2016 年第 4 期 中国会計・税務速報 今回のテーマ:固定資産減損について 1. はじめに 中国経済の減速に伴い、当初計画していた利益やキャッシュ・フローを獲得できない場合に は、中国企業会計準則に沿って減損損失を検討する必要があります。今回はその固定資産の 減損会計について紹介します。 2. 固定資産減損とは 固定資産の減損とは、資産の回収可能価額がその帳簿価額を下回ることを指す。 減損処理とは、そのような場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を 減額する会計処理です。 3. 固定資産減損会計の流れ 減損会計は、対象となるすべての固定資産について回収可能性を検討するわけではありませ ん。減損の兆候が生じている資産または資産グループについて、回収可能性を検討し、減損を 認識し、測定します。 計 制 度 を 確 認 す る 貴 社 が 実 行 し て い る 会 グ固 ル定 ー ピ資 ン産 グの 産固 に該 該 減定 基当 当 損資 づす す る 兆産 き会 る 把 減 握 候 、計 会 損 固 の兆 制 計 定 把候 度 制 資 握の に 度 、 減 損 損 失 の 測 定 会 計 処 理 ・ 表 示 固 定 資 産減損の会計処理 借: 資産減損損失 貸:固定資産減損引当金 兆候なし 減損処理は不要 (1)資産のグルーピング 減損会計では、減損損失の認識・測定を行う単位としての、資産グループを決定する必要が あります。資産グループとは、ほかの資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッ シュ・フローを生み出す最小の単位です 1。 (2)減損の兆候 減損の兆候 2 とは、資産または資産グループに減損が生じている可能性を示す事象のことで、 「企業会計準則第 8 号-資産の減損」では次の 6 つを例示しています。 減損の兆候類型 ① 当期において、資産の市場価値が大幅に下落している。 ② 当期において、企業を取り巻く経済、記述又は法律等の環境及び資産がおかれている市 場において、企業に不利な影響を及ぼす著しい変化が生じる、又は近い将来生じると見込 まれる場合。 ③ 市場金利又はその他の市場の投資収益率が当期において既に上昇しており、その上昇 が資産の見積将来 CF の現在価値の計算に用いる割引率に影響を及ぼし、資産の回収可 能価額を大幅に低下させる結果となる場合。 ④ 資産の陳腐化又は資産自体が破損されていることを示す証拠がある場合。 ⑤ 資産が遊休状態にある、若しくは使用が中止されている、又は、将来遊休若しくは使用が 中止となる見込みである場合。 ⑥ 企業内部の報告による証拠により、資産の経済的成果が計画より低下している又は低下 する見込みであることが明らかな場合。例えば、資産が創出する正味 CF や実現する営業 利益(又は損失)が計画金額を著しく下回る(又は上回る)。 (3)減損損失の測定 減損の兆候が認識された資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額(※)まで減額 し、当該減少額を当期の損失として減損損失を認識します。 ※回収可能価額 l 回収可能価額とは、資産または資産グループの資産の公正価値から処分費用を差し 引いた後の純額(正味売却価額) l 資産の見積将来キャッシュ・フローの現在価値(使用価値) のいずれか高い方の金額をさします。 見積将来キャッシュ・フローの現在価値とは、資産又は資産グループの継続的使用及び使用 後の処分により生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローの現在価値です。 正味売却価額 正味売却価額とは、資産又は資産グループの公正価値 34 から処分費用見込額を控除して算定 される金額です。処分費用には、資産処分に関する法定費用、関連税金費用(増値税、付加税、 土地増値税、印紙税等)、運賃及び資産を売却可能な状態にするために必要な直接費用等が あります。 使用価値 使用価値は、資産又は資産グループの継続的な使用及び使用後の処分によって生ずると見込 まれる将来キャッシュ・フローの現在価値として算定されます 5。このとき用いられる割引率は、 現在の市場における貨幣の時間的価値及び当該資産の固有リスクを反映させた利率であり、 企業が資産を購入又は投資をする際に要求される期待収益率を用います。 お見逃しなく! 製品生産ラインを明確に区別できない場合(様々な生産ラインの組合せにより、様々な製品 を生産可能な場合等)は、各生産ラインでも 1 つの資産グループとして分類することができない 場合があります。 1 2 中国での実務上、不動産及び土地等は値下がりすることは稀であり、会社全体として減損の 兆候が存在する場合でも、不動産と土地については、減損損失を計上する可能性は低いです。 したがって、本社主導で減損を検討する際に、当該事情を考慮に入れて資産評価報告書や公 正価値の算出を検討する必要があります。 3 中国において、土地及び建物の多くは公示価格や競売価格等の市場価格を取得することが 可能である場合が多いです。しかし、設備に関しては活発な売却市場が存在せず、中古設備の 市場価格を取得することが困難な場合には、合理的に算定された価額を時価とすることがあり ます。実務上、同一業界の類似資産の市場における実際の取引価格をもって評価することにな ります。 4 公正価値算出では、外部専門家の資産評価報告書を利用する場合が一般的です。資産評 価方法は、通常、原価法、市場法、収益法というパターンが想定されます。「財務報告を目的に する評価マニュアル」第 36 条第 2 項の規定では、「会計準則に規定された資産減損テストでは 原価法が適用されない」とされているため、資産減損を目的とした資産評価には原価法を適用 することは原則できません。 5 不動産及び土地以外の長期資産、すなわち設備等については、外部専門家による資産評価 報告を行わず会社で妥当な資料を用意することにより、中国において監査上減損が認められま す(例えば、処分費用を差し引いた簿価や算定した使用価値)。ただし、連結上当該結果を受け 入れるかどうかについては、再度グループ監査の観点から検討する必要があります。 付録 固定資産減損に関する<新企業会計準則>VS<企業会計制度>VS<小企業会計準則> 新企業会計準則 企業会計制度 小企業 会計準則 「資産減損」の適用項目はそれぞれ独立し 資産グルーピングの概念が導入された。 ていた。資産グループで考えず、正確な「資 産減損」状況を反映できていなかった。 減 企業は期末に各資産の減損兆候の有無を判断しなければならない。 企業が定期的、少なくとも毎期末「保守主義 「減損兆候」の概念が明確にされ、「回収可能価額」、「引当金」などより の原則」に従い、各資産について「減損可能 も重要視された。 額」を予測し、引当金を計上する。 ① 当期において、資産の市場価値が大幅に下落している。 ② 当期において、企業を取り巻く環境及び資産がおかれている市 場において、企業に不利な影響を及ぼす著しい変化が生じる、又 損 の 認 は近い将来生じると見込まれる場合。 ③ 市場金利又はその他の市場の投資収益率が当期において既に 上昇しており、その上昇が資産の見積将来 CF の現在価値の計 識 算に用いる割引率に影響を及ぼし、資産の回収可能価額を大幅 に低下させる結果となる場合。 ④ 減損の認識について、明確な判断基準がな い。 <小企業会 資産の陳腐化又は資産自体が破損されていることを示す証拠が 計準則>- ある場合。 ⑤ 第 6 条によ 資産が遊休状態にある、若しくは使用が中止されている、又は、 り、固定資 将来遊休若しくは使用が中止となる見込みである場合。 ⑥ 産は減損を 企業の内部報告より入手した証拠が資産の経済的成果が予測を 計 上 し な 下回っている、又は下回る見込みを示唆される場合。 い。 回 収 可 能 価 額 「回収可能価額」は「売買価値」と「予測キャ 「回収可能価額」は「公正価値≒市場価額」と「予測キャッシュ・フロー の現在価値」のいずれか高い方とする。 の ッシュ・フローの現在価値」とのいずれか高 い方とする。「公正価値」の概念は用いられ ていないだけでなく、実務的な測定方法、数 値は明示されていない。 測 定 減 損 の 開 示 「資産減損額」のみならず、「累計数」、「計上原因、原則、手順、方法」 減損の戻入れが認められており、財務諸表 などについても開示しなければならない。新基準においては固定資 注記において当期の資産減損額及び当期 産、無形固定資産などの長期資産については一旦認識した減損の戻 における過去の減損戻入れ額の開示が求 入れは認められていない(過去減損の戻入れ額の開示の必要なし)。 められる。 www.grantthornton.cn © 2016 著作権は致同中国に帰属します。 「Grant Thornton(致同)」は、監査、税務、コンサルティングサービスをクライアントに提供す る Grant Thornton のメンバーファームのブランドで、文脈上は一つ又は複数のメンバーファ ームを表します。 致同中国は Grant Thornton International Ltd(GTIL,致同国際)のメンバーファームです。 GTIL(致同国際)とメンバーファームは世界的なパートナーシップ関係にはありません。 GTIL(致同国際)と各メンバーファームはそれぞれ法的に独立した個別の組織体です。各 種サービスはメンバーファームが独自に提供しています。GTIL(致同国際)はその名称で一 切サービスを提供しません。GTIL(致同国際)及びメンバーファームは、相互に代理せず、 義務を負うことなく、相互の作為又は不作為について債務はありません。 当該出版物に含まれる情報は参考のためにのみに提供します。当該出版物の使用から発 生した、直接的、間接的又は偶発的な損失に対して、致同(Grant Thornton)は一切の責任 を負いません。
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