資料1 改修周期18年を目指した大規模修繕工事仕様案

資料1
改修周期18年を目指した
大 規 模 修 繕 工 事 の 仕 様 案
1.コンクリート・モルタル部の補修工事
2.シーリング工事
3.外壁等塗装工事
4.防水工事
横浜若葉台 100 年マンション・世代循環型団地プロジェクト
改修技術ワーキンググループ
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I.コンクリート・モルタル部の補修工事
(1) コンクリート躯体改修工事
【改修仕様の考え方】
現在、一般化している改修仕様を適用することが考えられる。
コンクリート躯体不具合部(鉄筋発錆・ジャンカなどの発生部)の改修手法は、端的に
言えば、不具合部をハツリだした上で、ポリマーセメントモルタル、樹脂モルタルなどで
埋め戻す工法と言える。各設計事務所、各施工会社の考えにより、その改修範囲・程度に
差はあるものの、概ね当該補修方法が基になっている。
また、これらの改修手法によりコンクリート躯体の不具合部を適切に処置すれば、不具
合の再発は低減できると考えられる。(添付論文参照)
なお、コンクリート躯体改修工事の質を左右する要件としては、躯体不具合部の事前調
査による部分が大きい。
大規模修繕工事実施時には、建物躯体に対して全面打診検査を実施することが常となっ
てきた。しかし、実際には全面打診検査で確認された不具合全てを改修対象とするのでは
なく、コストパフォーマンスを勘案し、不具合が表出する可能性が低い部分は改修対象か
ら除外されることが多い。
これらの判断は現場における監理者、あるいは施工者の判断に委ねられているが、改修
周期18 年を目指す場合には極力、軽度なものであっても工事対象とすることが望まれる。
【鉄筋発錆部改修仕様の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.範囲の特記
建物全体に対し、目視、打診ハンマーを用いて入念な事前調査を実施し、
コンクリート躯体内部での鉄筋発錆箇所の発見に努める。
2.斫り 除去
a.鉄筋がコンクリートの表面に露出している箇所、鉄筋の発錆腐食によ
りモルタルやコンクリートのかぶり部分が剥離し、浮いているか、盛り
上がっている箇所、磁器質タイルに浮きが生じている箇所、および鉄筋
の発錆が原因と思われるひびわれが発生している箇所の周辺は、電動コ
ンクリートカッター、タガネ、ハンマーなどで入念に斫り除く。
b.斫り屑、コンクリート粉などはワイヤーブラシ、ブロアーを用いて除
去する。
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3.ケレン清掃
a.鉄筋の錆をハンマー、ディスクサンダー、ワイヤーブラシなどで丹
念にケレン、除去する。
b.斫りカス、錆粉などをワイヤーブラシ、ブロアーで除去する。
4.防錆・防食
a.斫り出した鉄筋の表面、コンクリート面、およびその周辺のコンク
リート地肌に浸透性中性化抑止材をローラー、ブラシ、または刷毛によ
って、押し込むように均一に追い掛け塗りする。
b.ポリマーリッチなポリマーセメントペーストを練り混ぜ、露出鉄筋
部分、およびその周辺に刷毛でたたき込むように塗り込む。
5.埋め戻し・
斫り取ったコンクリート、モルタル面にポリマーセメントモルタルを押
復元処理
し込むように塗り付ける。塗り厚は一度に20mm 以内で付け送り、周辺
のコンクリート、モルタル面と平滑になるように仕上げる。
6.下地調整
埋め戻し・復元処理をおこなった表面にはポリマーセメントモルタルを
塗り付け、周囲の表面状態になじませる。
7.水切り目地
a.各種天井・上げ裏などの水切り目地部にあって、目地底に鉄筋が部
の処理 認められ、その発錆が著しい場合は上記の一連の処理を施す。
b.鉄筋の発錆が軽度である場合には、露出鉄筋の表面を十分にケレン
し、浸透性中性化抑止材を含浸させた上で、ポリマーセメントモルタル
目地底にたっぷりと塗り込む。塗り込み厚さは5 ㎜以上を確保する。
8.既補修部分
の処理
既に補修してある箇所にあって補修材に浮きなどのあるものは、既補修
材を除去し、本工事仕様に基づいて再補修する。
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(2)コンクリート躯体・モルタル層のひびわれ補修工事
【改修仕様の考え方】
現在、一般化している改修仕様を適用することが考えられる。
ひびわれに対する代表的な改修仕様は、以下と言える。
① フィラー処理
② U カットシール処理
③ エポキシ樹脂低圧・低速注入処理
「①フィラー処理」は軽度なひびわれに対する処理、「②U カットシール処理」「③エ
ポキシ樹脂低圧・低速注入処理」は比較的ひびわれ巾が大きなものに対応する処理。
この内、②と③を比較すると、③は躯体ひびわれ内にエポキシ樹脂を充填する処理であ
り、目視確認が難しいために②と比較して止水性能の信頼性が低い。一方②にあっては、
ひびわれをU 型にカットし、目視で確認しながらシーリングを打ち込めることから、止水
性能の信頼性は高い。しかし、補修跡が目立つといったデメリットがある。したがって、
雨水が直接かかる部位などにあって、止水性能が要求される場合には、極力②を採用する。
上記改修仕様を適切に実施すれば、躯体改修工事と同様、ひびわれの再発は低減できる。
しかし、コンクリート建物の性質上、必ずひびわれは生じるし再発もする。そこで、ひび
われに対してはその改修手法のみならず、改修後の仕上げ(塗装・防水)を併せて検討す
るのが合理的と言える。
【フィラー処理の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.脆弱部除去
ひびわれ周辺の脆弱な仕上層は入念に除去する。
2.清
ひびわれ周辺の仕上層の脆弱部を除去した上で、ひびわれ周辺をブラッ
掃
シングしながら清掃する。
3.フィラー処理 a.ひびわれに沿って、コンクリート地肌に浸透性中性化抑止材を押し
込むように均一に追い掛け塗りする。
b.ポリマーリッチなポリマーセメントペーストを練り混ぜ、ひびわれ
周辺に刷毛で丹念に塗り込む。
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4.下地 調整
a.フィラー処理をおこなった表面は、弾性ポリマーセメントモルタルを
塗り付け、周囲の表面状態になじませる。
b.塗り付けた弾性ポリマーセメントモルタルが乾燥した後、サンドペー
パーなどにより表面を目粗しする。
【Uカット・シール処理の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.脆弱部除去
ひびわれ周辺の脆弱な仕上層は入念に除去する。
2.U カット処理 ディスクサンダーなどを用い、モルタル層、またはコンクリート躯体を
ひびわれに沿って幅10~20mm、深さ15mm 程度の範囲でU 型にカットす
る。
3.清
掃
4.躯体保護
U カットした周辺をブロアーを用い、丹念に清掃する。
U カットした溝に沿って、コンクリート地肌に浸透性中性化抑止材を押
し込むように均一に追い掛け塗りして含浸させる。
5.シーリング
U カットした溝底に、アクリルウレタン系シーリング材を厚さ5mm程度
に途切れなく擦り付けるように均一に充填する。
6.復元処理
溝内にポリマーリッチなポリマーセメントモルタルを押し込むように塗
り付け、十分に硬化した後に、さらに周囲の表面状態となじむように弾
性ポリマーセメントモルタルを付け送りする。
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【エポキシ樹脂低圧・低速注入処理の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.脆弱部除去
ひびわれ周辺の脆弱な仕上層は入念に除去する。
2.フィラ-・シール処理
a.ひびわれに沿って、コンクリート地肌に浸透性中性化抑止材を押し
込むように均一に追い掛け塗りする。
b.ポリマーリッチなポリマーセメントペーストを練り混ぜ、ひびわれ
に沿ってその周辺に刷毛でたたき込むように塗り込みひびわれ表面を
シールする。ただし、ひびわれの幅に応じて100~200mm 程度の間隔で
エポキシ樹脂注入孔を設け、その箇所はポリマーセメントペーストに
よるシール処理を施さない。
3.エポキシ樹脂の注入
a.シール材硬化後、注入孔よりエポキシ樹脂を低圧・低速注入器を用
いひびわれ内部に入念に充填する。
b.注入孔の間隔は100~200mm 程度、注入圧1~2kg・f/c ㎡、注入樹
脂量20~30g/穴を標準とする。
c.注入完了後、注入器を取り外し、注入孔にポリマーセメントペース
トをすり込み、表面を平滑に仕上げる。
4.下地調整
フィラー処理をおこなった表面には弾性ポリマーセメントモルタルを
塗り付け、周囲の表面状態になじませる。
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(3)モルタル層の浮き、界面剥離、欠落箇所の補修工事
【改修仕様の考え方】
現在、一般化している改修仕様を適用することが考えられる。
① 浮き・欠けなど不具合部のハツリ、復元処理
② アンカーピンニング処理
③ エポキシ樹脂注入処理
モルタル層の浮きや欠落の度合いによって、①~③の工法を使い分けることが一般的で
ある。概ね「劣化の程度大→①」「劣化の程度中→②」「劣化の程度軽→③」といった様
に使い分けられている。
上記工法の適用区別は通常仕様書などに規定されているが、現実的には工事費用とそれ
ぞれの建物条件によって、現場における監理者、施工者の判断に委ねられている。
なお、②と③を比較すると、②の1 穴あたりの改修単価は、③の1 割増し程度であるこ
とが多い。その改修単価と信頼性を勘案し、改修周期18 年を見据えた場合、③を適用する
部分であっても②を適用することが望まれる。
【エポキシ樹脂注入処理の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.注 入 孔
a.あらかじめマーキングされた注入予定位置に電動ドリルを用いて注入
孔を開ける。
b.注入孔径は5~6mm、深さはモルタル層を貫通しコンクリート躯体に
10mm 程度達するものとする。
2.清
掃
窄孔した後のモルタル・コンクリート粉はブロアーを用い、丹念に清掃
する。
3.注
入
a.手動グリースポンプを用い、建築補修用注入エポキシ樹脂(JIS A6024)
を注入する。
b.一穴当たりの注入樹脂量は30~50g/穴程度とし、浮きの程度、およ
び注入材の粘度によって注入圧、注入速度を加減する。
c.標準注入圧は 0.5~3.0 ㎏/c ㎡とする。
d.モルタル層表面に溢出したエポキシ樹脂は丁寧に取り除く。
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4.修
復
注入したエポキシ樹脂が硬化した後、注入孔をエポキシパテで埋め、さら
に、ポリマーセメントモルタルで表面を平滑に仕上げる。
【アンカーピンニング処理の例】
細部の仕様は異なるものの、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
1.挿 入 孔
a.あらかじめマーキングされた挿入予定位置に電動ドリルを用いて挿
入孔を開ける。
b.挿入孔径は5~6mm、深さはモルタル層を貫通しコンクリート躯体に
30mm 程度達するものとする。
2.清
掃
窄孔した後のモルタル・コンクリート粉はブロアーを用い、丹念に清掃
する。
3.注
入
a.手動グリースポンプを用い、建築補修用注入エポキシ樹脂(JIS A6024)
を注入する。
b.一穴当たりの注入樹脂量は30~50g/穴程度とし、浮きの程度、およ
び注入材の粘度によって注入圧、注入速度を加減する。
c.標準注入圧は 0.5~3.0 ㎏/c ㎡とする。
d.モルタル層にあふれ出したエポキシ樹脂は丁寧に取り除く。
4.ピンニング
a.エポキシ樹脂注入後、アンカーピンを窄孔したコンクリートの底部
に達するように挿入する。
b.アンカーピンは[JIS G 4315 冷間圧造用ステンレス鋼線]に定める
クロムニッケル系ステンレスとし、表面にネジ切りなどの滑り止め加工
を施した直径4mm の丸鋼棒を用いる。
c.アンカーピンは十分に脱脂された清浄なものとする。
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d.アンカーピンは挿入孔の深さより5mm 程度短いものとするが、万一、モ
ルタル層の表面にはみ出した場合は、アンカーピン周囲を5mm程度小斫りし
た上で、ピンカットする。
5.修
復
アンカーピン挿入後、挿入孔をポリマーセメントモルタルで埋め、表面を
平滑に仕上げる。
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I I.シーリング工事
【改修仕様の考え方】
現在、一般化している改修仕様を適用することが考えられる。
外壁周りなどにあっては、以下のシーリング材が採用されることが多い。
外壁など塗装が施される部分:アクリルウレタン系シーリング材
ポリウレタン系シーリング材
タイル面などの露出部分
:ポリサルファイド系シーリング材
変性シリコーン系シーリング材
金物と金物の取り合い部など:変性シリコーン系シーリング材。
シーリング材にあっては、通常の経年劣化以外に、以下の不具合が生じる場合がある。
① シーリング表面の塗装の汚れ
② シーリングの異常な剥がれ
③ シーリング材の硬化不良
①にあっては、シーリング材と塗装材料の相性によって生じる。
例えば、近年のポリウレタン系シーリング材はノンブリード型が主流になってきている
が、10 年程度前に施されたノンブリード型ではないポリウレタン系シーリング材の場合シ
ーリング材とその上に施した水性系塗料とが反応し、表面がベタつく不具合が生じている
事例が散見される。
②にあっては、施工方法に起因する。
原則としてシーリング材は、一旦既存シーリング材を撤去した上で打ち代えることを基
本とする。しかし、改修工事の際に撤去手間を省略し、表層に新規シーリング材が擦り付
けられているだけの事例を見ることがある。
このような場合、表層シーリング材は短期に劣化するため、意味の無い工事と言える。
③にあっては、2液型シーリング材の攪拌不良などにより硬化不良が生じる場合がある。
なお、シーリングにあっては上記の様な仕様上・施工上の不具合は別として、その耐候
性は材料性能に委ねられる。したがって、各シーリングメーカーの材料開発に期待する部
分が大きいが、太陽光や直接的な熱射からシーリング材を保護することを勘案すると、塗
装部位に絡むシーリング材にあっては、表層に塗装を施すことが検討される。
その他、シリコーン系シーリング材にあっては、周辺に黒ずみ汚れを生じさせる場合が
ある。換気口廻りなど設備機器周辺では、シリコーン系シーリング材が使われている場合
があるが、原則としてシリコーン系シーリング材は、周辺を汚染するだけでなく、その後
の改修において、塗装が付着しないなどの不具合も生じるため、採用を控えることが検討
される。
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I I I.外壁等塗装工事
【改修仕様の考え方】
①トップコート
現在、マンションの改修工事において一般化している塗料を大別すると、「水性系塗料」
と「弱溶剤系塗料」とに分けられる。
また、「水性系塗料」、ならびに「弱溶剤系塗料」ともに、ウレタン系、アクリルシリ
コン系、フッソ系といった種類がある。
「水性系塗料」と「弱溶剤系塗料」とを比較した場合、塗料メーカーの試験結果やカタ
ログなどを見ると、耐候性の差は少ないように見られるが、一般的には「弱溶剤系塗料」
の方が、耐候性は優れていると判断される。しかしその一方で、「弱溶剤系塗料」はシン
ナー臭が発生することから、工事中の臭いの発生に配慮する必要がある。
これらのことを踏まえると、耐候性が求められる外部廻りなどにあっては弱溶剤系塗料
を採用するのが望ましい。一方で、非雨がかり部分である中廊下や階段室内にあっては、
臭いに配慮した水性系塗料を採用することが検討される。
ウレタン塗料、シリコン塗料、フッソ塗料にあっては、以下のとおりである。
値 段 : フッソ系 > アクリルシリコン系 > ウレタン系
耐候性 : フッソ系 > アクリルシリコン系 > ウレタン系
近年アクリルシリコン系塗料とウレタン系塗料との価格差が小さくなったことから、ア
クリルシリコン系塗料が採用されることが多くなっていると推察する。また一方で、高額
ではあるもののフッソ系塗料を採用する事例も増えてきている。
以上を勘案すると、改修周期18 年を見据えた場合、外壁などの雨がかり部分にあっては、
弱溶剤系フッソ系塗料を採用することが検討される。
②下塗り材
一般に、外壁塗装を行う際には「下塗り」「中塗り」「上塗り」の3 工程を踏む場合が多
い。
※下塗りに際しても、1 工程で下塗りが完了する材料や、下塗りに数工程必要な材料が
ある。
「下塗り」にあっては後述するが、「中塗り」「上塗り」は先述の「トップコート」
が該当する。
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下塗り材は、工事対象面の状況や、要求性能によって違えるが、現在多く普及している
ものを以下に整理する。
①一液型微弾性下地調整材
②一液型弾性エポキシ樹脂サーフェーサー
③高弾性下塗り材
①は、シーラーレスで使用できる材料であり、従来から比較的多くのマンションで採用
されている。塗装仕様は、薄塗り仕様(0.5 ㎏/㎡ 程度)と厚付け仕様(1.0㎏/㎡ 程
度)がある。
やや弾性力のある下地材であり、一般外壁など、ひびわれの発生が軽度の部位に使用し
いる。
②は、①より付着力、弾性力がやや勝る材料として近年普及してきた。
①は、既存塗装が弾性系塗料であると採用不可の場合があるが、②は①より弾性力が高
いため、既存塗装面の弾力性にかかわらず、採用することができる。
②にあっても薄塗り仕様、厚塗り仕様があり、ひびわれがやや多い場合には、②の厚塗
り仕様を採用することによって、ひびわれの表出を抑えることが期待できる。
③は壁面防水(JIS6021)を意図した仕様であり、プライマー、基層塗り、模様塗りの3
工程で下地を形成する。主材を2 度塗りすることから2.5 ㎏/㎡ 程度と塗布量も①②より
多い。高弾性下地材ともいわれ、弾性力が高く、ひびわれ追従性も良い。
以上を勘案すると、改修周期18 年を見据えた場合、ひびわれが生じやすい手摺壁などに
あっては③を、一般外壁にあっては躯体保護の観点から②の厚付け仕様を検討する。
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I V.防水工事
【改修仕様の考え方】
①ウレタン塗膜防水
現在、マンションの庇や共用廊下排水溝等に対して最も多く採用されているのが「ウレ
タン塗膜防水」であろう。
ウレタン塗膜防水にあっても、トップコートとして最終仕上に使う材料にウレタン系、
アクリルシリコン系、フッソ系といった種類がある。
なお、外壁塗料と異なるのは、ウレタン塗膜防水においては「ウレタン系トップコート」
が標準と言え、「フッソ系トップコート」「アクリルシリコン系トップ」は何れも高耐候
性トップコートとして同等に扱われる事である。
ウレタン系トップコートを採用した場合、施工者・メーカーの保証期間は5 年が標準的
である。一方で高耐候性トップコートを採用した場合、保証期間は10 年となる。
また、ウレタン塗膜防水のトップコートには「高反射トップコート」がある。本来は屋
上などに使用し、室内温度の上昇を抑える効果を期待したものであるが、防水層自体の温
度上昇の低減も期待できるため、防水層自体の延命に貢献すると推測する。
以上を勘案すると、改修周期18 年を勘案した場合のウレタン塗膜防水仕様にあっては、
「高耐候性トップコート」を採用することを基本方針とする。また、高反射トップコート
に防水層の延命効果がある場合には、庇天端などにあっては「高耐候性高反射トップコー
ト」を採用する。
なお、ウレタン塗膜防水にあっては、その性能を十分に維持するために規定塗布量を確
実に確保することが重要になる。
立上り部などにあっては、塗布量が少なくなりやすいので注意を要する。また、ひびわ
れが生じやすい部位や躯体目地部などにあっては、躯体の挙動に伴う防水層の破断に配慮
する必要がある。
塗布量の確保、ならびに防水層の補強を兼ねて、各種立上り部、手摺天端・パラペット
天端などのひびわれが生じやすい部分、躯体目地部などにあっては、メッシュクロスを補
強張りすることが一般的であり、これらの基本的な作業を確実に実施することが重要にあ
る。
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②長尺塩ビシート+ウレタン塗膜防水
バルコニーや共用廊下、外部階段などにあっては、「長尺塩ビシート+ウレタン塗膜防
水」の複合防水仕様が検討される。
床面を長尺塩ビシート、排水溝・巾木をウレタン塗膜防水で仕上る仕様であるが、各設
計事務所や施工会社の考えにより、端部収まりの仕様が若干異なる。
具体的に言えば、長尺塩ビシートの端部にシーリング(止水処理)を施すか否かである
が、大手長尺塩ビシートメーカーである「タキロンマテックス㈱」の標準仕様では端部シ
ールを施す使用となっており、当該仕様を基準に検討する。
なお、巾木・排水溝のウレタン塗膜防水にあっても「高耐候性トップコート」の採用を
検討する。
【長尺塩ビシート+ウレタン塗膜防水の例】
細部の仕様は異なるにせよ、現在一般化している改修手法は以下と類似すると考えられる。
共用廊下の防水仕様の例
階段部分の防水仕様の例
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③その他の防水
新築時仕様にあっては、共用廊下の排水溝・巾木、小庇天端などに防水が施されていな
い事例を散見する。
コンクリートは元来止水材料と考えられているので原則として防水が必要な材料ではな
いが、ひびわれが生じればそこから漏水するし、コンクリートに含浸した雨水が鉄筋に悪
影響を及ぼすことは否定できない。したがって、これらの部位にあっては、新築時に防水
が施されていなくとも、漏水防止、躯体保護を勘案して前述のウレタン塗膜防水を施すの
が良いであろう。
また、手摺壁の天端などにあっても、一般的には防水が施されていない。しかし、当該
部位にあってはひび割れが生じやすい部位でもあるので、躯体保護の観点から予防的にウ
レタン塗膜防水を施すことが検討される。
以 上
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