国際税務ニュースレター

2015 年 5 月
そこが知りたい!
国際税務ニュースレター
今回のテーマ: クロスボーダー三角株式交換における適格範囲の制限
国際的な M&A を株式の譲渡により行う場合には、裏付けとなる現金が必要ですが、これを株式交換
により行うことが可能であれば、M&A の資金的な制約は解消されます。
1. 株式交換の定義と三角株式交換
株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをい
います(会社法 2 三十一)。したがって、日本の会社法を設立準拠法とする株式会社と外国企業との株
式交換は会社法上認められません。ただし、対価の柔軟化により(会社法 768①二)、自社株式のみな
らず、外国の親会社株式を交換対価とすることは認められます。このような外国親会社株式を交換対価
とする内国法人間の株式交換が、三角株式交換(クロスボーダー三角株式交換)です。
2. クロスボーダー三角株式交換における適格範囲の制限
下図のような、交換対価を外国法人 X 社株式とするクロスボーダーの株式交換であっても、共同で事
業を営むための適格株式交換の要件(法法 2 十二の十六ハ)を満たせる場合があります。この場合には、
旧 Z 社親法人の Z 社株式の譲渡は簿価譲渡とされます(法法 61 の 2①⑧、法法 138①三、法令 178①四
ロ、法法 141 一ロ、142 の 10、142②)。
ただし、交換対価として特定軽課税外国法人の株式が交付される場合には、適格株式交換とはされず
(措法 68 の 3③)、譲渡益課税が行われます。この特定軽課税外国法人とは、租税負担割合が 20%未
満の外国法人をいいますが、独立企業としての実態を有する法人は、除かれていますので(措法 68 の 2
の 3⑤一、措令 39 の 34 の 3⑤⑦)、軽課税国に設立された法人の株式を対価として交付されたとして
も、特定軽課税外国法人とされるのは、限定的です。
<株式交換前>
【シンガポール】
Z 社親法人
株式交換の対価は
X 社株式
(三角株式交換)
X社
100%
Y社
<株式交換後>
Y 社と Z 社の
株式交換
旧 Z 社親法人
X社
100%
Z社
100%
Y社
100%
Z社
上述した特定軽課税外国法人の規定は、日本企業が軽課税国に設立された法人の子会社となるコーポ
レート・インバージョンを規制するために設けられたものですが、クロスボーダーの再編全般にも適用
されることになっています。
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お見逃しなく!
コーポレート・インバージョンとは、タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーを親会社として日
本法人がその子会社となる組織再編形態です。例えば、コーポレート・インバージョンを行ったうえで、
軽課税国に所在する親会社に無形資産等を移転させて、その使用料を内国法人が支払えば、この取引が
移転価格税制の対象とされるとしても、日本の課税ベースが浸食されるおそれがあります。このような
濫用的な組織再編を防止するために、軽課税国に所在する外国親法人(特定軽課税外国法人)株式を利
用した三角合併や三角株式交換の適格性を規制する立法措置が設けられたのです。
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