付着・凝集性を利用した 微粉体の高機能化技術に関する研究 羽多野 11515598 重信 報告番号 乙第 G417 号 目 次 序章………………………………………………………… 3 1.1本研究の背景…………………………………………………‥ 4 第1章 1.2 本研究の目的…………………………………………………・12 1.3 本研究の構成…………………………………………………・15 第2章 微粉添加剤の混入による粉体の付着特性の変化……………………… 2.1緒言………………………………………………………… 20 21 2.2 実験方法および装置…‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥・‥‥・・・‥‥・・・・‥‥‥ 21 2.3 安息角の測定結果……………………………………………… 23 2.4 充填性に対する影響……………………………………………・26 2.5 引張り強度法による付着力測定結果………………………………‥ 29 2.6 せん断試験による内部摩擦係数の測定……………………………… 32 2.7 考察………………………………………………………… 35 2.8 結言………・t・t……t………………………………………・36 第3章 二分割セルを用いた粉体層の引張り強度測定法…………・t‥‥■・‥‥tt・39 3.1緒言‥・t……………………………………………………・・40 3.2 引張り強度測定法の原理………‥t‥t…‥t……………………… 3.3 従来の方法と問題点……………………………………………・41 3.4 新しい引張り試験法の開発………………………………………・42 3.5 実験………………………………………………………… 47 3.6 実験結果……………t……………………・t………………‥ 49 3.7 結言………t…………………………………………‥・…‥ 52 第4章 40 電磁場における微粉流動層を利用した金属・非金属複合粒子作製プロセス…・55 4.1緒言………………………………………………………… 56 4.2 実験装置および実験方法………………………………………… 56 4.3 実験結果及び考察……………………………………………… 59 4.4 コーティング粒子の成形………………………………………… 62 4.5 結言……………‥t‥t……………………………………… 65 第5章 噴流層を用いた微粉体のバインダレス造粒法………………・ttt……・67 5.1緒言‥・t……………………………………………………‥ 5.2 実験装置および実験方法‥tt……tt‥・tt………t………………… 5.3 実験結果及び考察……………………………………………‥・70 5.4 結言・・t・・・t・t・t…………………………………・…………… 第6章 バインダレス造粒における造粒過程の観察と額粒の強度………………‥ 68 68 78 81 6.1緒言……………………………………・t‥・t・t……………・82 6.2 実験方法…………・t…‥t‥‥‥‥‥‥・t…………‥t…………・82 6.3 実験結果および考察…………………………・・………………‥ 86 6.4 結言………t……………………‥t・‥‥‥t………………… 92 第7章 バインダレス造粒における顆粒性状におよぼす湿度の影響……………… 95 7.1緒言……………‥t・‥t……………………………………‥ 96 7.2 実験………………………………………………………… 96 7.3 結果および考察………………………………………………‥ 99 7.4 結言………………………………………………………‥105 第8章 バインダレス造粒法を用いた粉末吸入製剤のための粒子設計…………・t・109 8.1緒言………………………‥t‥・t…………………………・110 8.2 実験方法……………………………………………………・110 8.3 顆粒の評価方法‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・・・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥112 8.4 結果および考察‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥・・113 8.5 結言………………………………………………………‥118 第9章 終章‥‥‥…‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥・・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・120 謝辞………………………………………………………………124 本研究に関連する論文目録‥‥‥・‥‥‥・■‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥・・‥・・‥‥‥‥‥125 2 第1章 序 章 第1章 序 章 1.1本研究の背景 粉体はその構成粒子の大きさによって,粗粉・細粉,あるいは,粒体・粉体・微粉体, さらに超微粉体などさまざまに呼ばれている。たとえば,粉砕操作においては,およそ150 岬(100メッシュ)以下に粉砕する場合を微粉砕と称している0また,石炭火力発電で用 いられている微粉炭は75ドm(200メッシュ)程度かそれより細かく調整されている0さら に,流動層の分野においてよく引用されるGeldaれ1)の分類によると,15叫m程度の領域の 粒子はA粒子と呼ばれ,流動性が良好で粒子循環が起こり気泡の合体分裂の頻度が高い領 域とされており,微粉流動層と呼ばれている。本研究において対象とする「微粉体」とは, 150岬程度の粉体からサブミクロンの領域まで比較的広い範囲の粉体とする0 このような粉体の最大の特徴は付着性が顕著に現れてくることである。粉体を構成して いる各粒子の重力は粒子径の3乗に比例するが,付着力はほぼ1乗に比例することが知ら れている。これによる計算では粒子径が30什m程度で付着力と重力が釣り合い,これ以下 では,重力より付着力のほうが支配的になる。この付着力は通常Ⅴ弧derⅥ厄1s九静電気 九液架橋力などの総和であるとされており,付着性という場合,現実にはこれらの要因 が複雑に作用しあって発現する現象である。すなわち温度,湿度,粉体に加わる外力やそ の履歴など粉体が置かれている環境や状態の違い,および,粉体を構成している粒子の形 状や表面の特性によりきわめて強い影響を受ける0そのため,まったく同じ粉体であって も実際に粉体を取扱う状況が異なると,まるで別の粉体を扱っているかのような錯覚をす る場合も少なくない。 本研究の端緒となる1960年代の粉体物性測定法のなかで,粒度分布については古くから 広く用いられている節分法および画像法のほか,一般的に重力による沈降法が主として用 いられていた。このほか付着性が関与する物性については,安息角,かさ密度,充填性な どいくつかの単純な手法が知られているのみであった。ただし,土木関係で用いられる土 砂などの安息角,内部摩擦角,粘着度などの評価方法は既に100年以上の歴史を有し実際 によく用いられている。しかし本研究で意識するのは,あくまでも微粉体の挙動や現象を 工学的な意味で理解し,その測定方法を開発することにある0当時,粉体関係の研究者や 技術者は粒度分布をはじめとする諸粉体物性の測定装置は一部を除いてはほとんど自作に 頼らざるを得ないような状況であり,それぞれの研究に最良と思われる物性の評価方法を 4 さまざまに検討し,測定装置を自作してデータを収集する研究者がほとんどであった。と ころが学会等で発表されるデータは全くちぐはぐで,議論がかみ合わない場面がたびたび であった。付着力については,このころようやくⅥね汀enSpring研究所のAshton,Farleyand Ⅵ1en血ら2)によって,二分割セルを用いた粉体層の引張り破断強度測定法が提唱され測定 装置の開発が緒についたところである。また,これより少し前に,Jenikeら3,4・5)はホッ パを設計する上で必要な物性値を得ることを目的として,独自の方法によるせん断力測定 装置を開発した。この装置は代表的な一面せん断試験装置としてヨーロッパを中心に静力 学的な破壊試験や圧密試験に用いられていたが,高価なこともあり日本にはまだ一台も入 ってきていなかった。 このような背景のもとで,粉体を用いる多くの工業生産の各分野で粉体物性を指標にし た取扱いの必要性が重要視されるようになってきた。1967年に粉体工学会(当時 粉体工 学研究会)のなかに付着・凝集グループ会が発足した。ここでは,共通試料を選定し安息 角や充填性など付着性が支配的に関与すると思われる具体的な事象について,各メンバー が収集したデータを持ちよって比較検討を開始した。さらに,1973年にはそれを引き継ぐ 形で粉体物性グループ会が発足,ここでは共通試料による付着力測定を中心とした比較検 討がおこなわれた。本研究を遂行していく過程のなかで付着力測定に関する部分について は,これらのグループ会と密接な関わりを持って進められた。 1.1.1微粉体の付着・凝集特性に関わる測定法および測定装置 土木の分野においては,古くから土砂の特性を把握するために安息角やせん断試験の結 果から内部摩擦角などを評価の基準として用いられてきた。クーロンの法則として今なお 有名なChar1esAugustinCoulombは18世紀にはすでに壁におよぼす土庄の算出法を発表して いる。さらに,土のせん断強さについても,滑動面の垂直圧力に比例する摩擦力と,圧力 に無関係な粘着力との和である6)と述べられているように,対象とする粒度は一般に粉体 と称されているものとは異なるものの,このころから粉体物性の評価ともいえる試みがす でに実施されてきていることは非常に興味深い。本項では,粉体あるいは微粉体と呼ばれ るような粒度範囲における粉体の付着力に関わる物性の測定方法あるいは測定装置につい て,開発されてきた経緯を概観する。 せん断試験装置は,土木分野において実用に迫られた評価方法であるため比較的早くか ら開発された装置であり,粉体の分野においてもその応用としてやはり早い時期に開発さ 5 れている装置である。Je血keらは1960年代にすでに装置の開発を行っている。Jenkeらが 開発した装置は,セル部分が3個のリングから構成されており,予庄密した後予備せん断 換作を行うのが特徴である。このため,単軸圧縮によるせん断試験や三軸圧縮試験による 破壊包絡線とはかなり異なるので注意が必要である7)との指摘がある。この装置はヨーロ ッパをはじめ世界中でほぼ標準機として用いられていたようである。このため,同装置を 用いた測定における最適な試料の調整方法を検討した研究8)や同装置による結果と引張り 強度試験の結果を組み合わせて評価しホッパの設計に役立てようとする試み9)など,多く の研究者に用いられている。しかし,日本においては,あまり用いられることはなく,む しろ研究者は独自の装置を試作している場合が多いようである。 たとえば,Jenke装置を基本にした綱川ら10),寺下ら11)の改良型や,せん断の進行に ともなうせん断面積の減少がないリングセル12),および,3軸圧縮試験機による測定法13) などがある。また,荒川らは高温場における付着・凝集性を測定するためのせん断装置14) を自作している。また,鈴木らはせん断強度と引張り強度が同時に測定できるリングセル 型15)を開発している。さらに,鹿田らは壁面がない粉体層を形成し,せん断力を測定する 独自の平行平板型せん断装置16)を開発した。本研究では,あとで述べる付着力測定装置を 改造した一面せん断試験装置を新たに作製して,第2章の研究のなかで用いている。 付着力の測定方法は,一個粒子としての付着力および粉体層としての付着力に大別され る。粉体層については,Fig.1.1(a,b)に示すような,Ashton,FarleyandⅥlentinら2)が提案 Fig.1.1(a)Split celltype Ⅶentin tensile 6 tester byAshton,Fadeyand Fig.1.1(b)Splitcelltypetensile by tester Ashton,Farley andⅦe血 した二分割セルによる粉体層の引張り強度測定法が最も古く,これが一つの原点となり 様々な改良型が誕生したといってよい。この装置は,比較的粗充填の状態つまり一次粒子 を破壊させない状態で,比較的小さい付着力から大きい付着力まで測定できる装置である。 一方,RumPf,Tutbaら17)は高圧成形したタブレットを材料試験機を用いて引張り破断 試験を行い,成形物の強度から付着力を求めた。その結果より,次式のような引張り強度 と空隙率の関係式を提案している。 1-g 〟 (1.1) Jz= g βj-ニ このころから,特にわが国において粉体物性測定装置としての様々な付着力測定装置が 開発されるようになった。たとえば,田中ら18)はFig.1.2に示すような装置を用いて,充 填成形した粉体層を天秤を利用して引っ張り破断試験を行っている。この方法は粉体層を 垂直方向に破断するタイプであり,のちに島津製作所と荒川による共同開発で電子天秤と 組み合わせてFig.1.3に示すような装置として市販品が発表される。荒川はこの装置を用い て粉体層の充填構造と引張り強度について検討し,Rumpf式により得られる付着力の意味 について問題を提起19)している。また,この装置に若干の改造を加えて高温場における付 着力と流動性に関する検討20)も行っている。この垂直引っ張り破断法は高圧密された粉体 層の試験に有効な方法であるが,低圧密層では測定できないという弱点がある。 7 粉体層を水平方向に破断するタイプは,本研究の第3章で開発・改良を行っており,わ が国においては初めての試みである。その後,彼谷ら21)は,水平破断装置の問題点であっ たベアリングの摩擦をなくした装置を開発しFig.1.4に示すような製品としてホソカワミク ロンから市販されるようになった。また,壇上ら22)は,ベアリングタイプの装置を自作し, 高温場における測定を行っており,鹿田らは先に開発した平行平板型のせん断装置を改造 した水平引張り破断装置を発表している。 引張り 水位下降による ① ⑧ 大びん ③ ⑥ セル(ド要路) ⑤ プーワ ⑳ ストッバ ⑳ スプリング ⑧ モータ セルホルダ セル(上部) (む ワイヤ ⑳ 無接触スイッチ ⑳ モータ制御同格 ㊥ Fig・1・3Ⅵrticaltypetensdestrengthtesterby Fig・1・2Vbrticaltypetens山estrengthtester Shimadzu by「hn止a スイッチ スプリング (aラ 調節ねじ 固定セル 薗走セル (b) Fig.l・4HorizontaltypetenSilestrengthtesterbyHosokawa 8 罷り金具 付着力の測定法としては一個粒子の付着力測定がもっとも基礎的な方法である。この方 法はもともと物理学者がvonderⅥねals力を測定するために考案したものが多く,多くの方 法が提案されている23)。しかし,実際に用いられているのは遠心分離法24,25,26),振動 分離法27),衝撃法27,28)などであるが,10叫m程度のガラス粒子2個を試料として,高 性能な電子天秤を用いて粒子間距離と粒子間引力の関係を精密に求めた実験29)もある。 また,粉体の物性値を総合的に評価する試みも行われている。これは実際のハンドリン グの場において,粉体の流れやすさをランク付けして一つの目安とすることを目的にした もので,粉体の流動性指数,あるいは噴流性指数という評価方法としてR・L・Ca汀によって 提案30,31,32)された。これに対して様々な議論7・33)があったが,増田らによると,Ca汀 の流動性指数には理論的な裏づけに欠けているとの指摘34)があることから,圧縮度,安息 角,スパチュラ角,凝集度(または均一度)の4種の物性値について多くの研究者らのデ ータを収集,比較検討し流動指数の統計的評価を行った結果,統計的なある一定の意味は 持っていると結論づけている35)。この方法をベースにした粉体の総合特性評価の装置36) がホソカワミクロンから製品化されている。のちに同様の装置がセイシン企業からも市販 される。 9 1.1.2微粉体の付着性を利用した噴流層型バインダレス造粒法の開発 造粒操作は粉体粒子の大きさとその分布,形状,表面状態などを変えることであり,流 動性,充填性,溶解性などの粉体物性を変えることにもつながる。ゆえに,粉体を扱う多 くの産業においてかなり古くから広く一般に用いられてきた技術であり,造粒の方法や機 種もきわめて多種にのぼる。これらの装置は,通常,安定した潰れにくい顆粒が得られる よう機械的強度が大きくなるように工夫されている。したがって,これらのほとんどはバ インダを用いる造粒法であり,バインダの選択により機械的強度の調整も行っている。し かし,造粒の目的によってはバインダは不純物になる場合があり,理想的には用いないで 造粒できるほうがよい。現実に,極端に不純物の混入を嫌う物質や,あるいは湿式処理が 行えない物質の造粒にはバインダを用いない造粒法,たとえば,コンパクティングマシン, ブリケッティングマシンなどの圧縮造粒法が用いられてきた。これらの造粒法の問題点は, 例えば軟らかい顆粒が必要な場合,あらかじめ低圧成形したものを解砕して製品を生成す る手法がとられるが,粒を揃えるときに微粉が多く発生し収率が極端に低下してしまうこ と,あるいは,硬い顆粒を作製する場合は同様の手法を用いて高圧で成形するため,一次 粒子にひずみが生じ内部応力が発生して後工程に問題を残したり,溶解性の低下をまねく 場合がある。したがって,これらの問題に解決を与える造粒法の開発が必要であると思わ れる。 一方,1980年代には,従来付着性の強い微粉体は良好な流動化状態を得ることは困難で あると言われてきた微粉の流動化についての研究が多くみられるようになった。微粉体の 流動化は本来一次粒子の流動化を目指していたものであり,機械的振動37,38),流動化ガ スの脈動39),高ガス流速40,41),音波を照射したもの42,43)など微粉体の流動化が報告 された。その結果,付着性の強い微粉体は凝集体を形成して流動化していることが明らか となり,流動層を用いたバインダレス造粒法の可能性が示唆された。この原理に基づき1990 年代はじめに,Fig.1.5に示すような圧力スイング造粒法が提案され44),現在,製品として 市販されている。この圧力スイング法によるバインダレス造粒装置では,原料微粉体を流 動層内に仕込んだ後,ガスの下向き流れによる粉体層の圧密と上向き流れによる層の破壊 からなるサイクルを繰り返すことによって,粒径0.1∼1.Omm程度の球状の顆粒が得られて いる。バインダを用いない造粒であるため,得られる顆粒は輸送や貯蔵には十分な保形の ための強度を有し,かつ,小さな荷重で解砕が可能であることが特徴である。バインダレ ス造粒により得られる顆粒は,粉末冶金の分野あるいは無機粉体のプレス成型などの分野 10 において利用されており,さらに最近では製薬の分野において粉末吸入製剤の粒子設計へ の適用45,46・47)も研究されている。しかし,圧力スイング法による装置はガスの流れを 上下に切り替えるための機構が必要であるなど装置の構成が複雑になっているため,より 単純な構成による装置の開発が望ましい。また,造粒には約2時間程度の操作時間を必要 としているため,より短時間で造粒が完結する装置の実現が望まれる。また,製薬におけ る粉末吸入製剤の粒子設計のためには,患者が吸入する際,一次粒子にまで再分散する必 要があるため,十分な保形性を保ち,かつ,より軟らかい顆粒が要求される。このような 理由から,バインダレス造粒においては装置の改良および開発,得られる顆粒の適用分野 をさらに開拓する必要があると思われる。 Fig.1・5Schematicdiagramofthepressureswlnggram11ator・ 1・Drycompressedairsupply;2・Pressureregulator;3・Rotormeter;4・Diverter valve;5.Fl血dizedbedcolumn;6・Bagnlter;7・Distributorplate;8・ReservOir tank;9.Pressuresensor;10.An)converter;11.Computer 11 1.2本研究の目的 微粉体を扱う場合,とくに付着・凝集特性によって様々な障害48)が引き起こされる。し たがって,付着・凝集特性を明らかにし適切な対応をとることがきわめて重要である。し かし,付着性を有する微粉体の特性は単純ではなく様々な要因が複雑に絡み合った現象と して捉えられる。ゆえに,異なった視点から複数の物性を考察することが重要なポイント であると考える。また,これにより少なくとも問題解決の有力な手がかりとなることは間 違いない。本研究では,微粉体の種々の特性をより的確に測定するため,従来、きわめて 困難であるとされていた付着・凝集性に関わるいくつかの物性測定を新しい測定装置を開 発することによって実現すること,さらに,微粉体の新たな機能の開拓および高機能化を 実現するために,従来,障害要因と思われていた微粉体の付着特性は造粒という視点から 見ればきわめて有用な特性であると考え,噴流層を用いた高速気流中で微粉体を流動化す ることによる造粒法を開発し,その新たな利用法の展開を大きな目的としている。以下に その詳細を述べる。 第1章は,本研究の背景および既往の研究の概略を総説的に説明し,本研究の目的と構 成を明らかにする。 第2章では,微粉体の物性およびその変化を適切に測定することを目的とする。微粉の 固体添加剤は凝集防止剤,滑沢剤などとして広く用いられており,多くは粉体の付着・凝 集性の低減,流動性の増大がねらいである。しかし,その作用機構は現在のところ充分解 明されておらず,粉体の諸現象の変化をどの物性値が的確に表現しているのか不明である。 現実には,安息角が減少し流動性が増加することが実験的に認められている一方で,微粉 添加剤混入によってタッビングによる充填性が悪くなるという報告や,逆に流動性が減少 するという報告も見られるように,添加剤の影響は簡単に説明できる現象ではないと考え る。そこで,二,三の代表的な添加剤の影響を,数種の粉体物性測定法を用いて測定し, 固体添加剤の作用機構について検討を行う。特に,二分割セル法による粉体層の引張り強 度と,一面せん断試験機による内部摩擦係数の測定結果への作用機構について重視しなが らこれらを明らかにする。 第3章では,二分割セル法による粉体層の引張り強度測定法の問題点を明らかにし,こ れに基づいた新たな測定装置の試作を行い,従来の方法と比較検討することを目的とする。 二分割セル法による引張り強度測定法は,Ashton,Far1eyandⅥ1lentinらによって既に提案さ れているが,彼らの方法は比較的強く圧密された粉体層の引張り強度測定であるため,実 12 際に粉体を扱う状態に近いとはいえない。したがって,低圧密域の粉体層における引張り 強度についても測定する必要があるが,測定方式は同じであることが望ましいことから, 従来の方法で問題となっている可動セル側のベアリングの摩擦抵抗をきわめて小さく抑え ることができる装置の試作を行い,本装置により得られた結果と同方式による従来のベア リング法の結果を比較し,粉体層の強度に関する考察を行う。 第4章では,微粉体として区分される粉体のなかでも100∼200日m程度の比較的粒子径 の大きい粉体をターゲットとして,流動層を電磁場内において操作する電磁流動層を開発 し,これにより粉体に新たな機能を付加することを目的とする。電磁場内において流動化 させた層の中に金属粒子を投入すると,電磁誘導により金属粒子のみが選択的に加熱され, その周りに存在する微粉体が金属粒子にコーティングされる。そのときの温度と微粉体の 種類によって2種類のコーティング様式が考えられる。ここでは,得られた複合粒子のコ ーティングの界面の観察,コーティング可能条件,コーティング厚さなどを測定し,種々 の実験条件による影響を検討する。さらに,プラスチックー金属の複合粒子を型枠にて成 形し,プラスチック材の中に金属粒子を均一に分散させた複合材料を作製し,その機械的 強度の評価を行う。 第5章では,微粉体として区分される粉体のうち,数日m∼サブumの微粉体をターゲッ トとして粉体の高機能化を目的とする。第2章および第3章における物性測定法および測 定装置の開発を通して得られた知見にもとづき,微粉流動層の新たな利用法として噴流層 型バインダレス造粒法の開発を行う。造粒操作において場合によっては不純物ともなりう るバインダは本研究ではあえて使用せず,従来,阻害要因として考えられていた微粉体の 強い付着性を逆に積極的に利用し,微粉体が有する付着力のみで造粒を行うことにより, 機械的強度が強すぎることのない適度な強度を持った軟らかい顆粒を作製する造粒法の開 発を行う。 第6章では,第5章において開発した造粒装置による造粒機構を明らかにするために, 透明な二次元モデルを作製して層内の流動化の様子を目視観察する。特に,噴流層の下部 中央からの噴流の様子,および,層下部のテーパー部分における微粉凝集体の挙動と造粒 の進行する過程を明らかにすることを目的とする。さらに,得られた顆粒の圧壊強度を測 定し,バインダレス造粒により得られる軟らかい顆粒の圧壊のパターンを明らかにする。 また,顆粒充填層の圧縮強度と単一顆粒の圧壊強度の関係についても考察する。 第7章では,バインダレス造粒法は原料粉体の付着性に依存した造粒法であることから, 13 原料粉体の水分による付着力の変化が顆粒の性状にどのような影響を及ぼすか明らかにす ることを目的とする。造粒に供される原料粉体を一定時間加湿雰囲気に置いて湿度を調整 することによって付着力を変化させる。また,造粒操作時の流動化ガスも加湿し流動化時 の原料粉体の乾燥を防ぐ。これにより,きわめて付着性が強い微粉体の造粒操作に及ぼす 加湿による水分の影響を明らかにする。 第8章では,バインダレス造粒法により得られたきわめて軟らかいという特徴を有する 顆粒の新たな用途を開拓することを目的とする。この新規な造粒法の用途として開発当初 はセラミックス,および,粉末冶金などの分野において利用することを念頭においていた が,これ以外にも,近年,医薬品の製剤分野において,粉末吸入製剤(DPI)のための 薬剤の適切な処理が急がれていることに着目し,この製剤のための粒子設計法として適用 することを検討した。粉末吸入製剤に求められる薬剤粉末の粒子径は,空気動力学径で0・5 ∼7岬程度である0このような微粉体は付着・凝集性がきわめて強いため,造粒して用い られることが多いが,従来の造粒法では機械的強度が大であるため使用時に1次粒子にま で分散する割合が2割程度しかないという問題がある0この間題の解決のために本道粒法 を適用し,DPI製剤のための粒子設計法として確立することを目的とする。 第9章は,終章として各章の研究で得られた成果の要約を述べ、本研究の全体のまとめ とする。 14 1.3本研究の構成 第1章では,本研究が開始された当時の背景を概観したうえで,研究の目的と本論文の 構成を内容に沿って述べた。 第2章では,まずはじめに付着力が関与すると思われる種々の粉体物性値について,試 料粉体に微粉添加剤を混入しその値の変化について検討した結果を論じた。 第3章では,第2章の結果をふまえて,当時議論が集中していた粉体層の付着力測定装 置の開発を行う。Ashton,Far1eyandⅥ11entinら2)が提案した二分割セルによる粉体層の引 張り強度測定法は,比較的強く圧密された粉体層の引張り強度の測定であるため,低圧密 域の粉体層についての引張り強度も求める必要がある。そのため,低圧密域から高圧密域 までの幅広い空隙率範囲における引張り強度を同一の方法で得られる装置を開発し,粉体 層の強度に関する考察を述べた。 第4章では,微粉流動層を電磁場に設置した電磁流動層を開発し,金属粒子の表面に微 粉体をコーティングする新しい流動層プロセスの開発を行い,複合材料の新たな作製方法 の開発に関して得た知見を述べた。 第5章では,従来,阻害要因としてみられてきた微粉体の付着性をプラス要因として効 果的に利用したバインダレス造粒法の開発を行ったことを述べた。 第6章では,この造粒法により得られる顆粒は保形性を保ちつつも非常に軟らかいとい う特徴を持った額粒であることを述べ,その道粒機構を明らかにした。 第7章では,原料粉体および流動化ガスに含まれる水分が顆粒生成,および,顆粒性状 に及ぼす影響について論じた。 第8章では,この顆粒を粉末吸入製剤に適用することにより,従来にないすぐれた分散 性能を有する顆粒の設計法として適用可能であることを論じた。 第9章は,終章として本研究の全体を通してのまとめを行った。 15 LiteratureCited 1)Geldart,D.;"取pesofGasFluidization,"powdbr花chnology,Z,285-292(1973) 2)Ashton,M.D.,R.FarleyandFH.H.1ねIentin;"AnImprovedApparatuSforMeasuringtheTbnsile StrengthofPowders,"Jburnalqfscient押instrument,4i,763-765(1964) 3)Jenike,A.W,PJ.EIseyandR.H.Woolley;P7VCeedngs,Am.Sbc・花st・止血t・,69,1168(1960) 4)Jenike,A.W;升ans.1hstn.aem.助grs.,49,264(1962) 5)Jenike,A.W;乃ans.Sbc.Mn.Ehg.,235,267(1966) 6)常山道三;"土質力学,"コロナ社,(1970) 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2.2実験方法および装置 実験に用いた粉体は,石灰石,珪砂(豊浦標準砂粉砕物),溶融アルミナ(ホワイト・ア ランダム)を選び,添加剤には,コロイド状シリカ0.09叫n(ニップシールVN3),ステ アリン酸カルシウム0.83叫n,酸化マグネシウム0.20叫nを選んだ。粒径はいずれも比表面 積平均径である。前者に微量の後者を混入して小型の傾斜円筒形混合機で約1時間混合し 試料とした。 珪砂粉の場合,特にタッビング充填において若干の偏析現象がみられ,混合が必ずしも 充分でないことが示されたので,混合助媒としてスチールボールを用いて混合を行なった。 なお,添加剤濃度は,影響が現われるとされている0.5∼1.0%を選び,粒子の偏析を考慮し 21 て大きいほうの濃度を基準にした10,13)。 安息角の測定は,Fig.2.1に示すように,微振動を加えた漏斗からの注入法で,山の頂上 の高さによって示した。タッビング充填はFig.2.2に示したように,落下高さ5mm,落下 回数約12cpmの装置を用いて行った。加圧充填は,二分割セル法引張り試験における試料 の予圧密の際に,参考データとして求めたものである。内部運動角は,内径75mm,長さ 200mmの回転円筒の中に粉体を入れ45∼60rpmで回転させたときの運動状態における内 部運動角より求めた7)。 ∫ ●-㌧ ・.l..■l †;三l=:・ ー●●⊥●■-■一 Fig・2・2MeasunngequlPmentOfpacking Fig・2・1MeasurlngequlPmentOfangleof PrOPertybytapping rePOSe Fig・2・3Schematicillustrationofmeasuringapparatusoftensilestrengthofpowderbed ①powderbedinthemovablecell,②powderbedinthe丘xedcell,③Ballbearing, ④vtypegrooves,⑤Motor,⑥Straingauge,⑦strainmeteち⑧Recorder 22 Fig.2.4Schematici11ustrationofshearStrength ①wtightfbrpre-COmpaCtion,②cylinderforpre-COmPaCtion,③uppercylinder; A-A,Surfaceofpowderbedonwhichverticalstressislaid.④Lowercylinder; B-B,Shearfhilureplane.⑤straingaugeformeasurementofshearstrength 引張り強度試験は,Farley-Ⅵlentinの原理に基づいて作製した装置を用いた。この測定装 置の概略をFig.2.3に示す。せん断試験機は,Fig.2.4に示すように,引張り強度測定器を 改造したものを用いた。粉体層はいずれも30kPaの圧力で10血n加圧することによって予 圧密を行った。また,せん断試験の場合は測定時にあらためて垂直荷重を分銅によって加 えて測定を行った。この場合せん断による破断は,底部円筒容器が移動を開始した時点で 起こったものと判断した。なお,本実験の範囲では,粉体試料はすべて塩化カルシウムに よってほぼ完全に乾燥状態にしたものを用いている。 2.3安息角の測定結果 安息角の測定結果をFig.2.5(a,b,C)に示す。添加剤混入による影響が顕著にみられるとこ ろもあるが,全体の傾向としては,事前に予想されたような付着,凝集性の低下を示して いない。この場合,付着性が大きく添加剤の効果が大きいと思われる微粉域で,添加剤混 入によっていずれも安息角を増加させる傾向があり,しかも粗粉域では逆転現象がみられ る点が注目される。さらに,Fig.2.`に示した内部運動角もまったく同様な傾向を有してい る。 23 [∈∈]d巾選一3モ0ご0主軸苛〓 0 5 10 15 Pa止iclesize[〟m] Fig.2.5(a)EBbctofadditivesonangleofreposeof limestone (Heightofconicalheap) 【∈∈]d冨エー3で○ご〇一息富士 5 5 Pa止ictesize[〃m] Fig.2.5(b)E飴ctofadditivesonangleofreposeofsilicasand (Heightofcomicalheap) 24 5 【∈∈]d冨三巾0モ○ごOl奉呈 4 0 5 15 10 20 25 Pa止iclesi之e[〟m] Fig.2.5(C)E飴ctofadditivesonangleofreposeoffusedalumina (Ⅲeightofconicalheap) .40 【u名】む一ぎ巾。葛u伸上l空Lβu】 35 45 40 35 10 5 15 20 Particlesize[JJm] Fig.2.6 Effectofadditivesonintemalkineticangleofpowder 25 2.4充填性に対する影響 タッビング充填,および,加圧充填の結果を椚gs.2.7,2.8に示す。両者とも良好な直線性 を示し,(2.1)式で示される川北の式,および(2.2)式で示される種谷の式に良好な 一致を示している。 Ⅳ 1 Ⅳ (2.1) -=-+- γ P α∂ α l f) α甘 αt (2.2) -=-+- β ここで,井 戸は,それぞれ,タッビング回数,圧密応九β,γはともに圧縮率である。 また,α,あおよびα,,み,はともに実験的に求められる定数である。 [⊥ゝ\Z 00 0 100 200 300 400 CumulativenumberoftappingNト] Fig・2・7RelationshipsbetweennumtX:rOftapplngNandchangeOftapdensltyγ 26 Fig.2.8において,加圧充填における石灰石への影響が顕著にみられるが,全体としては 明確な傾向がみられない。つぎに,凝集性に関する定数あの値,および,ムと粒径の関係 を恥ble2.1,Fig.2.9に示す。これらより,石灰石,珪砂,溶融アルミナそれぞれの,特に粗 粒域において添加剤による凝集性の減少が若干みられるが,特に規則的な影響はみられな い。 20 40 Consolidationpressure[kPa] Fig.2.8RelationshipsbetweenconsolidatingpressurePandchangeOfdensityofpowderbedβ Thble2.1E飴ctofadditiveonpackingpropertybofpowderbedbycompression Silicasand4匹m Limestone7匹m Fusedaluminal一皿 Noad血tive 0.023 0.033 0.036 Calcium.stearate 0.045 0.031 0.030 Co1loidalsilica 0.055 0.056 0.039 27 [⊥q luqlSuOOO葛てO10巴雲0 (肌05 0 2 6 4 8 10 12 Pa托iclesize[〃m] Fig.2.9(a)Efftctofadditivesonpackingpropertyofpowderbbytapping 06 [⊥q 05 盲βSuOOO扇てβ0巴雲0 04 03 02 01 0 02 4 6 8 10 Particlesize[JJm] Fig.2.9(b)Elftctofadditivesonpackingpropertyofpowderbbytapping 2S [⊥q lu巾}Su80甥て心〕U巴巾エ0 0.1 0 05 10 15 25 20 Particlesize[FLm] Fig.2.9(C)E飴ctofadditivesonpackingprope呵Ofpowderbbytapping 以上の安息角および充填性の測定結果より,ここで試料として取り上げた鉱物質粒子に 対しては,添加剤の効果はあまり顕著ではなく,またその効果が期待される場合に凝集性 の増大がみられることも少なくないことが明らかとなった。 2.5引張り強度法による付着力測定結果 測定結果の一例をFigs.2.10,2.11に示す。Fig.2.10より石灰石粉7トm粒子の場合には, 添加剤混入により粉体層の引張り強度ちは大幅に低下することが明らかとなった。またこ の場合,添加剤の種類による効果の差は顕著ではない。また,Fig.2.11に示されているよう に,添加剤濃度による影響もほとんど認められていない。この場合,添加剤粒子は粗粒子1 個に対し,3∼15個程度と推察され,ほぼ粒子の接触点数をはさんで個数を変化させたこと になると思われる。 29 【責羊毛u巴lS空Suβ 0.4 0.45 0.5 0.55 Porosity Fig.2.10Efftct 0.6 0.65 E[-] tenSile strengthoiOfpowder ofadditives・On 0.7 bed POrOSity [圧占エもu巴lS遥SuUト 0.55 0.5 0.6 Poro如yどト】 Fig・2・11EfrbctofconcentrationofadditiveontensilestrengthoiOfpowdert妃d 30 to 付着力は原理的には1個あたりの付着力方で表すことが望ましいと思われる。引張り強 度ちより方を求める方法として,次の如mpfらの式がよく用いられている。また,粒子配 位数尼に関しては鮎屯w野らの実験式がよく用いられている。 〃=二 8 刀Dク2 (2.3) 8■z 9(トg)斤 (2.4) g=1.072-0.1193斤+0.00431鳥2 これらの式を用い,実験により得られた引張り強度ちから1個あたりの付着力方を求め た結果をFig.2.12に示す。付着性の大きい石灰石粉の場合には,きわめて著しい添加剤の 影響がみられる。しかし,珪砂の場合には添加剤混入による付着力の減少傾向が若干みら れるものの,その影響はごくわずかである。また,溶融アルミナ粉の場合には添加剤混入 によってかえって付着力の増大を招くような傾向がみられる。 [N】NO;lu苫lUβu8ヱ:。」ゼuO溜壱く 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 Porosityどト] Fig・2・12Ef托ctofadditivesonadhesionforceatacontactpointH 31 0.8 2.6せん断試験による内部摩擦係数の測定 せん断試験の結果を垂直荷重吼とせん断力Tの関係で整理すると椚gs.2.13,2.14に示すよ うになる。これらの図より,吼とTの関係は,つぎのCoulombの式 (2・5) r=〟fJv+C よりも,次に示されるFar1ey-Ⅶ1entinの式5)(あるいは梅屋らの式14)) (‡)"=㌢+1 (2・6) に近い傾向を示すことがわかる。(2.5)式,および,(2.6)式においてcは粘着性を, (2.6)式においてrは引張り強度を表して,原理的にはr≒屯と考えられている。 しかし,実際には吼が大きい部分では(2.6)式の関係ではなく,(2.5)式の直線関 係に近似されることが明らかなので,吼とTの関係がほぼ直線で示される部分において(2. 5)式より内部摩擦係数〃iを求め,吼の小さい部分では(2.6)式にしたがって吼=0にお けるTの値を粘着力cとして求め,1払ble2.2にまとめて示した。 Thble2.2Resultsofmeasurementofinternalfrictioncoe缶cient〟iandcohesionforcec Internalfriction Powder Ad血dve coe鐙icient 〝iト] Limestone Silicasand Fusedalumina Cohesionforce C[kPa] Tbnsilestrength ち【kPa] None 0.03 22.8 3.22 Ca.stearate 0.1S 12.7 1.39 Co1loidalsilica 0.11 14.S 1.36 MgO 0.16 15.5 1.13 None 0.05 25.5 3.5S Ca.stearate 0.14 27.4 2.60 Colloidalsilica 0.10 30.6 3.23 MgO 0.08 28.1 1.56 None 0.03 31.5 3.65 Ca.stearate 0.06 31.4 3.93 Colloidalsilica 0.06 33.9 6.16 MgO 0.03 29.0 2.14 32 [巾d占SS巴一の」qむエS 50 100 【巾d占SS巴霊」巾¢エS 50 50 100 Verticalstress[kPa] Fig・2・13E飴ctofadditivesonintemal蝕cbonofpowderbed 33 [巾d畠SS巴lS」召エS 0 10 0 Verticalstress[kPa] Fig・2・14Effbctofconcentrationofadditiveoninternalfhction これらの結果より次のことがわかる。石灰石においては内部摩擦係数〟iは添加剤混入に ょってかえって増加し,その増加傾向は添加剤の種類や濃度によってあまり影響されない。 一方,粘着力cは添加剤混入によって明らかに減少し,引張り強度の結果と対応している0 また,珪砂においても,溶融アルミナにおいても,添加剤混入による内部摩擦角の増加傾 向がかなり明瞭にみられるが,粘着力の変化はほとんど認められない。これも引張り強度 の結果とほぼ対応している。ここできわめて注目されるのは,添加剤によって内部摩擦角 が全体的にかなりはっきり増加する傾向を有することである。 なお,粘着力cの値は,Table2.2に示されるように,引張り強度ちに対してほぼ10倍の 大きさを示し,また,添加剤による変化の傾向も異なっている。これらの点からもせん断 試験より求めた粘着力と付着力は本質的に異なったものであって,単純な関係にあるわけ ではないことが推論される。 34 2.7考察 以上の実験結果より,添加剤が安息角や充填性に及ぼす影響はあまり明確な傾向を持た ず,粉体の種類,粒度,添加剤の種類によっては,付着性・凝集性が増加することもある ことが示されたが,これはいままでに種々の研究者によって求められた添加剤の影響の結 果の多様性と一致している。 これを最も基礎的な物性である付着力と内部摩擦係数の測定結果より検討すると,添加 剤の混入によって石灰石粉のように付着性の大きい粉体では大幅な付着力の減少がみられ, 付着性の小さい粉体では添加剤の効果はわずかであり,また,物質によっては逆に付着力 の増加をもたらす場合もある。このことは添加剤の効果が粉体の種類によって異なること を示している。また,添加剤の種類による影響はあまり顕著ではないが,いずれの場合に もコロイド状シリカ,ステアリン酸カルシウム,酸化マグネシウムの順で付着力が小さく なっており,結局,添加剤の混入によって粉体の付着力は粉体固有の付着力から微粉添加 剤に固有の付着力に近づく傾向があることが推察される。 また,内部摩擦係数は一般に添加剤混入によって増加する傾向がある。この測定におい ては,本研究の実験精度がまだ充分でないため,添加剤の種類や濃度による影響は明らか でないが,きわめて小さいものであろうと考えられる。 これらのことから,付着・摩擦特性の機構は次のように考えられる。微粉添加剤を構成 する粒子は粉体を構成する粒子の表面にある程度の強度をもって付着し,粒子表面に著し い凹凸を形成するように作用していることが,Nasbら13),池川,金庭9),青木,林ら1) の観察結果から明らかであるように,添加剤の混入がこのような粒子表面のあらさを増加 させているとすれば,それは当然摩擦係数の増加をもたらすことになり,内部摩擦係数の 増大につながっている。また,神保らの遠心法による測定3・11)において指摘されている ように,粒子表面を粗にすることによって付着力の減少傾向があらわれるものと思われる。 さらに,安息角や充填性などは,付着性と摩擦特性が複合されたいわゆる二次的特性値 であるため,付着力あるいは内部摩擦角と単純な関係にはなく,物質の組み合わせと条件 によって,ある場合には付着力支配の挙動を示すために,結局全体としては複雑な特性・ 挙動を示すにいたるものと推察される。これらの複合的な物性における基礎的物性の組み 合わせについてはまだほとんど不明であるので,現在のところ付着九摩擦特性と他の物 性とを関連付けて論ずることはできないが,今後この面での検討を進めていく必要がある と思われる。 35 2.8結言 1)微粉添加剤の混入によって,付着性の大きい粉体の付着力は低減するが,付着力の小さ い粉体の付着力は増加することもあり,全体として付着力の大きさが一定の値に近づく 傾向がある。 2)添加剤の種類よる影響は,ここで取り上げた範囲ではそれほど顕著ではない。 3)微粉添加剤の混入によって,粉体の内部摩擦係数は増大する傾向がある。 4)上記二つの基礎的物性の変化が相反しているところから,これらが複合された特性値で ある安息角,充填性などに及ぼす添加剤の影響は複雑であって,単純な変化は示さない。 安息角,充填性に及ぼす添加剤の効果は,付着・凝集性が場合によっては増大し,場合 によっては減少するように働く。 5)微粉添加剤の微粉粒子は粉体の粗粒子表面に付着し,固体表面のあらさを増すように作 用することによって,粉体の物性に変化をもたらすものと推論できる。 36 Nomenclature a =COnStantinEq.(2.1),(inhitereductionofvolume) a' =COnStantinEq.(2.2),(innmitereductionofvolume) =COnStantinEq.(2.1),(fluidityofpowder) b' =COnStantinEq.(2.2),(fluidityofpowder) C [Pa l一 ト】 トL Pa 「■■」 b ト] Pa ] ト =COhesionforceofpowderbed Dp =Particlesize 匝】 H =adhesionforceatacontactpolnt [N] k =COOrdinationnumberofparticleinpowderbed ト] N =Cumulativenumberoftapplng ト] P =COmpreSSlngpreSSure 【Pa] T =tenSilestrengthinEq.(6) [Pa] β =relativereductionofvolumeofpowderbedbycompression ト] ア =relativereductionofvolumeofpowderbedbytapplng ト] ど =pOrOSi呼 ト】 0 =internalkineticangleofpowder Pi =COe疏cientofinternal鮎ction Ob =Verticalstressonpowderbed [Pa] qz =tenSilestrengthofpowderbed [Pa] T =Shearstress 【Pa】 [deg】 ト】 37 Literattuecited 1)Aoki,M.andS.Hayashi;"StudiesonLubricationofPharmaCeuticalPowders.VI,ChangeOfFlow PropertiesofSodiumBicarbonateinthePresenceofaSma11AmountofMagnesiumStearate," 抱ゑ〟gα舟〟肋∫カブ,j辺,1,164-1169(1967) 2)Arakawa,M.andE.Suito,"ThePorosityChangeBaseduponMixing ofFinePowderHaving DiffbrentSizes,"Zbi7γ0,il,642-645(1968) 3)Asakawa,S.andGJimbo,"OntheMeasurementOfAdhesionForceofPowderbyCentrifugal Force,"ゐわγ0,適,358(1967) 4)Bulsara,PU.,FA.ZenzandR.A.Eckert;"PressureandAdditiveEぽbctsonFlowofBulkSolids," 血血∫柄αJα乃d助g加eer加gαg∽ね∠堺P和Ce∫∫βe∫な〃&βeve極刑e叫呈,348-355(1964) StrengthofPowder,"Powdbr 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14)Umeya,K.,N.Kitamori,YArakiandH.Mima,"InfluenceoftheParticle CompressionFillingofPowder,"Zdi7yO,i乏,166-171(1966) 38 of SizeDistributionon 第3章 二分割セルを用いた粉体層の引張り強度測定法 第3章 二分割セルを用いた粉体層の引張り強度測定法 3.1緒言 粉体の付着・凝集性の測定法あるいは評価法として,古くから安息角,充填密度,流動 性,分散性など様々な物理的あるいは実用的方法が用いられてきた。しかし,これらはい ずれも二次物性などと呼ばれているように粉体の付着力が関与したことによる結果として の事象であるといえる。付着力は,粒子一粒子間,あるいは,粒子一平面間において接触して いるものを引き離す力であり,原理的には粉体粒子の接触面に対して垂直方向に働く力と して定義され,最も基本的な物性値であると考えられる。測定方法は,(1)粒子一粒子間の分 離力を粒子1個レベルで測る方法,(2)粒子一平面間の分離力を粒子1個レベルで測る方法, (3)粉体層の機械的強度から求める方法に大別できる。(1)の方法は,きわめて精密な測定装 置1)が必要になるため一般的でない。(2)の方法は,独創的な装置が種々提案2∼4)されてい るが,きわめて小さな分離力の測定であることから,厳密な測定を行う必要があり,やは り一般的でない。(3)の方法は付着力測定の実用的な方法として,今から約40年前にⅥね汀en Spring研究所のAshton,FarleyandⅥ1entinらによって,二分割セルを用いた粉体層の引張 り破断強度測定法1)が開発されたことにはじまる。その後,特に日本において,多くの研 究者やそのグループによって非常に熱心に研究され,様々なタイプの装置が開発されて世 界中で用いられるようになったという経緯がある。この方法で解決が待たれている問題点 の一つは,測定可能な粉体層の空隙率の範囲が比較的狭いということである。 本研究では,空隙率gと引張り強度巧の間の一般的な関係をより広い範囲で正確に求める ため,測定できる空隙率範囲の拡張を可能にした新しい装置を開発し試験を行い,従来の 結果と比較したところ,良好な結果を得ることができた。また,空隙率gと引張り強度qの 関係を説明する関係式は椿らによって提案され報告5)されているが,本測定装置によるデ ータを加えた結果についてあらためて検討した。 3.2引張り強度測定法の原理 圧密成形された粉体層に引張り力を与え破断するときの力を測定すれば,この値が粉体 層の引張り強度ということになり,付着・凝集性の評価ができる。粉体に付着・凝集性が 生じるのは粒子一粒子間,あるいは,粒子一平面間に作用する力によるものであり,フアンデ ルワールス(vanderⅥねals)九静東気九水分による液架橋力などがその要因とされてい る。粉体層の引張り強度はこれらの粒子間力の総和であるので,破断面における粒子の接 40 触状態がわかれば粒子間の付着力を知ることができる。このことより,Rnmpfは粒子の接 触数と破断に要した力の関係9)を次式のようにまとめた。 (3・1) Jz=チ環 ここで,Aは配位数であり,冗/Eで近似できると仮定すると次式を得る。 (3・2) Jz=㌘貰 この式より引張り強度の実測値からその条件下での粒子間付着力を求めることができる。 しかし,現実には粒子径や空隙率に分布が存在するため問題がある。したがって,現実的 な方法として,粉体層の単位断面積当りの引張り強度そのものを付着・凝集力として表現 する考え方もあり,巨視的な付着力の評価法として実用的である。ただし,実際の破断面 積は計算上の破断面積より常に大きくなるので注意が必要である。 3.3従来の方法と問題点 粉体層の引っ張り強度測定法は,水平引張り法と,垂直引張り法に大別でき,両者とも 既に市販の装置として発表されている。垂直引張り法は,二つの円筒容器を上下に重ね, 粉体を充填した後上下に引き離す構造になっている。この方法は,高い圧密応力での測定 が可能であり,他の材料と粉体層との付着力が測定できるという特徴を有しているが,圧 密応力を小さくすると粉体層が抜け落ちるため原理的に高空隙域における測定は難しい。 水平引張り法は,二分割された円筒容器の一方を固定し,他方をベアリング上に載せるか, もしくは吊り下げて水平移動するような構成になっている。この方法は,粉体層の庄密応 力を大きくすると層にクラックが生じるという問題がある。さらに,ベアリングを用いる 場合は,圧密応力を小さくすると引っ張り強さが小さいため,ベアリングの静止摩擦がブ ランク値として無視できない大きさになり測定精度がきわめて悪くなる。吊り下げ法はこ の問題を解決する方法として開発されたもので,他にも種々の優れた機能を有しているが, 片方固定という原理は変わらず,高圧密測定に対応できないなどの問題点が残る。 41 3.4新しい引張り試験法の開発 3.4.1改良ペアリング法 Wa汀印Sp血gの装置をベースにして設計・試作された改良Ⅰ型の写真をFig.3.1に示す。 Wa汀en Sprmgの装置は片側のセルがベアリング上に載っているのに対して,本装置はFig. 3.2に示すような構成になっており,動作原理をFig.3.3に示すb二分割した両方のセルを ベアリングの上に載せて可動セルにしたものである。こうすることによって,より精密な 機械的精度が要求されることになるが,同時に精度の向上によってセルの結合がより精密 になり,圧密の段階で粉体層にクラックを生じさせる最大の原因が取り除かれたことにも つながっている。 Fig,3.1Photo訂apllOfmod通db朋血ngt沖el Fig.3.2ScheⅡ血coutlineofmod通edbearingtypeⅠ ①Motor ②G飴r ⑤Tbns11esp血g ⑧Recorder ③SplltCell④Fixsp血g ⑥Sb・aingauge ⑦sIT血amp 42 Be8rino Typモ New8eqr】n9Typモエ 仙w8"「l呵一吋P8Ⅱ Fig33Co叫)arisonofthemainfeaturesofbearingtypetesters 試験の手順および装置の動作は,まず,セルを結合させるためにセルの両側から4本の プッシャーによって押付けた状態で粉体を充填し各種の分銅により圧密した後,キャップ を取り除き余分な粉体をすりきることにより粉体層を形成する。つぎに,引張りを開始す セル全体がベアリング上に浮いた状態 るとプッシャーが逆方法に作動しセルから離れるQ になったところで,左右からスプリングで引張られたような状態になっており,さらにモ Fig.3.4P血otogmpl10fmod通db悦血g句中e (Split一血-Slideprinciple) 43 Ⅱ 一夕の回転が進むとプッシャーに連結したスプリングによって徐々に引張りが進行してい くという形式である。この方法によって,セルはわずかに移動しながら引張り力が加えら れるため,ベアリングの摩擦によるブランク値を大幅に低減させることに成功した。 改良Ⅰ型のセルの動作をさらに精密に制御するためにFig.3.4に示すような改良Ⅱ型を試 作した。本装置の構成を刑g.3.5に示す。この装置は原理的には改良Ⅰ型とほとんど同じで あるが,引張り破断を行うとき,プッシャーがセルから離れた後,一方からスプリングで 引くと同時にそれより若干遅い速度で後ろ側のプッシャーによりセルを押し,セルが一定 速度で動いているあいだに粉体層を分割することを可能にしたものである。このようにし てベアリングの静止摩擦を確実に動摩擦に置き換えたことにより,1払ble3.1に示すように ブランク値をさらに減少させ,高空隙率における小さな破断力の測定精度を高めることが 可能となった。 50仙鳳血血 ■て・・・ 20mm加In 言 ■」㌻■ (Split-in-Slideprinciple) 44 ■--・ Fig.3.5Schematicillustra也onofmodiBedbearingtype ■ Ⅱ Thble3・1Frictionofslidingofcellsandrangesofconsolidatingload TypeofequlPment Blankvalueof Friction Ⅵ加enSpringtype ModinedbearingtypeI RangeOfconsolidating xlO2p 2.5-6 l-25 l-2 0-50 O.3-0.4 0-50 NobearingtypeI 12-16 5-5000 NobearingtypeII 30-40 5-10000 ModinedbearingtypeII また,この方法の特徴は両側の引張り力を測定しているため,原理的には以下の計算に より摩擦のブランク値を完全に除去することができる。 すなわち,Fig.3.`で示した動いているセルの力の釣合いは γ-2ダーち=0 (3.3) JA そして,破断点における力の釣合いは γ-F=Jd 篭⊆㌍push (3.4) F Eqs.(3.3),(3.4)から以下が得られる。 Fig.3.6BalanCe J=1土星 2月 F Offorcein sprit-in-Slide method (3.5) 3.4.2ベアリングレス法 高圧密荷重により成形した空隙率の低い領域における付着力測定においては,ブランク が問題になることはほとんどないため,ベアリングの摩擦を減少させる必要はない。しか し,二分割セルを結合させて粉体層を成形する間の安定性は最も重要なことである。した がって,二分割セル法の改良Ⅲ型は,Fig.3.7およびFig.3.8(a,b),に示すように,ボールベ アリングはすべて除去された。また,セルの一方は従来どおり固定セルとし,他方を平ら なべースの表面に置き,可動セルとした。可動セルの底面が摺動面に接触する部分の摩擦 は当然大きくなるが,これを減少するためにMoS2など固体潤滑剤を使用した。ボールベア 45 リングを使用していないので,職ble3.1に示したように,摩擦の増加は避けられない。しか し,セルは非常に安定するようになるため,得られたデータのバラツキはきわめて小さい ことが確認された。 各タイプの装置において,セルに対するブランク値,および粉体層形成のための圧密荷 重の範囲を,nble3.1にあわせて示した。さらに,本研究で改良された三つの方法に加えて, 市販されている装置で,可動セルが3枚の板ばねで吊るされているタイプの「コヒテスタ ー」も加えた四つの試験装置を用いて,粉体層の空隙率範囲の拡張を試みた。 Fig.3.7Pboto伊apbornobe皿gtypelesterII ①F価訂 ◎cモItHo†d訂 ◎8此=酬 ◎MoS2 Fig.3.8(a)nlnsけa也onof也eceupa正OrnObemg 切)eteSterII 46 Fig.3.8(b)Schematicillustrationofnobeatingtype 3.5実験 改良Ⅰ型および改良Ⅱ型のベアリングタイプの試験装置では,セルは供試粉体が充填さ れている問および圧密されている間は常にボールベアリングの上に固定されている。また, ベアリングレスタイプの改良Ⅱ型では,セルはセル・ホルダーにしっかりと固定され,供 試粉体の充填および庄密を行う場合には,試験装置から取りはずし,Fig.3.9に示すような 別に用意されたプレスを用いて圧密成形した。いずれの装置においても,粉体層を二分割 した後に供試粉体の重量を量ることで,空隙率が求められるようになっているため容積は 一定にしてある。粉体層がきわめて高荷重で圧密された範囲では,Fig.3.10に示すように, 固められた粉体層が不規則な破断を起こすことが認められた。これを回避するため,セル Fig.3.90ilpressure highloadconsolidation 47 equlpmentfor の結合部分の内壁に2本の細いワイヤーを垂直に貼り付け,破断面が一定になるように改 良した特殊なセルを用いた。 実験に用いた供試粉体を恥ble3.2に示す。供試粉体は湿度を一定に制御するため,1週 間以上デシケ一夕ーの中に保存したものを用いた。 Figユ10 Photographoftheappearanceofanirregularfracture rIbble3.2Characte血icofpowderstested No・ 芸謁 S皿plema血曲 1 Li皿eStOnepOヽVd訂b-30) 2 Limestonepowder(p-70) 3 4 Fu5edahmina(Ⅵ鳩2500) 謡Of岩諾; 5.6 2700 19.4 2700 6.2 3900 46.9 1530 2 3000 Lactose Loamcl町(K血tOlo即n, 刀SZ8901 No.11 48 3.6実験結果 Fig.3.11に従来の結果,および,改良Ⅰ,Ⅱ型により得られた結果を併せて示す。異なる 方法による結果が互いに一致し,いずれも高空隙率側に測定範囲を大幅に拡大しており, 引張り破断法は測定できる空隙率範囲が狭いという問題を大幅に改善することに成功した。 この図は,粉体層の引張り強度qと空隙率の関係を片対数紙上にプロットしたもので,い ずれの場合においても,粉体層の空隙率が広い範囲にわたって良好な直線性を示している。 したがって,この場合,引張り強度ちと空隙率の間には,次の関係が成立していることに なる。 Jz=緑 お (3.6) 0.5・ 0.6 0了 0.8 どト】 Fig・3111Re如tsofmeiLSurelⅧnlofmdi丘cdbeiuingl-1C山d(JHdeI10teSthcaudlOrS-results) 49 この関係は,従来qとEの関係式として用いられていた(3.2)式の鮎m〆式と傾向が 異なる。これは,鮎m〆式は粒子の充填構造モデルから導かれた式であるのに対して,(3・ 6)式はむしろ材料の破壊確率にもとづく強度式の形を示しており,神保ら7)によって詳 細に検討されている。 また,今回開発した3種類の装置により得られたすべての試料についての結果をまとめ てFig.3.12に示した。高空隙率の領域から,高圧密された低空隙率の領域にまで大きく拡張 され良好な直線性を示している。ここで,粉体層の空隙率が非常に大きい場合には,ちとど の直線関係が通常より急勾配になる領域がある。これは,椿ら6)によって説明されている ように,凝集体の形成に起因するものであると考えることができる。 0.き 0.4 0.5 0.6 07 ∈(-) Fig・3・13Experimentalesultsl--Relationshipbetweenthetensilestrengthandthe POrOSltyOfpowderbed 50 0.8 さらに,Fig.3.13に示した引張り強度qと粉体層の圧密応力Pの結果から,実験的に次の 式で整理できることを確認した。 Jz=鬼2f)" (3.7) 一般的に粉体層の引張り強度は空隙率との関係で表されることが多いが,圧密応力との 関係においても広い範囲で良好な直線関係が得られることが示された。 5100 IOl 102 P(kPq) Fig.3.13Experimentalresults2…Relationshipbetweenthetensilestrengthand theconsolidationpressure 51 10さ 5 3.7結言 1)新しい二分割セルタイプの引張り強度測定装置を設計・試作し,従来に比べて幅広い空 隙率範囲の粉体層の付着力測定を可能にした。 2)粉体層の引張り強度と空隙率の関係式である餌mpf式の代替として提案された(3.6)式, および,圧密応力との関係式(3.7)式は,広範囲の空隙率条件においても成立することを 明らかにした。 52 Nomenclature [ll11 Dp =diameterofparticle A =CrOSS-SeCtionareaOfpowderbed Dp =diameterofparticle l、Il11 F =friction [N] 【1n二1 【Pa] kl =COnStant k2 =COnStant T =tenSileforc [Nl oi =tenSilestrengthofpowderbed 【Pal 8 =POrOSity H =adhesionforceofaslngleparticle P =COnSOlidationpressure 【Pal ト】 n] [N] 【Pa] 53 LiteratureCited 1)Ashton,M.D.,R.Far1eyandFH.H.Ⅵllentin;"AnImprovedApparatuSfbrMeasuringtheTbnsile StrengthofPowders,"JburnalQrSCient押instrument,4土,763-765(1964) 2)Jimbo,G,S.AsakawaandN.Soga;"MeasurementOfAdhesionForceofPowderParticlesby PowderBedTbnsileStrengthMethod,"JournalqftheSbcie少Qr肋teriaLgStienceJ卸an,11, 540-544(1968) 3)Darjyo,K.andA.Otsuka;"E飴ctofTbmperatureOnAdhesiveandCompactionPropertiesof SomeOrganicPowders,"肋gakuZbsshi,iB9,893-899(1980) 4)Kaya,N.,K.F頑iandT.Yokoyama;"TburisagesikiFuchakuryokuSokuteikinoSisakutoSokutei," 凡〃∫α≠,呈呈,32-38(1977) 5)Thbaki,J.andGJihbo;"TheoreticalAnalysisoftheTbnsileStrengthofaPowderBed,"Powdbr ね℃力乃0わ幻′,三三,219-227(1984) 6)Thbaki,J.,K.KatoandGJimbo;"E丘盲ctofAgglomerationPhenomenononAdhesionForceof 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本研究は,100∼200pm程度の比較的粒子径の大きい微粉体をターゲットに新たな機能を 付加することを目指すもので,電磁場内に設置した流動層内において,流動化させたプラ スチック粉あるいはセラミック粉などの非導電性微粉体を金属粒子にコーティングした複 合粒子を作製し,これを成形して複合材料を得る新たなプロセスを開発することを目的と している。電磁場内で流動化させた層の中に金属粒子を投入すると,電磁誘導により金属 粒子のみが選択的に加熱され,その周りに存在する微粉体が金属粒子にコーティングされ る。そのときの温度と微粉体の種類によって2種類のコーティング様式が考えられる。実 験で得られた複合粒子のコーティングの界面の観察,コーティング可能条件,コーティン グ厚さなどを測定し,種々の実験条件による影響を検討した。さらに,プラスチックー金 属の複合粒子を成形して,金属粒子が均一に分散した複合材料を作製しその機械的強度を 評価した。 4.2実験装置および方法 実験で用いた装置の概略図をFig.4.1に示す。発振周波数f=4MHz,最大出力Qmax=40kW の高周波加熱電源装置(富士電波エンジニアリング㈱製)に接続されている内径70Ⅱ皿, 高さ150mmの加熱用コイルの内部に流動層を設置する。加熱用コイルは外部への高周波の 漏れを防ぐためシールドされており内部の流動層の状態が観察できない。このため,分散 坂下部における圧力損失を測定することにより流動化状態の確認を行っている。流動層は 56 ①FIuidized bed(Quartz glass) ②High-frequency magnetic coil ③Pressure transducer ④Amplifier ⑤Recoder ⑥Flowmeter ⑦N2gaS Cylinder ⑧Recovery bottlle Generator high of frequency POW8r ー一(.亨‥( Fig.4・1SchematicdiagramofexperimentalapparatuS 石英ガラス製で,ガス分散板より上部の流動層有効部の高さは150mm,内径は90mmであ り,その上部に粒子の飛び出しを防ぐために内径120mmのエキスバンド部が設けてある0 また,分散板は厚さ5mmの石英ガラス製多孔質焼結板で,30度のテーパ角度がつけてあ りコーティングされた粒子を回収するために中心には10m皿の孔が設けてある。 実験方法は以下のとおりである。まず,流動層内に非導電性粒子を窒素ガスにて流動化 させたときの層高が所定の備になるように充填し,所定のガス流速で流動化させる。その 後,加熱用コイルに高周波を印加し,層上部から導電性粒子として金属粒子を連続的に供 給する。金属粒子は,加熱部を通り非導電粒子でコーティングされながら流動層内を落下 していき,コイル部分からはずれるとまわりの粒子群や流動化ガスにより冷却されてコー ティングが均一化され分散板まで達する。ここの部分で,コーティングされた粒子はプラ スチック粉との密度や大きさの違いを利用して分離回収される。 複合粒子の表面形状および研磨によるコーティング粒子断面の状態はSEM写真および顕 微鏡写真にて確認し,複合粒子の肉厚は顕微鏡にて粒径を測定することによって求めた。 実験条件は以下のとおりである。ガス流速は0∼25cm/sとし,分散板中央の粒子回収部 では30。m/sのガス流速とした。高周波の印加出力は0∼12.5kWとした。また,この実験に 用いた導電性粒子である金属粒子,非導電のプラスチック粒子,溶融アルミナの諸特性を, 57 それぞれ恥bles4.1,4.2に示す。Seedとなる金属粒子については,幾何標準偏差が1.1∼1.2 程度であり,複合粒子の粒径のばらつきを検討するうえで,この原料粒子の粒度は十分に シャープな分布をしていることがわかる。 Thble4.1PropertiesofCuandFeparticle Pa血cle `ち50[けm】 ㍍【K] 句ト】 Cu300 267 1.16 1,356 Cu500 515 1.20 1,356 FelOOO lO19 1.20 1800 Thble4.2 Powder Propertiesofnon-COnductivepowder oiト] `ち5。【pm] umf[cm/s] ut[cm/s]p[kg/m3] TL[K] PVC lO3 1.21 0.48 44 1,383 464 Polyethyleme 171 1.26 0.97 89 1,019 394 Epoxy-reSin 54 1・27 0・17 15 1,767 369 Fnsedalumina 48 0.30 28 3,970 2,500 00 (岩-巴コl巴監∈だ 00 70 0 60 0 500 0 1 2 3 Power 4 5 6 7 Q(kW) Fig.4.2TヒmperatureofFe1000surfaceinvarious POWder(heatingtimes=5s) 58 8 4.3実験結果および考察 電磁場内での金属粒子の加熱の程度をみるために一定温度以上になると変色を起こす塗 料を用いて電磁場内における温度の測定を行った。加熱時間を5秒とした場合の結果を Fig.ヰ.2に示す。電磁場による加熱のみの場合,低出力でも瞬時にプラスチックの融点以上 になることが確認された。用いた示温塗料の温度測定範囲が1000℃以下であるため,金属 粒子の融点までは確認されていないが,高出力または長時間加熱すれば十分昇温できると 考えられる。 4.3.1溶融アルミナによるコーティング 銅粒子をアルミナ粒子でコーティングした複合粒子の表面写真をpig.4.3に示す。この写 真より,S恍d粒子の表面にアルミナ粒子によるほぼ一層のコーティングがされていること がわかるG また,出力,ガス流速を操作しても複合粒子への影響はみられなかった。これ は非導電性粒子の融点が金属粒子の融点より高い場合には,S¢edの金属粒子は溶融するが, その温度では非導電性粒子は溶融しないため原形を保ち,溶けたSeed粒子に付着するため である。 Fig.4.4 Fig.4.3SEM Photograph Pl10tOgrapllOf copper polye也yleneco皿pOSltep訂Iicle ofcopper 500-al血coJnpOSiteparticle 59 500- 4.3.2プラスチックによるコーティング 非導電性粒子の融点が金属粒子の融点より低い場合には,加熱された金属粒子からの熱 伝導により溶融・付着し金属粒子をコーティングする。銅粒子をポリエチレン粒子でコー ティングした複合粒子の表面写真をFig.4.4に,また,その複合粒子断面の模式図をFig.4.5 に示す。これより,原料ポリエチレンの粒径オーダーの凹凸はみられるが,ほぼ球形の複 合粒子が製造できた。金属-ポリエチレン,金属-ポリ塩化ビニール複合粒子についても同様 の状態が確認できた。 Fullymelted Adhered particle su血ce ofmeltinglayer on Plastic ヽ、ヽh㌦ hte血ce: Intimate contact for stickin Fig.4.5Schematicviewofcross-SeCtionofcompositeparticle 4.3.3コーティング可能条件の検討 プラスチックコーティングのプロセスでは操作条件により膜厚が変化すると考えられる ため,ガス流速〟と高周波印加出力9を変化させて,コーティング可能な操作条件の範囲 を検討した。銅一ポリエチレン複合粒子についての結果を刑g.4.`に示す。図中の○印は良好 にコーティングされた場合の条件,△印は溶融・付着はするものの金属粒子の全表面が覆 われていない場合の条件,×印はコーティングされなかった場合の条件を示す。この図に おいて,コーティング可能な実験条件の領域は,△印を結んでできる図中の直線よりも左 上の領域であるといえる。 同様に銅粒子とポリ塩化ビニール,エポキシ樹脂の各粒子についてもコーティング可能 な操作条件の領域を求めた。その結果をFig.4.7に示す。この図とTable4.2の各々のプラス チックの融点㍍を比較すると,プラスチックの融点が高いほどコーティング可能条件の線 は上方に位置することがわかる。 60 6 5 4 [≡]O」茎Od 3 2 0 5 10 Gas 15 velocity 20 25 30 u[cm/s] Fig.4.6Suitabnityofvariousconditions(POWerOutPutand gas coating(Cu500十pOlyethylene velocity)fbr COmPOSiteparticle) 6 5 [三三0 」む喜d 0 5 Gas 10 15 velocity 20 u[cm/s] Fig.4.7Coatlnglimitsforvariousplasticpowders (Cu500isusedasconductiveparticles) 61 25 30 4.3.4コーティング肉厚に及ぼす操作条件の影響 つぎに,流速〟を固定したうえで,印加出力eを変化させたときのコーティング粒子の 肉厚への影響について測定した。結果の一例を銅一エポキシ樹脂複合粒子の場合について Fig.4.$に示す。印加出力の増大とともに肉厚が大きくなることがわかる。このことより出 力が増すほど銅が高温になりプラスチックが溶融しコーティングしやすくなることがわか る。また,この条件の範囲内では流速の増加により流動化状態がよくなると複合粒子の粒 径の分布がシャープになることもわかる。 (∈ヱ。:む艮ぞl勺8-OSS2室戸 .一.■- 00 0 0 05 10 Power 15 Q(kW) Fig・4・8T山cknessofepoxy-reSincoatlnglayeroncopper500coreparticle 4.4コーティング粒子の成形 成形の手順は,成形用の型枠およびコーティング粒子をそれぞれ恒温槽で予熱し,型枠に コーティング粒子を充填した後,再度,一定時間加熱・加圧し,冷却後型枠から取り出し た。成形時の温度条件は,プラスチックの融点より若干低い温度に設定した。このように して得られた複合材料の写真をfig.4.9に示す。写真の左側が成形した材料で,右側は成形 体を長さ40mm,幅10mm,高さ10mmの試験片に調整したものである。調整は,JISK7171 (プラスチック一曲げ特性の試験方法),JISK.7208(プラスチックの圧縮試験方法)により 行った。成形体密度と,鉄粒子-エポキシ樹脂の複合粒子を作製する場合の印加出力の関係 62 をpig.4.10に示す。この図から成形体密度は複合粒子を得る際の印加出力を調整することに より制御できることがわかる。 Fig.4.9 Pbotogmph of gr∝n bodyInade 蝕)m COm匹SiteparLICle(1eit),andtestpeace(right) 10 Power()匹W】 Fig.4.10Densityofcompositematerialsmolded丘omvanouscompositepartlCle 63 】5 つぎに,成形体の強度について,成形温度を変えて曲げ強度を測定した例をFig.4.11に示 す。この図は,鉄-エポキシ樹脂,および鉄一ポリエチレンの場合を一例として示したもの であるが,ポリエチレンの場合380K以上から強度が飛躍的に増しており,400K付近の融 点温度直前で成形を行うことがもっとも有効であることがわかる。一方,エポキシ樹脂の 貫望㌢魚雷卓品貞召還 1d) ヨ7【〉 】耳0 390 ヰ(カ Mo旭ngtemp血re【K】 Fig.4.11BendingstretlgthofFelOOO-plasdcscompositemaIerials Fig.4.12PhotoBraphofcross-SeCbonofFe-epOXyCOmpOSiteparhcle 場合には,融点付近で成形温度を変化させても大きな変化は見られず,充分な強度も得ら れなかった。コーティング粒子の破断面を顕微鏡写真で見たところFig.4.12に示しように鉄 粒子のまわりに空気層ができていることが観察された。これはエポキシ樹脂が熱硬化性で 64 抑 抑 【dhヨ】 芸名SQA芯笥Jd∈OU 甜 朝 0.1 0ユ 0.3 0.4 Str血ト] Fig.4.13Distortion curVeOfthecompressionstressof Fe-PEcompositeandcommerCialPE あることに起因していると思われ,このような樹脂については別に検討する必要がある。 また,圧縮強度の一例として,鉄-ポリエチレンの結果をFig.4.13に示す。本プロセスで 得られた複合材料と,市販されているポリエチレン単体材料について応力歪み曲線を測定 した。応力が小さい段階では複合材料のほうが大きく歪んでいるが,応力が大きくなった 場合,市販材料では40Mpa程度で塑性変形し破断に至るが,複合材料の場合きわめて大き な荷重に対しても,わずかな歪みを示すのみで容易に破壊には至らなかった。 4.5結言 1)流動層と電磁誘導加熱装置とを組み合わせることにより,流動層中を落下する金属粒子 のみを選択的に加熱し,金属粒子表面に非導電性微粉体をコーティングする新しいプロセ スを開発した。 2)コーティング様式には金属粒子の温度と流動化微粉体の種類により 2種類の様式がある ことを示した。 3)プラスチックによるコーティングにおいては,ガス流速および印加出力を変化させるこ とによってコーティングの肉厚を制御できることが明らかになった。 4)プラスチックコーティングされた粒子を成形することにより,金属粒子を均一に分散さ せたプラスチック複合材料を作製することが可能であることを明らかにした。 65 Nomenclature Llll」 4,50 =50%particlediameter f =frequellC〉l [Hz】 Q =heatlngPOWer 【W] Th =meltingpolnt [K】 〟 =gaSVeloci呼 [m/s】 und =minimumfluidizationvelocity 【m/s] ut 司erminalvelocity 【m/s】 P =densityofparticle Oi =geOmetricstandarddeviation 匹〆m3】 ト] LiteratureCited Yokoyama,T・,R・YamazakiandS・Mori;"PowderCoatlngOntheSurfaceofMetal-ParticlesUsing Electro-MagneticField,"P7VCeedingsqfthe5thAsianCoゆ7mCeOnFluidizedBedaldthfYePhase 月紺CJわ〃∫,25-30(1996) 66 第5章 噴流層を用いた 微粉体のバインダレス造粒法 第5章 噴流層を用いた微粉体のバインダレス造粒法 5.1緒言 一般に微粉体は付着・凝集性が著しく大きいため流動層による流動化は困難とされてき たが,最近の研究では流動層に振動を付加させたり1,2),高いガス流速で操作する3,4)な どによって良好な流動化状態を得られることが報告されており,流動化の妨げとされてき た微粉体の付着・凝集性は造粒操作においては積極的に利用できる特性であるといえる。 一方,粉末冶金やセラミックスの製造プロセスなどにおいて,原料粉体の混合,造粒,成 形,焼結,仕上げ加工などの各工程の中で生じた欠陥要素は以後の工程によって緩和され ることはほとんどなく,むしろ拡大,強調されて品質の低下につながることがよく知られ ている。これらの工程のうち,流動性,成形性を向上させるための造粒工程では噴霧乾燥 造粒などの各種湿式造粒法が多く用いられているが,このようなバインダ(結合材)を用 いる方法によって得られる顆粒は,多くの場合機械的強度が過大であるため目的とする成 形性,焼結性の低下を招くことがあり,製品の品質や性能向上の阻害要因となることが多 い5)。このためバインダを使用しない乾式造粒法6)の確立が望まれるところであるが,こ れに関する研究はきわめて少ない。 本研究では,微粉体に分類される粉体のうち,数岬n∼サブ叫n程度の比較的粒子径の小 さい微粉体をターゲットとしてこの粉体の高機能化を目的とするものである。充分な保形 性を有し,かつ小さな成形圧力でも容易に破壊できる程度の強度を持つ顆粒を得るために, テーパ付流動層を用い比較的高いガス流速で噴流層を形成させることによって,バインダ を用いずに微粉体の持つ付着力のみによる造粒を試みた。また本法による造粒可能条件を, 流速,操作時間,テーパ部の角度などを変化させることによって検討した。 5.2実験装置および実験方法 5.2.1実験装置の概要 実験装置の概略をFig.5.1に示す。流動化ガスには原料粉体が湿度の影響を受けないよう に窒素ガスを用い,フローメータにより流量を調節した後,層本体に導入した。流動層本 体はテーパ部分と円筒部分で構成され,テーパ部分は真銀製で試料粉体の交換を容易にす るために簡単に脱着することができ,そのテーパ角度は15度,20度,25度の3種類に取 り変えられるようになっている。円筒部分は流動化状態が観察できるように透明アクリル で製作し,その最上部には集塵装置を設置し,微粉の飛散を防ぐために流動層内のガスの 68 流れに影響を及ぼさない程度の速度で吸引している。 分散板には325メッシュのステンレス製の金網を用い,層圧力損失は分散板下部のタッ プから拡散型半導体小型差圧センサー(豊田工機製),および直流増幅機を用いて測定する とともに,記録計を流動化状態のモニターとして使用している。 また,原料粉体の物性値として,流動性,付着特性の一つの指標とされているスパチュ ラ角と安息角をパウダーテスター(ホソカワミクロン㈱製)を用いて相対湿度20%以下に 調湿された雰囲気下において測定した。 Fig.5.1Schematicdiagramoftheexperimentalapparatus Thble5.1Experimentalconditions FlⅦidizedgas Nitrogengas Gasvelocitiesatin1et[m/s] l.Oto5,0 Operationtime[min] 1to180 Angleoftapers[deg] 15,20,25 Mediandiameteroffeedpowdershm] 0.3,0.45,0.6,1,4,14,32 Amountoffbedpowders【g] 10 69 5.2.2実験方法 実験条件を恥ble5.1に示した。使用した原料粉体は市販の熔融アルミナで,メディアン 径βp50は0.3,0.45,0.6,1,4,14および32トmの7種類で,それぞれの粒子密度は 3960kg/m3,原料充填量W;はすべて10gとした。また操作時間は1∼180min,入口ガス流 速は1.0∼5.Om/sの範囲で変化させた。 実験の手順は,精秤された原料約10gをテーパ部分に充填し,それを流動層本体に取り 付けて計測機器等の初期調整を行った後,ボンベからの窒素ガスをフローメータで所定の 流量に調整し層内に導入した。なお,流動化しにくい試料については所定の流速より若干 高い流速でガスを導入し,流動化していることが確認された後に元の流速に戻すという方 法を用いた。所定時間操作した後テーパ部を流動層本体から取り外し,傾けることによっ て流出する顆粒のみを製品として回収した。 5.2.3粒度分布測定方法 顆粒は,層内に付着したものやダストコレクタで捕集されたものを除いて全量を取り出 し,回収量取を計測するとともに次の2種類の方法によって粒度分布を求めた。 a)回収した顆粒の全量をふるい分け法JIS(ZS815-1994)によって求める方法。 b)四分法によって縮分した顆粒をプレパラート上に分散させ,実体顕微鏡による拡大画像を ビデオカメラを通してパソコン画面に映し出し,マウス操作によって定方向径(Feret径) を求める方法。 なおこの方法の場合,1サンプルについて2∼3枚のプレパラートを作成し,それぞれに ついて数カ所の異なったステージから合計約1000個の粒子を計測した。 5.3実験結果及び考察 5.3.1粒度分布測定方法の検討 得られた額粒の粒度分布測定の結果の一例をFig.5.2に示す。本図より,ふるい分け法で 同じサンプルを3回線り返し測定した場合の粒度分布はほとんど変化していないことがわ かる。これは,ふるい分け操作によって造粒が進行,もしくは顆粒が解砕されていないこ とを意味し,少なくともこの程度の強度を有する顆粒が得られたことを示している。また この顆粒は,ほとんど力を加えない指圧で容易につぶれる程度の強度であった。 一方,画像法は粒度のきざみ区間を細かくとることでなめらかな積算分布曲線を得るこ 70 とができるとともに,粒度測定の操作によって顆粒に変化を与える心配はまったくないが, 測定に長時間を要するという欠点がある。また,図から明らかなように画像法による質量 基準の分布とふるい分け法によるものとを比較するとかなり良い一敦が見られたため,粒 度分布測定はすべてふるい分け法によることとした。 5.3.2顆粒の評価方法 得られた顆粒の粒度分布の一例を対数正規確率紙にプロットすると,Fig.5.3に示すよう に,ほぼ直線になり対数正規分布に従うため,最小自乗法により得られた直線から顆粒の メディアン径Dg50および幾何標準偏差0;を求めた。Fig.5.4に原料粉体のメディアン径D。50 に対するβg50の関係を示す。全体の傾向としてβ。50が大きくなればβg50もわずかに大きく [芭uO一弓qてlS叫PのN頂法号u⊃ 50 0 050 100 150 200 250 300 Dg[〟m] Fig.5.2Comparisonofgranulesizedistributionbysievlngwiththatbyimagea皿alysis qV 9 9 g ・QV qV q- ・ F11訳畑a山minaO.31爪 ′ Ant00†ねr200 【ボ】 90 uO;コq≡の苛ON芯】㊥Pu⊃ 6・0 Gasve10坤= ■一■ ●lm/S /′ ..∠′■ ▲3m鹿 ■5mね 一F J■r / 印 ー 1 JOl畑 100 D甘【Hm】 Fig.5.3Log-nOrmalplotofsizedistributionofgranulebysleVlng 71 1000 なっており,原料粒度に若干依存することを示しているが,ガス流速によっても多少のち がいはあるものの本実験条件の範囲では,ほぼ百数10ト皿の額粒の作成が可能であることが 明らかとなった。 [∈l] む一コu巴餌-O」β茎空P u空PO≡ 0 0.5 Prinary particle size[FLm] Fig・5・4Relationshipbetweenmediandiameterofgranuleandthatofftedpowder 5.3.3操作時間の影響 下ig.5.5にβ由。の時間変化を示した。実験開始後数分ですでに造粒物が確認されているが, 顕微鏡による観察では崩れた造粒物がいくつか見られ,充分な強度を有しているとはいえ ない。しかし時間と共に徐々に強度を増し10分程度でFig.5.`に示すようにきれいな顆粒が 生成していることが認められた。またβg5。は増大減少を繰り返しながらわずかであるが増 大していく傾向があることも認められた。 0 50 100 0peration Fig・5・5 150 time[min] ChangeinmediandiameterOfgramlewithoperationtime 72 200 Fig.5.6SEMp血oto訂aphばp∫0血ced許aImlea丘eTlOⅢhⅡ短SOperation 【E〕こ 150 100 sむ一コu巴如-O LO}聖書P u空Pり≡ 50 150 100 50 50 00 50 0 2 Gas 4 6 vetocity[m/s] Fig.5.7E鉄血Ofg誠Velodtyonmedla皿血eterofgmn山e 5,3.4ガス流速およぴテーパ角度の影響 ガス流速を変えることによって流動化状態が変化し,造粒作用,解砕作用も当然変化す るはずである。したがってかが0にも何らかの影響を及ぼすものと思われるが,Fig.S.7に示 したようにガス流速がβ由8に与える影響はほとんどなく,いずれの流速においても同程度 の大きさの顆粒が生成しているかのように判断される。 73 一方,Fig.5.きに示した幾何標準偏差巧の変化をみると高ガス流速で巧が低い値を示して いる。また次式によって定義される顆粒回収率月gも吊g.5.9に示すように高ガス流速側では 大幅に減少している。 彗= 弔×100 (5.1) 〓ub喜焉叫>名p岳p焉lSO葛り己00ロ 1.3 2 4 Gasvelocity[m/s】 Eig.5.8EfftctofvelocityongeOmetricstandarddeviation 0 2 Gas 4 6 ve]ocity[m/s] Fig.5.9Rela血nshipbetweenrecovery血ctionofgranuleandgasvelocity 74 またFig・3の例にも見られるように,ガス流速が大きくなるにしたがって,βが0に大きな 変化はないが粒度分布は狭くなっていることが分かる。さらに,層内壁への粒子の付着量 はいずれの場合にも約2gでほぼ一定であった。これらのことより,ガス流速を大きくする ことによって同時に解砕作用もより強く働き,その際生成する未造粒の粒子および微小造 粒粒子が気流に同伴されて系外へ流出するため,層内で一種の分扱が行われているものと 考えられる。ゆえにFig.7のβg50に顕著な変化がみられないのは,分級による粒径の増大と 解砕作用による粒径の減少の相乗効果によるものであると推察される。また,テーパ角度 を変化させた場合のβが0も,Fig.5.10に示すようにガス流速によってやや異なった傾向を示 すが,大きな変化は見られなかった。 20 Taper angle[deg] +1〟m -■トー 0.6〟m + 0.45〟m + 0.3〟m Fig.5.10E飴ctofangleoftaperondiameterofgramle 75 5.3.5造粒可能条件 lトLm(Lot.A)の粒子の流動化状態についての目視観察の結果,lm/s,3m/s,5m/sのいずれ のガス流速でもテーパ角度が25度の場合には,粒子のテーパ部内壁への付着が激しくすぐ にチャネリング状態になり造粒が不可能であった。 これまでの実験結果を操作条件別に整理すると「hble5.2のようになる。○印は顆粒が生 成した時の条件,△印は実験開始時に所定の流速より高い流速で操作し,流動化が始まっ た時点で元の流速に戻して実験を続けることによって顆粒が得られた時の条件,×印はど のように操作をしても顆粒を得ることができなかった条件である。これらの結果を説明す るために,原料粉体の流動性および付着性の指標とされている安息角とスパチュラ角の測 定を行い,その結果を1払ble5.3に示した。安息角については有意差を見いだすことはでき なかった。 Thble5.2 Experimentalconditionsforform1nggramle (Gasvelocity:l.Om/sto5.Orn/s) Angleoftapers Tbble5.3 O3l皿. 0.45岬1 0.6lm l叩1 0 0 0 0 △ × Propertiesoffヒedpowders(Fusedalumina) 0・3叩n O・45岬・ 0・61m l岬1 Angleofrepose亀[deg.] 41∼43 43∼45 41∼46 42∼44 Anglewithoutshockq[deg] 61∼62 57∼58 59∼60 66∼68 Anglewithshock亀【deg] 56∼57 54∼55 53∼54 59∼60 59 56 56.5 63.3 Spatulaangle亀【deg] 一方,スパチュラ角βsは衝撃を加える前の角度βlとその後の角度β2の平均値で定義され るが,1ドmの試料についてはβ1の平均値が670となっており,この角度はFig・5・11に示す ように顆粒を得ることができなかった時のテーパ部の仰角亀(650)を上回っている。このこ 76 とは未造粒の原料粉体がテーパ部内壁に充分付着しうるということを示しており,テーパ 付き流動層の形態上,ガス流がテーパ部内壁に付着した粉体層に及ばないため,目視観察 によっても確認しているがこれらは剥離することはなく,さらに付着が進みチャネリング を形成していくことになるものと考えられる。したがって,噴流層のテーパ部の設計にはβl についても考慮することが必要であろう。 また,本実験条件のすべての範囲において,32トm,14トmの試料については流動化はす るものの顆粒は全く確認することができなかった。これは本方法がバインダを使用せず粒 子の付着力のみで造粒を行うため,粒子重量に対して付着力が充分大きくなければ造粒が 不可能であることを示している。さらに4トLmの試料については実験開始直後すぐにチャネ リング状態になり顆粒は確認することができなかった。 さらに,1トImの場合,同じ公称径でロットの異なる2種類の試料について同様に実験を 行った結果,Lot.Aでは前述のようにある一定の条件があれば造粒を確認することができた が,Lot.Bは本実験条件のすべての範囲にわたってテーパ部内壁への付着が激しく4トmの 試料と同様にチャネリングを形成し顆粒を取り出すことができなかった。ここで,Lot.Aお よびLot.Bの粒度分布を測定した結果,Fig.5.12に示すように粒度分布にわずかな違いがみ られた。両者は同じ製法によるものであり相違する点は粒度分布のみであるといえる。し たがって,今回試料として用いた溶融アルミナの場合この粒径付近が本法による造粒可能 限界の粒子径になるものと考えられる。 WhenAngleoftaper=250 βE=650 01>OE:Granulationisimpossible. Supaturaangle =(∂1+82)/2 Fig.5.11Graphicalrepresentationoftheconditionunderwhichgranulationisimpossible 77 邑 uO弓q芸の6¢N領」むPu⊃ 0 0 0 1 2 3 4 5 Dp[〟m] Fig.5.12ComparisonofsizedistributionfbrLOt.AandLot.B 5.4結言 1)付着力支配の微粉体は,噴流層を用いることによってバインダを使用しなくても造粒が 可能であり,その強度は,少なくともふるい分け操作によって解砕されることはなく, 微小な指圧程度で簡単につぶすことができる程度である。 2)操作時間とともに顆粒のメディアン径が若干増大し,入口ガス流速を増すことによって 幾何標準偏差が′j、さくなることを明らかにした。 3)テーパ部分の角度はスパチュラ角の振動を与える前の角度と密接な関係があり,この角 度の適切な選択によって良好な流動化状態が得られることを確かめた。 78 Nomenclatwe Dp =diameteroffeedpowder 【1n】 Dp50 =mediandiameteroffeedpowder 【1n] 町 =amOuntOffeedpowder 【g] 取 可eCOVeⅣamOuntOf餅肌nle 【g] Rg =reCOVeryfractionofgranule 【%】 Dg =diameterofgranule 【1Ⅵ】 Dg50 =mediandiameterofgranule 【m】 亀 =Spa山1a皿gle [deg] q =anglewithoutshock 【deg】 色 =弧glewitbs血ock 【deg】 亀 =elevationangleoftaper [deg] 79 LiteratureCited 1)Mori.S.,T.Haruta,A.Ybmamoto,I.Yamada,E.Mizutani;"Ⅵbro-FluidizationofFineParticles," &曙αね助g血Ro〃ろ〟乃∫ゐ〟,遵,992-997(1989) 2)MⅢTi喝,E.,A.C.Hoぼ血anand LPB.M.JanSSen;"The E丘bct ofVibration Fluidization onthe BehaviorofSomeCohesivePowders,"Powdbr花chnology,Z9,l-10(1994) YKato;"Fluidization 3)Morooka.S.,K.Kusakabe,A.Kobataand State ofUltra丘ne Powders," ノ0〝mα上げCゐe椚CαJ励g加eerf乃gJ甲∽,塑,41-46(1988) 4)Chaouki.J.,C.Chavarie,D.KIvana GP毎onk;"E丘もct and ofInterparticle Force on the HydrodynamicBehaviorofFluidizedAerogels,"powdbr乃chnolbgy,42,117-125(1985) 5)Kamiya,H.,K.Isomura,GJimbo,FHottaandJ.Tbubaki;"InnuenceofPowderPropertiesand GreenMicrostruCtureOntheSinte血gBehaviorofSi3N4,"JburnalQ[the(方ramicSbcie少J卸an, 裏辻,148-155(1993) 6)Nishii,K.,YItoh,N.KawakamiandM.Hori0;"PressureSwingGranulation,aNovelBinderless Granulationby CyclicFluidizationand Gas Flow (1993) 80 Compaction,"pow滋r花chnoh)gy,型,1-6 第6章 バインダレス造粒における 造粒過程の観察と顆粒の強度 第6章 バインダレス造粒における造粒過程の観察と顆粒の強度 6,1緒言 微粉体の操作を容易にするために一般に造粒操作が行われることが多い。特に次工程以 降において圧密・成形等が加えられる場合には,充填性,流動性を向上させるためにも欠 かすことのできない操作である。こうした目的で造粒する場合,従来のバインダを用いた 造粒法では,バインダ自身が不純物となりうること,あるいは,後工程におけるバインダ の除去や乾燥工程が必要になるといった問題がある。一方,バインダレス造粒法はバイン ダを用いず原料粉体自身の付着力のみを利用する造粒方法であるため,このような問題を 回避することができる。さらに,この方法はバインダを用いた造粒法に比べて顆粒の機械 的強度が小さいため,圧密・成型時に容易に潰せるような軟らかい顆粒が得られるという 利点も有する。 この原理による造粒法としては,既に圧力スイング法による造粒装置1)が開発され市販 されているが,本法のように噴流層を用いたバインダレス造粒は,装置の基本構成が非常 に単純であるため,操作的にも装置のコスト面でも有利であると考えられる。本法による 造粒では,ある一定の範囲においては操作条件および装置形状などによらず,粒子径がほ ぼ一定の顆粒が得られることを第5章で述べた。 本研究では,造粒時の流動化の状態を透明な二次元装置により観察した結果,および実 験により得られた頼粒の回収率を粒度区間毎に求めた結果を考慮して本装置内における現 象を説明した。また,本造粒法の目的の一つである適度な強度を有する軟らかい顆粒を作 成するという視点からの検討を加えるため,単一顆粒の圧壊強度および頼粒充填層の圧密 試験による強度を明らかにした。さらに,これらの相互関係についても考察した。 6.2実験方法 6.2.1試料 実験に用いた試料は市販の溶融アルミナで,公称粒子径が0.3,0.6,1.0四nの3種類を用 いた。このうち0.3ト皿の試料は常に数10岬1の弱い凝集体を形成しているのが特徴である。 また,粒子密度はいずれも3900kg/m3で,Geldaれの線図3)においてC粒子に区分される もので,通常の操作では流動化は非常に難しいとされているが,本研究においては,運転 開始時の流動化ガスの入口流速を5∼6m/sあるいはそれ以上の高流速で操作することによ って流動化させている。 82 6.2.2二次元流動層 第5章で用いた円筒型の装置はテーパ部分が金属製であるため,造粒が進行していると 思われるこの部分における流動化の様子が目視観察できないことから,透明アクリル板を 用いた二次元装置を作製した。実験装置の全体の構成は第5章に詳しいため省略するが, 本体部分の概略は,Fig.`.1に示すように奥行き10mm,高さ1500mm,頂角30度で,流動 化ガスの送入部は一辺10mmの正方形であり,325メッシュのステンレス網を分散板とし て用いている。流動化ガスは水分の影響を避けるため窒素ガスを用いた。また,得られた 顆粒の粒度分布はJIS(ZS815-1994)に規定されている手動ふるい分け法により測定した。 6.2.3単一顆粒の圧壊試験 造粒試験により得られた顆粒の圧壊強度は,粒子硬度測定装置グラノ(岡田精工㈱製) を用いて測定した。装置の概略図をFig.6.2に示す。圧壊用先端チップの下降速度は5Hm/min l l 」 l l 一 l 」 : ;! ! ; ▲ l : - : l : ; 至 ; : l l l l : l : : ぎ:モ∴J lll /J】 :、、:\季 :、∴ lJ: l l l\ :\、、IJ′ ′÷ノ: ロ ノJ l ▼■■ : 田 :\さ、i′1′; 匝 妻、1モモJ:∼∼ンノ 院□ 司 一 500 Fig.6.1SchematicdiagramofthetranSParent2-dimensionalspoutedbedgranulator S3 で,圧壊に要する荷重と圧壊に至るまでの変位をパソコンの画面上にグラフ表示できるよ うになっている。造粒試験で得られた顆粒をサンプリングし,装置のステージ上に散布し 付属の顕微鏡をのぞきながら一個ずつ顆粒径と圧壊強度を測定した。 6.2.4顆粒充填層の圧密試験 顆粒充填層の圧密試験は,小型引張圧縮試験装置(㈱今田製作所製)を,Fig.`.3に示す ように低圧密荷重においても計測できるよう若干の改造を加えて使用した。顆粒層圧密用 シリンダは,内径19mm,深さ30mm,プランジャ径は18mmである。実験は,精秤した 約2gの顆粒をシリンダに静かに充填し,圧縮試験装置にセットした後5Ⅱ皿/minの速度で プランジャを降下させ圧密を行った。このときの圧密荷重と変位をレコーダに記録した。 Fig・6.2Schematicview apparatus COmPreSSive Fig.6.3Schematicviewofexperimental ofexperimental for measureme血 strength of apparatus Of a for measurement COmPaCtionofgranularbed single gramie 84 of 6.2.5顆粒充填層の圧密と単一顆粒の圧壊強度との関係 粉体層の引張り強さに関する理論式としてよく知られているRumpf式4)は次式によって Jz=チ環 (6・1) この式は粉体層の引張り破断強度試験の結果から一個粒子の付着力らキ換算する際に用い られることはよく知られているが,これにより得られた付着力と実験によって直接測定し た一個粒子の付着力を比較すると,多くの場合,オーダーが変わるほど大きな差が生じる と報告5)されている。一方,この式は応力と力の関係を示す一般式として拡張して適用す ることができるとも報告6)されていることから,琴粒充填層の圧密試験の結果から単一顆 粒に加わる荷重を求める式として適用を試みることにする。これについては,スプレード ライ法により得られたアルミナの額粒を用いた同様の研究7)がすでに行われているが,こ こで用いられている顆粒はいわゆる脆性的な硬い顆粒である。これに対し,本研究では顆 粒の強度が小さく軟らかい顆粒への適用を検討するものである。 Eq.(6.1)において,一個粒子の付着力gを一個粒子に働くカグに,引張り強度qを圧密 応力クに置き換え,さらに,財g≒冗と仮定して書き換えると,Eq.(6.2)のようになる。 ク=丁訂 (6・2) この式を顆粒充填層の圧密試験に適用し顆粒一個にかかる荷重を求めることで,圧壊試 験による単一顆粒の強度を評価することができると考えられる。 ここで,β。の値は平均粒子径であるため,実験から得られる顆粒のメディアン径βg50を 補正する必要がある。 得られる顆粒の分布が対数正規分布であると仮定すると =e(1n吋2 (6.3) 実験により得られる顆粒のメディアン径βg50と幾何標準偏差句を代入すると平均粒子径 βgが求まり,この値をEq・(6・2)のβ。として用いることとする。 $5 6.3実験結果および考察 6.3.1二次元流動層による流動化の目視観察と造粒試験 透明二次元流動層を用いて造粒試験を行っているときの流動化の様子をFig.`.4に示す。 この写真より,層下部には生成した顆粒が流動化しており,その上方には層下部からの噴 流によりはげしく吹き上げられた原料粉体が,上昇流にもまれながらテーパ部の内壁に沿 って下降していることが認められる。 このときの操作条件としては入口ガス流速を1m/s以上に設定している。この流速は,装 置上部の出口付近における空塔速度に換算すると1cm/s程度となり,0.3l皿の原料粉体が 一次粒子まで分散していればその終末速度よりはるかに大きい。原料粉体が中心部分の噴 流によって層下部からはげしく吹き上げられるとき,原料中に存在している弱い凝集体の 一部は一次粒子にまで解砕されて,装置上部から気流に搬送され系外へ飛散する。 一方,解砕されないで凝集状態を保ったまま吹き上がった凝集体はテーパ部上部で失速 しテーパ壁面に沿って下降することが写真から確認できる。その際,テーパ壁面に衝突し た凝集体は周囲に存在する未造粒の粒子を付着しつつ圧密されながら下降することにより 造粒が進行していると認められる。 Fig・6.4SllaPShot ofthe 2-dlme鮎ion山印Outedbcd powder皿0也onin $6 the transparent 本装置により得られた顆粒の粒度分布と,第7章で用いた円筒型流動層により同一操作 条件下で得られた顆粒の粒度分布の比較をFig.`.5に示す。βg5。で比較すると二次元流動層 の場合は円筒型流動層に比べて約20%程度小さいという結果が得られたが,傾きはほとん ど同じであることから円筒型の造粒試験装置の結果とほぼ同様に扱ってよいものとできる。 本装置により得られた各種流速下における顆粒の回収率(月g=畷×100/町)を粒度区間毎の 分率で表すと,Fig.`.`に示すように,入り口ガス流速が増大するにつれて45匹m以下の未 造粒および微細な顆粒の成分が減少し,βg5。に相当する75∼106岬の区間の顆粒は若干増 加,106岬n以上の顆粒はほぼ同じかあるいは若干減少の傾向が見られる。 [芭 / 99 O // OOOnXUOO 8765432 / ノ■ / / 1 02-dlmenSlOnal O5 〇.uO芋⊃q苫S苛¢>芋巾ち∈⊃0 【J ●Cy=ndriGal l GranulesizeDg[JJm] Fig・6・5Comparisonofsizedistributionofgranuleproducedbythe2-dimensional spoutedbedgramiatorwiththatbythepreviouscylindricalspoutedbedgramiator PrimarypartiGlesize 90 O.3JJm ロー45〟m ■45-75〟m OperatingtimelOmin 巴75-108〟m 80 □106∼150JJm 但150∼212JJm 7 ∧U ■2121上m∼ ([芭ゝL軍8遥 6O 50 40 30 20 10 0 1.3m 3.9m 2.6m Gasvelocity[rn/s] Fig.6.6E鯉bctofthegasvelocityontherecoveredweight魚actionofeachrange 87 このことから,前項で指摘したガス流速の増大および換作時間の増大にともなって幾何 標準偏差が小さくなる原因は,Fig.`.7の概念図で示されるように,層下部において強度の 弱い大顆粒は解砕され,装置上部においては未造粒の粒子および微細な顆粒が系外へ飛散 するためであることを確認した。 >Ou些コb巴」 Diameterofgranu]e Fig.6.7Graphicalrepresentationofthebehaviorofgranulesizedistribution 6.3.2単一顆粒の圧壊試験 圧壊試験から得られた荷重一変位曲線のデータはFig.`.$(A,B,C)に示すような3種類の 特徴的なパターンに分類できる。ひとつは,Aのように明確なピークが現れるパターンで, 圧壊後の顆粒はFig.`.,(a)の模式図に示すように数個のかけらに砕けており脆性的な破壊を 示している。つぎに,Bはピークに達した後一定の圧縮力を保つようなパターンを示すもの で,顆粒はつぶれて平らになっていることから延性的につぶされているものと認められる。 さらに,Cのようにピークが現れることなく圧壊が終了するパターンも見られた。このとき の顆粒はBと同様に平らにつぶれていることが確認された。Fig.6.8の図中に▼で示されて いる点は,本装置がピークを検出して自動的に圧壊荷重として表示するものであり,Aおよ びBについてはピーク値を圧壊荷重としているが,Cについては最終の値を圧壊荷重とし ているため,非常に大きな値となっている。この装置によるピークは試料が圧壊した瞬間 にロードセルにかかる荷重が急激に減少することにより出るようになっているため,Aおよ 88 びBについては,この時点でいわゆる「砕けた」ということを示しており,この顆粒の圧 壊荷重であると判断できる。しかし,Cの場合,Fig.`.9(b)に示すように荷重の増大につれ て徐々に変形が大きくなり砕けることなく潰れていくような挙動を示すため,本装置が対 象としている顆粒の圧壊挙動とは明らかに異なる。したがって,Cのような特性を示す顆粒 強度の適切な評価方法の開発が今後の課題である。 [孟もLX①0」0-¢>漕巴d∈00 0 100 200 Displacement[JJm] [昌もLX①0」0-賢傭SSOJd∈00 5 0 1∝I 200 DispIacement[JJm] [昌も【×¢OLβの>堀禦巴d∈00 0 100 200 Disp(acement[JJm] Fig.6.8 Typical patternS Oftheload-displacement measuredcompressiveforceofaslnglegranule 89 curve Ofthe 憬豊媛 Brittleness-CruSh a)A,Bpattern 二±二重二=≧ Crushedwithoutbrittleness-CruSh b)Cpattern Fig.6.9GraphicalrepresentationofthecruShpatternA,BandC 以上のようにして得られた圧壊荷重と顆粒径との関係をFig.`.10に示す。実験に供した顆 粒は,原料粒子径0.3四nおよび1叫nを使用し,入り口ガス流速3m/sおよび1m/sの条件 で造粒したものである。本図において黒丸でプロットされた点はAおよびBのパターンを 示す顆粒の圧壊荷重,白三角でプロットされた点はCのパターンである。ここで,Aおよ びBのデータのみに着目した場合,図中に実線で示すように,単一顆粒の圧壊に要する荷 重は,ほぼ粒子径の二乗でよく整理できることが分かった。さらに,Fig.6.10-a,bとFig.6.10-C,d を比較すると,原料粉体が1岬.の場合より0.3トmの場合ほうが大きな圧壊荷重を示してい る。ここで,全測定粒子個数に対するCパターンを示す粒子の割合をみると,1払ble`.1に 示すように原料粒子径が0.3一皿のものに比べて1押nではそれぞれ58%,43%と明らかに 多くなっている。一般に同一物質の場合,粉体の付着性は微粉になるほど大きく作用する といわれていることからも,原料粉体の付着力が顆粒強度に影響を及ぼしているものと考 えられる。 Thble6・1Rati00fthegranulewhichshowsCpatterntOallmeasurementgramlenurhbers a)0.3トun,1m/s 24.2% b)0.3ト皿,3m/s C)1トLm,1m/s 37.0% 58.0% 90 d)1トLm,3m/s 43.4% (N)も;。一。∪巴叫意∪頂≡。賀。-ぎ漕巴d∈。0 1 0 0 100 Diameterofgranule 0 100 Diameterofgranu[e 200 300 Dg(LLm) 200 (N)もlX茎∪巴山鳥∪芯≡。。2。-聖湧邑∈。0 (Z)もlX茎u監怠∪芯二叩⊆。むP岩-聖漕巴d∈。0 (N)もー×。ちじ星叩怠∪一明≡。。。L。-ざ芯S鼠∈。0 2 300 Pg(LLm) ▲1 0 ∩) 100 Diameterofgranule 200 300 Dg(FLm) 5 4 3 2 ■- 0 ∩) 1(】0 DiameterofgranuLe 200 300 Pg(LLm) Fig.6.10RehtiorLShipbetweengramiesizeandcoI叩reSSiveforceonaslnglegranule,and COmParisonsoftheobservedcompressivefbrceandthecalculatedforcebyEq.(2) 6.3.3顆粒充填層の圧密試験 顆粒充填層の圧密試験の結果をFig.`.11に示す。圧密荷重に対する空隙率の変化は片対数 紙上において折線で表され,約100∼200kPa付近に折点が存在する。これは椿ら8)によっ ても説明されているように,圧密初期の荷重が小さい領域においては顆粒は変形には至ら T) り uO芋じ巾七Pち> 〇.7 〇.6 100 Compactingpressure(kPa) Fig.6.11Void丘actionofthegramlebedunderdi飴rentcompactlngPreSSure 91 ず顆粒間の空隙のみが減少していき,さらに荷重を増していくと折点のあたりで顆粒の変 形が始まりやがて崩壊に至るものと考えることができる。そして崩壊した顆粒が空隙を埋 めることによってさらに圧密が進行していくと考えられる。また,△印で示した顆粒につ いては,職ble6.1で示したようにこの実験で用いた顆粒の中ではCパターンの割合がもっ とも多い。このため,顆粒の変形と充填層全体の圧密がほぼ同時に進行していると思われ, 明確な折点を見出すことはできなかった。 つぎに,Eq.(6.2)を使用して単一顆粒に加わる荷重を求め,圧壊試験による単一顆粒の強 度と比較する。空隙率どの値はFig.6.11において顆粒が崩壊し始めると思われる折点にお ける値を用い,単一顆粒にかかる荷重Fを求めるとFig.6.10の図中に示す破線のような曲線 になる。図に示されるようにEq.(6.2)により求めた単一顆粒に加わる荷重Fは,いずれの試 料においても圧壊荷重の実測値よりわずかに小さい値を示している。これは,Fig.6.10から も明らかなように顆粒強度は広い分布を持っているため,強度の小さい顆粒から先に崩壊 が始まる時点で折点が現れ,結果としてEq.(6.2)における圧密荷重クの値が小さく見積も られていることによるものと考えられる。しかし,両者の間に若干の差があるものの,本 法による軟らかい顆粒においても,充填層の圧密試験から単一顆粒に加わる荷重を評価す るためにEq.(6.2)を採用することは有効な手段であるといえる。 6.4結言 二次元流動層を用いたバインダレス造粒において円筒型流動層の場合と同様な造粒結果 が得られた。その際の目視観察と粒度区間毎の回収率の結果から,造粒の進行につれて顆 粒径の分布が狭くなるのは,層下部における顆粒の解砕および装置上部における未造粒粒 子の系外への飛散が原因であることを明らかにした。 また,得られた顆粒は軟らかい顆粒であり,この充填層を圧密した場合,圧密荷重に対 する空隙率の変化が片対数紙上において折線となることを示した。さらに,この部分で個々 の顆粒が崩壊し始めるとすると,軟らかい顆粒においてもRnm〆式を援用することにより, 単一顆粒の圧壊強度と顆粒充填層の圧密特性との間には換算可能な相互関係が存在するこ とを明らかにした。 92 Nomenclature Dp =diameterofparticle 「ml】 Dg =diameterofgranule Lm】 =meandiameterofgranule 【m] Dg50 =mediandiameterofgranule [m】 拝も =amOuntOffeedpowder 【g】 W; =reCOl・eryamOulltOfgranule 【g] Rg =reCOVeryfractionofgranule [%】 F =COmPreSSiveforceofaslnglegranule [N] H =adhesiveforceofaslngleparticle 【N】 K =aCOnStant P =COnSOlidatingpressure Dg ト】 [Pa] 6 =VOidfraction ト] O; =geOmetricstandarddeviation ト】 q =tenSilestrengthofpowderbed [Pa] 93 LiteratureCited l)Nishii,K・,YItoh,N.KawakamiandM.Hori0;"PressureSwingGranulation,aNovelBinderless GranulationbyCyclicFluidizationandGasFlowCompaction,"Pow滋r花chnoh)gy,Z4,l-6(1993) 2)Hatan0,S・,R・YamazakiandS・Mori;"TheDryGranulationofaFinePowderUsingaSpouted Bed,"血〟r乃αJげ伽助cfeサ〆Pow滋r花c力榊わ紗J如の,塁,115-120(1996) 3)Geldart,D・;"サpesofGasFluidization,Pow鹿r花chnology,"Z,285-292(1973) 4)RumP印・;"Grundlagen und Methoden des Granulierens,"Cゐemierh2genieur一花chnik,迎, 144-158und329-336(1958) 5)Jimbo,G・;"ComparisonInvestigationofAdhesionForce Measuring MethodofPowderas SingleP訂dcle,".わ〟mαJ棚適,291-297(1967) 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づく付着力は種々の方法で測定できることが報告されている7,8)。また,粒子間の付着力に 及ぼす雰囲気湿度の影響については,比較的大きい粒子についての研究ではガラスビーズ を用いた荒川ら9)および近沢ら10)の研究があり,100一皿以下の微粉体については,大塚 ら11),鈴木ら12)ぉよび島田ら13)などの研究がある。また,山本ら14)はサブミクロン 粒子を用いて二分割セル法による付着力を測定している。これらの結果によると,相対湿 度がおよそ60%を超えると付着性が大きく増加することが指摘されている。 本研究では,バインダレス造粒に供される粉体試料の粒子間の付着力を加湿によって増 大させて造粒を試みた。これによって得られた顆粒の性状については,顆粒径分布,単一 顆粒の圧壊強度などに及ぼす湿度の影響として評価し,原料粉体の引張り破断強度の結果 とあわせて考察を行った。 7.2実験 Fig.7.1は実験に用いた噴流層型バインダレス造粒装置を示す。この装置は第5章で用い た装置に改良を加えたもので,流動化ガスとして用いる窒素ガスを加湿して層内に導入す ることができるようになっている。窒素ガスの湿度は,セラミックスセンサー型のディジ タル湿度計(測定可能範囲15∼95%M)で測定したところ,測定限界を越える97%を示 96 したことから十分加湿されていることを確認した。 造粒試験に用いた試料は,粒子径が異なる3種類の溶融アルミナ粉(α一山203,商品名: ホワイトアランダム)で,粒子密度はいずれも3,900kg血3である。実験は恥ble7.1に示す ような条件で行った。さらに,実験条件としてDryとW己tの状態を設定した。Dry条件とは, 入手した原料粉体をシリカゲル入りのデシケ一夕ー中に保管したものを用い,流動化ガス は加湿を行わずボンベから直接導入した窒素ガスを用いたものである。 Fig.7.1SchernaticdiagramofspoutedbedgranulatorwithhmidiBer Table7.1Experimentalconditions Mediandiameterofrawpowders(A1203) 0.3,0.6,1.0トm Fluidizedgas N血ogengas Am0untOfrawpowder lOg Gasveloci呼 lto5m/s Operationtime 20min Angleoftaper 20deg. 97 つぎに,DⅣにおける原料粉体の重量を基準として,25℃に保たれた湿度調整用デシケ 一夕ー内で所定時間の調湿を行うとFig.7.2に示すような関係が得られる。この結果から,3 種類の原料粉体についていずれも100時間経過したときの水分吸着量(湿量基準)は0.3叫n が12%,0.6トmが5%,1.0いmが3%となる。これをW如条件の原料粉体とし,このとき の流動化ガスは相対湿度95%以上に加湿した窒素ガスを用いた。 原料粉体のDⅣとⅥゐtの評価は,粉体物性測定装置パウダーテスター(ホソカワミクロ ン㈱製)によるスパチュラ角と,吊下げ式引張り破断強度測定装置コヒテスター(ホソカ ワミクロン㈱製)を用いて行った。 また,造粒試験によって得られた顆粒は粒度分布と単一顆粒の圧壊強度により評価した。 粒度分布はJIS(Z8815-1194)に規定されている手動ふるい分け法により測定し,圧壊強度の 測定は粒子硬度測定装置グラノ(岡田精工㈱製)を用いた。ただし,第6章で指摘したよ うに,顆粒の圧壊試験で得られるひずみ一応力のパターンにおいて明確に圧壊点が読取れ るAおよびBパターンを示すもののみをデータとして採用し,明確な圧壊点が読取れない Cパターンを示すものは除いた。 [藍‖モβu00爪こコ霊竃≦ 1 5・0 1 0tO 100 200 300 AdsorT)tiontime[h] Fig.7.2Changeofmoisturecontentofrawpowder 98 400 7.3結果および考察 7.3.1顆粒の粒度分布と圧壊強度 実験に供した原料粉体と得られた顆粒の写真をFig.7.3に示す。また,実験終了後テーパ ー部を傾けることによって流出する顆粒のみを製品とし,回収率を(額粒重量/原料重 量)×100と定義すると,0.3いmの場合,ガス流速1mで80%,3mで60%程度であった。 装置内部の壁に付着する量はいずれも10%程度で残りはバグフィルターで回収される。 Dヮおよび鴨tの条件下における造粒試験により得られた額粒の積算粒度分布をFiES.7.4, 7.5,7.6に示す。Fig.7.4は原料粉体のメディアン径D。50が0.3LLm,FiB.7.5は0.6pm,Fig・7・6 は1.0ト皿の場合について得られた結果である。これらの図より,1,0トmについては,Wet の場合はDヮに比べて顆粒径がわずかに増大しているが,0.3いmと0.6pmについてはほと Fig.7.3Miα0㍍Opic pboto騨apb ofraw匹Wder(le允)弧d 卵Il山e(d癖It)hWet血血eGl父OfO,3岬n (⊥ロ.uO軍コqて忘苛ぎ駕ちE⊃0 (肌9 <U 9 ノグJ 9 〟 〝 0 7 J「 0 5 t 0 3 (U l● 1 Lo 』 十 O O1 10 0.3 〃m 0.3 〟m D ry W 8t l 100 Diameterofgranuleβg(〟m) Fig.7.4CompansonofcumuhtivedlStrib11tlOninWetandDry,inthecaseofO・3一皿 99 1()00 んど変化が認められない。以上の粒度分布から顆粒のメディアン径βg50を求め,加湿した ことにより顆粒径が増大した割合を恥ble7.2に示す。この表では,1.0一皿の試料は約3割 程度増大し,他はほとんど影響を受けていないことがわかる。これについての議論は後で まとめて行うこととする。 (-)〇.uO竜q苫S苛ぎ竜一コ∈コ0 /● クノ 0 7 ′r jノ 0 5 0 3 ●0.6〟mDけ 0.1 00.6JJmWet 0.01 10 1000 100 DiameterofgranuIeDg(LLm) Fig.7.5Comt)arisonofcumiativedistributioninWttandDrv.inthecaseofO.6um (⊥○ビ0雪q盲S弓¢>竜一⊃∈コ0 0.99 0.9 ′ β 0 7 / y ▲′ /■/ 0 5 (⊃′ 0 3 / ●1.0〟mDry 0.1 l01.0〃mWet 0.01 10 1000 100 DiameterofgranuleDg(LJm) Fig・7・6ComparisonofctmlativedistributioninWttandDry,inthecaseofl・Opm Thble7.2hcreaseinmediandiameterofgramlesbyhmidity O・3トLm Mediandiameterofrawpowder O・6ト皿 1.0トLm MediandiameterofgramleinDry 82・7LLm 108トm 128トun MediandiameterofgranuleinWtt 88・5ト皿 114トLm 170トLm l.07 l.06 l.33 Rati00fincrease 100 つぎに,得られた顆粒について圧壊強度の測定を行った。一例として0.3叫mの結果を Fig.7.7に示す。この図からDryとW己tの違いによる差異は全く認められず,加湿による庄 壊強度への影響は無いといってよい。また,この図で示される引張り強度ちの値は粒子硬 度測定装置グラノに組み込まれている平松の式15)により計算されたものであり脆性的に 圧壊する顆粒が対象とされている。しかし,`本造粒法により得られる顆粒は非常に軟らか い顆粒であるため,10∼数10%以上変位してから破壊に至ることが観察されている。した がって,ちの値については補正が必要であると思われるが,今回は加湿による水分の影響に ついての相対的な比較を目的としているため,そのままの値を採用することとした。今後, 軟らかい顆粒の強度についての補正方法あるいは別の評価方法の検討が必要であると思わ れる。 FusedaIuminaO.3FLm Taperangle:20deg. GasveJocity:2.5m/s OperationtirTle:10min [¢d昌 100 ■■ ■--- dhエ竜u巴lS』コu巴ロ l l ■ 一 e】 ● 川 ■⊂ .】(t■r ■■■■亡 _ フ■■ ヽ.′ ノヽ ▼ 吹▼ × ● 1 q 100 1000 GranulediameterDg[JJm] Fig.7.7Relationshipbetweengramiesizeandgranulestrengthonasinglegrande 7.3.2原料粉体の物性 DryおよびWttの原料粉体について引張り破断強度oiを測定した結果をFig.7.8(a,b)に 示す。Fig.7.8(a)は空隙率8に対する引張り破断強度oiを示したもので,W己tの場合にはいず れの試料も2∼3倍程度破断強度が増加していることが分かる。さらにその傾向は空隙率g が小さくなるほど増大するような結果となっている。また,Fig.7.8(b)は庄密荷重クに対す る空隙率£の変化を示したもので,W己tはDⅣに比べて空隙率gが大きくなっていることか 101 ◇0.3〟mWet (爪生†OLX ロ0.6〟mWet △1.0〟mWet ◆0.3〟mDry 8 ■0.6〟mDry Nb ヽ 6 □ ■ 竜u巴lS¢=Suβ O ▲∫t 4 ▲1.0〟mDry △ロ Granule ロロロ ■とぢ◇。 2 0.74 0.72 0.78 0.76 Voidfraction 0.80 0.82 E(-) Fig.7.8(a)Influenceofhumidityonthetensilestrengthoftherawmaterials l uO芋0巴-P竃> ■▲ O.76 ◇□▲▼ 78 仝]△◆ T)u (u 合一◆ 〇.80 ◇早 ◆0.3FLm Dry ■0.6〃m DⅣ ▲1.0〃m Dry ◇0.3〟mWet 口0.6〟mWet △ △1.0〟mWet ■ ■ ▲ ▲ 0.70 Compactingpressu;e p(kPa) Fig.7.8(b)Induenceofhumidityonthevoid丘actionoftherawmaterials ら,加湿によって付着力が増大したことにより嵩高い充填構造になっていることを示して いる。これらのことから,原料粉体を加湿することにより明らかに付着力が増大している ことが認められる。 一方,噴流層型バインダレス造粒装置内の粒子の流動化状態は原料粉体のスパチュラ角βs に大きく影響される2)ことから,その測定結果の一例をFig.7.9に示す。図は0.3いmの場合 102 であるが,W己tとD巧′のスパチュラ角βsの平均は67.5度と67.0度でほぼ同程度であり,加 湿によるスパチュラ角への影響は認められない。 つまり,コヒテスターによる引張り破断強度の測定は,水分を吸着した凝集粉体を測定 装置の二分割セル中に充填し,少なくとも2.5kPaの載荷で凝集粒子が完全に潰れるまで圧 密しているため,一次粒子間に形成されていると思われる液架橋16)などによる付着力の増 大が示されたことになる。しかし,同じように水分を吸着した原料粉体でも,スパチュラ 角の測定結果のように個々の凝集粒子が潰れることなく凝集粒子として存在し運動してい る場合には,水分が吸着したことによる影響が現れないということになる。 つぎに,Fig.7.8(a)の図中にGranuleとして○印で示した引張り破断強度のデータは,Ⅵねt 条件で造粒した顆粒を同様に充填して測定した結果である。原料粉体の引張り破断強度屯 に比してはるかに小さい値であることが分かる。実験後の目視観察ではまだ顆粒の形が明 瞭に残っていることが認められている。このときの顆粒充填層の最大圧密荷重は26kPaで あるので,本法により得られる顆粒はこの程度の圧密荷重では潰れることがなく保形性が 保たれていることを示している。さらにこの図から,引張り破断強度ちを同じ空隙率eで 比較すると顆粒充填層はいずれの原料粉体に比べても1/2以下の強度となっていることが わかる。この顆粒充填層の空隙率は,試験容器の体積と顆粒層の重量から算出しているの で,顆粒間空隙率と顆粒内空隙率の平均値ということになる。以上のことから,本バイン ダレス造粒法を用いて原料粉体を顆粒化することにより,付着性を低下させて良好な流動 [u名】 0 SQ¢一ぎ何句ちl毘S 0 0 0 1 2 3 Namberoftimes Fig.7.9E飴ctofhmidityonthespatulaangle 103 4 5 性を与えることができるため,たとえば貯蔵や輸送および供給などの前処理としても効果 的であるといえる。 7.3.3原料粉体が凝集粒子を形成している場合の雰囲気湿度の作用 以上の実験結果および考察をもとに,噴流層型バインダレス造粒装置を用いて凝集粒子 を形成している粉体を原料として造粒した場合,雰囲気湿度がどのように作用するのか検 討を試みる。 凝集性徴粉体が水分を吸着する様子をFig.7.10に模式図で示す。加湿による水分は凝集粒 子内部の一次粒子の表面に吸着されていくと考えると,凝集粒子同士が接触する点はやは り一次粒子間の接触であるため,その点における付着力は一次粒子同士のそれと同じであ るといえる。さらに,実験に用いた原料粉体について実体顕微鏡で観察すると,0.3トmお よび0.6いmについては常に数10∼数100ト皿程度の安定した凝集粒子を形成していること が確認されることから,一次粒子径に対する凝集粒子径の比はおよそ数100倍以上の差が あるということになる。これにより,一次粒子間の付着力が液架橋などによって増大した としても,凝集粒子の自重はほぼその3乗となるため,見かけ上,加湿による付着力増大 の影響はFig.7.10の説明で述べた理由によりDryとW己tのいずれの条件においてもほとんど in Dry in Wet Fig.7.10SchematicdiagramOfadsorptionincaseofagglomerative丘nepowder 104 無視できる程度にしかならないことを意味している。したがって,本装置内における流動 化状態はDⅣとWbtいずれにおいても同じということになり,造粒後の顆粒径および顆粒 圧壊強度に差異が生じなかったものと推察できる。 このように考えると,Fig.7.9で示したスパチュラ角の測定における操作では凝集粒子が 壊れるような外力は加わっていないため,W己tもDⅣも全く変わらない結果を示したことが 理解できる。また,Fig.7.8で示したような引張り破断試験では,セルに充填した粉体層は 庄密によって凝集粒子が完全に壊れるような充填状態になるため,凝集粒子内部に吸着さ れた水分の影響により大きな付着力を示すようになることも理解できる。さらに,Fig.7.6 で示した1.0ト皿の原料粉体は,0.3トm,0.6トLmと同様に凝集粒子を形成しているが,この 凝集粒子は簡単に壊れたり他の凝集粒子とくっついたりする特性があり,0.3ト皿,0.6いmの ような安定した凝集体を形成しておらず,むしろ一次粒子の特性が強く影響しているよう な挙動が観察される。加湿による水分が一次粒子間の液架橋として作用していると考えれ ば,液架橋付着力は粒子径に比例する16)との指摘があるように,1.0トmの原料粉体の場合, 液架橋による付着力の増大が顆粒径のわずかな増大に関与したものと考えることができる。 7.4結言 本造粒法において,溶融アルミナを原料とした場合,原料粉体および流動化ガスを加湿 して得られる顆粒の性状は,顆粒径,庄壊強度ともに乾燥粉体を原料とした場合と比べて ほとんど差異がないことが分かった。これは,凝集性が極めて強い微粉体は加湿による水 分のほとんどが原料粉体の凝集体の内部に吸着されるため,凝集粒子を一個粒子として見 た場合には凝集粒子間の付着力がほとんど増加しないことに起因することを示した。 さらに,本法を用いて凝集性の微粉体を造粒することにより,貯蔵や輸送および供給な どにおける操作性の向上という点においても有用であることを示唆した。 105 Nomenclature Dg50 =mediandiameterofgranule 【m】 Dp50 =mediandiameterofrawpowder [m] P =COmpaCtlngpreSSure 【Pa] =VOidfraction ト】 βs =Spatula皿gle [deg】 O2 =tenSilestrengthofrawpowder 【Pa】 Tp =tenSilestrengthofagranule 【Pa】 c 106 LiteratureCited 1)Nishii,K.,YItoh,N.KawakamiandM.Hori0;"PressureSwingGranulationaNovelBinderless Granulation by Cyclic Fluidization and Gas Flow Compaction,"powdbr花chnology,Z4, 1-6(1993) 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る顆粒は強度が小さく,かつ,十分な保形性を有することが分かっている。これにより粉 末吸入製剤への適用が十分期待できる。ここでは,実際に治療に用いられている数種類の 薬物を試料として造粒試験を行い,得られた顆粒の形状,粒子径,強度および分散性など の面から吸入製剤への適用を検討した。 臥2実験方法 実験装置の概略をFig.$.1に示す。この装置は,第7章で用いた実験装置をベースにし, 実機を想定して新たに製作したものである。装置本体は円筒部とテーパ部で構成されてい る。円筒部は内部が観察できるように透明アクリル製で,テーパ部は粒子の帯電を防ぐた め真ちゆう製となっている。層内径は100mmで流動化ガスの入り口径は9mmである。ま た,テーパ部の角度は30,40,50度に交換できるようになっており,その底部には分散板 110 として325メッシュのステンレス製の金網を挿入してある。層上部には微粉の飛散を防ぐ ためにバグフィルタが取り付けてある。第7章の研究により,流動化ガスを加湿しても得 られる顆粒の性状はほとんど変化しないことが分かっているが,静電気の影響を受けやす い原料粉末の場合には,流動化ガスを加湿することによって良好な造粒が行えることが認 められたため改良した加湿装置を設置した。ガスの流量はフローメータにより調節される。 原料粉末は,実際に治療薬として用いられている薬物を含め1払ble8.1に示すような6種類 の試料を用いた。実験条件を1払ble8.2に示す。実験は精秤した試料約5gをテーパ部に充 填した後,窒素ガスを所定の流速に調節してテーパ下部より層内に導入した。操作時間は 20血nとし,終了後テーパ部を傾けて流出する顆粒のみを製品として回収した。 1Cylhder 2.Taperedportion 3Filter 4Distributor 5・Flowmeter 6Humidifier 7Ⅲygrometer Nユ Fig.8.1Schematicdiagramoftheexperimentalapparatus Thble8.l.Physicalpropertyofsamples Pa止icle Aerodymamic Sample diameter diameter[pm] D50【coⅦ止】 仙ml D50 D50【mass】 Lactose 4.13 Spec通c Aerated/ Tme Packedbulk dems卸 【m2/g】 dens卸【k釘血3】 匹g/㌦】 S11血ce 9.99 150/180 1530 DmgA 2.22 1.64 2.56 DmgB 2.35 2.8 1.43 9.32 2(;0/430 1600 DmgC 1.84 3.74 4.05 19.00 130/- 1290 DmgD 3.54 5.58 11.23 120/180 1360 DmgE 2.29 2.63 9..99 150/180 1150 111 Thble8.2.Experimentalconditions Fluidizedgas N血ogen 2.5to5.0 Gasvelocitiesatinlet[m/s】 Angleoftaper[deg】 40 Operationtime[min] 20 5.0 Am0untOf飴edpowder[g] 8.3顆粒の評価方法 顆粒の粒度分布は前節までと同様に,JIS(Z8815-1994)に規定されている手動ふるいによ って測定した。また,かさ密度の測定は,内径1.5cm,深さ2.Ocmの円筒型ガラス容器を 用いた。容器の1cmほど上から静かに充填し過剰に充填された部分をすり切って重量を計 測することにより求めた。顆粒強度は額粒硬度測定装置グラノ(岡田精工製)を用いて測 定した。圧壊用先端チップの下降速度は5Ⅱ皿/minに設定した。さらに,顆粒の分散性の評 価はFig.$.2に示すようなカスケードインパクタと吸入デバイスを用いて行った。測定に用 いた吸入デバイスは,顆粒が入ったカプセルに穴を空け,人が吸入する際の気流を利用し た解砕力により分散させる機構を持つものである。測定は吸入流量28.31血inで5秒間吸入 し,吸入デバイスからの薬剤の放出割合,および,7四n以下に分散した粒子の割合により 評価を行った。 >11llm lト7.Ollm 7.0-4.7l⊥m 4.7∼3.3ドm 3.3∼2.1ドm 2.ト1.1卜m l.ト0.`5卜m O.`5∼仇45llm pⅧmp Fig.8.2CasacdeiInPaCtOrequlPPedwithadevice 112 8.4結果および考察 8.4.1SEMによる観零 実験に用いた原料粉末と得られた顆粒のSEM写真をFiが.3に示す。これは薬剤Aの原 料粉末のSEM写真を一例として示したものである。観察から,原料粉体は大小さまざまな 凝集粒子を形成しており,得られた顆粒はほぼ球形であることが確認できる。また,頸粒 の表面は原料に比べてより緻密になっていることが確認できる。 8,4.2回収率と親粒充填層のかさ密度 入り口ガス流速を変化させた場合の顆粒の回収率とかさ密度の変化をFigs.8.4,鼠5に示す。 回収率は,第6章で定義したように,原料粉体の仕込み質量に対する得られた顆粒の質量 の割合とした。入り口ガス流速の増大にともなってフィルタ部まで飛散する粒子が多くな り回収率は低くなる傾向がある。これは,第5章で粒子密度の大きい溶融アルミナを試料 とした場合の結果と同様の傾向を示している。本研究で用いた試料は粒子密度が1500砂皿ユ 前後と比敏的小さいものであるが,この粒子密度の差異は回収率の差として直接的な影響 を与えるものではなく,先に示した原料のSEM観察から,むしろ原料粉末の状態において 凝集粒子の少ない試料のほうがフィルタ部まで多く飛散することが分かった。 Rawpowder(×40) GmⅡule(×40) Fig.8.3SEMphotographsofrawpowderandproduced卵Ilule 113 1 0.9 0.8 0.7 =0.` p一念ト 0.5 爪V 4 爪V (J O つ▲ O l AU 0 2 3 4 5 ` Gasvelosiゆ【m/s】 Fig.8.4E飴ctofgasvelocityonyield 350 雪盲予言喜p羞ヨ中 'J 00 '一5 0 '一0 0 l 5 爪V 1 O nV 5 ∧U O 02 3 4 5 ` Gasvelocity【m/s】 Fig.8.5E茸tctofgasvelocityonbulkdensity 一方,かさ密度はほとんどの試料においてわずかな増加が認められた。これはガス流速 が大きい場合,噴流層内において吹き上げられた顆粒がテーパ部に落下する際に,より強 い圧密作用を受けると考えられるため,これが原因となりわずかな密度の増加になったも のと推測できる。 8.4.3顆粒の粒度分布 原料粉体の仕込み時にふるいを用いない場合の顆粒の粒度分布をFig.臥`に示す。図から, ほぼ対数正規分布で表すことができ,分布の傾きは原料粉体によって若干異なることが分 かる。つぎに,原料粉体を装置に仕込む際に目開き500一皿のふるいを用いて充填した。ふ 114 nY 爪U 7-ヽ-'J 〓≡童盲qてーⅥ葛ぎ用言【ヨ∈∋U ◆Lacto5e ■A ▲丑 ●C ◇D □E ノ戎 j乙′ ′ ノ■ ▼ ′ ■n ∠】 / 0.1 0.05 ■ク l / 0.01 10 100 ‖ 1000 10別IO Gra皿山edi且meter【印可 Fig.8.6bg-nOrIn山pl(】tOfsi託血s由b血onof伊皿山e Fig,8.7SEMphotographofrawpowderbysieve丘lI皿g(×40) るいを通す際には大きな凝集塊を含んだ原料をふるい上ですべて解砕し,強制的に通過さ せた。ふるいを通した原料はFig.8.7の写真に示すように,凝集塊の粒径ががきれいにそろ っていることが分かる。このようにして造粒した場合の結果をFig.8.8に示す。先に示した Fig.8.6の結果と比較すると顆粒の分布幅が狭くなっていることが分かる。この場合,メデ ィアン径はそれほど大きく変化しないことが特徴である。以上のことから原料粉体の凝集 塊の分布幅を変化させることによって,得られる顆粒の分布幅を変化させることが可能で あることが分かる。つぎに,ふるいの百聞きを変化させて充填した場合の造粒結果をFig.8.9 に示す。この図から,異なった目開きのふるいを用い原料粉体の凝集塊の粒径を調節して 仕込み充填を行うことにより,額粒径の制御が可能であることが分かる。 115 9 0ノ ● 50ノ 〓亡さ叫lnqてl∽葛ぎ叫l貞一n∈nU .9〇. 〇7 ● 〇5 ● 〇 つJ ◆Lactose ■A ▲B ●C ◇D □E 7 y l I J ● / 1/ 〇.●0 15 / 〟 r 01 ● J J ー 1000 100 10000 Granulediameter[pm] Fig.8.8Log-nOrmalplotofsizedistributionofgranulebysleVefilling / n 5Qノ ●9〇.〇〇〇 〓∈○叫lnqてl∽葛ぎ叫l虎一n∈∋U 9 Qノ ● 7 ● 5 〇.●0 1-3 / ′ J J ′ ′ / J J▲ ■ ′ 3 ● / ◆710匹mpaSS ●500llmpaSS ▲355llmpaSS ●25011mpaSS / ノ H ■ 01 10 100 1000 10000 Granulediameter[pm] Fig.8.9E飴ctofseveralsieve丘11ingongranulesizedistribution 8.4.4顆粒強度の測定 顆粒硬度測定装置グラノによる顆粒の圧壊パターンは,Fig息10に示すように,第6章で 3種類に分類したうちのきわめて軟らかいとされるCパターンを示した。これは荷重が増加 するにつれて顆粒の形状が大きく変形し,最後まで「割れ」が認められないパターンで, 本装置による圧壊強度の計算ができないケースである。このような特性を持つ額粒強度を 評価する方法が今後の課題として残るが,流動性が良く保形性を保ちながら軟らかい顆粒 が必要という粉末吸入製剤に求められる条件は充分満たしていると思われる。 116 5 つJ ヽム一 【邑も【×8-貞ぷ冨.d彗U 4 1 0 Particle 爪V Fig.8.10Typicalpattem 100 diameter 200 Displacememt【ドm】 of theload-displacement curve Of the measured COmPreSSiveforceofasinglegranule 8.4.5分散性の評価 額粒の分散性を測定した結果を恥ble臥3に示す。ここで,OEはデバイスからの薬物の放 出率であり,Rfは肺に到達すると思われる粒子径7〃m以下に分散した粒子の割合である。 顆粒径が分散性に及ぼす影響をみるために,ラクトースおよび薬剤Aから得られた顆粒に っいて,ふるいを用いて100-500〃m,および500-1000〃mの粒子径幅に分割し測定を行っ た。表から,顆粒粒子径の違いによる結果を比較すると,粒子径が100-500〃mに調整した ほうはOE,Rfともに高い値を示したことから,顆粒径を小さく調整した試料のほうが良 好な分散性を示すことが分かる。現在,市場に出ている粉末吸入製剤の肺への到達率は20% 程度であるといわれていることから,本造粒法による額粒はきわめて良好な分散性を示し ており,粉末吸入製剤の粒子設計法として十分適用できることが明らかになった。 なお,このときデバイスから放出されなかった残留粒子のほとんどはカプセル内に残留 していることが確認された。これは,カプセルから排出された顆粒はデバイス内にほとん ど付着することなくほぼ全量が分散して患者の吸気に同伴されたことを示している。した がって,カプセルからの排出を改善することにより,さらにRf値を高めることができると 思われる。 117 Thble8.3.Dispersibilityofgranule Lactose Sample DmgA Dn喝B Dn唱C DmgD DmgE OE[%】 82 99 74 90 62 62 Rf【%】 36 40 33 66 35 42 OE【%】 田 33 6 19 100∼500四n 500∼10001皿 Rf[%] OE:Ouゆ血e伍ciency RF:Respirablefraction(dispersedbelow7トIm) 8.5結言 噴流層型バインダレス造粒法により,実際に治療薬として使用されている薬物を用いて DPI用製剤を作製し分散性などの評価を行った。その結果以下の結論を得た。 1)本造粒装置により,実際に治療に用いられている薬剤の微粉体を,バインダを用いるこ となく造粒することが可能である。 2)本造粒法により,既存の顆粒強度測定装置では測定できないきわめて軟らかい顆粒を得 ることができた。 3)原料粉体の仕込みの際,ふるいを用いて凝集体径を調整することにより,顆粒径の制御 が可能である。 4)得られた顆粒は,カスケードインバクタを用いた分散性の試験を行った結果,良好な分 散性を示すことが明らかになった。 以上のことから,本造粒法により得られる顆粒は粉末吸入製剤に適用することが十分可 能である。 118 第9章 終 章 第9章 終章 微粉体を扱う場合に考慮しなければならない最も重要な点は,付着・凝集性である。近 年,微粉体の高機能化にともなう粒子のファイン化,および,ナノテクノロジーの流れに 伴う微粉体の精密な制御の必要性などにより,ますますその特性を的確に把握することが 求められている。本研究の端緒となった当時に粉体物性の研究の対象とされていた微粉体 の粒度は数∼数1叫皿程度であったのに対して,現在では,微粉砕技術の向上,および,液 相・気相中における微粒子の新たな生成方法の開発などにより,各種サイズの様々な機能 を持った微粒子の生成が可能になっており,その下限は数∼数10nm程度にまで微細化し ている。それにともない,その粒度および粒度分布のそれぞれの程度に対応した適切な特 性評価法も新たに開発されるものと思われる。と同時に,これらの微粒子の新たな利用方 法の開拓も当然なされなければならないであろう。 本研究は,着手した当時においてきわめて大きな問題であった微粉体の付着性に関わる 物性の測定方法および評価方法の開発に関わる部分と,その知見をもとに付着性を有する 微粉体の機能性の付加および高機能化にむけた新たな利用方法の開拓として,非導電性微 粒子による金属粒子のコーティング法の開発,および,付着性徴粉体のバインダレス造粒 法の確立を目的としたものである。これにより得られた成果は以下のとおりである。 第1章では,本研究の開始当時における粉体物性測定法の状況を述べ,粉体層のせん断 強度,引張り破断強度,一個粒子の付着力,粉体の総合的な物性としての流動性,および, 粒度分布などの各測定装置の開発の状況について概観したうえで,新たな物性測定法の開 発の必要性,および,物理的意味を有する微粉体の粒度測定法の開発が必要であることな ど本研究の目的についての概略を述べた。さらに,微粉体の付着性を利用した新しい造粒 法として噴流層型バインダレス造粒法の開発についての概略を述べた。 第2章では,はじめに付着力が関与すると思われる種々の粉体物性値について,試料粉 体に微粉添加剤を棍入しそれぞれの値がどのように変化するのか検討した。その結果,微 粉添加剤の混入によって,付着性の大きい粉体の付着力は低減するが,付着力の小さい粉 体の付着力は増加することもあり,結果的に付着力の大きさがある一定の値に近づく傾向 があることを示した。さらに,安息角,充填性など二次物性,三次物性といわれるような 複合的な特性に及ぼす添加剤の影響はきわめて複雑であり,単純な変化は示さないことな 121 どを述べたうえで,微粉添加剤の粒子は粉体の粒子表面に付着することにより,その表面 の粗度を増すように作用することを論じた。 第3章では,第2章の研究を進める過程において,当時粉体の付着力に関して議論が集 中していた粉体層の引張り強度の測定については,Ashton,FarleyandⅥlentinら2)が提案 した二分割セルによる引張り破断強度測定法が主流であった。彼らの装置は比較的強く圧 密された粉体層の引張り強度を測定するものであったが,実際に粉体を扱う状態に近い低 圧密域の粉体層についての引張り強度も求める必要があるため,低圧密域から高圧密域ま での幅広い空隙率範囲における引張り強度を同一の方法で得られる装置を開発したことを 述べた。これにより測定できる空隙率の範囲が飛躍的に増大し,椿らによって示された次 式 Jz=鬼2f)"が広い範囲の空隙率において成立することを論じた。 第4章では,100∼200脚程度の比較的粒子径の大きい微粉体をターゲットにして新たな 機能を付加することを目的とするもので,微粉流動層を電磁場に設置することにより,流 動化している微粉中を落下する金属粒子は選択的に加熱され,微粉体をコーティングする ことができることを述べた。その際,2種類のコーティング様式が存在することを明らかに した。また,金属粒子にプラスチック粉をコーティングした複合粒子を成形することによ り,プラスチック中に金属粒子が均一に分散している複合材料を作製することができるこ とを示した。 第5章では,微粉体として区分される粉体のうち,数um∼サブpmの比較的粒子径の小 さい微粉体をターゲットとしてこの粉体の高機能化を目的とするもので,従来,阻害要因 としてみられてきた微粉体の付着性をプラス要因として効果的に利用したバインダレス造 粒法の開発を行ったことを述べた。この造粒法により得られる顆粒はハンドリングにおい ては崩れることなく保形性を保ち,機械的な強度はきわめて軟らかいという特徴を持った 顆粒であることを示した。 第6章では,第5章において開発した造粒装置による造粒機構を明らかにするために, 透明な二次元モデルを作製して層内の流動化の様子を目視観察した。その結果,層下部中 央から噴き上げられた微粉体は下部のテーパ部分において圧密作用を受け造粒が進行する 122 ことを明らかにしたこと,さらに,得られた顆粒の圧壊強度を測定した結果,圧壊のパタ ーンが3種類存在することを明らかにしたことを述べた。また,顆粒充填層の圧縮強度と 単一顆粒の圧壊強度の間には,Rumげ式を援用することにより換算可能な相互関係が存在す ることを論じた。 第7章では,バインダレス造粒法は原料微粉体が有する付着性に依存した造粒法である ことから,付着力の変化が顆粒の性状にどのような影響を及ぼすかを論じる。ここでは, バインダレス造粒に供される微粉体の粒子間の付着力を加湿によって増大させて実験を行 った結果,顆粒径,庄壊強度などの性状は,乾燥粉体を原料とした場合と比べると当初予 想したような変化はほとんど生じないことを述べた。変化が生じなかった原因については, 凝集性が極めて強い微粉体は加湿による水分のほとんどが原料粉体の凝集体内部に吸着さ れるため,凝集粒子を一個粒子として見た場合には凝集粒子間の付着力がほとんど変化せ ず,流動化状態に変化が生じないことに起因することを論じた。 第8章は,圧壊試験による顆粒強度試験では額粒の破壊を示すピークが得られないことか ら,従来には見られないきわめて軟らかい頼粒であると判断し,粉末吸入用製剤(DPI)へ の適用を検討した。本法により得られた顆粒をカスケードインバクタを用いて分散性の試 験を行った結果,きわめて良好な分散性を示したことを述べた。また,顆粒径は,原料を 仕込む際に各種目開きのふるいを用いることにより制御できることを示した。以上のこと から,粉末吸入製剤用のすぐれた分散性能を有する顆粒の設計法として充分適用できるこ とを明らかにした。 第9章は終章として本研究の全体を総括してまとめを行った。本研究において対象とした 付着性を有する微粉体はその評価方法がきわめて難しいため,研究者によって多様な評価 方法が行われていた。その状況を概観したうえで,粉体の付着性を評価するもっとも基礎 的な粉体層の引張り強度法により,幅広い空隙率範囲において付着力測定を可能にする方 法および装置の開発を行ったことを述べた。また,阻害要因として捉えられていた微粉体 の付着性は,粉体の高機能化を目的とした造粒においては有用な因子であり,これを利用 したバインダレス造粒法の開発を行ったことを述べた。さらに,この造粒法の特性を明ら かにし,新たな利用法として粉末吸入製剤の設計に有用であることを論じた。 123 謝 辞 本研究を取りまとめるに当たり,長期にわたり終始一貫して懇切なご指導を賜りました 名古屋大学エコトピア研究機構先端技術共同研究センター長 森 滋勝教授に深甚なる感 謝を申し上げます。また,本論文の作成に当たり,名古屋大学大学院工学研究科 椿淳一 郎教授,桑原守教授,板谷義紀助教授には多大なご教授をいただき深く感謝申し上げます。 本研究の一部は,富山大学工学部 山崎量平教授が名古屋大学ご在職当時に懇切なご指 導をいただき実施されたものであります。さらに,名古屋大学工学部(当時)故神保元二 教授のご指導のもと同浅川貞雄助手(当時),同曽我尚人技官(当時)のご協力を得て行わ れたものであります。ここに深く感謝の意を表する次第です。 本研究を進めるに当たり,名古屋大学エコトピア研究機構先端技術共同研究センター 小林潤助手,同大学院工学研究科化学・生物工学専攻分子化学工学分野 小林信介助手,朴 桂林博士,大木梓女史には終始多大なご助言ならびにご協力をいただきました。さらに, 同大学大学院工学研究科物質制御工学専攻 森英利講師,株式会社マキノ 浅井信義博士 には終始有意義なご助言をいただきました。あわせて深く感謝申し上げます。 本論文は,名古屋大学大学院工学研究科化学・生物工学専攻分子化学工学分野に在籍した 学生の 横山智哉君,服部正治君,白鳥信行君,大沢悟君,中川陽介君,金子慶子君,大 浦雄介君,中村展之君らとともに行った研究において得られた成果をまとめたもので構成 されています。これらの方々に感謝を申し上げます。さらに,森研究室の学生諸氏,旧神 保研の教職員・学生の皆様方に感謝を申し上げます。 本研究の実施に当たって,ホソカワミクロン株式会社の横山豊和博士,辻本広行博士, 松浦大輔氏には粉末吸入製剤の分散性能に関して貴重なデータおよび実験試料をご提供い ただき,深く感謝申し上げます。 最後に,本研究を取りまとめるにあたり,分子化学工学教室の教職員の皆様を古■まじめ, 関係する多くの皆様に長期にわたって温かい励ましと貴重なご教示をいただいたことに対 し,深く感謝の意を表します。 2004年11月 124 羽多野重信 本研究に関連する論文目録 1.主論文 論文題目 No. 1 粉体物性に及ぼす固体添加剤の 著者 発表雑誌および発表年 材料,遁(189),54ト546(1969) 神保元二 浅川貞雄 影響 曽我尚人 羽多野重信 内山赴 2 ExperimentalInvestlgationofthe ParticleCharacterization,土(4), GJimbo TbnsileStrengthofaPowderBed 133-136(19S4) S.Hatano 噴流層を用いた微粉体の乾式造 粉体工学会誌,三迫(2),115-120 羽多野重信 粒 (19?6) 山崎量平 bySplitCellTypeTbnsileTbsters 3 森滋勝 4 電磁流動層による金属・非金属 化学工学論文集,24(1),146-148 横山智哉 複合粒子作成プロセスの開発 (1998) 服部正治 村尾敏哉 羽多野重信 山崎量平 森滋勝 5 噴流層型バインダレス造粒法に 粉体工学会誌,生(2),92-98(2004) 羽多野重信 よる造粒過程の観察と頼粒の強 大沢 悟 度 山崎量平 森滋勝 6 噴流層型バインダレス造粒にお 粉体工学会誌,坐(8),586-591(2004) 羽多野重信 ける湿度の影響 金子慶子 大浦雄介 森滋勝 125 Binderless GranulationofCohesive Journalof Fine Powderby ChemicalEngineers,SpecialIssueon Using a Spouted BedandItsApplicationtoParticle the ChineseInstitute of S.HatanO N.Nakamura ParticleTbclm0logy,(2005),(投稿中)N.Kob町aSbi DesignforDryPowderInhalation J.Kobayasbi YIt町a S.Mori バインダレス造粒法を用いた粉 粉体工学会誌,(投稿中) 末吸入製剤のための粒子設計 羽多野重信 中村展之 小林信介 板谷義紀 森 126 滋勝 2.主論文に関連する国際会議における発表 論文題目 No. 1 2 3 発表会義および発表年月 ExperimentalInvestlgation 著者 Paci丘cRegionMeetlngOftheFine GJimbo TbnsileStrengthofPowderBedby Particle S,Hatano SplitCellTypeTensileTbsters 1983) DryGranulationofFinePowderby 7thCongressofAsianPaci丘c UsingSpoutedBed Confederation of MechamismofBinderless Granulation・Of Cohesive Fine PowderbyUsingaSpoutedBet Society,(Hawaii,August of S.Hatano Chemical R.Yamazab Engineers,(Taipei,MarCh1996) S.Mori 6thAsianConferenceon S.Hatano Fluidized-Bed and Three-Phase Reactors,(Chqju,December1998) R.YamaZaki S.Osawa S.Mod 4 FluidizationofFineParticleandIts Application to FluidizationIX,(Colorado,1998) R.Yamazaki S.Hatano Binderless Granulation T.Inukai YZhon S.Mod 5 DevelopmentofaNovelProcessfor 8thCongressofAsianPaci丘c ProducingMetal・PlasticComposite Confederation MaterialUsing Engineers,(Seoul,August1999) Fluidized Bedin of M.Ha恍Od Chemical Elecb・0-MagneticField 6 S.Hata皿0 R.Yamazab S.Mod N.Nakamura ApplicationforDryPowderInhaler 10thCongressofAsianPaci丘c byUsingaSpoutedBedBinderless Confederation Granulation Engineers,(Kitakyushu,October N.Kobayasbi 2004) J.Kobayashi of Chemical S.Hatano YItaya S.Mori 127 Particle Design Inhalation by for Using BinderlessGranulation Dry Powder Spouted Bed 7th World Congress of Chemical S.Hatano Engineering,(Glasgow,July2005) N.Nakamura (発表予定) N.Kob町aShi J.Kob野aSl止 YIt町a S.Mori 128 3.著書 著書題目 No. 1 造粒プロセスの最新動向と応用 出版社および出版年 著者 技術情報協会,(1998) 分担執筆 工業調査会,(2000) 羽多野重信 技術」第3章(バインダレス造 粒法) 2 「はじめての粉体技術」 山崎量平 浅井信義 3 「図解粉体技術最前線」 工業調査会,(2003) 羽多野重信 森英利 浅井信義 129 4.その他の論文 No. 1 論文題目 発表雑誌および発表年 著者 円筒型mF単一粒子の燃焼に関 化学工学論文集,塑(1),79-84 劉 する研究 (1999) 山崎量平 貴慶 羽多野重信 藤間幸久 森滋勝 2 気泡型流動層燃焼路によるR⊃暦 化学工学論文集,塑(4),55ト556 朴桂林 燃焼時における塩素分の挙動 (2000) 袴田和英 近藤元博 山口正隆 羽多野重信 山崎量平 森滋勝 3 PyrolysisBehaviorofRefuse JournalofChemicalEngineenngof Ⅹ.「ねng DerivedFuel Japan,;辿(1),91-94(2001) YIt町a S.Hatan0 R.Yamazaki S.Mori 4 RDF粒子の燃焼過程に関するモ 化学工学論文集∴退(2),168-174 劉貴慶 デル解析 (2002) 袴田和英 板谷義紀 羽多野重信 山崎量平 森滋勝 5 垂直管群を挿入した微粉流動層 化学工学論文集∴退(3),297-302 山崎量平 の低ガス流速域における気泡挙 (2002) 西堀 動と伝熱特性 圭 小倉清伸 堀田幹雄 山本健市 羽多野重信 森滋勝 130 131 5.その他の国際会議における発表 論文題目 No. 1 2 3 Cen什ifugalSedimentationParticle International SizeMeasurementMethodUsingA Measurement PressureSensor Granular Conference and on Control of Materials,(Shenyang, GJimbo Q.Q.Zbao S.Hatan0 Septembeち19S8)) H∴hnaka DevelopmentofNewCemifugal 4thEurOPeanSymposiumParticle GJimbo SedimentationSizeAnalyzerwith CharaCterization,(N敵rnberg,Apri1, S.H如ano Di鐙brentialPressureSensor 1989) q.q.Zbao MeasurementoftheAdhesive 5thInternationalSymposiumon GJimbo Property 4 著者 発表会義および発表年月 ofPowderMaterials at (Brighton, Agglomeration, S.Hatan0 ElevatedTbmperature September,1989) A.Nagas止i TheBehaviorofChlorine TheAsianSymposiumOnMultiphase GPiao Flow1999,(Os止a,November,1999) K.Hakamada Compound with Combustion of RDFinAFluidizedBed M.Eondoh M.Yamaguchi R.Ymazaki S.Hatmo S.Mod 5 GPiao BehaviorofChlorineCompound FLUIDIZÅrION2000Scienceand duringCombustionofRDFinA Tbclmology,Seventh FluidizedBed SymPOSium,(Xi'an,China,October, M.Kondoh 2000) M.Y犯naguChi China-Japan K.Hakamada R.Yamazab S.Hatano S.Mod 6 PyrolysisBehaviorofRefuse FLUIDIZÅrION2000Scienceand Ⅹ.M.Ⅵmg DerivedFuel Tbclm0logy;Seventh YItaya China-Japan SymPOSiun,(Xi'an,China,October, S.Hatano 2000) R.Yamazab S.Mod 132 ModelAnalysIS for Combustion lmternational CharaCteristicsofRDFPe11et Symposium on Pollution Control&Reutilization Solid of Ⅵねstes'200l,(Changsha, GLiu H.Hakamada YIt町a S.Hatano PR.Cbina,2001) S.Mori ThermalRadiation Properties CoalCharParticles Dispersionin of Gas抗cationFumace TwelfthInternationalHeat廿anSfer YIt町a Conference,(Grenoble, Y FranCe, Saito S.Hatano 2002) S.Mod Gasification Ⅵねstes for Process of Elective GenerationbyFuelCell Organic Power 9th Congress CoIl食deration Asian of of Engineers,(ChristchurCh, Zealand,September,2002) Paci丘c Chemical New S.Mod M.Kondo M.Hamai M.Yamaguchi GPiao A.S.Hendarsa S.Hatano YItaya 133
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