道 徳 (1A 佐藤 優子 教諭)

に有効であると考える。さらに,本当のことを言いに行く決心をした健二の思いを考えることで,
自分で判断したことに基づいて,責任をもって行動する尊さに気付くことができるのではないか
と考えた。
道徳の時間学習指導計画
学級
授
Ⅰ
業
1年A組
39名
者
佐藤
優子
共同研究者
小池
孝範
Ⅳ
主題名と指導のポイント
「自主・自律」
内容項目
〔1-(3)〕
-生徒同士の関わり合いから,ねらいとする価値に迫る-
Ⅱ
ねらいと資料
(1) ねらい
自分で判断することを大切にして,その結果に責任をもった行動をしようとする心情
を育てる。
(2) 資料名
「裏庭でのできごと」(文部省資料作成協力者会議編)
中学生の道徳1
Ⅲ
自分を見つめる(あかつき)
主題設定の理由
(1) ねらいに対する指導者の基本的な考え方
「 自主 」 と は , 自分 で 判断 し て行 動す るこ と であ り,「 自律 」と は ,自 分の 行動 を 自分 自身 で
正していくことである。自分で判断し,正しく行動する自主・自律の精神を身に付けることは,
社会を形成する個人として,社会の中で道徳的に生きていく上で大切なことである。
中学生という時期は,自分で考えて行動することができるようになる年頃ではあるが,時とし
て周囲を気にするあまりに他人の言動に左右されたり,自分の行為がどのような結果をもたらす
の か を考 え ず に 行 動し た りす る こと もあ る。 ま た, 多様 化す る 社会 の中 で,「 正し い こと 」は 相
手や状況によって変化することなのかもしれない。したがって,それぞれの場面に応じて自分の
判断で行動し,その結果に責任をもった行動をすることについて考えることは,さまざまな価値
観をもった人々と共生することが今まで以上に求められる,これからの社会に生きる生徒たちに
とって,意義のあることだと考える。
Ⅴ
社会に参画する主体の育成を目指して
主題である「自主・自律」は,自分で判断し行動するとともに,その行動を自分自身で正してい
くこ と で あ り,「 社 会 に 参 画す る主 体」 とし て 生き る上 で必 要 なこ とで ある 。 さら に, 道 徳部 の研
究テ ー マ で ある 「 共 感」「 他者 理解 」と いう 点 から ,道 徳的 価 値に つい てグ ル ープ や学 級 でそ れぞ
れの考えを話し合い,その共通点や差異を見いだすことも「社会に参画する主体の育成」につなが
ると考える。
資料の中の登場人物という「他者」の気持ちを考える中では,知らず知らずのうちに生徒自身の
「自己」が投影される。本時では,雄一や大輔が健二に対してどんな思いをもっているかを考えた
り, 健 二 が なぜ 悩 む の か をを 考 えた りす る。 さ らに,「健二 は なぜ 本当 のこ と を先 生に 言 いに 行く
こと を 決 心 した の か 」 に つい て 友達 と話 し合 い,「 なぜ その よ うに 考え たの か 」と 問い 返 すこ とを
繰り返していく中で,「自分で正しく判断したい」「自分で下した判断に責任をもちたい」と思って
行動 す る 思 いの 尊 さ に 気 付く こ とが でき るよ う にす る。「 登場 人物 」や 「友 達 」と いう 他 者を 理解
するための話合いを通して,ねらいに対する生徒自身の考えを深められるようにしたい。
全体的な指導の構想
【1年生の道徳の時間における指導】
各教科・特別活動等との関連
5月 第3週
(1) 資料名『アキラの選択』〔1-(3)〕
□ 主 発 問… 「 ア キ ラは な ぜ 『 もや もや し た気 持ち 』
になったのだろう。」
4月 第2週 国語
□単元名『花曇りの向こう』
《事前指導》
5月 第2週 学級活動
□題材名
『健康で安全な生活を考えよう』
『アキラの選択』の学習後,「私たちの道徳」P22 ~ 25 を読
んで,最近自分で考えて判断したことについて振り返る。
(2) 主題に関する生徒の実態
入学したばかりの1年生らしく,何事にも積極的に取り組もうとしている。入学から2ヶ月が
経ち,中学校生活にも少しずつ慣れて,中学校でのルールを理解して生活しようとしている。ま
た,附中三精神である「自発・創意・責任」を具現化するためにはどうすればよいのか,先輩の
様子や教師の話から考えて実行しようとしている生徒も多い。
その一方で,中学校での生活でよく分からないことがあった時に,どうすればよいかを考える
よりも,周りにいる友達に合わせて行動してしまうこともある。また,みんなと親しくなりたい
と思うが故に,その場の雰囲気に合わせて自分の本意とは違ったことをしてしまうこともあるよ
うに見受けられる。何事にも前向きに取り組もうとする時期だからこそ,正しいことは何かを自
分で判断して行動することの大切さを自覚できるようにしたい。
6月 第1週 (本 時)
(2) 資料名『裏庭でのできごと』〔1-(3)〕
□ 主 発 問… 「 健 二 はな ぜ 本 当 のこ とを 先 生に 言い に
行くことを決心したのだろう。」
振り返りのハートの付箋を朝道徳で紹介したり,道徳コーナ
ーに掲示 したり して考えを学級で共有する。総合のガイダンス
に向けて,研究について自分で考えて決めることを話す。
7月 第2週 総合DOVE
□題材名『学年ガイダンス』
(3) 資料の特質と取り上げた意図
本資料は,昼休みの学校の裏庭で鳥のひなを助けようとして誤って窓ガラスを割ってしまうと
いう出来事が発端となる。窓ガラスを割ってしまい,それを先生に報告しに行く雄一,雄一が報
告しに行っている間に誤ってもう一枚ガラスを割ってしまうが何も言えないでいる健二,その出
来事をうまくごまかしてしまった大輔。状況は違っても,生徒には身に覚えのある出来事である。
健二は,よくないことを分かっていて裏庭にサッカーをしに行ったり,ガラスを片付けようと思
っても誘われてサッカーをしてしまったり,その場の雰囲気に流されて行動してしまう。さらに,
雄一に対して申し訳ない気持ちをもつ一方で,先生をごまかした大輔の立場も考えて,本当のこ
とを言えないでいる。しかし,最後には先生に本当のことを言いに行く決心をするのである。正
義と友情の間で葛藤する健二に注目することで,どうすることが本当に正しいことなのかを,生
徒自身が自らの姿と重ね合わせながら深く考えることができる資料である。
生徒たちと同じ中学生である登場人物の気持ちを話し合うことは,生徒一人一人の中にある「正
し い こと を し た い けれ ど でき な い」「 正し いこ とを する の は難 しい 」 とい う本 音を 引 き出 すこ と
1月 第4週
(3) 資料名『米屋の奥さんの足音』〔1-(4)〕
□主発問…「筆者が,二年半の療養所での生活を『人
生の学校』と呼べるのはなぜだろう。」
2月 第4週 学校行事
□行事名『鳩翔の行事』
6月 第5週 学校行事
□行事名『宿泊学習』
《事後指導》
【2年生の道徳の時間における指導】
(4)資料名『人間であることの美しさ』〔1-(2)〕
(5)資料名『リクエスト』〔1-(3)〕
【3年生の道徳の時間における指導】
(6)資料名『やさしいうそ』〔1-(2)〕
(7)資料名『ウサギ』〔1-(3)〕
Ⅵ
本時の計画
1
ねらい
○
2
展
課
題
追
究
・
問
い
直
し
の尊さに気付いている。
=評価
学
習
活
動
予想される生徒の姿
○「今日はどんなことを考えるのかな。」
指 導 の 手 立 て
1
日常の一場面を見て,他の人が正しく
ない行動をしているときに自分はどうす
るかを考えて,本時のねらいを捉える。
2
資料を読んで,それぞれの登場人物の ○ 3 人 の 登 場 人 物 の 行 動 や 考 え に つ い て 考
状況を捉え,本時に考えることを見通す。
えながら読んでいる。
「雄一の怒りはもっともだ。」
「大輔はずるいやつだ。」
健二はなぜ悩んでいるのだろう。
○
3
雄一と大輔が,健二に対してどんな思 ○「雄一は怒っているな。」
いをもっているか考える。
《個人→学級》
「大輔も口止めしている。」
○
4
二人の思いを聞いて,健二はなぜ悩ん
でいるかを考える。《個人→学級》
5
なぜ健二は本当のことを言おうと決心 ○ 「 黙 っ て い た ら ば れ な い の に , ど う し て 本
したのか考える。
当のことを言いに行くのかな。」
《個人→グループ→学級》
6
健二の気持ちを考えることで,自分の考えに基づいて判断し,正しく行動しようとすること
開
○「二人の気持ちを考えるとどうすればいい
か分からないな。」
健二はなぜ悩みながらも最後には本当
のことを言うことを決心したのだろう。
ま
と
め
・
振
り
返
り
評価規準
○
自分で判断することを大切にして,その結果に責任をもった行動をしようとする心情を育てる。
過程
問
い
の
練
り
上
げ
・
課
題
設
定
3
自分で判断して,その判断に責任をも
って行動するためにはどんな気持ちが必
要か,話し合ったことをもとにして振り
返る。
○「健二がなぜ本当のことを言おうと思った
か,よくわかった。」
○
本時のねらいに生徒の思考が向くように,
「多くの人が正しくない行動をしている場所
に居合わせる」という状況を提示して,そう
いうときに自分ならどうするかを問う。
資料である物語の状況を理解しやすいよう
に,雄一,健二,大輔のセリフを読ませる3
人の男子生徒を指名する。その後,3人がし
たことを整理して板書する。
○ 本時のねらいと生徒の課題意識が一致する
よ う に ,「 一 番 悩 ん で い る の は だ れ か 」 と 生
徒に問う。
=目指す生徒の姿
期待される生徒の姿
○「自分ならみんなと同じようにするな。」
「みんなが正しくないことをしていても,自
分は正しいことをしたいな。」
○
3人の登場人物の状況を把握し,健二の悩
みに注目している。
「健二はなぜ悩むのだろう。」
友達の発表を自分と関わらせて聞けるよう ○ 雄一と大輔が,それぞれ健二にどんな思い
に,友達の発表を聞いたら自分の気持ちに応
をもっているかを考えて発表したり,友達の
じて色分けカードを示すように指示する。
考えを聞いて自分の考えを広げたりしている。
○ 登場人物の気持ちになり切って考えられる
ように,雄一と大輔が健二にどんなことを言
うか,セリフを考えるように問いかける。
○ 健二の悩みが友達との関係のことだけでな ○ 健二の悩みが,友達との関係,先生への申
く,自分の行為そのものにもあることに気付
し訳なさ,自分の行為への思いなどさまざま
けるように補助発問する。
な思いから生まれていることに気付いている。
○ 健二の葛藤が分かりやすいように,生徒の
発言を,友達に対する思い,先生に対する思
い,自分に対する思いに分けて板書する。
○ 一人一人の考えが深まるように,自分の考 ○ 友達の考えの根拠を聞き,自分の考えと比
えをもつ時間を保証した上で,グループで話
べたり,反論したりして,自分と友達の考え
し合うようにする。それぞれの考えの差異に
の共通点や差異に気付いて,自分の考えを深
触れられるように,学習リーダーが中心にな
めている。
って「なぜそう考えたのか」という質問を重
積極的に話し合い,健二が本当のことを
ねてするように指示する。
言おうと決めたのは,自分自身が正しいと
○ 生徒の考えへの価値がさらに深まるように,
学級全体で発表した生徒に,なぜその考えが
思ったことをするべきだと考えて行動した
大切だと思ったか問いかける。
ということに気付いて発言している。
○
本時のねらいに基づいて振り返りができる
よ う に ,「 健 二 の 決 心 か ら , ど ん な こ と が 大
切だと考えたか」と問いかける。
○ ねらいに沿った振り返りができるように,
元々の健二の行動について補助発問を準備す
る。
○ 互いに関わり合って考えを深めてきたこと
を感じることができるように,だれのどんな
考えが心に残ったかも書くように指示する。
○「自分でやってしまったことは,自分で責任
をとらなければならない。」
「 自 分 で 正 し い と 思 っ た こ と を する こ と が ,
自立した生き方には大切だ。」
本時の話合いを通して,自分で正しく判
断し,責任をもって行動することが大切で
あるという心情が深まっている。