2015年のインドネシア 政治経済両面でもたついた ジョコウィ政権の 1 年目 かわ むら こう いち はま だ み き 川 村 晃 一・濱 田 美 紀 概 況 2014年10月に新政権を発足させたばかりのジョコ・ウィドド (通称ジョコウィ) 大統領にとって,2015年は政権基盤固めの ₁ 年となった。年初に持ち上がった次 期国家警察長官の任命問題は,候補者が汚職疑惑で摘発されたことで,警察と汚 職撲滅委員会の深刻な対立に発展した。しかも,その候補者を与党第 ₁ 党の党首 メガワティ・スカルノプトゥリ元大統領が強く推していたことから,汚職容疑者 の長官任命をためらうジョコウィ大統領と与党との関係が急速に悪化し,政権基 盤を揺るがした。この一連の混乱を経験したジョコウィは,与党との意思疎通の 重要性を痛感し, ₈ 月に実施した内閣改造で側近を更迭し,与党幹部を登用する ことで問題の解決を図ろうとした。それと同時に,ジョコウィは大統領府の強化 を通じて大統領のリーダーシップ確立を目指すとともに,連立与党の拡大によっ て政権基盤を安定的なものにしていった。一方,野党はゴルカル党で内紛が続く など,ジョコウィ政権発足直後に見られた勢いを失っていった。 経済成長率は4.79%と前年の ₅ %台を下回り,ルピアの下落に揺れた ₁ 年で あった。 ₈ 月にはルピアはアジア通貨危機以来となる17年振りの ₁ ドル= ₁ 万 4000ルピア台をつけ,ルピア安による輸入コストの上昇と国際商品価格の低迷が, 経済成長の牽引となる消費,輸出の伸びの重しとなった。ジョコウィ政権の実質 的な ₁ 年目であったことから,インフラ整備や開発の促進に大きな期待がかけら れたが,インフラ投資をはじめとする政府支出の実施が例年よりも大幅に遅れ, 経済成長の足かせとなった。ルピア安定化のためにインドネシア銀行 (中銀) は金 融政策を矢継ぎ早に発表した。政府も財政政策・金融政策・規制緩和などの種々 の政策を束ねた経済政策パッケージを ₉ 月以降12月までに ₈ 回にわたって発表し, マクロ経済の安定と投資の促進に苦心した。 400
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