論文内容要旨 論文題名 Cdc42 is Crucial for Facial and Palatal Formation during craniofacial development. Cdc42 は顎顔面発生過程における顔面と口蓋の形成において重要である 掲載雑誌名 Biochemical and Biophysical Research Communications 専攻分野 (投稿中) 歯科矯正学 大島睦子 内容要旨 口唇口蓋裂は顎顔面領域に発生する先天性疾患の一つであり、その発 症機序は、遺伝的・環境的要因など様々報告がされているが、未だ不明 な点が多い。顎顔面領域の発生過程において頭部神経堤(cranial neural crest:CNC)細胞の遊走が関与しているなどの報告があり、CNC 細胞が遊 走する際の糸状仮足などの構造変化は、アクチン細胞骨格系のレギュレ ーターである Rho ファミリー低分子量 G タンパク質に関与し、今回その 中でも胎生期器官形成において重要である Cdc42 遺伝子に着目し、口蓋 形成過程における機能解析を行った。マウス生体内で組織特異的に遺伝 子を欠損させる Cre/loxP システムを用い、顎顔面組織で Cdc42 を欠損さ せたマウスを作製し、口蓋発生過程における Cdc42 の機能解析を行った。 顎顔面間葉組織を構成する神経堤由来細胞特異的に組み換え酵素 Cre を 発現する P0-Cre マウス ( P0 遺伝子プロモーター制御下で Cre を発現す るトランスジェニックマウス)と Cdc42 flox マウスを交配し、Cdc42 遺 伝子コンディショナルノックアウトマウス(Cdc42 cKO マウス)を作製し た。作製されたマウスは HE 染色・骨格標本を作製し、組織学的解析を行 った。 Cdc42 cKO マウスは短頭であり、頭部の異所性の出血、口蓋裂と特徴的 な顔貌を呈し、それに伴い哺乳障害も認められた。口蓋裂の表現系とし ては、口蓋裂単独(n=2/15)と顔面裂を伴う(n=13/15)、2 種類の表現型を 認めた。口蓋の形成過程において、E12.5 の口蓋突起の下方への劣成長、 正中方向へ水平移動が行われたのちにおける正中方向への成長を認めな かった。また、骨格標本において前顎骨、上顎骨の前後径において減少 を認めた。顔面裂を呈する表現系に関して、マウス頭部を冠状断にて作 製した切片において解析を行った結果、前頭鼻突起から派生した内側鼻 突起は、E12.5 コントロールマウス頭部前方部において癒合し、鼻中隔 を形成しているのに対し、cKO マウスにおいて内側鼻突起の癒合が行わ れないことにより、鼻中隔は顔面の正中部において左右に分かれて形成 され、顔面裂を生じ、口蓋突起の正中方向への水平移動は認めているが、 口蓋突起の正中方向への成長は乏しく、それは口蓋の前方から後方にわ たっても同様であった。 以上のことから Cdc42 はマウス口蓋形成に関与していることが示唆され た。
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