今月の経済・金融情勢 2016年7月27日号

2016年7月27日
今月の経済・金融情勢
~わが国をめぐる経済・金融の現状~
2016年7月
農林中金総合研究所
調査第二部
http://www.nochuri.co.jp/publication/situation/index.html
経 済 ・ 金 融
【米
【日
国】
本】
情 勢 資 料
2 0 1 6 年 7 月
•
前回(6月14~15日)の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、15年12月に引き上げた政策金利(0.25
~0.5%)の据え置きが決まった。次回(7月26~27日)の会合でも「金融政策の現状維持」の見方が多
い。
•
米国の経済指標をみると、雇用統計(6月)の失業率は4.9%と先月から上昇したものの、非農業部門雇
用者数は28.7万人増と事前予測を大幅に上回った。また、6月の小売売上高、鉱工業生産などの経済
指標も堅調な結果となり、回復基調の継続が再確認された。
•
6月15~16日の日銀金融政策決定会合では、マネタリーベースが年間80兆円に相当するペースで増
加するよう金融市場調節を行うとともに、日銀当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の継続を決定した。ただし、7月28~29日の決定会合では追
加緩和を予想する意見が大勢となっている。
•
日本の経済指標をみると、機械受注(船舶・電力を除く民需)の5月分は、前月比▲1.4%と2ヶ月連続で
減少した。前年比でも▲11.7%と2ヶ月連続でマイナスとなった。また、5月の鉱工業生産指数(確報)は、
前月比▲2.6%と3ヶ月ぶりにマイナスとなった。製造工業生産予測指数の6月分は同1.7%、7月分は同
1.3%と下落が見込まれているが、日本経済の回復力は依然として乏しい状況にある。
【金融市場】 •
長期金利(新発10年国債利回り)は、1月末に日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し
たことにより大幅に低下し、3月中旬以降は概ね▲0.1%前後での推移が続いてきた。その後も英国の
EU離脱(ブレグジット)を問う国民投票で離脱派が勝利したことでリスク回避の流れが加速し、▲0.2%
を割り込んだ。その後、7月8日には一時▲0.3%にまで低下するなど、低下圧力は根強い。
•
日経平均株価は、ブレグジット決定直後には一時1万5,000円割れと年初来安値を更新する場面もあっ
たが、7月中旬以降は米経済の堅調さや大型経済対策などへの期待から株価は持ち直している。
•
ドル円相場は、ブレグジット決定後には一時2年7ヶ月ぶりに100円台を割り込んだ。7月上旬にかけて
は100円台前半で推移したが、6月の米雇用統計が良好な内容となったことや、政府の経済対策への
期待から、一旦107円台まで戻ったが、足元は再び105円割れとなっている。
•
原油相場(NY市場・WTI期近)は、需給関係の緩和基調が続くなか、米ガソリン在庫の予想外の増加な
どにより、6月入り後は下落に転じた。足元では1バレル=40ドル前半の水準で推移している。
•
中国の経済指標をみると、4~6月期実質GDPは前年比6.7%と1~3月期(同6.7%)から横ばいとなり、
3四半期続いた景気減速が一旦止まった。
2
米国経済:回復基調が持続。
(%)
米国雇用統計
イールドスプレッドとFFレート誘導目標
(政策金利)の関係
(%)
(千人)
4.5
3.0
400
非農業部門雇用者数変化(右軸)
失業率(左軸・逆目盛)
2.5
5.0
300
5.5
200
6.0
100
2.0
1.5
1.0
FFレート
10年国債-3ヶ月TB
10年国債-FFレート
0.5
6.5
0.0
'13.7
'14.1
'14.7
(資料)Bloombergより作成
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
0
'14.6
'14.12
'15.6
'15.12
'16.6
(資料)Bloombergより作成
• 米国金融政策:7 月26~27日 の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、15年12月に引き上げた政策金利(0.25~
0.5%)の据え置きが決まった。
• 米国経済:雇用統計(6月)の失業率は4.9%と先月から上昇した。この要因は主に労働参加率の上昇によるもので
ある。非農業部門雇用者数は28.7万人増と事前予測を大幅に上回った。また、発表された小売売上高、鉱工業生産
などの経済指標も堅調な結果となり、回復基調の持続が再確認された。
3
国内経済:回復力は依然乏しい
(千億円)
9.5
国内:機械受注(船舶・電力を除く民需)
(%)
8.0
機械受注受注額(季調済)
3ヶ月移動平均
四半期実績・翌期見通し
9.0
国内:鉱工業生産
(%)
12
前月比(季調済・左軸)
前年比(右軸)
6.0
製造工業
生産予測
4.0
8.5
9
6
2.0
3
0.0
8.0
0
▲ 2.0
7.5
4~6月期見通し
:前期比▲3.5%
7.0
'13.10
'14.4
'14.10
'15.4
'15.10
(資料)Bloomberg(内閣府「機械受注統計」)より作成
▲3
▲ 4.0
'16.4
▲ 6.0
'13.10
▲6
'14.4
'14.10
'15.4
'15.10
'16.4
(資料)Bloomberg(経済産業省「鉱工業生産」)より作成
• 機械受注:民間設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の5月分は、前月比▲1.4%と2ヶ月
連続で減少した。前年比でも▲11.7%と2ヶ月連続でマイナスとなった。
• 鉱工業生産:5月の鉱工業生産指数(確報)は、前月比▲2.6%と3ヶ月ぶりにマイナスとなった。製造工業生産予
測指数の6月分は同▲1.7%、7月分は同▲1.3%と下落が見込まれている。
4
長期金利:リスクオフへの強まりから低下傾向が続く
日米独の長期金利
(%)
(%)
1.4
3.5
1.2
3.0
1.0
2.5
0.8
2.0
0.6
1.5
0.4
1.0
0.2
0.5
0.0
▲ 0.2
▲ 0.4
'12.6
0.0
日本新発10年国債利回り(左軸)
米国財務省証券10年物国債利回り(右軸)
独国10年国債利回り(右軸)
▲ 0.5
▲ 1.0
'12.12
'13.6
'13.12
'14.6
'14.12
'15.6
'15.12
'16.6
(資料)Bloombergより作成
• 日銀金融政策:6月15~16日の日銀金融政策決定会合では、マネタリーベースが年間80兆円に相当するペース
で増加するよう金融市場調節を行うとともに、日銀当座預金の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用する「マイナ
ス金利付き量的・質的金融緩和」の継続を決定した。ただし、7月28~29日の決定会合では追加緩和を予想する
意見が大勢となっている。
• 長期金利(新発10年国債利回り):1月末に日銀が「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入したことにより
大幅に低下し、3月中旬以降は概ね▲0.1%前後での推移が続いてきた。その後も6月23日の英国民投票でEU離
脱派が勝利したことでリスク回避の流れが加速し、▲0.2%を割り込んだ。その後、7月8日には一時▲0.3%にまで
低下するなど、低下圧力は根強い。
5
株価:米経済の堅調さや大型経済対策期待から持ち直す
(円)
日経平均株価指数
(ドル)
22,000
19,000
20,000
18,000
18,000
17,000
16,000
16,000
14,000
15,000
12,000
14,000
10,000
13,000
ニューヨークダウ工業株30種平均指数
12,000
8,000
'12.6
'13.6
(資料)Bloombergより作成
'14.6
'15.6
'16.6
'12.7
'13.7
'14.7
'15.7
'16.7
(資料)Bloombergより作成
• 日本株価(日経平均):6月初旬にかけて、米国の早期利上げ観測を背景に円安傾向が強まったことが好感され、
一旦は17,000円台を回復。しかし、その直後の5月の米雇用統計が弱い内容だったことに加え、英国民投票を控
え、リスクオフが強まったことから、調整色を強めた。ブレグジット決定直後には一時4ヶ月ぶりの1万5,000円割れ
の年初来安値を更新する場面もあったが、7月中旬以降は米経済の堅調さや大型経済対策などへの期待から再
び株価は持ち直している。
• 米国株価(NYダウ平均):6月23日の英国国民投票の結果を受けて下落し、一時17,400ドル台となった。しかし、
国際金融市場の混乱が一服したことに加え、米国の企業決算も概ね予想内にあるため、株価は連日最高値を更
新し、7月21日には18,500ドル台を記録した。
6
為替:円安方向に戻しているが、円高圧力は依然強い
(円/ドル)
(円/ユーロ)
円の対ドル及び対ユーロ相場
126
145
122
140
円安
118
135
114
130
110
125
106
120
円高
円/ドル(左軸)
円/ユーロ(右軸)
102
115
98
110
6月
8月
10月
12月
2月
4月
6月
(資料)Bloombergより作成
• ドル円相場:5月の米雇用統計が弱い内容であったことへの失望感から早期利上げ観測が後退したこと、ブレグ
ジットの可能性が意識される中、6月中旬は円高が進行した。ブレグジット決定後には一時2年7ヶ月ぶりに100円
台を割り込んだ。7月上旬にかけては100円台前半で推移したが、6月の米雇用統計が良好な内容となったことや、
政府の経済対策への期待から、一旦107円台まで戻ったが、足元は再び105円割れとなっている。
• ユーロ円相場:6月にはブレグジットが意識されたことから英ポンドが急落し、それにつられてユーロ安も進行した
が、ブレグジット決定後には一時的ながらも110円台を3年半ぶりに割った。その後は円高方向に戻る動きが見ら
れている。
7
原油:低下に転じて40ドル前半で推移
石油需給(3ヶ月移動平均)
(百万バレル)
国際原油市況
(ドル/バレル)
3
3.0
2
2.0
1
1.0
120
100
80
0
0.0
▲1
▲ 1.0
供給超過
▲2
需給差(需要-供給)
60
▲ 2.0
40
▲ 3.0
20
NY原油先物・WTI期近
OPEC原油バスケット価格
石油需要前年比(右軸)
▲3
'13.5
'13.11
'14.5
(資料)Bloomberg より作成
'14.11
'15.5
'15.11
'16.5
'14.7
'15.1
'15.7
'16.1
'16.7
(資料)Bloombergより作成
• 原油先物(ニューヨーク市場・WTI期近):需給関係の緩和基調が続くなか、米ガソリン在庫の予想外の増加など
により、6月入り後は下落に転じた。足元では1バレル=40ドル前半の水準で推移している。
• 米エネルギー情報局(EIA):7月のエネルギー見通しで、16年の原油先物(WTI期近)価格の見通しを1バレル=
44ドルにやや上方修正した。また、17年の同価格の見通しは1バレル=52ドルと据え置いた。
8
中国経済:下振れ圧力が依然強い
主要経済指標の推移
製造業PMI(左目盛)
52
51
(前年比%)
固定資産投資(右目盛)
20.0
18.0
16.0
50
14.0
49
12.0
48
47
10.0
8.0
'14.6
'14.12
'15.6
'15.12
'16.6
(資料)Bloombergより作成 (注)固定資産投資は農村家計を除く値。
↑人民元高
(人民元
/米ドル)
中国・人民元/米ドル(右目盛)
中国株価・為替の推移
(ポイント)
上海総合指数(左目盛)
5,500
5.9
5,000
6.0
4,500
6.1
4,000
6.2
3,500
6.3
3,000
6.4
2,500
6.5
2,000
6.6
1,500
6.7
1,000
'14.7
'15.1
(資料)Bloombergより作成
6.8
'15.7
'16.1
'16.7
• 中国経済:国家統計局が発表した16年4~6月期の実質GDP成長率は前年比6.7%と1~3月期(同6.7%)から横
ばいとなった。3四半期続いた景気減速が一旦止まったものの、固定資産投資の鈍化傾向が強まっていることな
どから、年後半にかけては下振れ圧力が強まると見られる。
• 金融市場:ブレグジットの影響などを受けて人民元安が一段と進行した。大幅な人民元安になると、中国からの
資本流出が加速し、金融市場の混乱を引き起こす可能性があるほか、16年は中国がG20の議長国であるため、
近隣窮乏化策の人民元安誘導と批判されることを回避したいという意向も強いと思われる。これらを背景に今後
とも大幅な人民元安になる可能性は低いと考えられる。
9
政府・日銀の景気判断:政府・日銀ともに据え置き
年 月
2015年
2016年
政府月例経済報告
日銀金融経済月報/経済・物価情勢の展望等
8月
景気は、このところ改善テンポにばらつきもみられるが、緩やかな回復
基調が続いている。
わが国の景気は、緩やかな回復を続けている。
9月
景気は、このところ一部に鈍い動きもみられるが、緩やかな回復基
調が続いている。
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ
られるものの、緩やかな回復を続けている。
10月
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が
続いている。
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ
られるものの、緩やかな回復を続けている。
11月
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が
続いている。
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ
られるものの、緩やかな回復を続けている。
12月
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が
続いている。
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ
られるものの、緩やかな回復を続けている。
1月
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が
続いている。
わが国の景気は、輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみ
られるものの、緩やかな回復を続けている。
2月
景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が
続いている。
3月
景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい
る。
わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍
さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。
4月
景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい
る。
わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍
さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。
5月
景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい
る。
6月
景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい
る。
7月
景気は、このところ弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いてい
る。
景気は、輸出 ・生産面に鈍さがみられるが、所得から支出への前向き
の循環メカニズムが作用するもとで、基調としては緩やかな回復を続け
ている。
(資料)内閣府「月例経済報告」、日銀「金融経済月報」、「経済・物価情勢の展望」、会合終了後の声明文より農中総研作成 (注)矢印は景気判断の方向を示す
• 政府:7月の景気判断は、前月から据え置かれた。
• 日銀:6月の景気判断は、4月から据え置かれた。次回発表は7月29日の予定。
10
農林中金総合研究所
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