カイコ飼育マニュアルはこちら

も
く
じ
1 蚕ってどんな生き物
P1
2 蚕の一生
P1
3 蚕を飼育するときの注意点
P2
4 飼育セットの内容
P2
5 自宅で用意するもの
P2
6 飼育してみよう
P3
(1)桑でも人工飼料でも共通のこと
(2)桑での飼育
(3)人工飼料での飼育
P3
P4
P6
7 繭を作らせるために
P8
8 収繭(しゅうけん)しましょう
P9
9 養蚕用語の基礎知識
P10
10 Q&A
P12
1 蚕ってどんな生き物
蚕(かいこ)は長い間人間に飼い慣らされてきたため、幼虫はほとんど動
かず、成虫は羽があっても飛ぶことが出来ません。このため人間が世話
をしないと生きてゆくことができません。
蚕のエサは、桑の葉です。現在では、桑の葉を原料にした「人工飼料」
でも飼育することが出来ます。
2 蚕の一生
卵からふ化した蚕は、
脱皮を4回繰り返し25日~
30日ほどで繭 (まゆ) を作り
ます。
卵からふ化した幼虫を
「1齢」と言います。1回脱
皮をすると「2齢」になりま
す。
4回脱皮を繰り返し「5
齢」まで育ち約1週間エサ
を食べると、体のまわりに
糸を吐き「繭」を作ります。
その繭の中で蛹 (さなぎ) に
なり、蛾になって繭から出
てきます。
養蚕 (よ うさ ん ) 農家で飼
育する蚕は、3齢の3日目
まで「稚蚕 ( ちさ ん ) 共同飼
育所」で人工飼料で育てら
れます。「稚蚕共同飼育
所」で育てられた蚕は、
「配蚕 (はいさん) 」されてそ
れぞれの農家で飼育が始
まります。
- 1 -
3 蚕を飼育するときの注意点
① きれいな環境(フンや食べ残したエサは取り除く)と飼育温度に
注意して(20℃以下、35℃以上にならないように)飼育してください。
30
25
23℃~25℃
が最適
20
② 蚊取り線香や殺虫剤、
防虫剤を使っている部屋では飼わないでください。
③ 必要なとき以外は触らないようにしましょう。
④ 直射日光の当たらない、
風通しの良い場所で飼育してください。
ポイント
蚕の病気を治す薬はありません。元気がない蚕がいたら別の
容器に移して病気が広がらないようにしてください。
4 飼育セットの内容
①
②
③
④
⑤
蚕 100頭
飼育容器
まぶし(蔟) 2枚
人工飼料 3kg
繭収集袋
4-④、5-②は、
桑で飼育出来る方は
必要ありません
5 自宅で用意するもの
①
②
③
④
新聞紙(飼育容器に敷いたりフタにする)
箸または使い捨ての手袋
ビニールシートや厚手の広告(上族時に新聞紙の下に敷く)
ひも(まぶしを結ぶため)
- 2 -
6 飼育してみよう
(1) 桑でも人工飼料でも共通のこと
① 稚蚕共同飼育所から来た蚕は、これから3回目の脱皮をするために
「眠(みん)」という状態になります。
まだ眠になれずにエサを探して頭を動かしているような蚕がいたら、
人工飼料や桑の葉を少し与えます(次の眠の時も同じです)。
② エサを食べなくなり動かなくなると、頭の後ろに次の頭になる部分が
透けて、三角の模様が見えてきます(図1矢印)。体も皮膚が張ってき
て少し光ってきます。
③ 眠が終わり、脱皮をすると頭が大きくなります。このときの蚕を
「起蚕(きさん)」(図2左側矢印)と言います。
起蚕
脱皮した皮
頭
図1 眠の様子
図2 眠蚕と起蚕
ポイント
① 蚕を飼育するときは、なるべく成長をそろえて飼育すると 、作業
がばらばらにならずにすみます。脱皮をして皮膚がしっかりしてくると
エサを探し始めますが、このとき成長の遅い蚕が脱皮をするまで、
早い蚕にはエサを与えず待ってもらいます。
1~2日間エサを与えなくても蚕に影響はありません。
② 蚕は変温動物(温度によって行動や成長に変化がある)なので、飼
育場所の温度が低いと成長が遅れ、高いと早くなります。
よい繭を作るには、気温が低すぎたり高すぎたりしないよう注意して
ください。
③ 飼育容器内での飼育場所の広さは、蚕が大きくなるのに従ってだん
だん広くします。
- 3 -
(2) 桑での飼育
① 桑の量は表1を参考に与えてください。
② 人工飼料から桑の葉にするときは、蚕が桑の葉に移動した後
すぐに人工飼料を取り除いてください。
(人工飼料がかびるのを防ぐため)
③ 飼育容器の掃除は4齢は2日に1回、5齢は毎日してください。
(蚕が新しい桑に移ったら古い桑やフンを捨てる)
④ 眠の時は、出来るだけ蚕を桑の葉から動かさない(はがさない)
ようにしながら、覆い被さっている葉があれば取り除き、桑の葉が
乾くようにしてください。
ポイント
① 一度桑を与えた蚕は、人工飼料を食べにくくなります。
(最後まで桑で飼育出来るときに桑で飼育してください)
② 桑の葉は農薬などによる汚れの心配のないもの使ってください。
農薬のついた葉を食べると、蚕は死んでしまいます。
③ 桑の葉は、なるべく枝につけた状態で与えると、葉がしおれる
のを防げます。
④ 雨露等、桑の水分はふいてから与えてください。
殺
虫
剤
- 4 -
表1 桑葉育の飼育表 (蚕100頭当り)
飼育月日
経 過
桑の量
朝
晩
月
日( )
3齢 4日目
適量
月
日( )
5日目
月
日( )
4齢 1日目
20g
50g
月
日( )
2日目
50g
70g
月
日( )
3日目
60g
90g
月
日( )
4日目
80g
120g
月
日( )
5日目
60g
80g
月
日( )
6日目
月
日( )
5齢 1日目
50g
70g
月
日( )
2日目
80g
120g
月
日( )
3日目
100g
150g
月
日( )
4日目
140g
210g
月
日( )
5日目
160g
240g
月
日( )
6日目
200g
300g
月
日( )
7日目
200g
300g
月
日( )
8日目
160g
240g
月
日( )
月
日( )
備
考
眠が始まります
3眠・脱皮
よく起きそろってか
ら桑を与えます
眠が始まります
4眠・脱皮
よく起きそろってか
ら桑を与えます
繭を作り始める蚕
が出てきます
桑の量は目安です。桑の葉の重さは、大1枚 4g、小1枚 1gぐらいです。
食べる量を見て増減してください。
- 5 -
(3) 人工飼料での飼育
① 人工飼料はビニール袋に入れたまま冷蔵庫で保管します。
② 人工飼料を切るときは、清潔なまな板(ラップなどをしいてもよい)と
包丁を使用しましょう。
③ 人工飼料を取り扱うときは、箸か使い捨て手袋を使用してください。
④ 人工飼料は1袋約500gにそろえて用意しています。
⑤ 人工飼料の量は表2を参考に、1日~2日で食べきれる量を与えます。
ポイント
① 蚕は通常時は湿度があった方が良いですが、眠のときは乾いた
場所へ移ります。
② 飼育容器のフタは、人工飼料が乾燥しない程度に閉めておきます。
③ 眠のときは、大きな人工飼料は取り除き、フタをしないで風通しを
良くし、人工飼料が乾くようにしてください。
人工飼料があると早く起きた蚕が先に食べてしまいます。
④ 人工飼料を冷蔵庫から出すと、飼料が水分で濡れている可能性が
あるので、水気を取ってから与えると良いでしょう。
⑤ 途中から桑の葉を与えたい場合は、桑の葉が終わらない様、上簇
直前ぐらいで与えましょう。
◇ 人工飼料で飼育するときの掃除の方法
掃除は人工飼料を与える前に行います。次の手順で掃除してください。
① 新聞紙などに新しい人工飼料を置きます。
② 飼育容器から①に蚕を移動させます(清潔な手)。
③ 飼育容器に残っている、下に敷いてある紙やビニールシートを古い
人工飼料やフンと一緒に取り除きます。
④ ②を飼育容器にセットします。
◆注意!
眠が終わり、初めて人工飼料を与えるときは、掃除をせずそのまま
与えてください。
起蚕を動かすと傷がつく恐れがあります。
- 6 -
表2 人工飼料の飼育表 (蚕100頭当り)
飼育月日
経 過
3齢
人工飼料の量
4日目
適量
5日目
-
1日目
100g
備 考
眠が始まります
3眠・脱皮
よく起きそろってから
人工飼料を与えます
月
日( )
月
日( )
2日目
-
月
日( )
3日目
200g
月
日( )
4日目
-
月
日( )
5日目
-
眠が始まります
月
日( )
6日目
-
4眠・脱皮
月
日( )
1日目
300g
月
日( )
2日目
-
月
日( )
3日目
400g
月
日( )
4日目
-
月
日( )
5日目
650g
月
日( )
6日目
-
月
日( )
7日目
450g
月
日( )
8日目
-
月
日( )
月
日( )
4齢
5齢
よく起きそろってから
人工飼料を与えます
繭を作り始める蚕が
出てきます
エサを与えた翌日に人工飼料が残っていないようなときは少量与えてください
量の欄に記載が無い日は、与えなくても大丈夫ですが、分けて与えるのもコツです。
例)4齢1日目は100gだが、2日目と分けて50gずつにする。
- 7 -
7 繭を作らせるために
① 5齢になって8日間ぐらいすると、繭を作り始めます。エサを食べなく
なりだんだん体が黄色く透けてきます。フンも軟らかくなってきます。
② 普段はエサを食べるために少し動くくらいですが、繭を作る状態に
なると、繭を作る場所を探してうろうろします。飼育容器のフチに
のぼり、足場用の糸を吐き出す蚕も現れます。
③ この蚕を「熟蚕(じゅくさん)」と言い、繭を作らせるための「蔟(まぶし)」
に移します。
熟蚕を集めてまぶしに移すことを「上蔟(じょうぞく)」と言います。
◇ 繭を作るための場所
ひもの固定場所は
工夫してください
まぶし:農家が利用している上蔟容器の一部
(図3赤枠で囲った部分)を利用します。
ひもで固定する
飼育容器
図4 上蔟方法
図3 上蔟容器(回転蔟)
④ まぶし2枚を山形につなげて(図4)飼育容器に立てかけ、熟蚕に
なった蚕をつけます。
熟蚕になった蚕は上へ登る性質があるので下の方につけましょう。
登りきったカイコはまた下に降ろしてあげましょう。
◆注意!
熟蚕は、繭を作る前に体の水分を出すため尿をします!
まぶしの下には尿を吸い取らせるために、飼育容器よりも広く新聞
紙などを敷いておいた方が良いでしょう。
また、この時が一番活動が活発になります!
* お菓子の箱などに、厚紙を波形にして穴を開けたもの、格子状に
組んだものを入れてもまぶしの代わりになります。
- 8 -
8 収繭(しゅうけん)しましょう
① 蚕は、上蔟後2~3日間糸を吐き続けます。糸を吐き終わり繭が
出来上がると、2日程度で繭の中で脱皮をして蛹になります。
脱皮したばかりの蛹の皮膚は、柔らかく傷つきやすいので皮膚が
硬くなるまで動かさないよう気を付けて ください。
② まぶしから繭を取り出す収繭は、糸を吐き出し繭を作り始めて8日
から11日目が目安です(飼育環境の温度が高ければ早めに、低け
れば遅めにすると良いです)。
収繭した繭は、繭のまわりについている毛羽(けば:足場用の糸)を
手で取り除いてから所定の回収場所へ持ってきてください。
◆ 注意!
蔟から繭を取り出すのが早すぎれば、中で蛹が死んでしまい繭が
汚れてしまいます。また、蚕は繭を作り始めてから2週間ほどで、
羽化をして蛾になります。蛾になるときは繭を溶かして繭から出てき
てしまいます(図5)。このような繭は糸を挽くことが出来ません。
図5 繭から出てくる蛾
ポイント
繭を持って行くときの注意
汚れた繭(図6)は、きれいな繭(図7)と一緒にしないでください。
繭が薄いものや、中から汚れがしみ出しているような繭は、他のきれいな
繭を汚してしまいます。ご家庭で処分してください。
図7 きれいな繭
図6 汚れた繭
- 9 -
9 養蚕用語の基礎知識
蟻蚕
ぎさん
掃立
はきたて
蚕座
ふ化したばかりの1齢幼虫は、体にくらべて毛が長いので黒っ
ぽい色をしています。そのため、毛蚕(けご)と言ったり、アリの
ように見えるので蟻蚕と言ったりします。
ふ化した蚕を蚕座(さんざ)に移し飼育を始めることです。羽ぼう
きで蟻蚕を掃き下ろしたため掃立と言います。
蚕を飼育するための場所のことです。
さんざ
眠
みん
起蚕
桑を食べず脱皮の準備をしている状態。「休む」とも言われてい
ます。
眠が終わり脱皮をした蚕のことです。
きさん
桑付け
眠が終わって初めて桑を与えることです。
くわづけ
人工飼料
じんこうしりょう
熟蚕
じゅくさん
上族
じょうぞく
営繭
桑葉粉末、糖分、ビタミンなどを配合し、羊羹状にしたエサ。汚
れた手などで触ると、カビが出てしまいます。
糸を吐く準備が出来た蚕のことです。体がすきとおってあめ色
になります。
熟蚕になった蚕を繭を作らせるための道具である回転蔟に
移すことです。
回転蔟に移された蚕が糸を吐き繭を作ることです。
えいけん
収繭
しゅうけん
毛羽取り
まゆかき。蔟から繭を掻き取ることで、毛羽取り作業を含めて
いう場合もある。
繭の周りにある足場用の糸を取り除くことです。
けばとり
上繭
汚れ、穴あきなどがなく製糸原料として使うことが出来る繭。
じょうけん
選除繭
せんじょけん
外側や内側に汚れがある繭、薄い繭、2頭が一緒に作った繭、
穴あき繭など、製糸原料に不向きなもの。
中繭(ちゅうまゆ)とも言います。
- 10 -
養蚕用語の基礎知識
箱
はこ
給餌
蚕の飼育量を表す単位。
群馬県では1箱3万頭で、約50kgの繭がとれます。
餌(えさ)を与えること、特に人工飼料を与える時に用いる。
きゅうじ
給桑
蚕幼虫の飼育すなわち養蚕で桑を与えること。
きゅうそう
蚕種
「さんたね」ともいう。蚕の卵を意味する産業用語。
さんしゅ
除沙
蚕座の食べ残した桑や蚕糞を取り除くこと。
じょさ
拡座
蚕の発育に伴って蚕座を広げること。
かくざ
選繭
異常繭、不良繭を取り除くこと。
せんけん
玉繭
たままゆ
セリシン
せりしん
フィブロイン
ふぃぶろいん
孵化
2頭(以上)の蚕が共同で作った繭で、玉糸、つむぎ糸、真綿の
原料になる。
繭糸を構成するタンパク質で、フィブロインを被覆し、繭糸相互を
接着する。
フィブロインは絹繊維の主成分で熱水に不溶で、耐薬品性に優れ
た硬タンパク質である。
卵から幼い個体(蟻蚕)が脱出すること。
ふか
蛹化
化蛹。幼虫が蛹に変態すること。蚕が上蔟後4,5日目におこる。
ようか
吐糸
とし
配蚕
絹糸腺で合成蓄積していた絹蛋白質を主として営繭のために吐
糸口から吐き出すこと。
稚蚕共同飼育が終わり、個々の農家にその蚕を配ること。
はいさん
- 11 -
10 Q&A
Q.1 蚕は逃げ出さないのですか?
蚕は逃げ出したりしません。
ですが、上簇時の繭をつくる場所を探す時は、注意が必要です。
Q.2 蚕は何を食べますか?
桑の葉です。
最近では、人工飼料が開発され、養蚕農家に配られる前の蚕は人工飼料で育
てられるのが一般的です。
Q.3 近所に植わっている桑を使っても大丈夫ですか?
桑の葉に農薬(除草剤を含む)の飛散が無いことが確認できれば与えても大丈
夫です。
Q.4 数日面倒を見られない場合はどうしたらいいですか?
1~2日間程度はエサを与えたりしなくても大丈夫ですが、5齢期にエサが足りな
いと繭の出来に影響がでる可能性があります。
Q.5 まぶしを立てかけないとダメですか?
立てかけなくても大丈夫ですが、床面等に寝かせる場合、多少の隙間が無いと
繭が変形してしまうため、四隅等を支え浮かして横にしましょう。
飼育容器の上にまぶしを寝かせる場合、糸を吐き始める前に蚕が排泄します
ので、その下にいる蚕に排泄物がかからないようにしましょう。
Q.6 蚕をまぶしに移すタイミングがわかりません。
蚕を逆さにして持ち、光に当てて体を見てみましょう。足、お腹のあたりが透け
てきていたら熟蚕の目安です。
Q.7 繭をいつまぶしからはずしたらいいですか?
繭をつくり始めてから8~11日後が目安です。季節によって若干異なります。
春蚕/約11日・夏蚕/約8日・晩秋蚕/約10日を目安にしてください。
Q.8 余った人工飼料はどうしたらいいですか?
お手数ですが、それぞれのご家庭で処分してください。
Q.9 取り除いた毛羽(けば)はどうしたらいいですか?
不要の場合は、繭と一緒にお返しいただければ、富岡製糸場で
活用させていただきます。
- 12 -
MEMO
各期予定表
申込
期間
下記表はあくまでも目安です
配蚕
(蚕を配る)
飼育
期間
上簇
繭提出
(繭を集める)
春蚕
4/1~4/28
5月20日
または
5月21日
5/20~6/4
6月4日
6月16日
夏蚕
5/1~5/30
7月1日
または
7月2日
7/1~7/15
7月15日
7月27日
晩秋蚕
8/1~8/31
9月11日
または
9月12日
9/11~9/23
9月23日
10月4日
問い合わせ先
富岡市役所 農政課 蚕糸園芸係
〒370-2411
群馬県富岡市妙義町上高田1206(妙義庁舎)
TEL:0274-62-1511(代表)
FAX:0274-62-0357
■協力 群馬県蚕糸技術センター、JA甘楽富岡