物理学演習 III(量子力学) No. 6 2016. 5. 24 1. 【水素原子 (後半)】 その場演習 No. 6 で導出したように、水素原子の動径方向の波動関数を次の形に変形 することができた: d2 f (ρ) + dρ2 ( ) 2 df (ρ) −1 + ρ dρ { } λ − 1 ℓ(ℓ + 1) − f (ρ) = 0. ρ ρ2 (1) 波動関数 f (ρ) が f (ρ) = ρs ∞ ∑ C n ρn (1) (2) n=0 と展開されるとして、式 (1) に代入して ρ のベキについて整理せよ。 (2) 方程式が恒等的に成立するためには、前問の各ベキの係数がゼロにならなければ ならない。ただし C0 ̸= 0 としている。f (ρ) が原点で正則であることを考慮して、 s = ℓ, および Cn+1 = n+ℓ+1−λ Cn . (n + 1)(n + 2ℓ + 2) が得られることを確認せよ。 (3) これらを F (ρ) = ∞ ∑ C n ρn n=0 に代入したものと、合流型超幾何関数 F (a, c; ρ) F (a, c; ρ) = 1 + ∞ ∑ 1 (a + n − 1)(a + n − 2) · · · a n! (c + n − 1)(c + n − 2) · · · c n=1 ρn とを見比べ、a, c が ℓやλ を用いて a = ℓ + 1 − λ, c = 2ℓ + 2 と書けることを確認せよ。 (4) 一般に、F (a, c; ρ) は a が 0 または負の整数の時に多項式になり、そうでないと きには無限級数となる。a, c が実数の時、この無限級数は ρ → ∞ で exp(ρ/2) よ りも収束が悪いので(詳細は物理数学の参考書などを参照)、R(ρ/α) が束縛状態 の波動関数であるためには a が 0 または負の整数でなければならない。 いま、 a = ℓ + 1 − λ = −k (k = 0, 1, 2, · · ·) とおくと、エネルギー E は E=− me4 2h̄2 (k + ℓ + 1)2 となることを確認せよ。 ここで、あらためて n ≡ k + ℓ + 1 (n = 1, 2, · · ·) とおいたものを主量子数と呼ぶ。ただ し、この n と問題 (1) のベキ n と混同しないように注意すること。また、F (a, c; ρ) = F (−k, c; ρ) = F (−(n − ℓ − 1), 2ℓ + 2; ρ) は、 Laguerre の陪多項式 L2ℓ+1 n−ℓ−1 (ρ) に一致 する。 2. 【合流型超幾何関数】 微分方程式 [ ] d2 d z 2 + (γ − z) − α u(z) = 0 dz dz (3) を考える。 (1) 形式的な無限級数 ( u(z) = z ρ 1+ ∞ ∑ ) cn z n n=1 の形を式 (3) に代入することで、パラメーター ρ の関係式 ρ (ρ + γ − 1) = 0 (4) と係数 cn に関する漸化式 (ρ + γ)(ρ + 1)c1 = ρ + α, (ρ + n + γ)(ρ + n + 1)cn+1 = (ρ + n + α)cn , (n = 1, 2, · · ·) を導け。 (2) 式 (4) から得られる ρ についての2つの解それぞれに対して上の漸化式を解いて、 この形式解が u1 (z) = 1 + ∞ ∑ 1 (α + n − 1)(α + n − 2) · · · α n! (γ + n − 1)(γ + n − 2) · · · γ n=1 [ u2 (z) = z 1−γ 1+ z n ≡ F (α, γ; z) ∞ ∑ 1 (α − γ + n)(α − γ + n − 1) · · · (α − γ + 1) n=1 n! (−γ + n + 1)(−γ + n) · · · (2 − γ) ] z n = z 1−γ F (α − γ + 1, 2 − γ; z) と求まることを確かめなさい。 ここで定義された関数 F (α, γ; z) F (α, γ; z) = 1 + ∞ ∑ 1 (α + n − 1)(α + n − 2) · · · α n! (γ + n − 1)(γ + n − 2) · · · γ n=1 zn は合流型超幾何関数と呼ばれている。γ が0か負の整数の場合には、係数の分母が0 になっているので、この関数は意味をもたない。それ以外の場合には、この無限級数 は |z| < ∞ で収束しているので、合流型超幾何微分方程式の解を与えていることがわ かる。したがって、γ = 0, −1, −2, · · · の場合は u1 (z) が意味を失い、γ = 2, 3, 4, · · · の 場合には u2 (z) が意味を失うが、それ以外では γ = 1 を除いて u1 (z) と u2 (z) が線形 独立な解を与えており、すべての解はこれらの線形結合で表すことできる。
© Copyright 2024 ExpyDoc