ちょっとすてきな・・・今月のBook 116

 そういう意味でいうと、先ほどの倉橋のとこ
ろから、尊厳をもってかかわるというか、一人
う観点で、大人と子どもが作っていけばいいこ
れがいかに、すごく主体的に学んでいくかとい
お勉強の時間も大事、自由も大事だけど一斉も
が既に位置づけられていたということです。倉
ひとりがまさに有能な学び手としての、私たち
とで、福田先生がまさに、何度も作り替える、一
いうことです。
橋は、保育の「新」と「真」ということを(あ
の子ども観というところにもう一度立ち返るべ
緒に作っていくことに大事なところがあると話
大事という、とても二重に語られることが多い
の時代も激動の時代でしたが)
、いっていまし
きです。それは、赤ちゃん時代からということ
されたことなのです。しかも、先ほどの社会情
文化的実践協同体への参加
た。
今とある意味で似ているかもしれません。
も
を藤森先生が繰り返し話されたように、そこが
動的な経験が、乳幼児期には大変基盤になるこ
のですが…。そうではなくて、そこは子どもた
ちろん戦後ですから、戦後と今を一緒にしては
充実してくることが、じつはその先の子どもた
とをあらためて位置づけていく。でも、それが
だから、心とだけいってしまうと、じつはど
の方向に向かってその心が動いていくかという
いけないかもしれませんが、大きな時代の制度
ちのより豊かな学びにつながっていくというこ
基盤になりながらも、学びだということだと思
ちの生活の中で決めて、子どもたちにとってど
の変革期であったことは確かです。新しく変
とと大きく関連しているだろうということです。
ことだと思うのですが、そこに学びという観点
わっていくことと、真実の真、この両面が大事
います。そうすると、
協同的な学びというと、
と
昨年11月初め、98歳になる義母が手洗いに行こう
とベッドから立ち上がった際、足がもつれて転倒し入
院となってしまった。幸い、軽度の脳挫傷だった。入
院にあたり、今後の治療方針とその後についての説明
があり、治療が安定したら、介護老人保健施設に移動
してもらう、この施設も期間が過ぎると(3か月)他
の施設に移動しなければならないので、養護老人施設
を今から探しておいたほうがよいとのことであった。
そういう中で、看護師をしていた姉よりいくつかの
本を紹介してもらった。その中に衝撃的な本書があっ
た。日本の高齢者の9割がまもなく下流老人化すると
いう。本書でいう「下流老人」とは、「生活保護基準
相当で暮らす高齢者、およびその恐れがある高齢者」
を指すとしている。そして今、日本には「下流老人」
が大量に生まれていると。
読みすすめていくと、下流老人は、社会的構造的で
あるということが見えてくる。私は貯金しているから
大丈夫と思っていたとしても、思ってもいなかった病
や失業などで、あっという間に貯蓄はなくなってしま
う。65歳になった時点で仮に年金やその他の収入が
月約21万円あったとしても、貯蓄額が300万円では
約4年で底をつき、1000万円でも14年弱しか持た
ない、というのだ。誰でも下流老人に陥る今の社会が
あるというのである。
今や貧困問題は、老人だけではなく、子どもたちの
生活に深く広がっている。子どもの6人に1人が貧困
といわれる貧困の国となってしまっている日本。いつ
の間にそうなってしまったのか。どうすれば脱せられ
るのか。真剣に考えされられ、と同時にぞっとさせら
れた1冊でもあった。
藤田孝典・著『下流老人─一億総老後崩壊の衝撃』
(朝
日新書)
だということ、今まさにもう一度そのことを考
『下流老人』
もすればこれまで5歳後期からといった話でし
Book
とすると、子ども主体の遊びや生活の重要性
の中で、子どもはともすると遊びも大事だけど、
116
える時期に来ているのではないかと思います。
select
(黛 秋代/埼玉県さいまた市・めだか保育園園長)
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保育通信■No. 733 2016. 5. 1.
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