Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

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3. アンダーソンモデルの厳密解(V.物性におけるソリトン
,ソリトン系のダイナミックスとそれに関するカオスの問
題,基研長期研究会報告)
川上, 則雄; 興地, 斐男
物性研究 (1983), 40(1): 108-112
1983-04-20
http://hdl.handle.net/2433/90886
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
川 上則 雄 ,興 地 斐 男
れ る とはい え,単純 な プラズモ ンとの相互作用 のみ を採 り入れ たモデル と しては充分 な成 功
と言 え るで あろ う 個別励起 モー ドや電子 との短距離 相 関 がなぜ有効質量 に寄与 しないかは
。
将 来 の課題 で あ るが,今 回行 った集 団 モー ドとの相互作用 を ソ リ トンと して厳密 に採 り入れ
る とい う方法 は多体 問題 に対 す る 1つ の アプ ロー チ と して有効 であ ろ う
。
ま とめる と 2つ の場 が互 いに引力 を及 ぼ し合 う時 ,そ の系 が sel
f
t
r
aped sol
i
t
on (S
ol
i
t
on
Nami
ki
Ohba型 はそ の 1つ の例 であ り, 固体 内で分極
bag)の解 を持 つ場合 が あ る。 Kubo-
の雲 を伴 った陽電子 や, あ る種 のポー ラ ロン等 にそ の実例 が見 出せ る
。
そ の普遍 的 な形 か ら
考 えて他 に も多 くの実例 が見 出せ るであろ う
。
ソ リ トンと しての基本的 な問題 を考 え る と,なぜ r
少- ¢な る比例関係 になるのか よ くわか
らない
。
確 か に数学的 な解 と して存 在す るのであ るが,物理 的要請 か ら出 て くる方 がす っき
りす る。 また粒 子 が 2ケ以上 あ る多 ソ リ トン問題 の定式化 も将 来 の課題 であろ う
。
参考文献
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ア ンダ ー ソ ンモ デ ル の厳 密 解
阪大 ・工
川 上則雄 ,興地 斐男
§1 は じめに
近藤 効果 とい う言葉 で代表 され る金属 中の磁 性不純物 に関す る研究 は,多体 問題 の取 り扱
いの本 質 に触 れ る問題 と して固体物理 学 にお い て重 要 な位 置 を占めてい る
。
このいわ ゆ る局
所的電子相 関問題 を具体的 に取 り扱 えるモデル と して, ア ンダー ソン及 び S-dモデルがあ る。
-108-
アンダー ソンモデルの厳密解
ァ ンダー ソンモデルは次 の様 なノ、ミル トニア ンで記述 され る1
):
+
L
H - k
Po
o
'k
Po
v
k(
kCkoC
k
e
C:o
odo'
d
十
c
ko )
+ +
;
d
O
+Ud
T
dTdldl・
+ d∑d
0
e
(1)
不純物 レベル edに存 在す る電子 は波数 kエネル ギー ekを もった伝 導電子 とVkを通 して混 じ
、ミル ト
りあい, さ らに不純物 レベ ルに電子 がニ ケ詰 まる とクー ロン反発 U を感 じる とい うノ
ニア ンである。 このア ンダー ソンモデルに,電気的 中性 の条件
- にす る と,上 に述 べ た Sdモデルが得 られ る
。
(
U--2e
d)を付加 して U-
したが って ア ンダー ソンモデルの性 質 を調
dモデル に対 す る知 見 も得 られ るこ とにな る
べ るこ とに よ り S-
。
ここでは金属 中で起 こる局
所的電子相 関効果 とい う問題 を念頭 にお いて対 称 ア ンダー ソンモデル
(
U--2ed)の厳 密 解
を紹介す る。なお §3以 下 に現 われ る物 理 量 はすべ て不純物 部分 か らの寄 与 を扱 ってい るこ
とに注意 され たい。
§2
厳密 な取 り扱 い2)-ベ- テ仮説 の方法 -
)v
kに k依 存 性 な し。
(
i
i
)
ア ンダー ソンハ ミル トニア ン (1)に対 して次 の仮 定 を設 ける 。 (i
e
k- k。 (i)の仮 定 に よ り不純 物散 乱 の影響 を受 け るのは伝導電子 の s波成 分 のみ とな り,
s波 の性 質 に よ り問題 は一 次元 に帰着 され る 。 (
i
i
)の仮 定 は伝 導電子 の状態密度 を一定 (1
/
27
C)にす ることと等価 であ る 。 (i)
(
i
i
)の仮 定 は もとのノ
、ミル トニア ンに物理 的 に強 い制 限 を
加 えてい る訳 ではな く,電子相 関 を取 り扱 うための簡 単化 と考 えて よい。 これ らの仮 定 の下
では一次元系 に用 い られ て きたベ- テ仮 説 の方法 が適用 で き, ア ンダー ソンモデルの厳密 な
取 り扱 いが可能 とな る。その結果 , ア ンダー ソンモデルに対 す る基礎 的 な方程式 としてベテ仮説 に特有 な形 の式 :
el
k
,L = 責
ik
J
2
-iAp - UV2
/2
p-1i
k
j
2- iAp+UV2/2
だ i
k
,
2-iAα+ W 2/
2
一口
書
1+(
i
/2)V2
/(k
j +U
/2)
, )- 1,2
,・・・
,N,
1- (i
/2)V2/(k
j
+U/2)
i
Aα- iAp IUV2
α- 1,2,- ・
,〟 .
(2)
)-1i
k
j
2-iAα-UV2
/2 4-1iAα- iAp +UV2
が得 られ る。 ここで 上は一 次元系 の長 さ,〟(
〟)は全 (上向 きス ピン)電 子 数 であ り,全 ス ピ
)
/
2
で表 わ され る
ンの Z 成 分 は s
z- (
N- 2M
o
k
,は擬運動 量 と呼 ば れ てい る もの で これ を用
い る とェネル ギー は g-∑ k
,とな る 。Aαは ス ピン波 に対す る擬運動 量 であ る。
-1
09-
川 上則雄,興地斐男
§3
絶対零度 にお ける性 質 3),4)
ア ンダー ソンモデルの持 っ物理的性 質 を議論す るた めには, (
2)
式 の解 の性 質 を調 べ な け
れ ば な らない。 この解 をェネル ギー的 に分類 してゆ くと,基底状態 は複素解
k- (A。± iU
a
i
/2)
V2 (
但 しAαは実数 )で構成 され, さ らに絶対零度 にお ける磁 気的励起 は実数解 k
]に よ
v2
り表 わ され る こ とがわか る。 したが って絶対零度 の性 質 は この二種類 の解 を用 い るこ とに よ
り調 べ るこ とがで きる。
(
a)基底 エネル ギー3)
+
上 に述 べ た様 に基底状態 には kaのみが関与 してい るので基底 エネル ギー Eは熱 力 学 的 極
限 で ∑k
i
aを積分 でお きか えるこ とに よ り
[E-E(
U-0)]/V2-
u
寸 og(1+u
-三 [utanl
1
L
\
ヽ.
1 ,
-. ,
-
± ・
■
∴
-
2)]
G cosech打(x+y2)
(3)
(y+へ
/
訂 2)
2
+1
/4L
L
とな る。但 し u-U
/
V2。
(
3)が対称 ア ンダー ソンモデルの s
i
ngl
et基底 エネルギー に対 す る厳密 な表式 であ り, u≪ 1
と して右辺 を展 開す る と u
4まで得 られ ている摂動展 開 と一致 してい る5
.
)さらに W≫ 1の S-d
極 限 を考 えてみ る と右辺 の積分項 か ら-(
UV2/W2)
V2exp(
-w
U/
4V2)の形 の寄与 がでて くる
.
これ は Sdモデルで よ く知 られ てい る si
ngl
。t基底 状 態 に対 す る束 縛 エネル ギー である冒
)
(
b)帯磁 率 4)
磁 気的 な励 起 は実数 k
,の出現 によ り記述 され るが,外 部磁場 が弱 い場合 には k
,- -- の低
エネル ギー励 起 が起 こる
。
したが って この付近 の解 の性 質 を調 べ る こ とに よ り帯磁 率 xm が
得 られ (gpB- 1)
0
∞(1十 L
L
2-4ux2) e
xp(-7
Cx2)
打V2km- I
芸(a-1
/a)] (4)
dx+ (打/ ノ㌃)exp[
㌔ (1十 払2-4LLx2)
2十 16u3
x2
2
とな る
。
u≪1として右 辺 を展 開 してみ る と, これ には第 一 項 のみ が寄 与 L LLに関す る展 開
では拾 えない項 が第二項 に新 たに付 け加 わ ってい る。 この こ とは ア ンダー ソンモデルにお い
て U- 0が特 異点 で あるこ とを示唆 してお り, これ までの近似論 では予想 され ていなか った
こ とであ る。逆 に L
L
≫ 1の S-d極 限 では第 二 項 のみ が残 りS-dモデルの帯磁 率 1
/(27
C
T
K)
を与
え る7
0
)
但 し,T
K-(
UV2
/
W2
)I
/
2exp(
-w
U/
4V2)は近藤 温度 と呼 ば れ る量 で S-dモ デル を特 徴
づ け る重 要 な量 で ある。 この様 に Uをい くら大 き くしてい って も帯磁 率 は発散 せ ず に有 限値
を とる とい うこ とは,強 い電子相 関効果 のため絶対零度 では局在 モー メ ン トは存 在 しえない
-110-
ア ンダー ソンモ デ /
レの厳 密解
とい うこ とを意 味 してお り, この こ とは Sdモデ ル で詳 し く議論 され て きた こ とで あ る6
.
)
§4 帯磁 率及 び比熱 の温度 変化 8
)
有 限 温 度 に お け る性 質 を調 べ るた めに は
(
2)の解 で表 わ され るあ らゆ る励 起 状 態
しな けれ ば な らな い。 この様 な解 を
得 られ る 自由エ ネ ル ギー は非 線
記 述 され ,解析 的 取 り扱 い
(低 温 で の電 子 比 熱
この積 分 方程 式
は 閉
●.● (
3
)
(
2
)
を 考 慮
も と に
型 積 分
,
し て
方程式で
は 一 般 に 困 難 とな る
0
1
0
1
(
a
)
0・
1
1
・
O
T
^
}
じ た 形 に 求 ま っ て い る )0
を 数 値 的 に 解 い て 得
ら れ た 帯 磁
(
り
率 と比熱 の
温 度 変 化
を 図
1 に 示
し た 。 先 ず 帯 磁
(
2
)
率 の温 度
変 化 に 注
目 し て み る 。 温 度 が 十 分 高 い
時 は (T≫U)
,あ らゆる状 態 が同等 に励起 され ,
帯磁率は高温型 のキュ リー則 に従 い有効 キュ リ
ー定数 Tx
mは 1
/8となる。温度 を徐 々に下げて
o
・
ol
yv
2
0・
1
1
・
0
仏)
図1
. 帯磁 率 (
a)
及 び比熱 (
b)の温度 変
ゆ くとUが存在す る場合 には Txmの値 は一旦増
加す る。Uが大 きい程 この増加 の割合 は大 きく,
十 分大 きいUに対 しては Txmの値 はキュ リー則
二 二
二
三
三
ま るは Sdモ デ ル の結 果 をプ ロ
ッ トした もの で あ る。
で期待 され る 1
/
4に近 づ く。 この ことは大 きな
クー ロン相互 作用 に起 因 して, あ る温度 領 域 で局 在 モ ー メ ン トが 出現 してい る こ とを意 味 し
てい る。 しか しい く らUが大 き くて局 在 モ ー メ ン トの出現 が容 易 に な って も T≦ T
Kに な る と
強 い電子相 関効果 のため xmは一 定値 1
/(27
C
T
K)に近 づ き§3で も述 べ た様 に局 在 モ ー メ ン ト
は凍結 して しま う。帯磁 率 の この様 な温度 変化 は繰 り込 み群 の方 法 で得 られ て い る結 果 とよ
く一致 してい る9
.
)比熱 の グラフを見 るとクー ロン相 互作 用 の増 加 に伴 い低 温 側 に新 しい ピー
クが徐 々に出現 してい る様子 が伺 える。 この ピー クが クー ロン相 互 作用 に よ る多体 効果 に起
因す る ものに他 な らず , Sdモデルで期 待 され る ピー クと本質的 に同 じもの で あ る。参 考 の
ため Sdモデルの結 果 もプ ロッ トしてある9
.
)
,
1
0
)これ らの図は U- 0の一体 問題 か ら電 子 相 関
の強 い Sdモデル までの移 行 の様 子 をよ く表わ していると思 われ る。
参考文献
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熱力 学 的 に平衡 な系 を相転 移 温度 以 下 に急冷 す る と系 は熱力学 的 に不安定 あ るいは準安 定
とな り,揺 ぎの増 大 を経 て最終 の よ り安 定 な平衡状 態 に落 ちつ く
。
この よ うな現象 は ス ピノ
eat
i
on として古 くか ら知 られている。動的 I
s
i
ngモ デ ル に基 づ いた ス
ダル分解 あ るいは Nucl
ピノダル分解 (以 下 ,保存 系 とよぶ )の最 近 の計 算 機 実 験 は秩 序 化 の過 程 に ス ケー リング則
,2)揺 ぎの時 間発 展 は構 造 関数 Z
k(
i)- く 庵 (i F2>で記述 され
が成 立 す るこ とを示 してい る三
)
)
ま局所 的秩 序 変数 S(r,
i)の Fouri
er成 分 である
る。 ここに ,Sk(i)(
。
計 算機 実験 に よ る と,
関数 I
k(
i)- Ik(
i)
//
kIk(
i)が,波数 kが揺 ぎの相 関距 離 の逆数 よ り十 分 小 さな領 域 で,次 の
ス ケー リング則 に従 が う。
I
^
k(
i)- k(
i
)
-dF(
k
/k(
i))
(1)
ここに, dは空 間 の次元 で あ る 。 (1)は臨 界 点近傍 の二成 分溶液 の実験 3),4)や , 秩 序 変数 が
保存 しない秩 序 無秩 序転移 (以 下 ,非 保 存 系 とよぶ )の計 算 機 実験 5),6)で も観 測 され てい る。
k(
i)は k(
i)- taとあ らわ され ,指 数 aは急冷 してか らの時 間 tが十 分 大 きい領 域 で
- 112
-