合いともに成
「独立自尊」の人を育むことを学問の狙いとしま
考える”プロセスに通じる
「実証科学」のことを
長する
「半学半教」の精神が大切にされていま
した。
それは彼が、
“一身独立して一国独立す”と
意味しています。
まだ誰も答えを見つけていない
す。
それはまた、奥の深い学問にゴールはなく、社
「学問のすゝめ」
に記したように、人をつくれば自ず
と国も成熟していく、
という考え方に通じています。
2
テーマを設定し、“自分の頭で考える” 力を養う
会をリードする立場になっても学び続けなくては
ことは、慶應義塾における学びの柱です。
ならない、
というメッセージでもあります。
じん
自我作古
前人未踏に、挑む意志
われ
いにしえ
な
かん
こう
さい
人間交際
社中協力
人との交流が、人間力を培う
人のつながりを、未来への力に
「自我作古」は “我より古を作す”と読み、前人未
慶應義塾には、
「人間交際」
を大切にする伝統が
「社中」
とは、学生・教職員・卒業生など、慶應義塾
踏の新しい領域に挑み、目標に向かって前進し
息づいています。
それは、“あらゆる学問は、人と
に関係する人たちの総称。目的を共有する者の
続ける志と使命感を表しています。日本の近代
人との交流のためにある。人と人との交流の中
集まりという意味が込められた
「社中」の協力体
化において、いくつもの重要な事業をリードして
で、総合的な人間力が培われる”という福澤の
制は、パブリックスクール
(義塾)
として150 年以
きた慶應義塾の先人たちは、身をもってこの精
考え方に基づくものです。忘れられない言葉、か
上にわたり成長を重ねてきた原動力です。
その精
神を実践してきました。困難にくじけることなく、
けがえのない体験、深まる信頼関係…。人の心
神は、学びの志を経済面から支える奨学制度や、
自ら先頭に立って未来へ。慶應義塾は、気概の
を動かすのは、人です。
「人間交際」
は、心を大き
さまざまな分野が柔軟に連携する総合大学として
あるチャレンジを愛し、支える学塾でもあります。
く豊かに育むための学びでもあります。
の研究環境にも活かされています。
3
慶應義塾の歴 史
学問を通して自ら理念を実践し続けた福澤諭吉。
その志とともに、日本の近代教育をリードし続けて150余年。
開かれた総合大学として、慶應義塾の学問による貢献は続きます。
留学生の受け入れ
朝鮮政府が日本を
視察見学するために派遣した
紳士遊覧団のうち2 名が慶應義塾に入学。
日本初の外国人留学生の受け入れとなる。
日本初の
演説会堂
大学部の発足
慶 應 義 塾の歴 史
アメリカ・ハーバード大学の
協力により大学部が設置され、
議会政治や裁判に
文学・法律・理財の三科を置く
欠かせない演説や討論を (日本初の近代的な私立大学)。
福澤諭吉、
日本に紹介するため
蘭学塾を創始
「三田演説会」
を発会。
日本初の演説会堂・
江戸築地鉄砲洲、
時の年号に因み
一貫教育の完成
中津藩奥平家の邸内に 「慶應義塾」
と命名 三田演説館
政治科を増設
(p.133 参照)
において
福澤が開く。
演説の普及に努める。
英学塾に転向
慶應義塾の原点。
体育会を創設
1835 1845 1847 1854 1855 1857 1858 1859 1860 1863 1868 1872 1875 1880 1881 1890 1892 1898
(1834)
(天保 5)
(弘化 2) (弘化 4) (安政元) (安政 2) (安政 4) (安政 5) (安政 6) (万延元) (文久 3)
(慶応 4、明治元)
(明治 5) (明治 8)(明治 13)(明治 14)(明治 23)(明治 25)(明治 31)
福 澤 諭 吉の年 譜
※年齢は数え年で表記。﹁ ﹂内は
﹃福翁自伝﹄
より福澤の言葉。
西暦 1835 年
1月10日
(天保 5 年
12月12日)、
大阪玉江橋北詰
中津藩蔵屋敷に
生まれる。
大坂の
緒方洪庵の
適塾に
入門する。
長崎へ出て
蘭学を学ぶ。
12、3 歳ごろから、
種々の迷信や
神仏などについて
疑いを持ちはじめる。
「(神様の名のある)
お札を踏んでみた
ところが、
なんともない」
▶子供ながら、罰が
当たるか
「実証的」
に
試してみる。
学問への目覚め
14、5 歳ごろから
漢学を学びはじめ、
たちまち学力が上達する。
「十四、五になって
初めて学ぶのだから、
はなはだきまりが悪い」
実学に
つながる学び
適塾の塾長となる。
主として自然科学の
原書を読み、
種々の実験を試みて、
納得がいくまで昼夜を
問わず勉強に励む。
「当時緒方の書生は
十中の七、八、
目的
なしに苦学した者
であるが、
その目的の
なかったのが
かえってしあわせ」
軍艦咸臨丸に
乗って渡米し、
サンフランシスコと
ハワイを訪れる。
この旅行で
ウェブスター辞書を
買って帰る
(日本人
による同辞書輸入の
始まり)。
「おまえさん
いっしょに撮ろう
ではないか」
▶初めて外国を
訪れるも、
すぐに
その気風になじみ、
写真屋の娘と
一緒に写真を撮る。
▶目先の利益でなく、
純粋な好奇心で
勉強に没頭。
英学発心
開港まもない横浜で
オランダ語が通じず
英語に転向。
独力で研究をはじめる。
『学問のすゝめ』の
初編が刊行される。
北里柴三郎を支援し
伝染病研究所の設立に
尽力する。
人間交際の啓蒙
このころの身長 5 尺 7 寸
3、4 分(約 173cm)
、
日本最古の社交機関
体重 17 貫 500 匁
「交詢社」
を起こす。
(約 65kg)
。当時の
「わたしは若いときから
日本人としては
ドチラかといえば出しゃばる方で、 非常に大柄であった。
交際の広いくせに、
ついぞ
「まず獣身を成してのちに
人とけんかをしたこともない」
人心を養うというのが
▶人と人が交流することで
わたしの主義」
「社会」
が生まれると考え、
自らも活発に交際の輪を広げる。
塾を鉄砲洲から芝新銭座に移し、
上野彰義隊の戦の砲声を耳にしながら、
経済学の講義をする。
「わたしはその戦争の日も塾の課業をやめない。
(中略)
こちらに関係がなければこわいこともない」
▶目先の騒乱ではなく、新しい時代を
切り拓く志を胸に勉強を続けた。
「横浜から帰った翌日だ。
一度は落胆したが
同時にまた新たに志を発して、
それから以来はいっさい
万事英語と覚悟をきめ」
4
学問のすゝめ
私学初の海外留学生派遣
語学研究所の開設
慶應義塾卒の教授を育てるため、
大学部の卒業生数名を
欧米の大学に留学させる。
アジア・欧米の言語研究のため設立。
同時に社会人も学べる
外国語学校を併設。
戦時下にも関わらず外国語を尊重し、
実用語学科に16カ国語、
学術語学科に8カ国語を設ける。
北里柴三郎を学部長に迎え、
大学部に医学科を開設
文・経済・法・医の
4 学部からなる
総合大学へ
湘南藤沢
キャンパス
(SFC)に
総合政策学部・
環境情報学部を開設
工学部開設
(藤原工業大学の寄付)
第 1 回早慶戦
早稲田からの挑戦を受けて、
東京三田綱町グラウンドで
行われた野球の試合。結果は
11-9で慶應義塾の勝利。
湘南藤沢
キャンパス
(SFC)
に
看護医療学部を開設
商学部を開設
日吉
キャンパスを
開設
男女共学を
実施
工学部を
理工学部に
改組
創立 150 年
薬学部を開設(共立薬科大学と合併)
文部科学省の
「スーパーグローバル大学創成支援」
事業に、世界レベルの教育研究を行う
トップ大学として採択
大学部開設 125 年
1899 1900 1901 1903 1917 1920 1934 1942 1944 1947 1957 1981 1990 2001 2008 2014 2015 2016
(明治 32)(明治 33)(明治 34)(明治 36)(大正 6) (大正 9) (昭和 9)(昭和 17)(昭和 19)(昭和 22)(昭和 32)(昭和 56)(平成 2)(平成 13)(平成 20)(平成 26)(平成 27)(平成 28)
2月3日、
三田慶應義塾内の
自邸にて長逝
(今その地には
「福澤諭吉終焉之地」
の
記念碑が建つ)。
・・・
慶應義塾の目的
時 代の当事 者として人格の高潔さや人間の大きさ、すなわち気品を備え、
自ら実 際に行 動することができる社会の先導者を育んでいく。
創 立 者・福 澤 諭 吉の思いは、
「 慶應義塾の目的」
と呼ばれる一文に込められています。
慶 應 義 塾 は 単 に一所 の 学 塾 と し て
自 から 甘 ん ずる を 得 ず
其 目 的 は 我 日 本 国 中に 於 ける 気 品の 泉 源 、
智 徳 の 模 範 た ら んこ と を 期 し 之 を 実 際 にしては
福澤 諭吉
居 家 、処 世 、立 国 の 本 旨 を 明 に し て
之 を 口に 言 ふの み に あ ら ず
信頼する門下生に
編纂させた
「修身要領」
を発表。
人間の理想の生き方を
「独立自尊」
の4 字に集約。
躬 行 実 践 、以 て 全 社 会 の 先 導 者 た ら ん こ と を
欲 する ものな り
「独立自尊」
の提示
写真提供:慶應義塾福澤研究センター
慶應義塾のシンボル
■ ペンマーク
■ エンブレム
■ 三色旗
ペンマークは、教科書の一節「ペンは剣に勝る力あり」
か
ら、学生たちにより考案されました。学びの尊さを表現す
る、慶應義塾のルーツ的なマークでもあります。
エンブレムは、オーストラリアのクィーンズランド大学の
要請をきっかけに作成されました。図書館旧館記念室の
壁面に刻まれていた形状が原型と言われています。
三色旗は、慶應義塾の塾旗として位置づけられています。
各種の祝賀行事で使われ始め、今日では主にスポーツや
塾生・塾員の会合の場で使用されています。
5
慶應義塾の取り組み
例えば、国際的な体験を内外で積み、言語や文化を学べるように。
論理的に考え、説明する力を養えるように。慶應義塾は、総合大学の強みを活かし、
グローバル社会を見すえた新しい教育や環境づくりに取り組んでいます。
スーパーグローバル事業
文 部 科 学 省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業に、
世 界レベルの教 育 研 究を行うトップ大学として採択。
http://www.global.keio .ac.j p/j a/about/i ni ti ati ves.html
実学で高める地球社会の持続可能性
福澤諭吉は、
「 学問による社会への貢献」
を目指し、
「科学的な姿勢で実証的に真理を解明する」
実学(サイエンス)の大切さを強調しました
(p.2参照)。
世界は今、人口の少子高齢化、
生活・経済・地政学的リスクの増大、
新たな価値の創造といった大きな課題を抱えています。
強みを活かした3つのクラスター
世界が抱える課題に対応して、
「長寿」、
「 安全」、
「 創造」の3つの文理融合クラスターを構築。
これらを中心に、世界の大学と連携し、最先端の学際的な
教育・研究を行い、広く世界に貢献していきます。
慶應義塾大学は、
これらの課題に対し
長寿クラスター
自然科学・人文社会科学の両面から
深く取り組める強みを活かし、
実学の精神のもと、地球社会の持続可能性を
豊かな長 寿 社 会の実 現
Int e gra t ive
A pproa che s
高めるための研究を進めています。
創造クラスター
新たな価 値の創 造
安全クラスター
安 心で安 全な社 会の構 築
学びを広げるグローバルな視点
学生の意欲に応える、世界を視野に入れた
取り組みの一部をご紹介します。
国際化の推進
世界主要大学とのネットワークや海外研究連携拠点の拡充、
ダブルディグリー・プログラムの増設、ほか。
研究力の強化
日本トップクラスの産業界との絆による委託研究の増加、
国際的研究のための外国人教員の採用、
ほか。
教育の多様性
海外からの留学生の積極的な受け入れ、
英語のみで学位が取得できるコースの全学的な展開、ほか。
留学の幅広いサポート
毎年日吉キャンパスで「留学フェア」
(p.106 参照)
を開催するほか、年間を
通じ、留学説明会・個別相談会などを
キャンパス内で開催しています。
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新しい学びのフィールド
今までの枠を越え、世 界を先 導する志や、
未 来を見すえた問題意識に対応。
英語のみによる学位取得
多彩な英語プログラム
医療系三学部合同教育プログラム
● PEARL(経済学部)
● GIC(全学部対象 )
http://i pe.kei o.ac.j p/
http://www.ga kuj i .kei o.ac.j p/academi c/gi c/
医学部、看護医療学部、薬学部の三学部を
http://pearl.keio.ac.jp/
「Programme in Economics for Alliances,
Research and Leadership」
独自の入試を実施。世界で活躍する経済人を
目指し、4 年間、英語のみで経済学を学びます
(p.28、p.156 参照)。
● GIGA( 総合政策学部・環境情 報学部)
h t t p : / / ic . s f c . k e i o . a c . j p / j a /
「Global Information and Governance
Academic Program」
独自の入試を実施。
コアとなる授業は
「Global Interdisciplinary Courses」
擁する大学として、
グループアプローチによる
国際的かつ学際的な人材の育成を目的とし、
英語(または、
その他の外国語)による授業を
患者中心の医療の実践を追求するプログラムです
(p.49、p.85、p.95 参照)。
一定単位取得した学生に修了証を与える
未来創造塾( SF C:湘 南 藤 沢キャンパス)
プログラムです。
http://w w w .mi rai sozo.sfc.kei o.ac.j p/
● GPP(全学部 3・4年 生 対 象 )
開設 25 周年を迎えた SFC(湘南藤沢
http://www.ga kuj i .kei o.ac.j p/mi ta/sho/gpp.html
「Global Passport Program」
キャンパス)に、地球視点の課題に取り組む
商学部が設置する、英語による専門的な
グローバルゲートウェイとして創られた、
プログラムです。
グローバル社会における諸問題
滞在型教育研究施設です
(p.80 参照)。
すべて英語で提供され、
グローバル社会において の発見、
その解決能力を養成します
(p.44 参照)。
福澤諭吉記念文明塾(社会・地域連携室)
リーダーシップを発揮できる人材を育成します
● PCP(経済学部 3・4年 生 対 象 )
(p.78、p.153 参照)。
http://w w w .fbj .kei o.ac.j p/
http://www.ec on.kei o.ac.j p/l ecture/pcp/j a/
「Professional Career Programme」
「日本や世界のさまざまな問題を解決したい」
という思いを抱く人たちが、
実践的な経済学教育を、少人数クラスかつ
英語で行うプログラムです。国際的な視野に
「対話と議論」
を通じて共に学び合う講座です。
立つ経済人・未来への先導を行う
真のリーダーを育成します
(p.27 参照)。
● 国際センター講座 (全 学 部 2年 生 以 上 対 象 )
http://www.ic.kei o.ac.j p/abouti c/aboutcourse/
学生だけでなく社会人にも開かれています。
アカデミック・スキルズ(教養研究センター)
https://lib-arts.hc.keio.ac.jp/education/culture/academic.php
日本およびアジアに関する授業を
大学では「自ら考え、調べ、論ずること」が
中心的なテーマとして体系的に構成された、
求められます。
その体得を目指し、
すべて英語による講座を開講しています。
問題意識の喚起から、問題の発見、
解決に至るまでに必要とされる
スキルを身につける授業です。
国 際 交 流のさらなる広がり
留 学や海 外 研 修で、さらに学内でも、
世界の人々とコミュニケーション。
h t t p : / / w w w .ic.keio.ac.jp/
世界トップレベルの大学への留学
世界の著名人による講演会
国際センターでは、交換留学や短期海外研修をはじめ、
海外の著名人を招いた講演会や
海外が未体験の方、英語で専門科目を学びたい方などへ向けた
シンポジウムを数多く開催。
さまざまなプログラムを提供しています
(p.102 ~参照)。
世界のトップの考えに直接触れ、
広がる留学生との交流
国際的な意識を高める機会を提供しています。
留学生とともに、英語で日本について学ぶ 2 週間のプログラム
「短期日本学講座(KJSP)」や、留学生の “ともだち”となり、
日本での生活をサポートする
「慶應ともだちプログラム」などを通して、
国内にいながらにして異文化交流を体験できます。
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