Title 古典派経済学と販路説( Abstract_要旨 )

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古典派経済学と販路説( Abstract_要旨 )
溝川, 喜一
Kyoto University (京都大学)
1967-03-23
http://hdl.handle.net/2433/212143
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
【1
6】
氏)
喜
溝
川
みぞ
かわ
き
経
済
学 位 記 番 号
論
経
学位授与の 日付
昭 和 4
2年 3 月 23 日
学位授与の要件
学 位 規 則 第 5条 第 2 項 該 当
学位論文題 目
古 典 派 経 済 学 と販 路説
論文調査委員
教 授 出 口 勇 蔵
(主
学
いち
学 位 の 種 類
博
博
士
第 1
4号
査)
論
文
内
教 授 中 谷
容
の
要
芙
教 授 松 井
活
旨
古典派経済学の発展の過程で, 販路説 は特別 に重要な意味を もってお り, 現代の経済学 は この理論の超
克の上 に展開 されているといえる。 本論文の著者 は, こうい う意味を もつ販路説の経済学説史的研究を こ
ころざ したのであるが, その場合の分析の視角は, 古典学派 にぞ くす る個 々の経済学者の体系の有機的な
構成の一環 と して, それぞれの人の販路説を検討す ることで ある。
つ ぎに, 一般 に販路説 と名づ け られ る理論 も, 厳密 にい うと, ジャ ン ・ パティス ト・ セ- によるもの と
ジェイムズ ・ ミルによるもの との二種 があることが指摘 され , これ らの二種の理論 が刻明に研究 され, つ
いで, リカー ド, トレンズ, ローダデ ール, およびマルサ スにおいて, 販路説がいかに展開 し, これ らの
古典経済学者 が販路説を否定す ることにな る恐慌現象を販路説 とど う調和 させ , ど う連関 させたとい うこ
とを明 らかにされて いる。
以上の研究成果を 7葺 にわか って叙述 されてあるのが, 本論文の内容をなす。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
著者 , 溝川喜一氏が この著述 において期す るところは ,1
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世紀前半期 における西 ヨーロッパ の経済学界
を, 販路説を中心 と して概観す ることで あ った。 この課題を理論史的な研究方法で もって解 くのが本書の
意図で あ った。
この著書 は, わが国における販路説研究のま とま った もの と して, 画期的な もので あると同時 に, 清 新
な 内容を蔵 している。 その新 しさについてい うと, 第一 に, これ までの多 くの研究のよ うに, 販路説の主
張者のそれぞれの見解だけを取 り出 して比較す るとい うのではな く, それ らの人の経済学の体系の内部 に
おける販路説の位 置をみ きわめた上で, この理論を比較研究 して いる点で ある。 このよ うな研究態度 によ
っては じめて, 販路説によ って と り上 げ られ る経済現象の理論的意味づ けが人 によ って異 な ることが判明
し, 販路説の学説史研究 と して, 本書 は従来の ものよ りも一歩すすんだ もの とな りえたので ある。
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2-
本書 の第二および第三 の特徴 は, 上の研究態度か ら生 じた。 すなわ ち, 第二 に, 普通 には販路説 はセー
の法則 といいかえ られているのだが, 厳密 に学説上か らい うな らば, 販路説 とは, セ- 法則 とは ことな る
ものだ と主張 され るのが, 本書の特徴で ある。 販路説 は学説史上 に実在す るが, セ- の法則な る ものは,
ケイ ンズによ って造成 された概念 にほかな らぬ とい うので ある。 第三 に, 同 じ販路説 とい って も, フラン
スの ジャ ン ・ パティス ト・ セーの説 とイギ リスの ジェ- ムス ・ ミルの説 との間 には, 明確な区別 を考 えね
ばな らぬ, と した点で ある。 すなわ ち, 前者 においては, 販路説 は交換論的, 価格論的な意味での均衡が
需要 と供給 との あいだに成 り立つ とされ るのだが, 後者 においては, 資本主義的生産 の 理 論 の 上 に 立 っ
て, 生産物剰余の実現 と資本の移動 と蓄積の進行 , 利潤率の平均化を主張す る理論 と して提 出された もの
で あ ったとい うので ある。 この最後の特徴 は, この著書 が しめ しえた特 にす ぐれた点で あ って, 現在すで
に学界 において高 く評価 されてお り, 今後の研究の里程表 とな るもので ある。
著者 はつ ぎに販路説が, リカ- ド, トレンズ, ジ ョン ・ ステェアー ト・ ミル, ローダデ ール, およびマ
ルサ スにおいて, いかに踏襲 され, 変形 されてい ったかを刻明に見 きわめている。
本書 には, 著者の経済理論上の立場が必ず しも明瞭 には出ていない。 マル クスの蓄積論 に近 い ものが暗
示 されていて, ケイ ンズの立場 に批判的で あることが ときどき説かれ るとい う程度で ある。 こと望局 にぞ
くす るけれ ど も, これが本書 について指摘 され る欠 陥で ある。 しか しなが ら, 文献の精密な読 み方 と独 自
の判断, そ して他人 に依 りかか らぬ執筆態度など, いずれの点 において も, 高 い研究水準を しめ してお
り, わが国の経済学史界 における近来の- 収穫 で あるといえる。
本論文は経済学博士の学位論文 と して価値 ある もの と認め られ る。
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