宮崎県廃棄物循環利用指針(概要版)

宮崎県廃棄物循環利用指針(概要版)
指針の基本的な考え方
指針策定の背景及び目的
本県では、平成 22 年度に策定した「宮崎県循環型社会推進計画」の中の基本方針の1つとし
て、「4R(リフューズ、リデュース、リユース、リサイクル)の推進と地域性を活かした循環
型社会の形成」を掲げています。循環型社会形成のため廃棄物の発生抑制と発生した廃棄物等を、
循環資源として最大限に利用し、適正な処理を行った後、最終処分量を最小限にするため4R推
進を基調とした取組を推進していくこととしております。
本指針は本県における廃棄物等の循環利用に関する課題の明確化と、事業者や関係機関との連
携を含めた方策・取組の具体的な提示を目的とします。
廃棄物の現状と課題
【宮崎県の廃棄物に係る現状と課題】
廃棄物
産業廃棄物
現状・課題
y 農業・林業は全国的にも高い水準で展開しています。これら業種及び関
連業種からの廃棄物(家畜ふん尿、木くず等)の排出が想定されます。
y 食品産業が盛んです。これらの業種からの「食品廃棄物」の排出が想定
されます。
y 排出量の多い品目の中では、「家畜ふん尿」と「廃酸」が特徴的です(排
出量全体に対して占める割合が全国的にも高くなっています)。
y 事業者からまとまった排出量があり、再生利用率が低く、かつ最終処分
率が高い品目は「鉱さい※」、「廃プラスチック類」です。
※鉱さいは特定の排出事業者からの排出が大部分を占めます。
一般廃棄物
y 厨芥類(食品廃棄物)、紙ごみの排出量が多くなっています。
y 肥料・飼料の資源化が進んでいません。
指針で方策を取り上げる品目
9
宮崎県の地域特性や廃棄物の状況等を踏まえ、 9
9
本指針で取り上げる品目(循環利用指針策定
品目)として6品目を設定します。
1
家畜ふん尿
廃酸(焼酎廃液)
食品廃棄物
9
木くず
9
古紙
9
廃プラスチック類
循環利用の向上に向けた方策
家畜ふん尿
現状
本県は全国的にも有数の畜産県であり、家畜の飼養頭羽数は各区分(畜種)とも全国の上位を占
めています。そのため、家畜ふん尿の排出量も多く、平成 22 年度の排出量は 3,778 千tと、県
内の産業廃棄物排出量 5,789 千tの 65%と大きな割合を占めています。また、耕地面積あたり
の発生量をみても全国的にも際だって大きくなっています。
家畜ふん尿の処理状況を見ると、中間処理による減量後、資源化されています。なお、平成 22
年度の資源化率は約 77%となっています
課題
・
家畜ふん尿の資源化に係る情報の不足
・
効率的な家畜ふん尿の収集運搬体制が未構築
・
製造した堆肥の供給先の確保、季節的偏り及び地域的偏在への対応
・
エネルギー利用の推進
利活用方策
家畜ふん尿の資源化技術に係る情報を関係者に周知します。
家畜ふん尿の効率的な収集体制を構築し、収集に対するコストの低下を図ります。
家畜ふん尿のエネルギー利用の促進を図ります。
家畜ふん尿に含まれる窒素、リン酸、カリ等の有効成分を活用した堆肥の利用促進を図ります。
堆肥の供給者と耕種農家との連携及びニーズに応じた供給体制の構築を図ります。
事業者の役割
9
家畜ふん尿から製造した堆肥の利活用を図ります。
9
家畜ふん尿のエネルギー利用(畜ふんペレット等)を図ります。
県の役割
堆肥の利用・流通促進、耕種農家のニーズに即した品質の開発支援や、エネルギー利用の推進を
図ります。
9
情報の提供
・
宮崎県内には、家畜ふん尿を利用したエネルギー利用施設の先進事例が多数あります。
これらの先進事例を紹介します。
9
堆肥の利活用支援
・
堆肥の需給バランスや地域バランスを踏まえた上で、堆肥の利用促進・広域流通、また、
地域での堆肥の需給情報の収集整理及びネットワーク化を促進します。
9
多様な利用促進の支援
・
家畜ふん尿に含まれるリン等の枯渇性資源を回収する技術について、より有効に利用さ
れるよう検討を進めます。
2
焼酎廃液(廃酸)
現状
宮崎県の廃酸の大部分は焼酎製造業から発生する焼酎廃液です。焼酎廃液は焼酎の製造過程で生
じる副産物でスラリー状の性状を示しています。
焼酎廃液は、ロンドン条約による海洋投棄の原則禁止以降、各事業場においても資源化に向けた
取組が実施されており、発生量の約 60%が減量化され、残り約 40%が資源化されています。資
源化の内容としては、主に飼料化・堆肥化として循環利用がなされていますが、バイオガス化、エ
タノール化等のエネルギー利用も実用化されています。
課題
・ 資源化に係る情報の不足
・ 資源化施設導入にかかるコスト、作業の増加
・ 飼料・堆肥に関するニーズの多様化への対応
・ 製造した飼料・堆肥の販売先の確保、地域的偏在及び季節的偏りへの対応
・ 経営規模や地域特性等に応じた再資源化手法の確立
・ エネルギー利用の推進
利活用方策
焼酎廃液の資源化技術に係る情報を関係者に広く周知します。
焼酎廃液のエネルギー利用を促進します。
焼酎廃液から製造される飼料・堆肥の利用促進を図ります。
飼料・堆肥の供給者と農家との連携及びニーズに応じた供給体制の構築を図ります。
事業者の役割
9
焼酎廃液からニーズに応じた飼料化及び堆肥化を図ります。
9
焼酎廃液からのバイオガス化等、エネルギー利用技術の導入を図ります。
県の役割
地域資源としての焼酎廃液の有効活用を促進させるために、飼料・堆肥の利用・流通促進、農家
のニーズに即した品質の開発支援等を図ります。
9
情報の提供
・
県内の焼酎廃液資源化施設の概要、所在地等の情報を整理し、焼酎メーカーに情報提供
します。
9
飼料・堆肥の利活用支援
・
飼料・堆肥の利用促進・広域流通、また、地域での飼料・堆肥の需給情報の収集整理及
びネットワーク化の促進を図ります。
3
食品廃棄物
現状
本県の産業の特色として食品産業が盛んであることがあります。産業廃棄物としての食品廃棄物
(動植物性残さ)は、ある程度性状が均一で、かつまとまったロットで排出されることが多いこと
から、肥料や飼料等として排出量の約 70%が利用されています。一方、家庭や食品産業を除くス
ーパーや飲食店から発生する食品廃棄物は、ごみ量全体の中でも大きな割合を占めていますが、広
い範囲で散らばって少量ずつ発生することから、資源化は進みにくいと考えられます。
課題
・
資源化に係る情報の不足
・
家庭系及び事業系一般食品廃棄物の分別に係る作業の手間、コストの増加
・
製造した飼料・堆肥の供給先、地域的偏在や季節的偏りへの対応
・
事業系一般食品廃棄物の広域処理に関する問題
利活用方策
食品廃棄物の資源化に係る情報(資源化技術、施設情報、食品リサイクル法等の関連法規制の
内容等)を関係者に広く周知します。
家庭系及び事業系一般食品廃棄物としての食品廃棄物の効率的かつ広域的な収集体制を構築
し、収集に対するコストの低下を図ります。
食品廃棄物のエネルギー利用を促進します。
食品リサイクル法の再生利用事業計画認定制度や登録再生事業者に係る情報(一般廃棄物の収
集運搬に関する特例措置等)を広く周知することで、食品廃棄物のリサイクルを推進します。
食品廃棄物より製造された飼料(エコフィード)や堆肥の利用促進を図ります。
県民の役割
9 食品廃棄物の分別収集に積極的に協力します。
事業者の役割
9
食品廃棄物の広域的な資源化体制を検討します。
9
食品廃棄物によるエネルギー利用技術への移行・整備を図ります。
市町村の役割
9
事業系一般食品廃棄物が市町村間を円滑に移動できるような方策を検討します。
県の役割
地域資源としての食品廃棄物の有効活用を促進させるために、飼料・堆肥の利用・流通促進、農
家のニーズに即した品質の開発支援等を図ります。
9
情報の提供
・ 県内の食品廃棄物資源化施設の処理内容、所在地等の情報を整理し、排出事業者に広く
周知します。
9
飼料・堆肥の利活用支援等
・
食品廃棄物から作られる飼料・堆肥の利用拡大を図るため技術開発を促進します。
4
木くず
現状
宮崎県は豊富な森林資源を有しています。全国有数の林業県であるとともに、製材業をはじめと
する木材産業も盛んです。その生産活動に伴い、林地残材や製材残材等の多くの木くずが発生して
います。他にも、建設工事に伴い発生する木くず(建設廃材)やパルプの製造に伴う木くず、更に
は、家庭から排出される木製品、立木の剪定枝・伐採木等、様々な形態の木くずが発生します。
産業廃棄物として発生した木くずのうち 80%近くが資源として利用されています。その一方で、
一般廃棄物として排出された木くずは資源物として収集が進んでいない現状もあります。
県では平成22年3月に「宮崎県木質バイオマス活用普及指針」を策定し、林地残材や製材業等か
ら発生する木くずの利用に取り組んでいます。
課題
・ 資源化に係る情報の不足
・ 製造した木くず再生品の供給先、地域的偏在や季節的偏りへの対応
・ 林地残材の利活用
利活用方策
木くずの資源化に係る情報(資源化技術、施設情報等)を関係者に広く周知します。
建設廃材、製造業から発生する木くずについては、引き続きエネルギー利用やマテリアル利用
を推進します。
未利用資源である林地残材の利活用の促進を図ります。
事業者の役割
9
木くずは、粉砕してチップ化あるいはペレット化し、発電用・暖房用燃料やパルプ原料、また、
家畜の敷料や堆肥としての有効利用を図ります。
9
未利用間伐材等の林地残材の効率的な利活用を図ります。
市町村の役割
9
木くず等の木質バイオマスの多様な分野における利活用を地域全体で推進します。
県の役割
木質バイオマスは県内に広く賦存しています。地域資源としての木くずの有効活用を促進させる
ために、「宮崎県木質バイオマス活用普及指針」(平成 22 年3月)に基づき利活用方策を検討しま
す。
9
情報の提供
・
県内の木くず資源化施設の処理内容、所在地等の情報を整理し、排出事業者に広く周知
します。
9
エネルギー利用等の促進
・
園芸農家のハウス暖房機として、従来の重油等の化石燃料から木質ペレット等を燃料と
する暖房機への転換・普及を促進します。
5
古紙
現状
古紙は廃棄物の中では、資源化システムがある程度定形化された品目です。民間の回収業者によ
って集められた古紙は、最終的に古紙問屋に搬入され、計量されたあと古紙梱包機でプレス処理さ
れて、その多くが製紙原料として製紙工場に運ばれリサイクルされています。
古紙は資源化の進んだ品目ですが、一方で家庭から排出される可燃ごみの中で大きな割合を占め
ている状況もあります。資源化の進んでいない古紙を資源化していくことは、廃棄物全体の資源化
の向上に大きく寄与することになります。
課題
・
資源化に係る情報の不足
・
事業系古紙の効率的な収集体制の構築
・
市町村における古紙の適切な分別収集の実施
・
住民・事業者への普及・啓発の必要性、環境教育の充実
利活用方策
古紙の資源化に係る情報(施設情報、回収事業者情報等)を関係者に広く周知します。
市町村における古紙の分別収集を引き続き進めます。
製紙原料以外の利活用の推進を検討します。
県民の役割
9
可燃ごみに資源化可能な古紙を混入しないよう、古紙の分別に留意します。
9 地域の古紙の資源回収(集団回収や拠点回収)に積極的に協力します。
事業者の役割
9
効率的かつ経済的な古紙回収システム(オフィス町内会方式等)の導入を図ります。
9
製紙材料として利用できない紙くずは、RPF 等の燃料としての利用を図ります。
市町村の役割
9
古紙(紙くず)の分別収集及び集団回収の推進を図ります。
9
古紙の分別において、雑紙の分別収集の推進を図ります。
県の役割
地域資源としての古紙の有効活用を促進します。
9
情報の提供
・ 古紙のリサイクルが円滑に進むよう、古紙のリサイクルの仕組み、分別方法、製造品目、
また、リサイクルできない禁忌品に係る情報等を提供します。
9
古紙の資源化の促進
・
複数の排出事業者や収集運搬業者、処分業者、市町村等が連携を図り、モデル的なリサ
イクルシステムを構築する事業を検討します。
6
廃プラスチック類
現状
プラスチック類は、様々な業種、事業活動、また、家庭において広く利用がなされると同時に、
廃棄物としても様々な形態で排出されます。
製造業から排出される廃プラスチック類は、数量・品質が安定しているため比較的資源化が進ん
でいますが(製造業の資源化割合:約 50%)、製造業以外の業種(例えば建設業)から排出され
る廃プラスチック類は、他の廃棄物と混合する等、きちんと分別されていない場合が多いため、資
源化されずにそのまま最終処分されるケースが多くなっています(建設業の資源化割合:約 10%)。
また、あわせ産廃として市町村のごみ処理施設で処理される例もあります。
課題
・
資源化に関する情報の不足
・
混合ごみに含まれるプラスチック類も分別に係る作業の手間、コストの増加
・ 効率的な収集体制の構築
・ 市町村における適切な分別・資源化の必要性
利活用方策
廃プラスチック類の効率的な収集体制を構築し、収集コストの低減を図ります。
廃プラスチック類の資源化に係る情報を関係者に広く周知します。
市町村における廃プラスチック類の分別収集を引き続き進めます。
廃プラスチック類のエネルギー利用を促進します。
県民の役割
9 廃プラスチック類について市町村のルールに従った適切な分別を行います。
事業者の役割
9
廃プラスチック類の種類ごとに、適切に資源化できるような分別・回収を行います。
市町村の役割
9
庁内で使用するプラスチック製品は、グリーン購入法に基づき、再生プラスチックの使用を進
めていきます。
県の役割
地域資源としてのプラスチック類の有効活用を促進します。
9
情報の提供
・
廃プラスチック類を適切に資源化できるようリサイクルルート及び資源化技術に関す
る情報を整備し、紹介します。
9
廃プラスチック類の資源化の促進
・
廃プラスチック類のマテリアルリサイクルの拡大を図ります。
7
宮崎県環境計画(平成 23 年3月)では、宮崎県の目指すべき姿を『新しい「太陽と緑の国みや
ざき」』としています。この実現のために、「循環型社会が実現している宮崎県」の構築を目指
し、資源として利活用可能な廃棄物を、循環資源としてこれまで以上に効率的かつ合理的に利活
用する体制づくりを進めていく必要があります。
ここまで、宮崎県の廃棄物の循環利用について、6品目を選び現状の分析を行い、各品目の抱
える課題を抽出した上で、具体的な利活用方策の提示を行ってきました。
廃棄物の循環利用を推進するためには、地域の事情や社会構造上の問題、また、経済の状況等、
様々なハードルがあることは事実です。しかし、廃棄物等の循環利用を通じて持続可能な社会を
構築し、次の世代に引き継いでいくことは私達に課せられた重大な責務です。
このため、県及び市町村等行政のみならず、家庭や学校、企業や地域社会のあらゆる場面にお
いて、広く協働し取り組んでいきたいと考えております。
宮崎県環境森林部循環社会推進課
〒880-8501 宮崎市橘通東 2 丁目 10 番 1 号
TEL:0985-26-7081
FAX:0985-22-9314
E-mail:[email protected]
この冊子は、古紙配合率 100%の再生紙を使用しています。
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