多様性を活かす - 岩手経済研究所

巻頭言
昨年5月の着任以降、岩手県内各地を訪
め、昨年 月の国勢調査では128万人と
安定していましたが、その後減少傾向を強
たっては、何らかの設備投資が必要となる
こうした需給両面での対応を行うに当
感しています。
域毎に産業の在り方が多様であることを実
す。これは、県内第二の都市である一関市
なっています。 年間程で 万人の減少で
て出るための新製品開発投資、女性や高齢
沿岸部では、震災・津波からの復興に向
けて懸命の努力が続けられています。そう
口︵約 万人︶の半分弱に匹敵する数です。
向上することを活かそうとするものです。
古盛岡横断道路の整備により、交通の便が
をフェリーで結ぶ計画。三陸沿岸道路や宮
ています。例えば、宮古港と北海道室蘭港
切った手を打つべき時期に来ているように
ても重要な課題と受け止めて、自らも思い
がれています。同時に、個々の企業におい
地方版総合戦略﹂の作成など、対応が急
行政レベルでは、
﹁地方人口ビジョン・
る当座預金の一部にマイナス金利を付ける
す。今年1月、金融機関が日本銀行に預け
却を目指して強力な金融緩和を進めていま
現在、日本銀行では、デフレからの脱
業の投資行動は多岐に亘ることでしょう。
どです。産業の多様性を反映して、県内企
山間部では、人口密度の低さを活かして畜
設がみられます。立地の良さが活きていま
の物流倉庫やコンビニ向け食品加工場の新
す。内陸部では、北東北全体を睨んだ大型
ともに、労働供給の減少 ︱ すなわち人手不
すなわち地元・国内マーケットの縮小 ︱ と
企業にとって人口減少は、需要の縮小 ︱
は、東北地方で﹁3か月前に比べて借入金
す。こうした中、今年3 月の日銀短観で
金利全般の水準を押し下げるための措置で
利水準が下がった﹂と回答した企業の比率
足 ︱ をもたらすものです。
は、昨年 月の5%から %に拡大してい
多様性が﹁強み﹂となっている岩手県
自然や食材といった観光資源も多彩です。
致活動。さらに、海あり山ありの岩手県は、
人手不足に対しては、これまでの仕事のあ
る商品の開発も進められています。また、
がみられます。高齢化社会だからこそ売れ
県外や海外市場の開拓に活路を見出す動き
金融環境がプラスの効果を生むことを期待
略的な投資が必要です。その際、緩和的な
たっては、それぞれの多様性を活かした戦
県内企業が将来への途を切り拓くに当
マーケットの縮小に対しては、例えば、
ですが、人口減少は全国の例に漏れませ
り方を見直し、女性や高齢者の労働参加を
ます。
ん。県内の人口は1980 年代後半から
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しています。
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促す取り組みが広がっています。
したILC︵国際リニアコライダー︶の誘
す。あるいは、北上山地の硬い地盤を活か
政策の導入を決定したのも、その一環です。
思われます。
今後とも、人口減少の傾向は続きます。
省力化のための機械やシステムへの投資な
者が働きやすい職場環境整備のための投資、
ケースも多いでしょう。新たな市場に打っ
ねる機会が多くあります。そのたびに、地
﹁多様性を活かす﹂
竹澤 秀樹
日本銀行仙台支店長
の人口︵約 万人︶を上回り、盛岡市の人
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産業の大規模化・機械化が進められていま
した中で、新たな構想が実現に向けて動い
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1990年代にかけては142万人程度で
岩手経済研究 2016 年5月号
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