俺、つかみたいものが あります 闇谷 紅 ︻注意事項︼ このPDFファイルは﹁ハーメルン﹂で掲載中の作品を自動的にPDF化したもので す。 小説の作者、 ﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作品を引用の範囲を 超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁じます。 ︻あらすじ︼ トラックに轢かれて転生というライトノベルならベタとも言える流れで前世の記憶 を持ったまま、新たな世界を生きる一人の少年、碧那 摂理。 前世の自分を反省し、アクティブに行動しようとした彼は転生から数えて二つめの非 日常と遭遇する。 俺、ツインテールになります。の世界にオリキャラぶっこんで勘違いモノに仕立てて みようと言うお話となります。 他に連載作品がありますので更新速度はお察し。 一応長くてもアニメ最終話もしくは原作4巻終了辺りまでのお話になる予定。 目 次 第一話﹁思い立つ﹂ ││││││ 第 三 話﹁| 赤 の 戦 士︽テ イ ル レ ッ ド︾﹂ メギル︾﹂ │││││││││││ 第二話﹁こんにちわ|変態さん︽アルティ 1 5 第四話﹁それは、きっと﹂ │││ 第 五 話﹁俺 と し て は そ れ よ り も﹂ 20 11 26 │ 第一話﹁思い立つ﹂ 転生。最近ライトノベルで人気のジャンルだと僕は記憶してる。 ポツリ呟き、見上げる天井は、僕の部屋のものだけど、僕が最も馴染みのあった自室 ﹁いや、最近かどうかは怪しいか﹂ のモノとは別もの。 ﹁﹃引っ越しでもしたのか﹄か﹂ そうではない。実は人生も二度目なんです何て言えば、理解して貰えるだろうか 前世、僕は友達が多い方ではなかった。正確に言うと友達と呼べるのは一人だけ。言 ﹁あいつだけ、だったな﹂ る。 こんなことは。そして打ち明ける相手が居ないからか、僕は自室では独り言が多くな ﹁もっとも、人に言えんか﹂ いうモノがあった。 正気を疑われるか、嘘だと斬り捨てられるのが関の山。だけど、僕には前世の記憶と ﹁まぁ、無理だな﹂ ? 1 葉を交わす級友は幾人かいたこともあるが、進級や卒業で会う機会がなくなれば疎遠に なっていったのだ。別に個人的な趣向がどうこうとかそんな理由じゃないと思う。恋 愛シミュレーションゲームで胸が大きいからと攻略ヒロインを選んだら結果的に年上 の先輩キャラや教師を選ぶことになり、そのせいで一時﹁年上好き野郎﹂とかからかわ れ、不名誉なレッテルを貼られたこともあったが、あれで引かれたからとか思いたくな い。 ﹁むしろ、引かれたのは僕だ﹂ まぁ、トラックにだが。前世の記憶の最後が視界一杯に迫るトラックだったので、多 分間違いはないと思う。 前世に未練はなかったかと聞かれたなら、パソコンの中身はどうなったかを僅かに制 ﹁しかし、な﹂ して気になるのはやっぱり唯一の友人だった彼のことだと思う。一応、言っておくが同 性愛的な意味ではない。俺が急にいなくなって凹んでないと良いなとか、そういう方面 での気になる、だ。 のは。その後、不満からロリ巨乳キャラ好きをアピールしたらロリコン疑惑が持ち上 僕が年上好き疑惑をもたれた時、言葉を交わすクラスメイトで弄りに参加しなかった ﹁唯一、だった⋮⋮あいつは﹂ 第一話「思い立つ」 2 がったと言う黒歴史もあるが、あれは忘れたい。 ﹁よし﹂ かもしれないのだ。 は流石にないとしても、立派な胸をしたお姉さんとすれ違うくらいのラッキーならある だから。こう、けしからん胸をした銀髪のお姉さんが猛烈なアタックをしてくること、 気晴らしに外でも出歩いてくるのもいいかもしれない。外は出会いに溢れているの ﹁それはそれ、か﹂ 世が原因だと思うけど。 僕が一見寡黙キャラっぽく通ってるのも、この抱えた秘密と、いじめられっ子だった前 ことも出来ない秘密なんて抱えてるから、鬱屈してしまってるのかも知れない。今世の 自分の願望を今は会うことすら出来ないともだちに投影するなんて。誰かに明かす ﹁⋮⋮困ったものだ﹂ とってのパラダイスを彼が満喫してるはずもないし。 は、面白おかしく振り回されろって呪詛を送ってしまうかも知れないが、そんな僕に ドラ○エの世界に憑依トリップでもして巨乳美女に囲まれウハウハだったりした日に なににしても、転生してしまった僕に彼のその後を知る術なんてない。良くやってた ﹁ふぅ﹂ 3 今日は学校も始業式とオリエンテーションぐらいで早く終わったというのに、こんな 所で惰眠を貪るのは勿体ない。前世で行動力のなさを悔いたのだから、今世はアクティ ブに動くべきだろう。何処に行くかはまだ決めていないが、そっちは歩きながら考えれ ばいい。僕は部屋を出ると、その足で玄関に向かい、下駄箱の前で靴を取り出しつつ、口 を開く。 ﹁出るぞ﹂ お願いだから、お前はロボットアニメのパイロットかとか突っ込まないで欲しい。 ﹁はぁい。夕飯の時間までには帰ってくるのよ﹂ これが、母親代わりでもある実姉とのいつものやりとりだったのだから。 ﹁ああ﹂ 第一話「思い立つ」 4 第二話﹁こんにちわ|変態さん︽アルティメギル︾﹂ 抱えるのは、古本屋で買った文庫本が数冊。目的も無しに外に出て、気が付けばゲー ム屋と古本屋及び書店をハシゴしていたのは、きっと前世の性なのだろう。三つ子の魂 百までとは良く言ったものだ。生まれ変わったというのに行動パターンの一部がその まんまというのはいささか問題かも知れないけれど。 まぁ、前世今世併せて運命の出会いなんてお目にかかったことはまだ無いけどね。 る。ひ ょ っ と し た ら 予 期 せ ぬ 出 会 い な ん て 素 敵 な モ ノ も 転 が っ て る か も し れ な い。 あの宙果は使われていた気がするし、イベントやライヴなんかが催されたことだって有 どうするべきか。催し物をしてるなら人もいるだろう。確か、学校の行事なんかにも ﹁さて﹂ いるかはとんと不明だったりもするのだが。 だったと思う。もっとも、たまたま辿り着いただけなので、本日なんの催し物をやって 的地を失った僕の視界に入ってきたそれは、確か地元最大のコンベンションセンター 記憶にある近場のゲームショップと新と古、双方の書店を制覇し、ノープラン故に目 ﹁マクシーム宙果、か﹂ 5 ﹁ふむ﹂ 前世を反省してわざわざ外に出たのだから、動機を考えれば足を運んでみるべきだと は思う。行動することは可能性を作る事でもあるのだから。モバイルゲームのガチャ だって回さなければレアな目玉商品が当たることはない。まぁ、僕は無課金勢だったの で、回すのはイベントでチケットを貰った時ぐらいだったけれど、って話がそれた。 つつも僕は﹁チェンジで﹂と行ったと思う。美少女という表現がしっくり来るぐらい顔 人を示して﹁ご注文の運命の出会いです﹂と笑顔で言われたなら、若干申し訳なく思い じなかったのだけれど。横に並んだのは一瞬、顔もちらっとしか見えなかったし、その 過ぎたのは。もっとも、無関係の僕としては、何か随分急いでるなぁとぐらいにしか感 そう思った矢先だった。息を切らした一人の少女が呼吸を荒くしつつ僕の横を通り ﹁はぁはぁはぁ、あっしと、したことが、座標を、しくじる、なんて⋮⋮﹂ 年は戦えるレベルだ。よって、夕飯までに家に戻れば問題ない。 で高校は卒業してるので勉強はだいたい解る。苦手科目さえ抑えておけば、あと二∼三 一貫進学が出来る超エスカレータ校だからって勉強を疎かにするつもりはないが、前世 しくはネットサーフィンするのが関の山なのだ。通ってるのが初等部から大学部まで どのみち家に戻ったとしても、抱えた戦利品を読むか、テレビを見るか、ゲーム、も ﹁行ってみる、か﹂ 第二話「こんにちわ|変態さん《アルティメギル》」 6 は可愛かった気がするのだけれど、天は二物を与えなかったんだろう。いや、失礼なこ ﹂ とを考えてるとは自覚してる、だからか。 ﹁ん ﹂ ? 彼女が続けた言葉に、僕は人生終了のベルが鳴るのを確かに聞いた。あかん、これは んが、一つあっしの質問に答えちゃくれやせんか ﹁すいやせん、初対面のお人に、こんな事を言うなんて気が触れたとお思いかもしれやせ もしくは防犯用のブザーか。僕の手の中をねっとりと嫌な汗が湿らせ始め。 れは、白衣の中のそれは警察へのダイヤルをプッシュされてる携帯電話かもしれない。 ようにも見えた。やばい、入学式当日だって言うのに、僕は通報されてしまうのか。あ を上げて死んだ。少女の片手は白衣のポケットに突っ込まれていて、何かを掴んでいる 人違いかとそのまま去るどころか、少女が声をかけてきたことで、人違い説が断末魔 ﹁あ、あの﹂ いかんせん今世の僕は良くも悪くもモブ勢なのだ。 絶世の美男子だとか、奇抜な格好で歩いてたなら他の可能性もあったかも知れないが、 返る理由なんて失礼な思考を感じ取ったか、知人と見間違えたかの二択しかない。僕が 彼女は急に振り返り、僕は硬直した。全く見知らぬ赤の他人である僕にわざわざ振り ﹁っ﹂ ? 7 あかんやつや。 ﹂ ﹁今、視姦しやしたね いてもいいですぜ 正直に言ってくれたなら、まぁ、額によっては通報は止めてお ? ングをしてるに違いない。 ? ﹂ ? りない。 わざわざ確認してくれる親切さにちょっと違和感は感じたものの、絶体絶命にはかわ ﹁ああ﹂ ﹁じゃあ、質問しやすよ 通用するかという指標もないのだ。 をかじっているものの、生兵法は何とやら。今のところ喧嘩に使ったことがないので、 と言うとそちらも人数次第では厳しい。今世はいじめられないようにと護身用に武術 だが、この手の要求に屈した場合、待っているのは第二第三の要求だ。なら、逃げるか 一応中古のライトノベルを数冊買っただけだ、財布の中身はそこそこ残ってはいる。 ﹁あ、ああ﹂ ﹂ の悪そうなお兄さんが金属バットかチェーンでも手にしながら、逃亡を防ぐポジショニ とか、そんな感じの質問が飛び出してくるのだろう。そして、多分僕の背後にはガラ ? ﹁えーと、もしもーし、あっしの言葉聞こえてやすか 第二話「こんにちわ|変態さん《アルティメギル》」 8 ﹁お﹂ 脳内にどうしようという単語がぐるぐる回る中、少女が発しようとした問いは途中で かき消された。 きさが全然違い、立っている場所もまるで違っていたのだから。 悔しげな少女の声を聞きつつ、目を疑った。視界に入るマクシーム宙果は先程とと大 ﹁やっぱり、遅かったようでさぁね⋮⋮ちくしょう﹂ のか、言葉も出ず。ただ、次の瞬間極彩色の閃光に包まれた僕は。 再び声を上げる暇もない。腕を掴まれ、引っ張られる。驚きに言語機能まで麻痺した ﹁ああ、まったく⋮⋮ちょっと一緒に来て下せぇ﹂ 冷静な部分は彼女の舌打ちと言葉を拾っており。 るしかなかったのだけれど、二度目の人生という希有な体験が作用したのか、心の中の 僕としては突然の非日常、ただ固まってやがて重力に従い落ちてくる自動車を見てい ﹁ちぃっ、後手に回っちまった﹂ が正しいか。 見るようなタイヤのない車が宙を走るのとは違う、打ち上げられて空に舞ったというの 耳を塞ぎたくなるような轟音。思わず振り返ると車が空を飛んでいた。SFとかで ﹁なっ﹂ 9 ﹁駐車場、か ﹂ 言えばありなのだろう。 ざるナニカ。非日常がこれでもかと視界を埋めているのだから、瞬間移動だってありと おそらくは屋外駐車場だ。燃える車とか﹁者ども、集まれい﹂とか口にしてる人なら ? ﹂ だから、そのナニカが、訳のわからないことをほざいたのだってきっと││。 収めるのだ││ ﹁ふはははははは この世界の生きとし生ける全てのツインテールを、我らの手中に !! !! 許容範囲と思おうとして、気が付けば口から言葉が出ていた。 ﹁ないな﹂ 第二話「こんにちわ|変態さん《アルティメギル》」 10 第三話﹁|赤の戦士︽テイルレッド︾﹂ いことを言い出し。 黙っていたのが悪かったんだろうか、僕のことを全力で買いかぶった上にとんでもな せん﹂ たことについちゃ、平にお詫びしやす。あっしのこの身体を好きにして下さって構いや ﹁この人ならとは思いやしたが、まさかこれほどのお人とは⋮⋮。無理矢理ご足労頂い たらしい。 ションだったのだが、僕をこんな場所に連れてきた少女は、そう受け取ってくれなかっ それでも、驚いては居た。驚き立ちつくし声も出ない状況だったからこそノーリアク ﹁驚いた。アレに驚いちゃいらっしゃってねぇんですね﹂ 今世をぐるっとひとまとめにして馬鹿にされた気がしたからだろうか。 好き勝手ほざく人外に、二足歩行トカゲもどき怪人の言にイラッとしたのは、前世と !! ! にまみれながらその実、石器時代で文明が止まっていると見える ﹂ ﹁それにしても、ツインテールの少ない世界よ││嘆かわしい これだけ電気と鋼鉄 11 ﹂ ﹁ですんで、どうぞ一つ、頼みをひ﹂ ﹁たすけてー ショーじゃないのだ。 と自分の中の誰かが言った。 ? 制服姿と言うことは、学校の帰りなのだろうか。そう言えばこの世界の人って髪がカ ﹁会、長﹂ の少女を捉えた。 前に動かすことすら出来ず、せめてもの抵抗と彷徨わせた視線が金色の髪を揺らす一人 と自分の中の誰かが問うた。衝動と冷静な問いかけの板挟みになった僕は足を一歩 ﹁待て、飛び出していってアレをどうこう出来るのか ﹂ 待ち受けてる運命がロクなものでは無いことぐらい、僕にだって判る。これはヒーロー いかけたくなった。だが、ホンの一瞬、刹那の間のこと。連れてこられた幼い女の子へ だった。お約束だった。お約束過ぎて、どうしたものかと一瞬ここには居ない誰かに問 振り返れば、先程のトカゲもどきの元へと泣きじゃくる幼女が引き出されるところ ﹁っ﹂ 彼女が続けようとした言葉に幼い少女の声が被った。 ! ﹁助けるべきだ﹂ 第三話「|赤の戦士《テイルレッド》」 12 ラフルだなと前世との違いを今更のように一つ、思い出しつつ、凝視する先の人は、新 入生に向けての歓迎スピーチをした生徒会長の神堂先輩本人で間違いないと思う。特 撮ものっぽい玩具を抱えてるみたいだが、そんなことは今はどうでもいい。今すべき は、必要な情報の収集。 一つ、とりあえず、あの変態トカゲもどきの属してる集団の名が明らかになった訳だ ﹁なるほどな﹂ とはだいたい何時どんな世界でも変わんねぇと思いやすんでね﹂ ﹁随分と旦那は冷静もしくは剛胆なお方とお見受けしやしたが、こういう時聞かれるこ とも思う程完璧なタイミングだった。 絶妙のタイミングで飛び出してきた答えに僕は思わず振り返る。心を読まれたのか、 ﹁あいつらは、アルティメギル﹂ も知れないし、そもそも、アレはいったいなんだというのか。 報が足りなかった。もし、あのトカゲもどきに何らかの弱点が有れば、状況は変わるか 闘力の差があることは判っている。その上で、何とかする方法を求めるには圧倒的に情 なんて泣き言はいつでも言える。とりあえず、トカゲもどきと僕に絶望的なまでに戦 こうするとか無理ッスよ﹂ ﹁ちょっと護身術を囓っただけのパンピーに車跳ね飛ばすような化け物を物理的にどう 13 それよりあなた、何者なんですの 人間の言葉がわかりますのね ﹂ !? が、とりあえず聞き覚えはない。 ﹁究極⋮⋮ 他の子たちを解放なさい !? さあ、抱けい ﹂ !! ! !! は白衣の少女に言った。ぶっちゃけ、もっと早くこうしておくべきだったのかもしれな だから、果たして僕に耐えられるのかという自問を投げた後、くるりと振り返った僕 ﹁説明しろ﹂ 味であることを。 ツッコミを封じられたままトカゲもどきの変態性を見せつけられるという苦行と同意 も ど き を 見 て、遅 れ ば せ な が ら 僕 は 察 し た。こ の ま ま 情 報 収 集 を 続 け る と い う の は、 なんの目的があるのかと問う会長をはぐらかし、大きなぬいぐるみを差し出すトカゲ 幼女には、子猫のぬいぐるみがよく似合う 敵意もまた愛らしさと光る⋮⋮腕白な に何かを要求するなんてケースも考えられるから一概には断じられないが、ただ。 とりから交渉による解決も望み薄そうだなと知れた。囚われた人達の身柄と引き替え そして、俺が彼女と言葉を交わすのと同時進行で行われる会長とトカゲもどきのやり ずる﹂ ﹁分かるとも。こうして意思の疎通ができているではないか。故に、解放は出来ぬと弾 !! !? ﹁貴様はこの子猫のぬいぐるみを持つがいい 第三話「|赤の戦士《テイルレッド》」 14 い。 れとも僕が転生者であることに関係があるのか、だが。 いると言うことは、あっちからも見えると言うことでもある。つまり、見つかる。見つ というのも大問題だったが、それより何より、あのトカゲもどきが僕の視界に入って ﹁このままではまた誰かが捕まってしまう﹂ してる場合なんかじゃないと気づく。 ツッコミどころしかない言葉を口にし、周囲を見回し始めた変態トカゲもどきに質問 ﹁む、新たなツインテールの気配⋮⋮どこだ、どこに隠れているー !! 僕を選んだ、そう聞きたかった。たまたまここに来る途中に出会ったからなのか、そ ﹁何故││﹂ くはこれが事態を解決するための鍵。それは分かる。 この状況下で、わざわざただの腕輪を差し出してくる筈はない。だからこそ、おそら ﹁ふむ﹂ ていたのは、これなのだろう。 レスレット。白衣のポケットから取り出した様子を見るに、さっきポッケの内側で握っ 説明してくれと言ったのに、差し出されたのは金属製と思わしき光沢を放つ深緑のブ ﹁承知しやした、ですが、まずはキ⋮⋮こいつを受け取って下せぇ﹂ 15 かってしまう。口にしていた世迷いごとが真実ならツインテールと無関係な僕は大丈 ﹂ 夫かも知れないが、何らかの事情を知っていると思われる同行者を放っておくとは思え ない。 ﹁使い方は くれまさぁ﹂ ﹁心の中で強く念じて下せぇ、変身してぇと。それだけで、あとはブレスレットが応えて 少女に問いかける時には、既に腕輪を填めていた。 ? ﹁すげぇ、成功した⋮⋮旦那、あんたはやっぱり││﹂ た。ただ、なぜだろうか、それは僕についてるような気がして。 を形成するけしからん大きな、大きすぎる膨らみ。ある意味、僕の理想がそこにはあっ 念じた時に俯いていたからか、最初に視界に飛び込んできたのは谷間。そして、谷間 ﹁ほう﹂ ない、全ては刹那のできごとだったのだから。 ら、光が産まれ、まるで風のように渦巻きながら、身体を包んで行く。声を上げる暇も のか。定番と言えば定番であるが、今考えることではない。ブレスレットを着けた腕か なんとお手軽なとも思ったが、ありがたい。と言うかこれは変身ブレスレットだった ﹁了解﹂ 第三話「|赤の戦士《テイルレッド》」 16 顔を上げてみたが、何故か感激に打ち震えている少女はまともに答えてくれそうにな い。 いたという展開だったのだ。時間をおいて宿主を喰い殺し溢れ出る魔物による阿鼻叫 はその後風化してしまうのだが、行方不明になった人々には魔物の卵が植え付けられて 妙な事件がとある町で起こった。一見、何もされなかった様に思えたため、事件の記憶 は確かゲームだったと思う。行方不明になった市民が何日か後に発見されるという奇 そして、僕は愚かにもようやく真相に気づいた。似た展開を見たことがあった。あれ ﹁これは﹂ テールを奪われてゆく。 モノを抜けた少女たちの髪はなんの手品かさらりと解け、あのトカゲの言葉通りツイン メートルぐらいの輪っかをくぐらされて行く姿を。輪に貼られたシャボン膜のような そう思い、首を巡らせた僕は、見てしまった。一列に並べられた少女たちが直径三 ﹁な﹂ た人を。 いなら、眼前のどたぷんについての質問は後回しにすべきだ。それよりも、今は囚われ 呆けてる場合じゃなかった。この変身で状況がどうにか出来て、捕まった人達が危う ﹁って、いかん﹂ 17 喚。あれはぶっちゃけトラウマになった。 ﹂ ﹁この一見、髪が解けただけに見える変化があの手の﹃置きみやげ﹄を隠すための偽装 だったとしたら ないといけない、なら。 と言うオブラートで隠しているとすれば、とんでもない奴らだ。尚のこと、どうにかし げを隠すための情報操作だとしたら、僕にだって理解出来る。おぞましい戦略を変態性 なんて高度な情報戦だ。あのトカゲもどきの変態じみた言動もそう言った置きみや ? ﹂ ? てやってくれと言われるよりは良い。しかし、髪がほどけたのは、やっぱり厄介な置き 朗報だった。大元の機械だけ壊せばいいとはお手軽だが、助ける方法がないから殺し がね﹂ ﹁あの輪っかさえ破壊できりゃ問題ありやせん。時間が経過しすぎちまうとアウトです 視線は髪を解かれた少女たちの方へ向けたまま問う。 ﹁助けられるか は、ブレスレットを託してくれた少女だけ。 処が早ければ助けられる可能性はある。そして、俺のそんな質問に答えてくれそうなの 問題は髪を解かれてしまった少女たちだ。何らかの置きみやげをされたとしても、対 ﹁一つ、聞く﹂ 第三話「|赤の戦士《テイルレッド》」 18 みやげを隠す為のものだったらしい。 短く答え、駐車場のアスファルトを蹴る。全てはブレスレットが応えてくれるという ﹁了解﹂ なら、僕がするのは思いを伝えることだけ。早く走りたいと、目の前に立ち塞がる障害 ﹂ をぶちのめしたいと、そして││。 ﹁やめろーーーーーーーーーーッ せんし 僕は邂逅したツインテールをなびかせた赤い幼女と。 ﹁な﹂ 走り始めた直後、甲高い叫び声が響き。 !! 19 第四話﹁それは、きっと﹂ 幼女の言にか、それとも登場にか。 ﹁言葉は通じるな、化け物。この人たちのツインテールを⋮⋮返せ﹂ ﹁な⋮⋮これは⋮⋮﹂ トカゲもどきは驚き立ちつくすが、驚いたという意味ではボクも同様だった。手足を 覆う白と赤のプロテクター、腰部にあるそれにツッコミを入れる気はない。ちらりと自 動車の窓を横目で見れば、色と形状は違うものの僕もその手のスーツを装着しているよ うだったから。 付き合ってますと言わんがばかりだが、それも解せない。 のか。見れば、たなびく髪は赤いツインテールだ。まるで姿までトカゲもどきの寝言に せるための情報操作なのだから。なら、幼女の方は何故トカゲモドキの狂言に付き合う 言っているかだ。トカゲもどきのほうはいい、ロクでもない置きみやげから目を逸らさ 僕が驚いたのは別の点。そう、何故この幼女までがツインテールがどうのこうのと ﹁⋮⋮違う﹂ 第四話「それは、きっと」 20 ﹁いや﹂ 待て、考えろ。ツインテールを守り、取り返すだけのために幼女が化け物に挑む何て あり得るのか。 ﹂ ? に連れられ、土壇場でブレスレットを貰ってここにいるが、幼女の方は僕にブレスレッ るとすれば、胸の大きさを含む外見年齢と髪型、そして││与えられた情報。僕は少女 そして、僕は気づいた。あの幼女の立ち位置は僕と同じなのではないかと。違いがあ ﹁⋮⋮そうか﹂ ようにあの少女の声がしたのは。 おそらくはそこにヒントがあるのではと思った直後だった、まるですぐ側にいるかの ﹁旦那ぁ﹂ 待て、付き合う意味だって。 ﹁ん 筈なのだ。寝言の為に用意するなんて考えられない。有るのだ、深い意味が。 だのコスプレであんな真似は不可能、つまりアレは洒落にならないくらい強力な装備の 声を上げた直後、急減速してアスファルトに火花を散らし、粉塵を巻き上げていた。た なら、なぜ幼女はトカゲもどきに付き合うのか。途中からしか見ていないが、幼女は ﹁ないな﹂ 21 トを渡した少女のような誰かから、トカゲもどきの言動に付き合うようにと何らかの説 明をされたのではないか。例えば、あの輪っかをくぐらされた少女達が真相を知り心の 傷を負わないように、とか。 ﹁なるほど、な﹂ 怪物はおぞましい計画が知られぬように、幼女は巻き込まれた人々の精神面のケアを 考慮し、結果として成り立っているのが﹁ツインテールを奪う悪党と守り取り戻そうと する正義のヒーロー﹂の図式という訳か。 成る程、良くできている。この茶番に加わる一人物として僕、いや俺と言うキャラは ﹁ならば、ぼ⋮⋮俺はさしずめ巨乳のヒーローと言ったところか﹂ ﹂ あっしゃ、巨乳な まさにうってつけだ。趣向と合致しているからこそ、俺ならその役をきっちり演じられ る。 ﹂ んて一言も言ってねぇってのに⋮⋮﹂ ﹁旦那、あんたぁ、いったいどういう把握力をなさってんですかい ﹁巨乳のヒーローとして戦えばいいのだろう ? の言動を参考にしつつ、キャラを作って行けばいい。そう思ってトカゲもどきと幼女の 驚きかすれた少女の声が聞こえてくるが、やっぱり正解らしい。なら、後はあの幼女 ? ? ﹁だ、旦那 第四話「それは、きっと」 22 方を見ると。 ﹁行くぞ﹂ 思えない。 チャンス と言うあのトカゲもどきのポーズを鑑みれば、負けたとしてもすぐに命を奪われるとは きてるのだ、相応の戦闘力は持ち合わせているだろう。くわえて、ツインテールを奪う ま。幼い女の子を囮にするなんて人としてどうかとは思うが、スーツを着て飛び出して 芝居も良いが、今は好機なのだ。トカゲもどきはツインテール幼女に気をとられたま ﹁いや﹂ 自分の胸部にあるこのけしからん膨らみを触ってみることから始めるべきか。 この場に立っている以上、俺もあの高みに達しなくてはならない。となると、まずは ﹁だが﹂ だろう。 勝手に吹っ飛んだあげくダメージを受けたかのようなそぶりで居るように見えたこと なんてレベルの高い擬態だ。真相を知らなければトカゲもどきが変態性を発揮して ﹁くっ﹂ トカゲもどきが何やら呻きつつ身を起こすところだった。 ﹁ぐ、ぐうう⋮⋮あまりの強大な幼気に吹き飛ばされたか⋮⋮﹂ 23 これ以上の思考は時間の浪費だ。 ﹁はあっ﹂ あの場所の近くへ運んでくれと願いながらアスファルトを蹴り、胸元を装飾するリボ ンに手を添えた俺はそのまま胸を軽く撫でる。使い方は、ブレスレットが、スーツが教 えてくれる。下乳の間、丁度谷間に挟み込んでいるかの様な角度でヘソの前に現れた柄 を掴み、一気に引き抜けば、手に握られていたのは、片刃の斧。 ﹁シュトゥルムアクストっ﹂ 一振りすれば、通販で買った高枝切りばさみか何かのように柄が伸び、ポールウェポ ンと化したそれを両手に持ち替え、突撃する。 ﹂﹂ 妙な仮面を付けた黒ずくめ、さしづめ戦闘員の幾人かが俺に気づいたが、遅い。 ﹁﹁モケ ? ことで生じた高揚感の産物だろう。それと。 りからどんどん力が溢れ出てくるような錯覚を覚えるが、きっとこれは戦いに直面した 仮面戦闘員達が一気に吹き飛ぶ。いける。さっき作った設定の筈なのに、胸に触った辺 利き手を外し、斧頭から遠い方の手のみ残して一閃すれば広いリーチに巻き込まれた ﹁﹁モケェェェェェ﹂﹂ ﹁邪魔だぁぁぁぁっ﹂ 第四話「それは、きっと」 24 ﹁⋮⋮あいつ﹂ そう、トカゲもどきに向かっていった幼女だ。幼い女の子さえ怪物に向かっていった と言うのにここで俺が臆したりまごつく訳にはいかない。それは、きっと男としての矜 アルティロイド 持だ。うん、今はついていないけど。 ﹂ あれだけの戦 闘 員をたった一振りで ぬうう、不覚。素晴らしきツイ ンテールに目を奪われ、敵の存在に気かなんだとは⋮⋮貴様、何者だ ! だから、色々と台無しと言われようとも、俺の回答としてはそれが精一杯だった。 ﹁ただの巨乳好きだ﹂ も、生憎名乗れるような名前は持ち合わせていない。 演じていようとも、部下が薙ぎ払われれば気付きはするか。しかし、何者だと言われて ただ、俺は同時にやらかしもしていたらしい。いくらツインテールへ執着する変態を ﹁っ﹂ !! ﹁なん、だと ? 25 第五話﹁俺としてはそれよりも﹂ ﹁はあっ﹂ シュトゥルムアクスト アルティロイド だいたい、偽装変態トカゲとのやりとりをしてる場合でもない。巨乳好き宣言への反 応を待たず転進した俺は、手にした斧状の武装で幼女を包囲していた戦 闘 員とやらの一 部を薙ぎ払う。 ﹁まったく﹂ 囮にはなってくれていたようだが、少々群がりすぎだろう。幼女の戦闘力がどれ程の モノなのか分からない手前、要らないお節介だった可能性もあるが、先の一薙ぎで目を 付けられてしまった今、トカゲもどきが俺をスルーする何て事は、あり得ない。 ﹂ ! ﹁へ ﹂ その背後に戦闘員を見た俺は謝罪の言葉を遮り、短く叫ぶ。 おそらくは、助けられたと思ってくれたらしく、礼の言葉をかけてきた幼女だったが、 ﹁後ろだ ﹁あ⋮⋮あ、ありが﹂ 第五話「俺としてはそれよりも」 26 ? ﹁モケ ﹂ ﹁モケェェェェッ ﹂ ﹁ち、近寄るなあああああああああ ﹂ 払った戦闘員が落とした機材を拾うためたまたま近寄ってしまったのだろう。 らしていた。敵が接近しているように見えたので警告を発したのだが、多分俺が薙ぎ 両者の時が止まる中、戦闘員の手に撮影機材が有るのを見て、気づけば小さく声を漏 ﹁あ﹂ 振り返った幼女、至近距離で対面する仮面の戦闘員。 ? ﹂ !! させる問いにはお約束臭さえ、感じたものの、幼女を見倣うと決めた俺は横目で幼女を トナーではなく油断ならない相手と認識したらしい。幼女へ投げたデジャヴさえ感じ その一撃に、俺の確信は強まる。だが、これでトカゲもどきも幼女を狂言回しのパー ほど凄まじき力があろうとは⋮⋮貴様、何者だ ﹁ぬうっ、ツインテールの素晴らしい幼女だと思っていたが、よもやこの幼女にまでこれ ﹁ほう﹂ せながら。 た戦闘員は、少年漫画を彷彿と焦るポーズで空高く飛んでいった、スコーンと音を響か だが、俺の勘違いなどには気づかず、駄々っ子のように振り回した幼女の腕に当たっ ! !! 27 見た。 ﹁⋮⋮⋮⋮何なの、俺 ﹂ ﹂ ? そのものに疑問を抱いているように見えないのだ。 誰ぞ、彼女に抱かせる なんという心遣い、そして完璧な演技力。事情を察した俺でさえ、まるで自分の存在 ﹁くっ﹂ のか。 この幼女、俺が名乗りに失敗したのを聞いていて、状況を察し、俺に合わせてくれた ﹁そうか﹂ だった。もし、ここでこの幼女が名乗ろうものなら、俺の対応のまずさが際だつ。 変身してしまって名前のない俺は巨乳好き宣言で回りに何とか合わせるのが精一杯 ひょっとしたら、俺への気遣いか。先程トカゲもどきに名を問われたが、成り行きで ﹁待てよ﹂ うボケなのか。 う話できっちり合わせておきながら、まさかの発言。手抜かりなのか、それともこうい そして、我が耳を疑った。あれだけ完璧にトカゲもどきとツインテールがどうのと言 ﹁は ? ﹁うおお∼っ、よく分からぬがしょんぼりした幼女、たまらぬ !! 第五話「俺としてはそれよりも」 28 人形を持てい ﹂ ﹂ !! ﹂ !! き伏せる。 ﹁ぬうっ、貴様、またしても邪魔だてするか ! ! しになるとは思えないが、それでも。 ﹁ならば、気は進まんが貴様の相手は俺がする。者ども ﹂ 被ってくれたのだ。一時のパニックから立ち直る程度の時間を稼ぐごとぐらいで恩返 この幼女には、借りがある。名乗りでやらかした失敗をわざわざ俺のために一緒に ﹁当然だ﹂ ﹂ 俺を忘れて貰っては困る。幼女の脇を抜けると一番近くにいた仮面戦闘員を斧で叩 ﹁モゲッ﹂ ﹁ふんっ﹂ ど。 見るに、自身の演技のがもたらした影響は彼女の想定も越えていたようでもあったけれ ただ、一方欠けた包囲網を狭めずいずい寄ってくる変態の群れに悲鳴をあげる幼女を ﹁うわあああああああ トカゲもどきと戦闘員までもが、彼女の演技に騙されていた。 ﹁モケェ ! 29 ﹁﹁モケーッ ﹁しま﹂ ﹂﹂ どきが居るのだ。 飛びかかる仮面戦闘員の声、だが振り向く訳にはいかない。目の前にはあのトカゲも ﹁っ﹂ ﹁モケーーーーーー﹂ ニックを起こしたままやり合える程なのか。 どきの戦闘力は未知数だ。幼女も戦闘員を殴り飛ばす程の力は持っていたようだが、パ トカゲもどきの指示で失敗に気づいた。変態偽装能力は思い知っているが、トカゲも ! ﹁モケェ∼∼∼∼∼∼∼﹂ 攻めて、くる、はず。 ﹁うぐっ﹂ ﹁わっ﹂ ﹁モケッ﹂ だから、隙を見せればそこに乗じて攻めてくる筈で、あり。 ﹁なっ﹂ ﹁ひゃああっ﹂ 第五話「俺としてはそれよりも」 30 ﹁うおわー くのっ⋮⋮ ﹂ ! かと思えば、すぐに断末魔に変わる。 つった声がしたかと思えば、チラチラと視界の端を炎がかすめ、仮面戦闘員の声がした 攻 め て く る か ら ど う し よ う と 思 っ た 筈 だ っ た。な の に、な ん だ ろ う、こ れ は。引 き ! ﹂ !! ﹂ !! 道理でこっちに攻撃が来なかった訳だと納得すべきか、叫ぶ幼女に便乗して一言罵声 ﹁ホントに錯覚だ、やめろ気持ち悪ぃ そうですか、後ろの光景が気になって俺はガン無視ですか。 話世界の楽園に迷い込んだ錯覚を覚えたぞ ﹁釘付けになって動けなかった⋮⋮。剣閃と共に空を舞うツインテール⋮⋮今俺は、神 ﹁な﹂ そんな俺を前にして、トカゲもどきは口を開く。 ﹁動けなかった﹂ 足を屈め、作り出した前に飛び出すための瞬発力をもって俺は飛び出そうとし。 ﹁いく││﹂ トカゲもどきの相手をするだけだ。 立ち直ったのだろう、多分。ならば、後方に気をやる必要はない。俺は俺で目の前の ﹁⋮⋮そうか﹂ 31 ﹂ でもぶつけるべきか。とりあえず、無視されたことにイラッとしたのは確かだが、また 幼女に気が逸れたなら、それはそれでいい。 ﹂ ﹁はぁはぁ、ツインテール⋮⋮ツインテェェルゥゥゥ ﹁ひ⋮⋮ !! ﹁任せた﹂ ろ髪を引かれる重いではあったが、俺の目的はそもそも輪っかの破壊だ。 高度すぎる変態偽装のトカゲもどきが荒ぶり過ぎてて、助成した方が良いのではと後 ?! たのだ。 後ろから幼女の声が引き留めたような気はしたが、きっと気のせいだ、気のせいだっ ﹁えっ、あ、ちょっ﹂ 第五話「俺としてはそれよりも」 32
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