心理と言語A 第4回 インプットを重視した第二言語学習法 (1)インプットの役割 廣森 友人 [email protected] Logo (テキスト: 第3章) 授業の目的 どのようなインプットをどのように取り入れればよい のか(インプットの役割)を理解する。 インプットを重視した英語学習・指導とはどのような 方法なのかを理解する。 2 インプットの現状把握 インプットの現状 - どんな(WHAT)インプットを? - どのように(HOW)? - どのくらい(HOW LONG)? インプットの理想 - どんな(WHAT)インプットを? - どのように(HOW)? - どのくらい(HOW LONG)? 3 インプットの現状把握 どのくらいの量のインプット? - 言語習得の天才=幼児 5歳児になる頃までに, 約17,520時間のインプット (Morley, 1991) → 第二言語学習者が一日3時間,毎日勉強して, 5,840日(約16年) 4 インプットの現状把握 どのくらいの量のインプット? - 英語の達人:新渡戸稲造 (国際連盟事務次長) Bushido, the Soul of Japan (1899) 「図書館にある書物は,片端から総て読んで了はうと云う」 - 外国語の達人:Lomb Katö 5ヵ国語の同時通訳,10ヵ国語の通訳,16ヵ国語の 翻訳(polyglot) 「最良の外国語学習法は,多読熟読」 5 インプットの現状把握 第二言語の習得 → 圧倒的なインプットが必要 - 17,520時間もの時間を捻出できるか? - インプットの「量」は重要! - インプットの「質」を高めるにはどうしたら良いか? 6 インプットの役割 なぜインプットは言語習得を促進するのか? ①そもそもインプットがなければ,何も始まらない インプットによって,学習者の中間言語が構築され, アウトプットが可能になる インプット 中間言語 アウトプット 7 インプットの役割 インプット仮説(Input Hypothesis) - クラッシェンが提案したSLAモデル (Krashen, 1981, 1982) - 言語習得にはインプットさえあれば十分 - 理解可能(comprehensible)なインプット 現在の能力よりも少しだけ難しめ(i+1)のインプット 難しすぎる/簡単すぎると,「気づき」が生まれない 8 インプットの役割 なぜインプットは言語習得を促進するのか? ②自分の第二言語能力の「ギャップ」に気づく 例1)NS: 「Do you read me?」 NNS (ワタシ): 「Yes…」 例2)(女性が恋人の男性に向かって) 「How can you read me so wrong? What’s wrong with you?」 インプットは現状の知識(中間言語)と目標言語との ギャップを認識 → ギャップを埋める役割 9 インプットの役割 なぜインプットは言語習得を促進するのか? ③頭の中に英語の回路を作り上げる インプットを大量かつ継続的に取り込むことにより, その言語の「予測文法」が身につく 例1)「I’m afraid ...」 (おっと,何か良くないことが来るな。何か頼まれるのかな。) I’m afraid you’ll have to wait. / I’m afraid he’s on another line. 例2)「John gave me ...」 (次に来るのは,名詞だな。プレゼントかな。人ではないな。) 無意識に(瞬時に)何が来るかを予測することができる 10 第二言語習得を促すインプット インプットの「量」 - 第二言語に習熟=認知プロセスの自動化 → 大量のインプットが必要 11 第二言語習得を促すインプット インプットの4条件(村野井, 2006) ①理解可能性・・・「i+1」のレベルのインプット - 理解不可能なインプットは「呪文」と一緒 (例:タガログ語100時間) - 難しすぎず/簡単すぎず,程よいレベルのインプット ②関連性・・・興味・関心にあったインプット - 「面白い」と思って読んだものはインプット率1.15倍 (Vardaman, 2013) 12 第二言語習得を促すインプット インプットの4条件(村野井, 2006) ③真正性・・・「本物」らしさ - 自然な言語使用を反映したインプット - 「Hello, how are you? / I’m fine, thank you.」 - NNS: 「I’m sorry for coming late!」 NS: 「Don’t be late next time! And, we have just entered into the discussion on the Input エンタ-ディントゥ Hypothesis. Join the discussion.」 NNS: 「…OK.」 13 第二言語習得を促すインプット インプットの4条件(村野井, 2006) ④音声と文字のインプット・・・音声と文字のバランス - 人間は文字情報(だけ)に頼る傾向が高い - 日常,脳がインプットを処理している割合 視覚 83% 聴覚 11% 触覚 3% 味覚 2% 嗅覚 1% 14 第二言語習得を促すインプット インプットの4条件(村野井, 2006) ①理解可能性 ②関連性 ③真正性 ④音声と文字のインプット → 私たちにとって,4条件を満たしたインプットとは? 15 インプット重視の英語学習法 インプットの「量」を増やす効果的な方法 - まずは「分野」を絞る 1)自分の関心ある分野だと動機づけにつながる 2)背景知識があると内容理解につながる 3)何度も聞く/読むと語彙習得につながる - 「聞き流す」だけでは聞き取れるようにはならない それが効果的なのは,上級者だけ (例えば,TOEIC 900点ぐらい) それ以外の人には,あまり意味がない。なぜか? 16 インプット重視の英語学習法 英語が聞き取れるようになるプロセス 1)音と文字が一致していない。 「 … ………. snowfall … …. ………. 」 2)音と文字が一致してくる。 「Northern Japan … see snowfall … Sunday.」 3)英語がパーフェクトに聞こえてくる。 「Northern Japan will see snowfall for Sunday.」 17 インプット重視の英語学習法 インプットの「量」を増やす効果的な方法 - スピードを変化させてみる(高地トレーニング) 例:TOEFL, TOEIC・・・150wpm CNN, BBC・・・170-180wpm 早口のキャスター,夫婦喧嘩・・・200wpm 18
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