解答例

2016 年度前期 有機化学演習 第6回 脱離反応 (E1, E2)
1. 2-ブロモプロパンからプロペンが生成する脱離反応は、(1) メタノール中と
(2) KOH のメタノール溶液中では反応機構が異なる。それぞれの反応機構に
ついて説明しなさい。
(1) メタノール中 (E1):
CH3 CH CH3
H
CH CH2
+ Br–
CH3
Br
CH3OH
CH3 CH CH2 + CH3OH2
(2) KOH のメタノール溶液中(E2):
CH3
H OH
H
CH CH2 + –OH
CH3 CH
Br
CH2
CH3 CH CH2
+ Br– + H2O
Br
(※ 本来は「2-クロロ-2-メチルプロパン」について問うつもりの問題でし
た。問題の不備です。申し訳ない。) 2. E2 反応は、脱離する H 原子と脱離基が互いに anti の立体配座になるとき進
行しやすい(アンチ脱離)。下の実験結果を説明しなさい。
CH3
–OCH
CH3
3
CH3
Cl
出発物質は、下の A, B の2種類の立体配座で存在する。Cl と E2 脱離を起こ
し得る水素原子は下の図のように3つあるが、A の立体配座ではすべて Cl に
対して gauche の位置にある。B の立体配座では、図で示した一つの水素原
子だけが Cl に対して anti の位置にある。従って、E2 反応はこの位置で進行
し、上記の生成物が得られる。
anti
H
H
CH3
H
CH3
Cl
H
H
A
H
B
Cl
3. 2-クロロプロパンとナトリウムエトキシド (NaOCH2CH3)の反応では、E2 反
応と SN2 反応の生成物が両方得られるが、2-クロロプロパンと酢酸ナトリウ
ムの反応では SN2 反応の生成物のみが得られる。理由を説明しなさい。
酢酸イオンはエトキシドイオンに比べて塩基性が低いため、E2 反応に必要な
C–H 結合からの H+の引き抜きを起こしにくい。従って、E2 反応は起こらな
い。
H3C
C
H
CH3
–OCH
2CH3
Cl
H3C
H
C
CH3
+
H3C
OCH2CH3
(SN2)
C CH2
H
(E2)
O
H3C
H
C
CH3
O
CH3
H3C
H
Cl
C
CH3
CH3
O
(SN2)
O
4. (1) 下の反応の反応機構を示しなさい。
HCl
O
OH +
H+
O
H
O
OH
+
H
– H+
(2) この反応では、下に示した副生成物が得られることがある。反応機構を示
しなさい。
Cl
OH
H+
H
O
Cl–
H
Cl + H O
2
(SN2)
5. 次の反応の機構を説明しなさい。
CH2Br CH3OH
+
+
OCH3
OCH3
CH2 Br
CH2
CH2
CH3OH
O
H
CH3OH
OCH3
H
CH2
H
– H+
CH2
CH2
– H+
OCH3
CH3
– H+
CH2
OCH3