展 望 - JA 全中

リスクとの付き合い方 ◆ Outlook by Minoru Ota
展 望
JAの進むべき道
リスクとの付き合い方
世の中のあらゆる組織は、事業活
地偽装等の法務リスクについては、
動を行う中で、さまざまなリスクに
近年、コンプライアンスという用語
直面する。
とともに重要性が高まっている。そ
もちろん、JAも例外ではない。
の対応を誤ると、訴訟リスクのみな
経営者として最大限の注意を払い、
らず、その後の組織イメージの低下、
その回避とコントロールに苦心をし
ひいてはグループ全体の信用失墜に
ていても、日々の事業の中で、リス
いや おう
クは否応なく降りかかり、経営に大
きな影響を与えることも多い。
太田 実
(JA全中常務理事)
及ぶ可能性があり、最も留意が必要
なリスクと言っても過言ではない。
平成28年度は自己改革元年であ
JAは信用事業を営んでおり、分かりやす
る。農家の手取りを 1 円でも多くするために、
いリスクとして、金利リスクと信用リスクが
資材価格の引き下げ努力とともに、農産物の
挙げられる。金利リスクとは、金利の変動に
販売に最大限の力を発揮する必要があり、農
より被るリスクのことであり、金利の上昇に
産物の買い取りの拡大、6 次化への進出等に
より保有する有価証券の時価が下がり、評価
より、JAの被るリスクは、現状より拡大す
損の計上につながる例が分かりやすい。信用
る方向となろう。しかし、リスクを恐れてい
リスクも、貸出先の経営不振から貸倒引当金
ては一歩も前に進めないのも、また事実であ
を計上するとか、倒産なり破産により、貸出
る。よく、リスクテークをしなければ利益は
金が回収不能になることで、顕在化する。
上がらないと言われる。肝心なのは、リスク
どちらのリスクもJAの決算に大きな影響
の影響をきちんと見積もり、それが顕在化し
を与えるリスクであるが、経済状況等を見な
た場合への備えを十分に行うこと、そして、
がら、その被害を相当程度抑えることも可能
組織内できちんと議論を積み重ねた上で、一
なリスクといえる。
歩踏み出すことではないか。
一方で、地震・津波・豪雪等の災害リスク、
リスクとは「ある行動に伴って危険に遭遇
風評被害・法制度の変化等の社会リスク、火
する可能性や損失を被る可能性」であるが、
事・交通事故・盗難等の事故リスクなどは、
「行動しないことによって危険に遭遇する可
一定の対策はできるとはいえ、その影響への
能性や損失を被る可能性」もあることを、
備えが難しいリスクである。
しっかりと認識してほしい。
いんぺい
また、不祥事の隠蔽・粉飾決算・食品の産
2016/06
月刊 JA
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