冷却原子・量子情報測定・情報熱 力学 上田 正仁 研究室で取り上げるテーマ 私が指導できるものであればなんでもよい。 ただし、 (1) 面白くないといけない (オリジナリティ、ユニークさ) (2) ファンダメンタルな物理、あるいは、広い応用へと つながるもの (インパクトの大きさ)を目指す (3) そのような物理を対話を通じて作り上げていく 今何を研究しているか? 冷却原子気体(ボース・アインシュタイン凝縮・超流動における普遍性 とトポロジー) 量子測定・量子推定・不確定性関係 情報熱力学(マックスウェルの悪魔、量子制御、確率微分方程式) 孤立量子系の熱力学(第二法則はなぜ成り立つのか) 物理学と数学と情報(トポロジー、微分幾何、情報幾何) トポロジー 結び目と理論 超流動 測定理論 ホモトピー理論 不確定性関係 ユニバーサル関係式 可逆測定 スピノールBEC 推定理論 冷却原子気体 量子多体系 量子情報 強相関 量子計算 モット・超流動転移 情報幾何 超流動と磁性 人工ゲージ場 相対論的エンタング ルメント 熱・統計力学 統計力学の基礎 非ユニタリー操作 開放系の統計力学 Maxwell の悪魔 揺らぎの定理 量子フィードバック ギブスのパラドックス 確率微分方程式 研究室の運営形式 夏学期と冬学期で異なります! セミナー 【夏学期】 古典的論文を読む (詳細なレジュメを英語で作成し、それに基づき日本語または英語で説明) 過去の例 • Landau,“Theory of Superfluidity” • Penorse & Onsager,“Bose-Einstein Condensation” • Feynman,“Quantum Computing” • Shor,“Factoring Algorithm based on Quantum Computation” • Einstein, Podolsky and Rosen, “Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?” 【冬学期】 英語による研究セミナー 各自の研究成果を、2時間程度の英語によるセミナーを行う。 詳細はホームページ参照(http://cat.phys.s.u-tokyo.ac.jp/seminar.html) 前期セミナ-(候補論文の例) 後期:研究セミナー 【夏学期】 古典的論文を読む (詳細なレジュメを英語で作成し、それに基づき英語で説明する) 過去の例 • Landau,“Theory of Superfluidity” • Penorse & Onsager,“Bose-Einstein Condensation” • Feynman,“Quantum Computing” • Shor,“Factoring Algorithm based on Quantum Computation” • Einstein, Podolsky and Rosen, “Can Quantum-Mechanical Description of Physical Reality Be Considered Complete?” 【冬学期】 英語による研究セミナー 各自の研究成果を、2時間程度の英語によるセミナーを行う。 詳細はホームページ参照(http://cat.phys.s.u-tokyo.ac.jp/seminar.html) なぜBECを面白いと思うか? 相互作用の強さと符号(引力か斥力か)を含むほとんど全ての物質パラメータを 自在に変調できる。 この自由度・フレキシビリティの大きさが新しい物理の可能性を示す。 物理の基本原理の検証が机上でできる。 普遍的物理の探究 極めて学際的(物性・原子核・宇宙論) 理論と実験のマッチングが極めてよい すぐれた予言をすれば、凄腕の実験家が検証してくれる d-波 BEC (Cr) の崩壊 Experiment: Stuttgart B Theory: Tokyo PRL2008 相転移における欠陥の生成 相転移: 秩序相が形成されるよりも速く転移点を通過 対称性の破れが空間的にばらばら トポロジカル欠陥 秩序の方向 超流動の位相 磁化の方向 欠陥 渦、スピン渦 超流動ヘリウム 概念的理解 宇宙初期の相転移 重力・核力・弱い力・電磁 気力が分離するときに 欠陥 (モノポール、宇宙 ひも)を大量生成? 原子気体 ダイナミクスの詳細が観測&計算可能 常磁性相 強磁性相の相転移でスピン渦の 出現を予言 Saito, Kawaguchi, and Ueda PRL 96, 065302 (2006) スピン渦の自発的形成の実験 transverse magnetization of spin-1 87Rb BEC initial condition: all atoms in the m=0 state Sadler et al., Nature 443, 312 (2006) 1 e i 0 1 1 e i polar-core spin vortex ↕ chiral-symmetry broken state spin vortex H. Saito, Y. Kawaguchi, and M.U., PRL 96, 065302 (2006) BECにおける結び目励起 Y. Kawaguchi, M. Nitta, and M. U., Phys. Rev. Lett. 100, 180403 (2008) D. S. Hall, et al., Nature Phys. 12, 478 (2016) 情報と熱力学: 非平衡統計力学におけるパラダイムシフト VS. ミクロ:可逆な世界 マクロ:不可逆な世界 可逆と不可逆の境界はどこにあるのか? 第二法則の起源と関連 ナノサイエンスの基礎となる理論 孤立量子系の統計力学:等確率の原理がなぜ成立するのか ゆらぐ世界のナノマシンとの関係 ミクロな非平衡系では、 情報処理の熱力学的制約が無視できない 分子メモリ(HP社が作成): 車体が一分子でできたナノカー: 1分子に1ビットを蓄える 光を当てると走る Y. Shirai et al., Nano Lett. 5, 2330 (2005) Maxwell’s demon utilizes information to decrease entropy Second law Maxwell’s demon Maxwell’s demon = 熱揺らぎのレベルでのフィードバック制御 情報と熱力学 J. C. Maxwell’s letter to Peter Guthrie Tait (1867) 情報熱力学の第二法則(我々の結果) T. Sagawa and M. Ueda, PRL 100, 080403 (2008) 情報 I 熱浴 仕事 熱機関 Wext F 第二法則 Wext F デーモンが操作すると Wext F kBTI I : 相互情報量 熱力学第二法則を、情報量と熱力学変数が対等に扱われるように 拡張した。 絶対不可逆なゆらぎの定理とGibbsのパラドックス Y. Murashita, K. Funo and M. Ueda, PRE 90, 042110 (2014) 詳細ゆらぎの定理 時間反転 積分型ゆらぎの定理 のとき適用不可 熱力学的不可逆性が極端に強い= が発散=絶対不可逆 Lebesgue分解で通常の不可逆な部分と分離できる 絶対不可逆性がある場合 古典メゾスコピック系でGibbsのパラドックスを解決できる! 量子情報・量子力学との関係 一原子・一光子レベルでの、量子測定・フィードバックが可能になりつつある 単一原子スピン の量子測定 © ERATO-JST 波束の収束過程の観測 Guerlin et al., Nature (2007)Nobel Prize (2012) 量子多体系の測定と制御 Greiner et al., Nature 462, 74-77 (2009) 「光格子(人工の固体)」中の原子集団の動きを、一原子ずつ観測 新たな理論的な問題: 単一原子レベルの量子測定と量子制御は、マクロな物性にどの影響するか? ミクロな情報とマクロな熱力学のクロスオーバー 回折限界を超えた冷却原子顕微鏡 光格子中にトラップされた冷却原子の 波束の収縮 を実時間追跡 Y. Ashida and MU, PRL 115, 095301 (2015) 回折限界を超えた位置測定 量子測定理論 極限量子撮像の実現 (光格子原子顕微鏡) 超高解像度顕微鏡 (2014 ) 獲得した情報による 推定分布の収縮 →回折限界を超えた高速撮像 Y. Ashida and MU, Opt. Lett. 41, 72 (2016) 孤立量子系における熱力学第二法則 目標 von Neumann 量子力学から熱統計力学を導く 孤立量子系の実験的実現 純粋状態 ユニタリ発展(可逆) 冷却原子 これまでの成果 熱統計力学 ? カノニカル分布 (混合状態) 熱力学第二法則 (非可逆性) 孤立量子系でユニークな統計力学的法則はあるか? エンタングルした前期熱化現象ー量子エンタングルメントが熱 平衡化過程で生き残る場合が存在する→熱化・デコヒーレンス における新しい普遍性クラス E. Kaminishi, T. Mori, T. N. Ikeda and M.U., Nature Phys. 11, 1050 (2015) おわり ■ 構成メンバー 名前 学年 研究分野 出身校 古川俊輔 助教 トポロジカル秩序 東京工業大 藤本和也 PD 冷却原子系 大阪市立大 Ulrich Ebling PD 冷却原子系 Institut de Ciencies Fotoniques 曽弘博 博士3年 冷却原子系・数理物理学 東京大 堀之内裕理 博士3年 冷却原子系・場の理論 東京大 設楽智洋 博士2年 量子測定論 東京大 村下湧音 博士2年 非平衡統計力学・情報熱力学 東京大 吉田周平 博士2年 冷却原子系 東京大 蘆田祐人 博士1年 冷却原子系・量子測定論 東京大 東川翔 博士1年 冷却原子系 東京大 久良尚任 修士2年 量子情報理論 東京大 濱崎立資 修士2年 非平衡統計力学 東京大 Gong Zongping 修士1年 量子熱力学 北京大学 吉野匠 修士1年 東京大学 量子推定と測定の反作用 量子情報幾何 状態空間の計量 ● 量子Fisher情報量 推定理論 推定精度の限界 (推定精度) 測定 ● 測定の反作用(擾乱) = 量子Fisher情報量の損失 応用 測定で得られる情報と、擾乱の間のトレードオフ関係を定式化! 相対論的なスピンEPR相関 情報理論 一般相対論への拡張 量子論 (プランク定数) 相対論 (光速度) 量子情報の最も重要なリソースである Einstein-Podolsky-Rosen相関に与える影響 実験室系 直交する方向の2つのLorentz 変換 →スピンの回転 観測者の系 研究で用いる手法 場の理論 経路積分 相対論 情報理論 物理を探求するために必要な手段は何でも用いる 元素の周期律表 元素の周期律表 109個各種そろってます 1H 2 He 1.008 4.003 水素 ヘリウム 3 Li 4 Be 5B 6C 7N 8O 9F 10 Ne 6.941 9.012 10.81 12.01 14.01 16 19 20.18 ベリリウ リチウム ホウ素 炭素 窒素 酸素 フッ素 ネオン ム 11 Na 12 Mg 13 Al 14 Si 15 P 16 S 17 Cl 18 Ar 22.99 24.31 26.98 28.09 30.97 32.07 35.45 39.95 ナトリウ マグネシ アルミニ ケイ素 リン 硫黄 塩素 アルゴン ム ウム ウム 19 K 20 Ca 21 Sc 22 Ti 23 V 24 Cr 25 Mn 26 Fe 27 Co 28 Ni 29 Cu 30 Zn 31 Ga 32 Ge 33 As 34 Se 35 Br 36 Kr 39.1 40.08 44.96 47.88 50.94 52 54.94 55.85 58.93 58.69 63.55 65.39 69.72 72.61 74.92 78.96 79.9 83.8 カルシウ スカンジ バナジウ ゲルマニ クリプト カリウム チタン クロム マンガン 鉄 コバルト ニッケル 銅 亜鉛 ガリウム ひ素 セレン 臭素 ム ウム ム ウム ン 37 Rb 38 Sr 39 Y 40 Zr 41 Nb 42 Mo 43 Tc 44 Ru 45 Rh 46 Pd 47 Ag 48 Cd 49 In 50 Sn 51 Sb 52 Te 53 I 54 Xe 85.47 87.62 88.91 91.22 92.91 95.94 -99 101.1 102.9 106.4 107.9 112.4 114.8 118.7 121.8 127.6 126.9 131.3 ルビジウ ストロン イットリ ジルコニ モリブデ テクネチ ルテニウ パラジウ カドミウ インジウ アンチモ ニオブ ロジウム 銀 スズ テルル よう素 キセノン ム チウム ウム ウム ン ウム ム ム ム ム ン 55 Cs 56 Ba *ran 72 Hf 73 Ta 74 W 75 Re 76 Os 77 Ir 78 Pt 79 Au 80 Hg 81 Tl 82 Pb 83 Bi 84 Po 85 At 86 Rn ランタノ 132.9 137.3 178.5 180.9 183.8 186.2 190.2 192.2 195.1 197 200.6 204.4 207.2 209 -210 -210 -222 イド ハフニウ タングス オスミウ イリジウ ポロニウ アスタチ セシウム バリウム タンタル レニウム 白金 金 水銀 タリウム 鉛 ビスマス ラドン ム テン ム ム ム ン 87 Fr 88 Ra *act 104 Unq 105 Unp 106 Unh 107 Uns 108 Uno 109 Une アクチノ -223 -226 -261 -262 -263 -262 -265 -266 イド ウンニル ウンニル ウンニル ウンニル ウンニル ウンニル フランシ ラジウム クアジウ ペンチウ ヘキシウ セプチウ オクチウ エンニウ ウム ム ム ム ム ム ム *ran 57 La 58 Ce 59 Pr 60 Nd 61 Pm 62 Sm 63 Eu 64 Gd 65 Tb 66 Dy 67 Ho 68 Er 69 Tm 70 Yb 71 Lu ランタノ 138.9 140.1 140.9 144.2 -145 150.4 152 157.3 158.9 162.5 164.9 167.3 168.9 173 175 イド プラセオ ネオジウ プロメチ サマリウ ユウロピ ガドリニ テルビウ ジスプロ ホルミウ エルビウ イッテル ルテチウ ランタン セリウム ツリウム ジウム ム ウム ム ウム ウム ム シウム ム ム ビウム ム *act 89 Ac 90 Th 91 Pa 92 U 93 Np 94 Pu 95 Am 96 Cm 97 Bk 98 Cf 99 Es 100 Fm 101 Md 102 No 103 Lr アクチノ -227 232 231 238 -237 -239 -243 -247 -247 -252 -252 -257 -258 -259 -262 イド アクチニ プロトア ネプツニ プルトニ アメリシ キュリウ バークリ カリホル アインス フェルミ メンデレ ノーベリ ローレン トリウム ウラン ウム クチニウ ウム ウム ウム ム ウム ニウム タイニウ ウム ビウム ウム シウム 理論家のなすべき仕事とは? 1. 実験事実を先入観なく理解する(本質は何か?自分の理論に都合の いいように解釈しない)。 2. 本質を抽出するモデルを物理の一般原理から出発して定式化する(一般原 理に依存しない理論は、ある特定の実験事実は説明できても、他の大多数 の実験事実とは矛盾してしまうか、あるいは、理論としての一般性に欠ける。 第一、理論が美しくならない)。 3. 定式化されたモデルを解いて、実験を説明し、新たな予言を行う。 求められる資質 1. 実験と理論の論文を丹念に読んで、本質は何かを洞察しようとする粘り強さ。 2. 物理の本質を抽出するモデルを立て、またそれを解いて新しい物理的結果を 導く並はずれた解析的あるいは数値的能力(あるいはその両方)。 3. 導いた結果を、物理の一般原理に立ち返ってその成否を直感できる物理センス。 面白い問題で簡単に解けるような問題はめったに無い。 そのような例も希にはあるが、実は、そのような問題を見つけ出す物理的センスと 努力が求められる。実際の研究では10回トライして1回成功すれば御の字である。 従って困難にぶち当たってもくじけずに結果を得るまで頑張れる執念にも似た高い志 (強い知的好奇心、自己の可能性をとことん追求したいという欲求、成功願望、etc.)が 必要である。 特別理論演習 量子光学の誕生 R. J. Glauber, “Coherent and Incoherent States of the Radiation Field”, Phys. Rev.131, 2766(1963). 23頁 量子力学の基礎 Haagらによる量子力学の代表的な公理化を通して、EPRパラドックスを再検討する • A. Einstein, B. Podolsky, N. Rosen, “Can quantum-mechanical description of physical reality be considered complete?”, Phys. Rev. 47, 777(1935). 4頁 • R. Haag, D. Kastler, “An Algebraic Approach to Quantum Field Theory”, J. Math. Phys. 5, 848(1964). 14頁 量子測定と量子推定 古典統計学における仮説検定や不偏推定を、量子系に拡張した理論のclassic なレビュー C. W. Helestom, “Quantum Detection and Estimation Theory”, J. Stat. Phys. 1, 231(1969). 一段組みで22頁 情報処理の熱力学 古典統計学における仮説検定や不偏推定を、量子系に拡張した理論のclassic なレビュー • C. H. Bennett, “Logical Reversibility of Computation”, IBM J. Res. Develop, 525, (1973). 8頁 • C. H. Bennett, “The Thermodynamics of Computation --- a Review”, Int. J. Theor. Phys. 21, 905(1982). Section 5,6. 一段組で18頁 カルノーサイクル VS. 情報熱機関 古典的な熱機関: 熱→仕事 QH TH 熱機関 熱効率の上限 QL TL Wext TL e 1 QH TH カルノーサイクル Wext “情報熱機関”: 情報→仕事 Wext kBTI . シラードエンジン 相対論的量子情報 情報理論 量子論 相対論 Einstein – Podolsky – Rosen (EPR) 相関 1 p , p , p , p , 2 BEC崩壊の出現 実験 E.A. Donley et al, Nature 412, 295 (2001) 理論 H.Saito and M.Ueda, Phys. Rev. A65, 033624 (2002) どんな学生が適しているか 自然を実験を通じて学び、 その背後の物理、原理を 洞察・分析する知的作業に 深い満足感を覚える
© Copyright 2025 ExpyDoc