基調講演概要 地域経済活性化に向けた「事業性評価」の取組みの狙いと課題 株式会社経営共創基盤 取締役パートナー 村岡 隆史 氏 日本の企業は、グローバル経済圏で戦っている「G型企業」と主としてローカル経済 圏で競争している「L型企業」に大別できる。 「L型企業」はサービス業の割合が高く、 規模でみれば、中堅・中小企業が中心である。また、「L型企業」は労働生産性が低い と指摘されており、 「L型企業」の労働生産性を引き上げていくことが、日本経済の活 性化につながる。 一方、 「L型企業」 、 「中堅・中小企業」は労働生産性の高い企業のベストプラクティ スを共有することによって労働生産性を上げる余地が大きいと考えられる。地域金融機 関は様々な業界の情報を集積していることから、ベストプラクティスを各企業が共有で きるハブになり得る。また、そうした情報を各企業へのアドバイスでも活かせるはずで ある。 「事業性評価」は行政当局が金融機関とのコミュニケーションを図るためのツールの ひとつとして認識してほしい。従来の地域密着型金融との違いは 3 点。1 点目は「顧客 企業の事業構造を今までよりも、より構造的に分析する力を金融機関に促していこう」 ということ。2 点目は「個別企業の分析をするだけでなく、地域経済の将来のグランド デザインを描くことについても、金融機関に一定の役割を担っていただくことを求め る」ということ。3 点目は「この取組みを持続させていくにはどうしたらよいかを、行 政当局と金融機関とでともに考えていきたい」ということ。 事業性評価については、事業ごとのコストの構造がどうなっているかをしっかり把握 し、当該事業がどういう特性をもった事業なのかということを理解することが重要。そ のことによってどの部分のコストについて議論をすれば経営改善に繋がるかというこ とが掴みやすくなる。また、自社のコスト構造を把握している企業ほど成長性が高い。 コスト構造の分析は、場合によっては製品ごとや店舗ごとなど、詳細に行うことが望 ましい。こうした分析によって、海外や大都市等に進出することがメリットになるのか どうかという点もきちんと把握できるようになる。 企業は、事業ごと、場合によっては製品ごとや店舗ごとになるべく分けて「見える化」 を行い、どこが儲かって、どこが儲かっていないのかを可能な限り明らかにする。そし て、それを利益を出せるような形に変えていくように詳細に日々の採算管理を繰り返し て行い、PDCAを回していくことが肝要。 金融機関には取引先企業に人材を提供していくことも、今後、より求められてくる。 経営をサポートできるような人材を金融機関として育成をして、取引先企業や社会に出 していくことも期待されている役割ではないか。
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