2016年5月27日 今月の経済・金融情勢 ~わが国をめぐる経済・金融の現状~ 2016年5月 農林中金総合研究所 調査第二部 http://www.nochuri.co.jp/publication/situation/index.html 経 済 ・ 金 融 【米 【日 国】 本】 情 勢 資 料 2 0 1 6 年 5 月 • 4月26~27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、15年12月に引き上げた政策金利(0.25~0.5%)の 維持が決まった。一方、5月18日に公表された同会合議事要旨では、6月利上げの可能性が示唆された。 (次回FOMCは6月14~15日) • 米国の経済指標をみると、雇用統計(4月)の非農業部門雇用者数が16.0万人増と事前予測(20.0万人増) を下回ったほか、1~3月期の実質GDP成長率(速報値)も、前期比年率0.5%と3四半期連続の減速となる など、足元の動きは鈍い。ただし、米国経済は、家計部門の底堅さに加え、原油価格の回復やドル高修正 の動きなどから、先行きは加速に転じるとみられる。 • 4月27~28日の日銀金融政策決定会合では、市場の追加緩和期待に反して、1月に導入されたマネタリー ベースが年間80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行うことに加え、日銀当座預金の 一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の継続を決定した。 • 日本の経済指標をみると、1~3月期の実質GDP成長率(一次速報値)は、前期比0.4%(同年率1.7%)と2 四半期ぶりにプラスに転じた。ただし、民間消費の持ち直しがなかなか始まらない上、輸出も伸び悩むなど、 回復力は依然として乏しい。また、4月に発生した熊本地震の影響もあり、4~6月期は再びマイナス成長を 見込む向きが多い。 【金融市場】 • 長期金利(新発10年国債利回り)は、1月末に日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入したこ とにより大幅に低下し、3月中旬以降は概ね▲0.1%前後での推移が続いている。なお、3月以降は、金利 がプラス圏内にある超長期ゾーンを含めてイールドカーブ全体がフラット化している。 • 日経平均株価は、4月下旬には、原油価格の上昇や日銀による追加緩和期待の高まりなどを受け、半年 ぶりに17,000円台を回復したが、日銀が政策据え置きを発表した後は下落。その後も16,000円台での不安 定な動きが続いている。 • ドル円相場は、5月上旬には1ドル=105円台半ばと、1年5ヶ月ぶりの円高水準を付けたものの、その後は、 日銀がマイナス金利政策を維持する一方で、米国では早期利上げ観測が高まるなど、日米金融政策の方 向性の違いが明確なったことで円安・ドル高となり、5月中旬以降は1ドル=110円前後で推移している。 • 原油相場(NY市場・WTI期近)は、4月17日の産油国会合の結果が不調だったことで、一時37ドル台半ばま で下落したものの、それ以降はカナダ産油地区での山火事やナイジェリアの政情不安、米原油週間在庫 の増加傾向の一服などを背景に上昇しており、5月下旬には一時1バレル=50ドル台を回復した。 2 米国経済:1~3月期の指標は悪化も、今後は加速も見込まれる (%) 米国雇用統計 イールドスプレッドとFFレート誘導目標 (政策金利)の関係 (%) (千人) 4.5 3.0 非農業部門雇用者数変化(右軸) 失業率(左軸・逆目盛) 2.5 400 5.0 300 5.5 200 6.0 100 2.0 1.5 1.0 FFレート 10年国債-3ヶ月TB 10年国債-FFレート 0.5 6.5 0.0 '13.5 '13.11 '14.5 (資料)Bloombergより作成 '14.11 '15.5 '15.11 '16.5 0 '14.4 '14.10 '15.4 '15.10 '16.4 (資料)Bloombergより作成 • 米国金融政策:4 月26~27日 の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、15年12月に引き上げた政策金利(0.25~ 0.5%)の維持が決まった。一方、5月18日に公表された同会合議事要旨では、6月利上げの可能性が示唆された。 (次回FOMCは6月14~15日) • 米国経済:雇用統計(4月)の失業率は5.0%と先月から横ばいだった一方、非農業部門雇用者数は16.0万人増と事 前予測(20.0万人増、ブルームバーグ社集計)を下回った。また、1~3月期の実質GDP成長率(速報値)も、前期比 年率0.5%と、3四半期連続の減速となった。ただし、米国経済は家計部門の底堅さに加え、原油価格の回復やドル 高修正の動きなどから、先行きは加速に転じるとみられる。 3 国内経済:回復力は依然乏しい (千億円) 9.5 国内:機械受注(船舶・電力を除く民需) (%) 8.0 機械受注受注額(季調済) 3ヶ月移動平均 四半期実績・翌期見通し 9.0 国内:鉱工業生産 (%) 12 前月比(季調済・左軸) 前年比(右軸) 6.0 製造工業 生産予測 4.0 8.5 9 6 2.0 3 0.0 8.0 0 ▲ 2.0 7.5 4~6月期見通し :前期比▲3.5% 7.0 '13.7 '14.1 '14.7 '15.1 '15.7 (資料)Bloomberg(内閣府「機械受注統計」)より作成 ▲3 ▲ 4.0 '16.1 ▲ 6.0 ▲6 '13.8 '14.2 '14.8 '15.2 '15.8 '16.2 (資料)Bloomberg(経済産業省「鉱工業生産」)より作成 • 国内総生産:1~3月期の実質GDP成長率(一次速報値)は、前期比0.4%(同年率1.7%)と2四半期ぶりにプラス に転じた。ただし、4月に発生した熊本地震の影響もあり、4~6月期は再びマイナス成長を見込む向きが多い。 • 機械受注:民間設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の3月分は、前月比5.5%と2ヶ月ぶ りに増加した。ただし、4~6月期の見通しでは▲3.5%と減少が見込まれている。 • 鉱工業生産:3月の鉱工業生産指数(確報値)は、前月比3.8%と2ヶ月ぶりに上昇した。製造工業生産予測調査 によると、4月も同2.6%と上昇するものの、5月は同▲2.3%と低下が予想されている。 4 長期金利:低下圧力が継続 日米独の長期金利 (%) (%) 1.4 3.5 1.2 3.0 1.0 2.5 0.8 2.0 0.6 1.5 0.4 0.2 0.0 ▲ 0.2 '12.5 1.0 日本新発10年国債利回り(左軸) 米国財務省証券10年物国債利回り(右軸) 独国10年国債利回り(右軸) '12.11 '13.5 '13.11 0.5 0.0 '14.5 '14.11 '15.5 '15.11 ▲ 0.5 '16.5 (資料)Bloombergより作成 • 日銀金融政策:4月27~28日の日銀金融政策決定会合では、市場の追加緩和期待に反して、1月に導入されたマ ネタリーベースが年間80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行うことに加え、日銀当座預金の 一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の継続を決定した。(次回会 合は6月15~16日) • 長期金利(新発10年国債利回り):1月末に日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入したことにより 大幅に低下し、3月中旬以降は概ね▲0.1%前後での推移が続いている。なお、3月以降は、金利がプラス圏内に ある超長期ゾーンを含めてイールドカーブ全体がフラット化している。 5 株価:不安定な動きが続く (円) 日経平均株価指数 (ドル) 22,000 19,000 20,000 18,000 18,000 17,000 16,000 16,000 14,000 15,000 12,000 14,000 10,000 13,000 ニューヨークダウ工業株30種平均指数 12,000 8,000 '12.5 '13.5 (資料)Bloombergより作成 '14.5 '15.5 '16.5 '12.5 '13.5 '14.5 '15.5 '16.5 (資料)Bloombergより作成 • 日本株価(日経平均):4月下旬には、原油価格の上昇や日銀による追加緩和期待の高まりなどを受け、半年ぶ りに17,000円台を回復したが、日銀が政策据え置きを発表した後は下落。その後も16,000円台での不安定な動き が続いている。 • 米国株価(NYダウ平均):4月下旬には、一部の企業決算が予想ほど悪化しなかったことを受けて、9ヶ月ぶりに 18,000ドル台を回復した。しかし、その後は早期利上げ観測の高まりから利益確定売りの動きが広がったこともあ り、17,500ドル前後で一進一退となっている。 6 為替:日米政策の違いから円安気味で推移 (円/ドル) 円の対ドル及び対ユーロ相場 (円/ユーロ) (ドル/ユーロ) 127 145 1.18 124 140 1.16 121 135 1.14 118 130 1.12 115 125 1.10 120 1.08 115 1.06 110 1.04 円安 112 円高 円/ドル(左軸) 円/ユーロ(右軸) 109 106 5月 7月 9月 (資料)Bloombergより作成 11月 1月 3月 5月 ドルの対ユーロ相場 ドル安・ ユーロ高 ドル高・ ユーロ安 5月 7月 9月 11月 1月 3月 5月 (資料)Bloombergより作成 • ドル円相場:5月上旬には1ドル=105円台半ばと、1年5ヶ月ぶりの円高水準を付けたものの、その後は、日銀が マイナス金利政策を維持する一方で、米国では早期利上げ観測が高まるなど、日米金融政策の方向性の違いが 明確なったことで円安・ドル高となり、5月中旬以降は1ドル=110円前後で推移している。 • ユーロ円相場:ECBによる緩和策の打ち止め感が広がっているほか、英国のEU離脱の是非を問う国民投票(6月 23日)に対する思惑などもあって、円高・ユーロ安傾向が続いており、5月下旬は1ユーロ=123円前後で推移して いる。 7 原油:上昇傾向が続く 石油需給(3ヶ月移動平均) (百万バレル) 4 4.0 需給差(需要-供給) 3 2 2.0 1 1.0 0 0.0 ▲1 ▲ 1.0 ▲2 ▲ 2.0 供給超過 ▲ 4.0 '13.10 100 80 60 40 NY原油先物・WTI期近 OPEC原油バスケット価格 ▲ 3.0 ▲4 '13.4 120 3.0 石油需要前年比(右軸) ▲3 '14.4 (資料)Bloomberg より作成 '14.10 国際原油市況 (ドル/バレル) '15.4 '15.10 '16.4 20 '14.5 '14.11 '15.5 '15.11 '16.5 (資料)Bloombergより作成 • 原油先物(ニューヨーク市場・WTI期近):4月17日の産油国会合の結果が不調だったことで、一時37ドル台半ば まで下落したものの、それ以降はカナダ産油地区での山火事やナイジェリアの政情不安、米原油週間在庫の増 加傾向の一服などを背景に上昇しており、5月下旬には一時1バレル=50ドル台を回復した。 • 米エネルギー情報局(EIA):5月のエネルギー見通しで、16年の原油先物(WTI期近)価格の見通しを1バレル= 40.32ドルに上方修正した。また、17年の同価格の見通しも1バレル=50.65ドルに上方修正した。 8 BRICs+豪:世界的な需要低迷と米利上げ観測で、下押し圧力再び ('15.1=100) BRICs+豪 株価の推移 180 160 ('15.1=100) 中国・上海総合 インド・SENSEX30 ロシア・RTS ブラジル・ボベスパ 豪・ASX200 140 160 150 米ドル高 140 130 120 110 120 100 90 100 80 70 80 60 60 '14.5 '14.11 (資料)Bloombergより作成 BRICs+豪 対米ドル相場の推移 '15.5 '15.11 '16.5 中国・人民元 インド・ルピー ロシア・ルーブル ブラジル・レアル 豪ドル 50 '14.5 '14.11 '15.5 '15.11 '16.5 (資料)Bloombergより作成 • 中国:国家統計局発表の製造業PMI(4月)は50.1と、2ヶ月連続で50を上回ったが、財新・Markit製造業PMI(4月)は49.4で、景況感は小幅悪化。中 国政府は景気よりも構造調整を重視する姿勢で、財政拡大等による過大な政策期待が後退したこともあり、株価は軟調に推移している。 • インド:卸売物価指数(WPI、4月)は前年比0.3%と18ヶ月ぶりに上昇。消費者物価指数(4月)は前年比5.4%と、3月(同4.8%)から上昇率拡大。食 品価格の上昇が主な要因であった。鉱工業生産(3月)は前年比0.1%と、2ヶ月連続で上昇したが、項目別にみると資本財、製造業ともに低下する など景気回復力に乏しく、株価、通貨ともに冴えない。一方、新車販売台数(4月)は前年比12.1%と、10ヶ月連続で増加。 • ロシア:ロシア中銀は4月29日、政策金利の据え置きを決定した。「インフレリスクが高止まりしている」と指摘し、そのリスクが十分に低下すれば利 下げを再開するとした。4月の消費者物価指数は前年比7.3%と、3月から変わらなかった。 • ブラジル:ブラジル中銀は4月27日、市場の予想通り政策金利の据え置きを決定した。前回3月会合で利上げを主張した2委員も今回は据え置きを 支持。4月の消費者物価指数(IPCA)は前年比9.3%と、3ヶ月連続で上昇幅は縮小。上院本会議で可決したルセフ大統領に対する弾劾裁判の開始 を受け、株価、為替レートは一旦上昇。しかし、資源安、米利上げ観測再燃による資金流出などを受け、その後は下落に転じた。 • オーストラリア:豪中銀は5月3日、政策金利を史上最低の1.75%への引き下げることを決定した。これを受け、16年3月以来の水準まで豪ドル安が 進行した。4月の失業率は5.7%と、3月と並んで2年6ヶ月ぶりの水準まで低下したが、雇用者数の1.08万人増は非常勤雇用者が2.02万人増(正規 雇用者数は0.93万人減)に支えられたもので、雇用環境が好転しているとは言い難い内容である。 9 政府・日銀の景気判断:政府は据え置き 年 月 2015年 2016年 政府月例経済報告 日銀金融経済月報/経済・物価情勢の展望等 6月 景気は、緩やかな回復基調が続いている。 わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。 7月 景気は、緩やかな回復基調が続いている。 わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。 8月 景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復 基調が続いている。 わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。 9月 景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基 調が続いている。 わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ られるものの、緩やかな回復を続けている。 10月 景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ られるものの、緩やかな回復を続けている。 11月 景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ られるものの、緩やかな回復を続けている。 12月 景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ られるものの、緩やかな回復を続けている。 1月 景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ られるものの、緩やかな回復を続けている。 2月 景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が 続いている。 3月 景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい る。 わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍 さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。 4月 景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい る。 わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍 さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。 5月 景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい る。 (資料)内閣府「月例経済報告」、日銀「金融経済月報」、「経済・物価情勢の展望」、会合終了後の声明文より農中総研作成 (注)矢印は景気判断の方向を示す • 政府:5月の景気判断は、前月から据え置かれた。 10 農林中金総合研究所 無断転載を禁じます。本資料は情報提供のみを目的に作成されたものです。投資のご判断等はご自身の責任でお願いいたします。 ©2016 Norinchukin Research Institute Co., Ltd 〒101-0047 東京都千代田区内神田1-1-12 (株)農林中金総合研究所 調査第二部 ℡03-3233-7752 [email protected]
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